六文銭
六文銭
1年以上前
ゲームとか映画とかスタッフロールが流れるたびに、人が作っているんだなぁとか思っちゃうタイプなんです。 飛ばす人もいるけど、自分は、そこにドラマとか想像してしまうんですよねぇ。 スケールが大きいと何百人も関わって、その中には陽はあたらないけど細かい作業とか雑務とかやっている人もいるんだろうなぁとか考えると、感動もひとしおなんです。 みんなで作品を作っているんだと。まぁ、一種の羨望ですね。 さて、本作は、そんなスタッフ達にフォーカスした作品で、なかでもゲーム会社のお話。 「好きなことを仕事にする」 一見順風満帆にみえますが、そこは現実。 クリエイターとよぶには程遠い、サラリーマンすぎる発想と要求。 〆切りに追われ、よりよいもののために残業を強いられ、やりがいの名の下、搾取される情熱。 どこも同じで、なんとも世知辛いです。 そんな感じで、情熱も枯れはじめた主人公飯島めぐみのところに、情熱満々の後輩南拓也が現れて、徐々に初心の気持ちを取り戻していく・・・そんなお話です。 冷静(リーマン的タスク処理)と情熱(少しでも良いものを届けたいこだわり)の両側面で語られて、サラリーマンの自分には両方ともわかり、共感してしまうのです。 じゃれあいながらも、変に恋愛的方向にいかず、つかず離れずの二人の関係も、またいい。 働きたい人の需要と供給の関係か、エンタメ関連企業は「どブラック」なかおりがしますが、なんだかんだで好きなものがあって、それに関われることはいいことなんだと痛感します。 やっぱものづくりっていいなぁと改めて思わせてくれる作品でした。
六文銭
六文銭
1年以上前
「これだからゲーム作りはやめられない!」が好きだったので、こちらも読了。 前作同様、ゲーム業界の話で、天才ゲームクリエイターな少女が主人公の話。 学校では根暗でどんくさい彼女だが、初めてつくったゲームがいじめでクラスメイトのSNSでアップされたら世界中でヒットし、そこからゲーム会社のプロデューサーにスカウトされ・・・という流れ。 その会社には、新卒で目をかけられた同じく天才的な女性がいて、 最初は敵対するのかな?と思ったら、良きライバルのような関係になりそうで、1巻終了。 今後の展開が楽しみになってきました。 自分自身ゲームが好きなので、よくわかるんですよね。 今までにない体験を味わう感覚とか、面白すぎて没頭させられる感じとか、濃厚なストーリーとか、本当に創った人は天才だなとシミジミ思わされて、たぶんそれに近いことなんだろうと読んでて思いました。 特に、クローズするオンライゲームのラストイベントのアイデアを出す話では、初代の製作者に対するリスペクトの姿勢は純粋に感動しました。 いいですよね、 こういう次代にしっかり継承されて、より良くなっていく感じ。 現実でもありますよね。 例えば、FF7のリメイクがヒットしていますが、 あれは20年以上前の、オリジナルFF7をプレイした人が沢山製作に関わっていると、なにかの記事で読んで感動したんですよね。 自分も感動した人間の1人なので、同じような体験をした人が、今度は中に入って創り手にまわる。 熱量ってのはこうやって人に伝染し、次代にむかって、より進化していくんだなと痛感しました。 そういった、モノ作りの素晴らしさも味わえる作品です。
sogor25
sogor25
1年以上前
物語の舞台は16世紀ヨーロッパ。 領主のヴィルヘルム5世に仕える医師・ヨーハン・ヴァイヤーは、狼の姿になって人間襲う“人狼”が現れたという町に派遣される。 そこで彼は自身の医学の知識と当時の宗教観に囚われない分析眼で人狼の正体を見極めようとする、というのが導入のエピソードとなる作品。 16世紀のヨーロッパに実在し、魔女裁判に反対した最初期の人物として知られる医師・ヨーハンの生涯を描く物語。 作中では魔女を筆頭に人狼や悪魔など、人々を恐怖に陥れる者たちの存在が仄めかされる。 それに対しヨーハンは、それら未知の存在は医学で説明することが可能だというスタンスをとり、その上で「無知こそが恐怖の根源であり、知ることをためらってはいけない」という師の教えに従い、"魔女"とされてしまった人々を医療の力で救うために奔走する。 なのでこの作品は決してファンタジーではなく、自らの信じる道に従い人々のために奮闘するヨーハンの戦いの記録である。 また、ヨーハンの行っている治療は当時の倫理観で見るならば異端であるが、現在の医療の知識を持ってこの作品を読むと作中のヨーハンすらも辿り着いていない事実が見えてくる。 この「当時の人々の視点」「主人公の視点」に加え「現代にいる読者の視点」によって見え方が異なる、そういう意味ではこの作品はもはや"歴史"そのものを描いているのかもしれない、そういう感覚を覚える作品。 上中下巻読了
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
Webtoonを全く読んだことのない人に最初に薦めるとしたら、T.Junさんの作品は筆頭に上がるでしょう。『外見至上主義』、『喧嘩独学』、『人生崩壊』はどれも面白く抜群の人気を誇る作品です。 T.Junさんは鳥山明さんを一番尊敬しつつ、古谷実さんが一番好きな漫画家で、『闇金ウシジマくん』なども好きだと公言しています。となれば、どんな作品が生み出されるかは想像に難くないことでしょう。 少なくとも、『外見至上主義』はタイトルとあらすじで想像されるものよりは多様な魅力を湛えた作品です。私は連載で読んでいて、泣かされたシーンもありました。 本作の最大の美点は、何と言っても躍動するキャラクターです。先に進めば進むほどたくさんの魅力あふれるキャラクターが登場して、その魅力をさまざまなエピソードで見せてくれます。2巻表紙のバスコや3巻表紙の四宮などは皆好きになるキャラクターでしょう。「マンガはキャラクター」とよく言われますが、友情あり恋愛ありで無限にエピソードを作れるだろうなと感じる生きたキャラクターの群像劇になっています。ギャグも多めでありながらシリアス部も光る構成は、T.Junさんが好きだと語る『今日から俺は!!』からの影響も感じます。 そして、エンターテインメント性とテーマ性を兼ねた設定の妙。経済的な豊かさ、ルックスの良さ、腕力の強さ……。残酷なまでの格差に支配される社会で、それを逆転する手段を手にした主人公が普段とはまったく違う扱いを受けていくところは、無双的なカタルシスがあります。しかし、一方で諸々の格差自体は厳然と存在し続け、それによって不条理を強いられる人間もいます。それぞれの生き様、戦いや抗いも見所です。 また、これはWebtoonの王道設定なのですが、母親が辛い境遇に遭いそれに主人公が立ち向かっていくというシチュエーションが本作でも描かれます。家族という単位は万国共通。基本的にT.Junさんは韓国の読者向けに作品を作っていてグローバル化は考えていなかったそうですが、国境を越えて伝わる魅力と強度を持っています。 もしどうしても縦スクロールは受け付けないという方がいたら、この通常のマンガと同じ形式に編集されたこちらのバージョンで読んでみると良いかと思います。そしてこちらの電子書籍版が2/1に発売となりました。昨年末にはNetflixでアニメ化もされ盛り上がっていますので、この期に推薦します。