フェイク・リベリオン

古き良きガンガンの系譜を受け継ぐファンタジー

フェイク・リベリオン ささきゆうちゃん
sogor25
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この作品に興味を持ってくれた人は、まず1話の試し読みを読んでみてください。世界観や主人公の能力を端的に説明し、登場人物のキャラクターも見せてくれて、それでいて導入部としての物語の盛り上がりもある、そして読み終わるとタイトルのハマり具合に膝を打つ、まさに作品の魅力を集約した見事な1話です。 2話以降も、主人公の属性をちゃんと活かしつつ想像以上にサクサク物語が進行していくので、ストレスなく読み進められます。主人公の華宮とキッカの関係性もしっかり描かれているので、物語の初めから登場人物に愛着を感じる事ができます。 この作品、設定が割とハードモードなのに全体の雰囲気は明るい、でも何処となく懐かしい感じがあって不思議だな―と思っていました。読み進めるうちに気付いたのですが、「鋼の錬金術師」「東京アンダーグラウンド」「ソウルイーター」等、2000年代のガンガンっぽさを全面に感じられる作品に仕上がっています。なので、物語自体はがっつりファンタジーなのに、なぜかノスタルジックな雰囲気を感じられるレアな作品だと思います。 1巻まで読了
痩せたいさんと失恋ちゃん

百合好きならこの作者の組み合わせ、ピンときますよね?

痩せたいさんと失恋ちゃん 安田剛助 文尾文
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「私と彼女のお泊まり映画」「草薙先生は試されている。」等、百合に限りなく近い女性同士の関係性を多数描いてきた安田剛助さんが原作、「私は君を泣かせたい」で笑顔あり涙ありの様々な表情を見せる百合作品を描いた文尾文さんが作画というコンビで生み出されたこの作品。 主人公の凛子が初恋の相手である詩織先生と偶然再会するところから、中盤ある理由で詩織先生の家に行くことになるまでの展開の自然さに唸らされる。そして詩織先生が凛子の恋心を意識した辺りから終盤への展開、百合作品でこんな結末されたら悶えてしまう。 原作の安田剛助さんは「じけんじゃけん!」等のコメディの印象のほうが強かったけど、今作はコメディ要素も見せつつ直球の百合ではないドラマ性の高いストーリーを見せてくれる。作画の文尾文さんは相変わらず表情の描き方が上手いし、太ってるという印象を与えてダイエットしてるという設定に説得力をもたせつつちゃんと愛され感のある詩織先生のビジュアルが見事。 その後の物語やサイドストーリーも見てみたいという気にさせつつ、全1巻で綺麗に完結して「いい百合作品を読んだ」と思わせてくれる作品。
彼女と彼氏の明るい未来

好きだからこそ、揺さぶられる倫理観

彼女と彼氏の明るい未来 谷口菜津子
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前作「彼女は宇宙一」の評判が私の周りでやたら良かったので、谷口菜津子さんの名前を見つけてあらすじも何も見ずに今作に手を伸ばしたんです。冴えない感じで超ネガティブ思考の彼氏・一郎とそんな彼のことが大好きな美人の彼女・ゆきか…読み始めは「地球のおわりは恋のはじまり」みたいな幸せなラブコメなのかと思ってました。 そしたら突然明らかになるゆきかの過去に関する噂。生来のネガティブさもあってその噂を異常なまでに気にし始める一郎。そして唐突に登場する噂の真偽を確かめることのできるふしぎ道具。疑惑とそれを検証する術を目の前にして激しく揺れ動く一郎のメンタル。予想以上に読者の倫理観を揺さぶってくる恐ろしい作品でした。谷口さんの絶妙にデフォルメされたキャラクター造形、ベースは整然と並んだ長方形なのに突然崩れたようになるコマなど、いろんな方法で作品のリアリティラインを曖昧にしてきているのもその揺さぶりを効果的に支えているように思います。 1巻の段階ではその噂が事実かどうかは分からないけど、少なくとも現在のゆきかの気持ちは一郎に対して一途であることが伺い知れます。一郎の視点のないゆきかだけしかいない空間の描写からもそれは分かります。それを鑑みると、この作品の肝はゆきかの過去に囚われてしまった一郎の心の移り変わりにあるのだと思います。一郎が現在のゆきかだけを見て過去の噂など気にしないという態度を取ることができたなら、もしくはその噂を検証する手段があったとしてそれを実行しなければ、この2人はこれまでと変わらず穏やかに過ごすことができた、でもそうすることができなかった一郎の咎と、それを一概に否定することのできない読者側の人間の性、を描いた怪作だという印象を受けました。 「hなhとA子の呪い」「青春のアフター」「それはただの先輩のチンコ」等、好きという感情とそれに付随して回る負の感情をファンタジー設定を交えて描く作品が好きな方と相性のいい作品ではないかと思います。 1巻まで読了。
KILLING ME / KILLING YOU

ハードな世界観をポップなシナリオと美しい絵柄で紡ぐファンタジー

KILLING ME / KILLING YOU 成田芋虫
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成田芋虫さんの作品は前作「It’s MY LIFE」から拝読してますが、まず表紙の絵の鮮やかさに目を引かれ、そして本編のマンガが表紙や扉絵のカラーイラストとの相違を全く感じさせない絵柄で描かれていることに驚かされます。 今作「KILLING ME / KILLING YOU」は1話から割とハードな設定が提示されますが、シナリオ自体はコメディ調になっており、重くなりすぎず読み進めやすいテイストに仕上がっています。それでいて盛り上がる所、物語を引き締める所では絵の力で読者を引き戻してくれます。 「IT'S MY LIFE」が好きだった方はもちろん、絵柄もテーマ性も全然違いますが、例えば「少女終末旅行」や「狼と香辛料」のような、相棒と旅をしながら様々な人、ものに出会う作品が好きな方には気に入って頂けるような気がします。 ちなみに、「IT'S MY LIFE」とは世界観を共有してる他、スターシステムとはちょっと違う形でキャラの共有をしており、興味がある方は前作にも手を出してみることをオススメします。 (一応違う出版社の作品なんですが、作品のリンクどころか1巻発売時にはそれぞれの公式でお互いの作品の試し読みが配信されるという大盤振る舞いっぷり。今後ももしかしたら同様のコラボがあるかもしれませんね) 1巻まで読了

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