ゲイ風俗という人生の縮図ゲイ風俗のもちぎさん もちぎ兎来栄寿今やTwitterでのフォロワー数が48万人を超える人気者のもちぎさんによる、主にゲイ風俗で働いていた時の体験などの半生を綴ったエッセイマンガです。 19歳でゲイ風俗で働いていた頃の透徹した思考と言動がとても未成年のものとは思えず、本質を突いていて魅力的です。そんなもちぎさんよりも更にある意味上手なボネ姉の「付き合ってなくても向き合ってはいるの」といった名言の数々も忘れられません。 しかし、その早熟の裏には非常に辛いことが多かったであろうことも察せられて胸が痛みました。その一部は克明に描かれていますが、毒親から理不尽な扱いを受け死にたいという想いを抱きながらも乗り越えたもちぎさんが、今現在は田舎で穏やかに生きているのだということが個人的にはとても救いになります。 人生を生きる上で大事なことが詰まっている一冊です。もし皇太子殿下と同じクラスだったら金の釦 銀の襟 -パレス・メイヂ側聞- 久世番子兎来栄寿タイトル通り『パレス・メイヂ』のスピンオフ作品ですが、『パレス・メイヂ』を読んでいなくとも単体でも楽しめる作品です。 ラノベタイトル風に言えば「留年したら皇太子殿下のご学友になった件」という感じのお話。 学校の中でも超特別扱いを受けながらも誠実で朴訥とした皇太子殿下、そしてそれに反発する問題児な主人公。そんな二人が周囲の疑義もありながら仲良くなっていく物語です。その設定自体は類型も多いのですが、その過程の余りに人間味溢れるエピソードの数々にこそ久世番子さんの良さが溢れています。 お互いに存在する先入観。しかし、本質的には誰しもが同じ人間。もし自分が主人公のようにやんごとなき方と同級生だったらどういう風に振る舞っただろうか、仲良くなれただろうか……そんな想いを馳せました。 単体でも読める作品ではありますが、未読の方は興味があればぜひ併せて『パレス・メイヂ』本編も読んでみて下さい。スタイリッシュ高画力フェチ満載百合吸血鬼マンガヴァンピアーズ アキリ兎来栄寿『ストレッチ』のアキリさんの新作ということで否が応でも期待感の高かった本作。 表紙からも解る通り、今回も百合味たっぷりの物語を楽しめます。そして、元々高かった画力が更に洗練されており絵を眺めているだけで幸福感を覚えるマンガです。 等身大な14歳女子中学生の性格にとても好感を持てる主人公・一花。そして彼女の下に突然現れた、白皙の美少年のような美しすぎる吸血鬼の少女。 設定だけ見れば取り立てて珍しいものはないのですが、表情・テンポ・些細な言動やそのリアクションにアキリさんの持ち味が最大限に発揮されていて、読んでいて小気味良いです。 それにしても生え際から僅かに生える髪や頸、艶めく唇など随所にフェチズムを感じずにはいられません。素晴らしいです。残念な美人三姉妹のハイセンスコメディ宇宙とかと比べたらちっぽけな問題ですが ビーノ兎来栄寿『女子高生の無駄づかい』のビーノさんがまたやらかして下さいました(褒め言葉)。 本作の中心となるのも、美人姉妹ながらそれぞれにそこはかとなく残念な要素を持ち合わせた三姉妹です。 三姉妹以外に出て来る脇役も、万物を脳内でエロに結び付けてしまう14歳の神社の息子であったり、咀嚼音が好き過ぎるイケメン眼鏡男子な大学生であったり、大体強烈な個性を有しています。コミックス描き下ろしの幕間では更に細かい解説もあり、個性がより強固にされています。 そんな彼らが入り混じって織り成される笑いの協奏曲、否、狂騒曲は一度味わうと病み付きになること請け合いです。シャウエッセンの件は声を出して笑ってしまいました。そこから更に発展していくのも予想外でした。 ちなみに私は好きなおでんはちくわぶ、次点で玉子と大根です。一瞬を永遠にする営為明日を綴る写真館 あるた梨沙兎来栄寿誰もが日常的にスマホで写真を撮り、簡単にSNSに上げて共有し楽しめるこの時代。証明写真すらコンビニプリントで賄えるようになって来たご時世の写真館を描く物語。 この作品を読むと、写真はただ一瞬を切り取った絵ではないということを改めて感じます。写真やその被写体に付随するあらゆる感情や想い。 人を、世界を、創作物を、撮る。その営為について考えさせられます。そして、毎話の人間ドラマも伴って感じ入ります。 