名無し
1年以上前
こじらせ男女のショートオムニバス。 どこかピンとこないというか、ずっと分かりそうで微妙に分からない感覚だなーと思ってて、でも毎回なんとなく読んじゃうって感じで読んできてた。 いつかハマればいいなと思ってたけど、ヤングキング15号に載ってた19回目?の掲載の「2500円の爆弾」の回がすごくよくてたまらなかった。 大学生の男子が、母親の誕生日プレゼントを妹と一緒に買うついでに、付き合ってる33歳の人妻へのプレゼントでピアスを買ったって話を大学の喫煙所でしていると、その話を横で聞いていた女子が話しかけてくる。 「それ、あげない方がいいですよ」 読むとその意味が分かるんだけど、うおー、そうかー…。っていうことに気づかされて、男とか女とか言いたくないけどこれはもしかしたら素直な若い男の目線では分からない機微だわっていう。 あくまで男性の目線で心情が描かれてるんだけど、女性の作者さん?ならではの描写だと思う。 何も起きなかったことが起こってる。 素晴らしい。 そういう描写、一番好きかもしれない。 そして、タイトルに納得。 この予測を女性の補助無しで気づける男はめちゃくちゃモテると思うし、男女関係におけるプロ棋士みたいな人だなと思った。何手も先を読めるような。 話を聞いてて横から口出した女子大生、あんたはナイスだし、男子もよくぞ耐えた、だしトータルでいうとお前ら不倫してんじゃねーよっていうところ。 美しく切なく描いてるだろ、不倫なんだぜそれで。っていうのがまたいい。 ちょうど今月1巻出たみたいだし、今までの話も読み返してみよう。 何か気づきがあるかもしれない。 できたらまた男性目線でのショートを読みたい。
sogor25
sogor25
1年以上前
小さいころからミュージシャンになるのが夢だった主人公の葵。 しかし、夢を叶えることができないまま時間だけが過ぎ、彼女は自分に才能がないと気付きながらも現状から抜け出せず、体を売るという"仕事"ことでお金を稼ぎつつショーパブのような酒場で歌うという日々を送っていました そんなある日、"仕事"で謎の研究所のような施設に呼ばれた葵は、依頼主に「プレイを見せてほしい」と言われ、相手としてその依頼主が開発している"恋人型アンドロイド"のゆいを差し向けられます。 そこで一瞬、依頼主が離れて2人きりになる瞬間が生まれるのですが、その時 ゆいに「助けて」と囁かれます。 すぐに依頼主が戻って来たためその場では行動ができなかったものの、葵はゆいに心惹かれてしまう、という導入の物語です この導入からは夢破れた女性とアンドロイドの逃避行が始まりそうな予感がするのですが、どうやらこの作品はそんなにシンプルに物語は展開指定化なさそうなのです。 葵は相手がアンドロイドだということを理解しながらも相手をしていくうちに少しずつゆいに惹かれていくのですが、実はゆいが葵に対して語りかける言葉にはある"ウラ"があり、そうとは知らない葵の心は彼女の言葉にどんどん惑わされていきます。 さらに、この作品の重要な要素として「夢と現実」というキーワードがあるのですが、「葵のミュージシャンになる夢とそれが叶っていない現実」という序盤に登場した要素だけではなく、もう1つ、異なる意味での「夢と現実」という要素が登場し、そしてそのどちらもが葵を苦しめる要因になっていきます 2つの意味での「夢と現実」、そしてゆいの存在によって狂わされていく葵の人生が今後どのような道を辿っていくのか、最後まで目が話せない作品です。 上巻まで読了
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
「……生きてて…楽しいことなんか一つもない。」 薬が切れれば錯乱してしまう母が暴れ、高校中退を雇ってくれるのは長時間働いてもわずかな給金の工場のみで疲労に目はかすみ、家賃、光熱費、税金、母の薬代に給料は消え、日々の食費を極限まで削り転職、学歴のためになんとか月に1000円貯金するが、心が死んでいき絶望のみが主人公へと襲い続ける。 『転花』 厚い雲が日光を遮り夜と冬が続き100年。 植物が枯れ、酸素が薄くなった世界で人類が発明したのは、2年かけて人体を、魂を養分に成長する植物にする技術だった。 死期が近いものだけが「転花」の対象で、施術の選択は委ねられている。 「転花」したものには国から支援金1000万円払われるが…。 2321年、貧困の青年・神谷トーシローは尊厳をとって心の豊かさを守るのか、すり潰されるような毎日を屍のように生き続けるのか。 第1話→ https://big-3.tameshiyo.me/SPE01FOOLN なんて素晴らしいディストピア!貧困の描き方! じりじりとあぶり出される困窮した生活と時代背景がエグくてむちゃくちゃに魅力的!!! ほぼ無いに等しい選択肢を提示され、泣く泣く選びとるしかないことのなんたる絶望感の強いことか。 1話目で時代背景、個人の背景、各種設定を明かし、1話目ラストから2話目で物語が動き出した。 これは…、トーシローにできることで、蓬莱ヨミコはどうしようというのか。 この終わりかけた世界で、最後の命の灯を燃やして彼にできることとは。 スペリオールでの新連載でまた楽しみなものができてしまった!!
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
部員一人の廃れた茶道部に、米国留学生男子と茶道の家元の息子が共に訪れることから始まる、高校茶道部の活動物語。茶道という日本伝統文化の楽しみ方について、色々教えられる作品です。 日本文化を格闘術としか認識していなかった留学生。家元の息子の手前に触れ、何かを感じるものの、その心を理解するのには、幾らか時間がかかります。 喧騒を離れ、客に寛いで欲しいという茶の湯の心を理解するのに、邪魔になるのは「無駄を省く」欧米流ビジネス的な効率主義。そこから離れ、茶道の楽しみを覚えた留学生を苦しめることになるのは、一流ビジネスマンの父親という悲しみ。 一方、家元の息子は、茶道は一流だが人と和することが苦手。こちらも父親と、仲は悪くないが微妙な距離感。グイッと距離を詰めて来る留学生や、部員達との交流で彼は、茶の湯と父との、新たな向き合い方を見つけられるか。 茶道というと作法や道具に目が行きますが、本作ではそこよりも、茶席の回し方や設えの意味、意外な場面での茶道部の活躍など、多面的に茶道の「実践」が示されています。ノスタルジーや儀礼ではない、現代においても変わらない茶道の有効性が、ここにはあります。 日々の生活にゆとりを取り戻すために、誰かに茶席に招待されたいな……と、思わず考えてしまいました。