名無し
1年以上前
自分は2006年のドイツワールドカップ辺りからなんとなくサッカー観戦を続けていて、「日本代表が出場していないワールドカップ」を経験したことがない世代だ。なので、この作品で描かれるようなJリーグ開幕当時(1993年ごろ)の「ワールドカップなんて夢のまた夢」というような空気感が正直ピンとこないというか、本当にそんな感じだったのかな?と思うことがままある。 あったわけだが、「前作ではワールドカップを目指すなんてキャラクターに言わせることは出来なかった」という1巻の作者あとがきを読んで当時の雰囲気をズシンと感じた。 まだ読み始めたばかりで偉そうなことを言うのもあれだが、「今となっては」というのは未来からの視点であって、30年後にどうなるかなんて誰にもわからない状況(当たり前だが)で描かれたのが本作というところに重みがある。 自分が当時の空気感にピンときていなかったのは、裏を返せばこの30年間で日本のサッカーが「ワールドカップなんて夢」から「ワールドカップは出れて当然(そこで勝てるかどうか)」に急激に成長したことの証明でもあり、それはまさにドリームなんじゃないかなと、読み終わる前からすでに感動し始めている…というようなことをメモっておきたくて書きました。
名無し
1年以上前
2022/5/31にジャンプ+に掲載されている。 この感性とこの匙加減、この絶妙な表現力の作風が作家性であるならば、この媒体には勿体無い。感受性に世代も性別も関係ないが、それでも青年誌向けに感じた。アフタヌーンやモーニング、ハルタなどに掲載されている作品群に近い毛色の深みがあり、個人的には出版社の名が冠についた大きい漫画賞を受賞していそうだと感じ入る完成度だった。 高尚な文学性を感じるがそう表現すると付き纏いがちな気取った嫌味さなどは微塵もない。少年たちの「その時」にそこにあるありのままの空気感は、どんな場面も鬱屈がなく、瑞々しい。そう肌に感じさせる絵柄とそれに相まった台詞や構図、全体的なバランス感覚の良さがとても稀有。小劇場で短編映画でも観たかのような充足感を得た。 「これ、どういう人が描いたんだ?」そう思った読み切りとの出会いは久々だった。こんな秀逸な作品を、漫画だからこそこの世に存在し得たと思わされたら、もう、嬉しいやら悔しいやらで居ても立ってもいられずここに辿り着いたのでそのまま衝動をしたためる。 最高でした。 こんなに血の通った「生きている」「生き続ける」作品を生み出してくれて、ありがとう。