現実的に売上は厳しく撤退を余儀なくされてしまう写真屋も多いと思いますが、そこに求められるものは人間が人間である限り無くならないだろうなと思います。 読むと、少し写真を撮る技術も上達するかもしれません。純粋で醜く軽妙で切実な世界の断章グッド・バイ・プロミネンス ひの宙子兎来栄寿間違いなく2019年で最も注目すべき新人作家の一人でしょう。 世界はこんなにも多彩な感情が幾層にも折り重なり、互いに響き合って混在しながら今日も回っているのだなあとしみじみ思わされる物語たちが集まった短編集。その中では、世界におけるその総量など全く意味を持たずそれぞれに切実さを持ちながら発露したり秘められたりしているあらゆる感情が豊かに描かれています。非常に令和感のある、鮮烈な一冊です。 個々の背景から生じる種々の強い想いは、人によって共感したり辛くなったり、愛おしくなったり嫌悪を催したりすることでしょう。 一冊の本としての満足感がとても強いストーリーテリング・構成力もさることながら、端然とした絵もまた実に魅力的です。 また一人素晴らしい描き手が現れたことに乾杯しましょう。ひの宙子さん、今後の活躍が楽しみです。不登校、いじめ、先生の当たり外れ。環境に大きく左右される子供の話学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一兎来栄寿いじめを受けるその前段階に存在する名状し難い大きなストレス。それによって不登校に至る感覚というものを、これだけ端的に言語化して見せたマンガはそうそうありません。 筆者の実体験を元に描かれた本作は、一つ一つの主人公の心理の動きに非常にリアリティがあり説得力を持って語られます。 また、心に傷を負った経験があってもちょっとした切っ掛けで自分がいじめを行う側に回ってしまう、誰しもが立場や環境次第でそういった行為に容易く及んでしまうという現実にも触れられています。 人生では多くの先生に出逢いますが、そこには自分で選べない「当たり外れ」があります。本作では良い意味でも悪い意味でも「この先生に会わなければまったく別の人生を送ることになったのではないか」という数多くの先生との出逢いと交流が描かれます。全くもって理不尽なことですが、先生は自分で選ぶことが極めて難しいのに対して人生に与える影響は絶大です。なので、先生もそれ以外の部分も含めてあまりに酷い環境にある場合は逃げることはむしろ推奨されると個人的には考えています。 かつて自分が師事を受けていた先生のことや、子供の頃の感情を読みながら喚起させられずにはいられませんでした。その時に覚えた苦味は大人になった今、子供たちに伝えていくべきものなのでしょう。 筆者は幸いなことに、大好きなドラゴンボールの作者である鳥山明先生が母親と同級生だったという縁で鳥山先生に会い、自分の描いたマンガを見て褒めてもらうという掛け替えのない経験を果たします。私も幼少期はドラゴンボールに没頭していたので、その時に鳥山先生にもし直接会えていたらどれだけ興奮しただろうと大きな共感を覚えながら読みました。 「おおげさじゃなくて 生まれてきて良かったと思った」 最終的にそんな言葉が筆者の口から出てきたことには心から安堵しました。人生は辛いことも多いですが、生きていればそうした無上の幸福を感じる瞬間も訪れることがあるものだと思います。 今現在不登校であったり、それに準じた状況にあったりする子が読めば大いに勇気付けられる部分のある作品です。そうでなくとも、様々な示唆に富んでおり一読の価値がある素晴らしいマンガですのでぜひこの機会に一人でも多くの方に読んで頂きたいと思います。柔らかく滑らかな肌の奥にあるざらざらとした感情柔肌 ハルミチヒロ兎来栄寿『あにいもうと』『夜をとめないで』のハルミチヒロさんの最新刊。それらの作品からの続きも一部ありますが、こちら一冊単体でも十二分に楽しめる上質な短編集です。 純朴に愛し合う二人もいれば愛と呼ぶには少し屈折し過ぎた想いを持つ者もおり、恋愛マンガと言い切るとやや語弊が生じもののそれに近しい感情を主に扱った物語群となっています。 振り切れていたり歪んでいたりはしても、この世のどこかにはこうした想いを抱えている人もいるのだろうなとリアルさを感じさせてくれる心情表現の巧みさは流石。