mampuku
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2018/05/01
この人もアダルト出身なので巧いです
 知識と教養と遊び心のある作品というのはいつも楽しいです。 ──過ぎ去ったあの頃の夏休み。水着、浴衣、山、川、海 ──幼馴染の女の子、山の神様、宇宙人 ──オタク  繰り返し読んでいて気づいたのですが、なぜ「作者は重度のオタクに違いない」と思ったのか。  単なるオタク知識の羅列であれば、ネットで調べたにわか知識であっても可能なはず。そうではなく、その文脈に必要かどうかに拘らず、知識をひけらかしたいからひけらかす。知識自慢のための知識自慢に終始してるんですよね。「うわ、また何か語ってるよキモ…」ってな具合です。作者もそれを意図的に、あるいはリアルなオタクの描写としてやってる節があります。  それと主人公の兄こと作中のオタクの、絶妙に微妙なオタク深度。これが何だかナマナマしい。アニメの爆発エフェクトについてオタク友達と語り合ってるのに女子が引いてる、という場面。確かに浅瀬でパチャパチャしてるにわかアニメファンよりはよほどマニアックかもしれませんが、「金田系が~(キャッキャッ」とか言ってる連中は、ガチの作画オタクから見ればド素人もいいとこなんですね。クリエイター目線のない典型的な消費型オタクって感じ。  ある程度目の肥えた大人から見たら、なんか延々と浅いことやってんなと思う反面、同時に自分がかつて通ってきた道だからなんかすごく共感できる。特にあんまりオタクじゃない人からみたら、なんかよくわかんないこと言ってる。この痛いオタクのキモさを俯瞰しながら(ときに開き直って)巧みに操ってて小憎たらしい漫画です。  でもそういう脱線したオタク話よりも、より本筋・核心っぽい民俗信仰、古代神道のウンチク話のほうが興味深くて面白いです。それに、海水浴のエピソードで(巡洋)戦艦に反応して語っていたり、別の短編集でWW2のドイツ戦車の話をやっていたように、がっつりミリタリーな話もいずれ読んでみたいです
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2018/04/26
主観なので駄作とまでは言い切りたくないが…
 男子中学生の妄想ノートを延々と読み聞かせられてるみたい。笑  なろう系のファンタジー小説って多かれ少なかれそういう厨2要素がありつつ、ストーリーを構成するある種の技術によって、カタルシスや萌えなどで読者を気持ちよくしてくれるエンターテインメントに昇華されてる、特に人気の作品は大体そうだと思うんですけど、この「ありふれた~~」という作品に関しては"厨2要素"どころか剥き出しの妄想そのものを読ませられてるみたいです。残念なことにコミカライズ担当の絵が上手すぎないのもそれに拍車をかけてる感じがします。  ナードで陰キャラなのに"何故か"クラスの中心的グループから一目置かれ、”何故か”クラスのマドンナから甲斐甲斐しく世話を焼かれ、そのせいでクラス中から妬まれている。その後クラス全員で異世界に飛ばされるも"偶然"最強レベルの能力に目覚め、強くて可愛くて従順で自分に好意を向けてくれる少女と出会い、一緒に魔物と戦いながら元いた世界を目指して旅をする。  ……。  いや、わかるんですよ、牛脂で焼けば肉は美味いし苺に練乳かけたら美味しいのはわかるんですけど、これはどちらかというと牛脂に練乳かけてナマで食わされてるみたいな…料理しよ?  ちなみにコミックスの巻末に4ページ程度の書き下ろし小説がついています。短いですが、けっこう読むのがしんどかったです
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2018/04/21
三十路オタホイホイな近未来SF美少女アクション
