あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
『秋山さんのとりライフ』というマンガを読んでから、鳥撮影が私の趣味に加わりました。↓ここで書いたレンズが大活躍です。 https://manba.co.jp/topics/25011 昨年の秋から今年の春までの間、デカいカメラ片手に近所の公園などををふらついていたのですが、気をつけて見てみると意外と沢山の種類の鳥に出会えます。 『しあわせ鳥見んぐ』は東北地方で見られる様々な鳥が紹介されていますが、関東の私が最近見て覚えた種類も複数登場して、「そうそう、そこカワイイよね〜」と同意しながら楽しめました。 個性に悩む美大生女子は、鳥に詳しい女子大生とその親友、鳥撮影する写真科の女子と共に、鳥見=バードウォッチングに出かける。身近にこんなに鳥がいるんだ!という驚き、愛らしさに心奪われる様子、世界が広がる様子にワクワクする。 そして一番心に残るのは、鳥との距離感の話。私もフィールドで、鳥を脅かさずに様子を見せてもらうのに苦心して結局全然上手くいかなかったのを思い出しました。 鳥を見る時、実は鳥に見られている。 鳥にも隣の人にも、共に在るために配慮する優しい鳥見マンガに、これからも教えを乞いたいと思います。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
2022年4月から民法が改正され成人年齢が18歳に引き下げられると共に、女性が結婚できる年齢は16歳から18歳に引き上げられます。 身体的な機能は成人と同様となっても結婚できるまでには今まで以上のタイムラグが生まれることにより、今後この作品で扱われている「高校生の妊娠」というテーマはより重い意味を持ってくることになるでしょう。 本作では本当にどこにでもいそうな普通の子が主人公となっています。また、この手の作品では代表的な『14歳の母』では妊娠させた彼氏は年相応に子供っぽく無責任な性格でしたが、『あの子の子ども』においては珍しく彼氏側が大人びていて非常に誠実です。最初から二人の問題として、一緒に乗り越えて行こうという姿勢を見せてくれます。しかし、たとえそんな素晴らしい彼氏であっても一筋縄では行かない難題であるということが逆に浮き彫りになっていきます。 私は、この作品を小学生高学年くらいからの性教育と並行して読んで、学んで考えてみて欲しいなと思います。 いざ妊娠した時、それは自分だけの問題としてもあまりに大きいものです。体調の変化やメンタルへのダメージ、周囲との関係性。妊娠した後の想像以上の大変さを妊娠する前からリアルに考えられる子は少ないでしょう。 そして、自分のことだけではなく家族や周りの人間にもどれだけ大変で辛い思いをさせることになるか、というのが物語を通してよく伝わってきます。 そうした想像力を補ってくれる、意義のある作品です。彼らがどんな決断をしてどのように歩んで行くのか、見守りましょう。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』が最高すぎて全幅の信頼を寄せていた町田粥さんの新作は想像以上に素晴らしかったので全世界に推していきたいです。 宝塚歌劇団は言うまでもなく女性だけで構成された歌劇団ですが、この物語の吉祥寺少年歌劇団は男性だけの歌劇団です。「娘役」なども男性がすべて伝統的にこなしている世界です。 主人公の格好いい男性に憧れていたにも関わらず、生来の背の小ささなどもあり娘役に認定されてしまった少年・瑞穂。彼とは逆に、娘役に憧れながら背が高すぎてなれない少年や、自分の希望に反した家庭の事情がある少年など、思春期らしい悩みを抱えた少年たちが集団生活をしながら、仲間でありライバルでもある人間関係の中で鎬を削り、時に傷を負いながらも成長していく。そして、やがてはひとつの歌劇を大成させていく……。往年の少女漫画の「寄宿舎もの」を彷彿とさせる良さみも深く堪りません。 1話目最後のモノローグが 「僕らは出会い  そうしてすぐに傷つけあった  それが始まり」 ですよ? 最高じゃないですか? そして、それら素晴らしいドラマを町田粥さんの美しい絵が彩り更に言葉の要らない説得力を以って紙面からオーラをぶつけてきます。 もっと長く見ていたかったという思いもありますが、この物語は1巻で完結します。しかし、この上なく濃縮された上質なドラマを味わうことができ、満足感はお墨付きです。 町田粥さんのマンガから摂れる栄養を今後もずっと摂らせていただきたいです。 『かげきしょうじょ!』のアニメ化で歌劇の世界に興味を持っている方も多いタイミングだと思うので、そういった方にももちろんですが、そうでない方にも広くお薦めしたいです。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『星明かりグラフィクス 』山本和音さんの、2008年の赤マルジャンプ掲載のデビュー作から講談社で発表したもの、そしてハルタなど2020年までに描かれた11作品をまとめた短編集です。 8月に行った「最高の夏」をテーマにしたマンバ読書会では、本書にも収録された表題作の「夏を知らない子供たち」を紹介させていただきました。夏に読み返したくなる一篇です。 とりわけ私が大好きなのは、本書の最後に掲載されている「恋と夜をかけろ」です。世界全体で学問は行うと恥ずべきもの・禁止の対象とされ(ギリギリ合法扱いのかけ算の本は「成人向け」指定となっている)、代わりに恋愛が学生の本分となっている世界のお話です。不倫や多重恋愛が社会的な評価に繋がり、恋より読書や勉強が好きな主人公が父親から「お前彼女何人いる?斉藤さんや木本さんとこは10人近くいてちゃんと夜な夜な遊び歩いてるんだぞ 生物として恥ずかしくないのか?」と詰められるシーンなどは秀逸です。そして、実在の書名を連呼するシーンはとても愛しくて堪りません。 藤子・F・不二雄の不朽の名作短編である「気楽に殺ろうよ」では性欲と食欲に対する価値観が逆転した世界が描かれましたが、それを髣髴とさせます。こういうif系の短編は大好物です。 また、「雨は止んだか」などは正にハルタ系ど真ん中の絵で魅せてくるタイプの掌編で、山本和音さんの画の力を堪能できます。 「まどか、田園へ行く」もヒロインのキャラクターが愛しいしオチも好きです。 全編を通してサバサバしたキャラクターが多く、絵柄も程よい描き込み具合が絶妙で見易く、読み心地が軽快です。その上で趣向の凝らされたストーリーを美味しく味わえる、素敵な短編集です。