個人的には「蓮の花」で描かれている感情が特に好きです。 吸い込まれそうな美しい表紙を見れば解る通り絵も非常に良く、叙情性豊かな物語と合わさってとても高い満足度をもたらしてくれる一冊となっています。 ストレートな恋愛物より拗れた話や細かな感情の機微を描いた作品が好きな方にお薦めです。ひたすら甘いイチャラブを摂取したいあなたへこの会社に好きな人がいます 榎本あかまる兎来栄寿甘〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!! グラブジャムンやティムタムすら裸足で逃げ出してしまいそうな、甘さが天元突破した社会人ラブコメです。 社内の人間に内緒で付き合いだした28歳の同期の男女が、社内で、社外で、人目を忍んでひたすらイチャイチャする様を見せつけられます。こっそり手を繋いだりとか、初めての名前呼びで盛り上がってしまったりとかもう……学生の恋愛か! けしからん、もっとやれ!! 好きすぎて態度に出るのを恐れるあまり、社内の人目のある所ではあえて険しい態度を取り繕いながら、二人になると甘えん坊の子猫のようになる三ツ谷がひたすらにかわいいです。その殺傷力は最早大量破壊兵器。 5話と6話の間の描き下ろしなど最高です。ご馳走さまでした。胸焼けで殺されそうですがまた食べに来ます。『クロサギ』作者が描く至妙なる男女のストーリーくだけるプリン 黒丸兎来栄寿黒丸さんといえばドラマ化・映画化もされた『クロサギ』が有名でありイメージも強いと思いますが、こちらの恋愛系のお話もちょっとびっくりする位に面白く引き出しの豊かさを感じました。 6編のセックスに至る様々な男女の物語を収めた短編集ですが、女性作家ならではの女性心理描写の的確さがあります。 1話目で、主人公の旦那が「最近の若いやつはこちらが指示しないと何もしてくれない」と愚痴るのに対し「そういうあなたも家では言わないと家事の一つもしてくれない」と言いたい想いを押し殺している様など共感を呼びそうなシーンが多数存在します。 “女はみんな自分だけの『ご褒美』を持っている” “恋したものには触れてはならない 触れることは汚すことだからだ” “本当に美しいものは触れてはならない――” など、各作品の冒頭のモノローグが示すように言葉選びにも情趣があります。特に、第5話「まぼろし夫婦」で紡がれる切なる美しい言の葉が大好きです。 主に女性向けではありますが、男性もこういった作品を読み女性の考え方を学ぶことで世界は少し平和に近付くと思います。この兄妹が尊い2019お兄ちゃんは今日も少し浮いてる 梅サト兎来栄寿『緑の罪代』『妖怪村の三つ子たち』でその溢れる才気を見せてくれた梅サトさんの待望の新作です。 梅サトさんの作品は派手さはないものの、何気ない所作一つや言葉一つに胸の奥をきゅっと掴まれるような感覚になります。この『お兄ちゃんは今日も浮いてる』も例外ではありません。 主人公がクラスメイトにバカにされて学校に行きたくなくなった時、逆上がりができない悩み、単身赴任の親の不在に対する寂しさ、友達と共同で行う夏休みの宿題……。小学三年生の女の子の素朴な日常を通して、自分が子供だった時代の体験を想起し、重ね、感慨に耽ります。 そして、少し変わった所がある主人公の兄の存在。彼が妹を思い遣る気持ちの切実さは非常に強く、普遍的な家族愛の物語として受け止められ笑って泣ける作品です。兎来栄寿1年以上前https://twitter.com/ctw346/status/1152738771760115712 デスゲームメタマンガ、好きです自由広場Twitterで話題のバズったマンガまとめ|おすすめマンガ教えて!5わかる « First ‹ Prev … 94 95 96 97 98 99 100 101 102 … Next › Last » もっとみる