近未来風のボディスーツにTSで百合、属性からして強い漫画が始まりました。 http://storia.takeshobo.co.jp/manga/astoria/  「この美術部には問題がある!」と似たような、完成された美しさみたいなものを感じます。アニメ、というよりは、ゲームのグラフィックみたい。 https://manba.co.jp/topics/14298  第2話のキスシーンなんてエロ漫画顔負けの濃厚さでしたが、調べたら作者さんはBLを主戦場にしていらっしゃるようです。意外半分、納得半分…w  それでいて萌えとエロ特化かというとそうでもなくて、バトルもちゃんとしてるし未来っぽいガジェットもデザインがシンプルなのがアニメ的。キャラのデザインだけが一昔前のギャルゲーっぽくてあと少し少女漫画っぽくもありそれが逆にすごくそそるというか。  バーチャル空間での戦闘となると、古くは「電光超人グリッドマン」や「コレクター・ユイ」などから始まり、「ゼーガペイン」などロボアニメから「ソードアートオンライン」などの異世界転移系へ、時代に合わせて進化してきました。これらを幼少期から観て育ち'00年代のギャルゲーやロボアニメに親しんだ世代のオタクには結構クリティカルに刺さるんじゃないでしょうか?  矢吹健太朗先生がコミカライズ連載中の「ダーリン・イン・ザ・フランキス」も同じ「キス」がテーマの作品ですが、あれが好きな人にも是非これをオススメしたいですね。
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2018/04/18
なんやかや長々書いたがぶっちゃけ表紙の女の子が可愛いから買った
 近所のツタヤで推されてたので手に取ってみた。ゲーム中に異世界へ飛ばされる話。流行りか。FPSの装備(銃とか)でファンタジー異世界に紛れ込んでしまい、魔力がないので他の冒険者たちにバカにされるが銃があるので結局無双できてしまう。女の子にちやほやもされる。  この手の作品に対して設定のオリジナリティのなさを残念がることは、現実の馬が空を飛べないことを嘆くぐらい意味のないことで、見るべき見どころは他にある。  作画の人が意外とベテランで、奥行きを感じる多彩な構図、昔のガンガンみたいなクールな空気感、キャラクターの息遣いが感じられるような仕草や日常芝居が素晴らしい。話の方も、モンハンよろしく斃した敵をナイフでさばいて魔石や毛皮などを文字通り剥ぎ取って見せる美少女ヒロインに主人公が面食らったりなどコミカルな描写で世界観を教えてくれるので、淡々とゲームのチュートリアルみたいな説明されるよりよほど楽しく読めた。  続きが気になって仕方がないというタイプの漫画ではないが、気持ちよく入り浸れるのでそういう意味で続きが読みたくなる。
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2018/04/09
肉萌えな食リアクション漫画
 グルメ漫画ブームも落ち着いてきた頃合いでしょうか。「肉女のススメ」は珍しい拘りのグルメとかそういうのではなく、仕事に疲れた女子がとにかく肉を美味しそうに食べるだけの漫画です。  動物の肉に含まれる必須脂肪酸には、向精神作用があるそうで、鬱の予防などにてきめんの効果があると言われています。 https://www.ebarafoods.com/sp/meat/health/c24.html  そう、つまり仕事のストレスには肉!とくに脂ののった牛や豚!つまり人目を憚らず泣きながら肉をむさぼるこの人たちは生物的に圧倒的に正しいわけです。肉 is 人生!!  そして余談ですが主人公こと表紙のお姉さん、三白眼なんですね。一見して何考えてるかよくわかんない感じの顔の記号ではあると思うんですけど(人相悪いですからね)それでいて逆に単純思考のキャラクターにも見えるというか、本能に忠実?「だがしかし」のほたるさんなんかも何考えてるかよくわからないですけどふたを開けてみたら駄菓子のこととか俗っぽいこと考えてたり…そんなギャップな魅力を感じます、「三白眼」。リアクション系の食マンガですから、やっぱりキャラの魅力・萌え度は大事です。  あと、「ハンチョウ」などは飯テロ漫画を自称してますが、こういうリアクション漫画こそが一番の飯テロなのではないかと最近思うのです。漫画って色も音声もないので、料理の絵や説明だけではパンチが弱いんですよね。