ゲイ風俗という人生の縮図ゲイ風俗のもちぎさん もちぎ兎来栄寿今やTwitterでのフォロワー数が48万人を超える人気者のもちぎさんによる、主にゲイ風俗で働いていた時の体験などの半生を綴ったエッセイマンガです。 19歳でゲイ風俗で働いていた頃の透徹した思考と言動がとても未成年のものとは思えず、本質を突いていて魅力的です。そんなもちぎさんよりも更にある意味上手なボネ姉の「付き合ってなくても向き合ってはいるの」といった名言の数々も忘れられません。 しかし、その早熟の裏には非常に辛いことが多かったであろうことも察せられて胸が痛みました。その一部は克明に描かれていますが、毒親から理不尽な扱いを受け死にたいという想いを抱きながらも乗り越えたもちぎさんが、今現在は田舎で穏やかに生きているのだということが個人的にはとても救いになります。 人生を生きる上で大事なことが詰まっている一冊です。もし皇太子殿下と同じクラスだったら金の釦 銀の襟 -パレス・メイヂ側聞- 久世番子兎来栄寿タイトル通り『パレス・メイヂ』のスピンオフ作品ですが、『パレス・メイヂ』を読んでいなくとも単体でも楽しめる作品です。 ラノベタイトル風に言えば「留年したら皇太子殿下のご学友になった件」という感じのお話。 学校の中でも超特別扱いを受けながらも誠実で朴訥とした皇太子殿下、そしてそれに反発する問題児な主人公。そんな二人が周囲の疑義もありながら仲良くなっていく物語です。その設定自体は類型も多いのですが、その過程の余りに人間味溢れるエピソードの数々にこそ久世番子さんの良さが溢れています。 お互いに存在する先入観。しかし、本質的には誰しもが同じ人間。もし自分が主人公のようにやんごとなき方と同級生だったらどういう風に振る舞っただろうか、仲良くなれただろうか……そんな想いを馳せました。 単体でも読める作品ではありますが、未読の方は興味があればぜひ併せて『パレス・メイヂ』本編も読んでみて下さい。スタイリッシュ高画力フェチ満載百合吸血鬼マンガヴァンピアーズ アキリ兎来栄寿『ストレッチ』のアキリさんの新作ということで否が応でも期待感の高かった本作。 表紙からも解る通り、今回も百合味たっぷりの物語を楽しめます。そして、元々高かった画力が更に洗練されており絵を眺めているだけで幸福感を覚えるマンガです。 等身大な14歳女子中学生の性格にとても好感を持てる主人公・一花。そして彼女の下に突然現れた、白皙の美少年のような美しすぎる吸血鬼の少女。 設定だけ見れば取り立てて珍しいものはないのですが、表情・テンポ・些細な言動やそのリアクションにアキリさんの持ち味が最大限に発揮されていて、読んでいて小気味良いです。 それにしても生え際から僅かに生える髪や頸、艶めく唇など随所にフェチズムを感じずにはいられません。素晴らしいです。残念な美人三姉妹のハイセンスコメディ宇宙とかと比べたらちっぽけな問題ですが ビーノ兎来栄寿『女子高生の無駄づかい』のビーノさんがまたやらかして下さいました(褒め言葉)。 本作の中心となるのも、美人姉妹ながらそれぞれにそこはかとなく残念な要素を持ち合わせた三姉妹です。 三姉妹以外に出て来る脇役も、万物を脳内でエロに結び付けてしまう14歳の神社の息子であったり、咀嚼音が好き過ぎるイケメン眼鏡男子な大学生であったり、大体強烈な個性を有しています。コミックス描き下ろしの幕間では更に細かい解説もあり、個性がより強固にされています。 そんな彼らが入り混じって織り成される笑いの協奏曲、否、狂騒曲は一度味わうと病み付きになること請け合いです。シャウエッセンの件は声を出して笑ってしまいました。そこから更に発展していくのも予想外でした。 ちなみに私は好きなおでんはちくわぶ、次点で玉子と大根です。一瞬を永遠にする営為明日を綴る写真館 あるた梨沙兎来栄寿誰もが日常的にスマホで写真を撮り、簡単にSNSに上げて共有し楽しめるこの時代。証明写真すらコンビニプリントで賄えるようになって来たご時世の写真館を描く物語。 この作品を読むと、写真はただ一瞬を切り取った絵ではないということを改めて感じます。写真やその被写体に付随するあらゆる感情や想い。 人を、世界を、創作物を、撮る。その営為について考えさせられます。そして、毎話の人間ドラマも伴って感じ入ります。 現実的に売上は厳しく撤退を余儀なくされてしまう写真屋も多いと思いますが、そこに求められるものは人間が人間である限り無くならないだろうなと思います。 読むと、少し写真を撮る技術も上達するかもしれません。純粋で醜く軽妙で切実な世界の断章グッド・バイ・プロミネンス ひの宙子兎来栄寿間違いなく2019年で最も注目すべき新人作家の一人でしょう。 世界はこんなにも多彩な感情が幾層にも折り重なり、互いに響き合って混在しながら今日も回っているのだなあとしみじみ思わされる物語たちが集まった短編集。その中では、世界におけるその総量など全く意味を持たずそれぞれに切実さを持ちながら発露したり秘められたりしているあらゆる感情が豊かに描かれています。非常に令和感のある、鮮烈な一冊です。 個々の背景から生じる種々の強い想いは、人によって共感したり辛くなったり、愛おしくなったり嫌悪を催したりすることでしょう。 一冊の本としての満足感がとても強いストーリーテリング・構成力もさることながら、端然とした絵もまた実に魅力的です。 また一人素晴らしい描き手が現れたことに乾杯しましょう。ひの宙子さん、今後の活躍が楽しみです。不登校、いじめ、先生の当たり外れ。環境に大きく左右される子供の話学校へ行けない僕と9人の先生 棚園正一兎来栄寿いじめを受けるその前段階に存在する名状し難い大きなストレス。それによって不登校に至る感覚というものを、これだけ端的に言語化して見せたマンガはそうそうありません。 筆者の実体験を元に描かれた本作は、一つ一つの主人公の心理の動きに非常にリアリティがあり説得力を持って語られます。 また、心に傷を負った経験があってもちょっとした切っ掛けで自分がいじめを行う側に回ってしまう、誰しもが立場や環境次第でそういった行為に容易く及んでしまうという現実にも触れられています。 人生では多くの先生に出逢いますが、そこには自分で選べない「当たり外れ」があります。本作では良い意味でも悪い意味でも「この先生に会わなければまったく別の人生を送ることになったのではないか」という数多くの先生との出逢いと交流が描かれます。全くもって理不尽なことですが、先生は自分で選ぶことが極めて難しいのに対して人生に与える影響は絶大です。なので、先生もそれ以外の部分も含めてあまりに酷い環境にある場合は逃げることはむしろ推奨されると個人的には考えています。 かつて自分が師事を受けていた先生のことや、子供の頃の感情を読みながら喚起させられずにはいられませんでした。その時に覚えた苦味は大人になった今、子供たちに伝えていくべきものなのでしょう。 筆者は幸いなことに、大好きなドラゴンボールの作者である鳥山明先生が母親と同級生だったという縁で鳥山先生に会い、自分の描いたマンガを見て褒めてもらうという掛け替えのない経験を果たします。私も幼少期はドラゴンボールに没頭していたので、その時に鳥山先生にもし直接会えていたらどれだけ興奮しただろうと大きな共感を覚えながら読みました。 「おおげさじゃなくて 生まれてきて良かったと思った」 最終的にそんな言葉が筆者の口から出てきたことには心から安堵しました。人生は辛いことも多いですが、生きていればそうした無上の幸福を感じる瞬間も訪れることがあるものだと思います。 今現在不登校であったり、それに準じた状況にあったりする子が読めば大いに勇気付けられる部分のある作品です。そうでなくとも、様々な示唆に富んでおり一読の価値がある素晴らしいマンガですのでぜひこの機会に一人でも多くの方に読んで頂きたいと思います。柔らかく滑らかな肌の奥にあるざらざらとした感情柔肌 ハルミチヒロ兎来栄寿『あにいもうと』『夜をとめないで』のハルミチヒロさんの最新刊。それらの作品からの続きも一部ありますが、こちら一冊単体でも十二分に楽しめる上質な短編集です。 純朴に愛し合う二人もいれば愛と呼ぶには少し屈折し過ぎた想いを持つ者もおり、恋愛マンガと言い切るとやや語弊が生じもののそれに近しい感情を主に扱った物語群となっています。 振り切れていたり歪んでいたりはしても、この世のどこかにはこうした想いを抱えている人もいるのだろうなとリアルさを感じさせてくれる心情表現の巧みさは流石。個人的には「蓮の花」で描かれている感情が特に好きです。 吸い込まれそうな美しい表紙を見れば解る通り絵も非常に良く、叙情性豊かな物語と合わさってとても高い満足度をもたらしてくれる一冊となっています。 ストレートな恋愛物より拗れた話や細かな感情の機微を描いた作品が好きな方にお薦めです。