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2018/04/05
泣けるアフタヌーン
 アフタヌーンで「金のひつじ」を連載中の尾崎かおり先生による過去の傑作。大人には相談できない秘密を抱えて、誰にも内緒の初恋をした11歳の夏。強烈なノスタルジーに加え、逃避行のドキドキと背徳感、爽やかさと切なさが心地よい1冊です。 こんな象徴的な台詞がありました。 「どんな理由があっても…悪いことだとわかってても それしかできないときって」 「他にどうしたら──どうしたらよかったんだよ!?」  周りより大人びて見えていても少女はどうしようもなくまだ子供で、その「重荷」は小さな肩に背負うにはあまりにも大きくて、そんな彼女の力になりたいと願う少年もまた何もできない子供でしかなくて…  幼い彼らは大人の力を借りなければ生きていけないけれど、彼らの中にはたしかに守りたい世界があって、でもそれって紛れもない「愛」そのものなんですよね。愛という確かな意思によって突き動かされた物語であるからこそ、彼らの努力も涙も旅の結末も、儚くも美しく感動的なのではないでしょうか。それがたとえ子供故に浅はかで、拙い足取りだったとしても。  小学校高学年のこの時期ってなかなか自分の素直な気持ちが自覚できなかったり、思ってても言えなかったりしたものでした。けれど勇気をもって一歩踏み越えて行動した先にはまったく違う世界が広がっていて、そこから得られる高揚と不安それこそがまさしく冒険のワクワクに他ならないわけです。異世界ファンタジーでも得られないほどのドキドキで感情を揺さぶられる、少年少女たちが精いっぱいの冒険をする話がたまらなく大好きなのです。  「四月は君の嘘」とか好きな人にも薦めたいですね。
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2018/04/03
「可愛さの音圧が高い」美術部ラブコメ
 まさにアニメを切り出して漫画にでもしたような高クオリティの作画で、作監でもつけてんのかってくらい異様に安定しています。表紙もアニメ塗りでなんかキービジュアルみたいです。あるいはラノベの表紙。10年前のアニメ好きな人が好きそうな絵柄ですよね、とらドラ!とか、ゼロ使とか、かんなぎとか。私も好きです。  この「可愛さが高い水準で安定している」というのが非常に素晴らしいのです。音楽に無理やり例えるなら、音圧が高くRMS値が高い状態です(音圧競争には賛否ありますがダンスミュージックなどでは大事な要素です)。私は以後これを『可愛さの音圧が高い』と呼び表したいと思います。  話は一話完結式で、落語みたいに丁寧で笑える話や人情系の話が多いですね。そして1巻の一話くらいの割合でたまにあるラブ濃度の高い話数はかなり尊みが深く、美麗な絵ばかりに目がいきがちですがラブコメとしてもかなり質が高いです。  作品内で頻繁に使われる「カメラを固定したまま時間の経過を数コマに渡って描く」やつ、ARIAやよつばとを読んだとき初めて「こんな素敵な技法が!」と感動したのですが、めちゃめちゃ上手くないとできないやつですよねこれ。他にも視覚的に飽きさせないカメラワークやつけPANみたいな動き(1巻で宇佐美さんが泣く前のページ)とか、映像的な演出が各所に盛り込まれています。  一方でコマをぶち抜いた立ち絵(さよなら絶望先生でよく見るやつ)とか可愛い描き文字など漫画的な表現もしっかりしていて、よくあるイラストだけ上手い人とは一線を画します。  基本的にマンガは話の面白さと同じかそれ以上に絵のうまさと完成度が大事だと考えているので、そういう意味で文句のつけどころがほとんどないなと感じました。欲をいえば、シリアス展開とか恋敵とか、好みが別れるような刺激的な展開があったほうがより私好みではあるんですが(笑)