ひたすら甘いイチャラブを摂取したいあなたへこの会社に好きな人がいます 榎本あかまる兎来栄寿甘〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!! グラブジャムンやティムタムすら裸足で逃げ出してしまいそうな、甘さが天元突破した社会人ラブコメです。 社内の人間に内緒で付き合いだした28歳の同期の男女が、社内で、社外で、人目を忍んでひたすらイチャイチャする様を見せつけられます。こっそり手を繋いだりとか、初めての名前呼びで盛り上がってしまったりとかもう……学生の恋愛か! けしからん、もっとやれ!! 好きすぎて態度に出るのを恐れるあまり、社内の人目のある所ではあえて険しい態度を取り繕いながら、二人になると甘えん坊の子猫のようになる三ツ谷がひたすらにかわいいです。その殺傷力は最早大量破壊兵器。 5話と6話の間の描き下ろしなど最高です。ご馳走さまでした。胸焼けで殺されそうですがまた食べに来ます。『クロサギ』作者が描く至妙なる男女のストーリーくだけるプリン 黒丸兎来栄寿黒丸さんといえばドラマ化・映画化もされた『クロサギ』が有名でありイメージも強いと思いますが、こちらの恋愛系のお話もちょっとびっくりする位に面白く引き出しの豊かさを感じました。 6編のセックスに至る様々な男女の物語を収めた短編集ですが、女性作家ならではの女性心理描写の的確さがあります。 1話目で、主人公の旦那が「最近の若いやつはこちらが指示しないと何もしてくれない」と愚痴るのに対し「そういうあなたも家では言わないと家事の一つもしてくれない」と言いたい想いを押し殺している様など共感を呼びそうなシーンが多数存在します。 “女はみんな自分だけの『ご褒美』を持っている” “恋したものには触れてはならない 触れることは汚すことだからだ” “本当に美しいものは触れてはならない――” など、各作品の冒頭のモノローグが示すように言葉選びにも情趣があります。特に、第5話「まぼろし夫婦」で紡がれる切なる美しい言の葉が大好きです。 主に女性向けではありますが、男性もこういった作品を読み女性の考え方を学ぶことで世界は少し平和に近付くと思います。この兄妹が尊い2019お兄ちゃんは今日も少し浮いてる 梅サト兎来栄寿『緑の罪代』『妖怪村の三つ子たち』でその溢れる才気を見せてくれた梅サトさんの待望の新作です。 梅サトさんの作品は派手さはないものの、何気ない所作一つや言葉一つに胸の奥をきゅっと掴まれるような感覚になります。この『お兄ちゃんは今日も浮いてる』も例外ではありません。 主人公がクラスメイトにバカにされて学校に行きたくなくなった時、逆上がりができない悩み、単身赴任の親の不在に対する寂しさ、友達と共同で行う夏休みの宿題……。小学三年生の女の子の素朴な日常を通して、自分が子供だった時代の体験を想起し、重ね、感慨に耽ります。 そして、少し変わった所がある主人公の兄の存在。彼が妹を思い遣る気持ちの切実さは非常に強く、普遍的な家族愛の物語として受け止められ笑って泣ける作品です。兎来栄寿1年以上前https://twitter.com/ctw346/status/1152738771760115712 デスゲームメタマンガ、好きです自由広場Twitterで話題のバズったマンガまとめ|おすすめマンガ教えて!5わかる
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今やTwitterでのフォロワー数が48万人を超える人気者のもちぎさんによる、主にゲイ風俗で働いていた時の体験などの半生を綴ったエッセイマンガです。 19歳でゲイ風俗で働いていた頃の透徹した思考と言動がとても未成年のものとは思えず、本質を突いていて魅力的です。そんなもちぎさんよりも更にある意味上手なボネ姉の「付き合ってなくても向き合ってはいるの」といった名言の数々も忘れられません。 しかし、その早熟の裏には非常に辛いことが多かったであろうことも察せられて胸が痛みました。その一部は克明に描かれていますが、毒親から理不尽な扱いを受け死にたいという想いを抱きながらも乗り越えたもちぎさんが、今現在は田舎で穏やかに生きているのだということが個人的にはとても救いになります。 人生を生きる上で大事なことが詰まっている一冊です。