ヤミナベ~占領下日本敗残兵物語~

戦後日本を舞台にヤミ資金を守れ!

ヤミナベ~占領下日本敗残兵物語~ 清澄炯一 軍事法規研究会先任研究員大木浩明
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書影がかっこよすぎて久しぶりにジャケ買いしましたが、後悔していないです。 第二次大戦後の日本が舞台。 主人公は旧陸軍で「狂犬」と呼ばれた男・高村伊知。 終戦後の東京に戻ると、実家も妻もなくなった状況の中で、新興ヤクザ組織「長門商会」のボス・岡本宇ノ介と出会い、彼の用心棒として雇われるところから始まる。 岡本は元々海軍の主計長(ありていにいうと経理や兵站係)で、その流れから長門商会は旧海軍が集う場所。 海軍と「長門」商会と言う名から推測されるように、戦艦「長門」とも深い関係があって、岡本が戦時中にある目的で手にした「ヤミ資金」が物語の軸となります。 敗戦国としてGHQの支配を受けていた日本で、志をもって暗躍していく様は、読んでいて熱くなります。 そして当然、彼らを邪魔する反社的な組織、それらを裏で糸引く政治家の存在などが障壁として登場してきます。 彼らを相手に、高村や岡本はどう立ち居振る舞うのか? そして「長門商会」は本懐を遂げられるのか? 大人向けの半フィクションな物語として今後に期待したい作品です。

タワマンに住んで後悔してる

タワマンに住んで後悔したい

タワマンに住んで後悔してる グラハム子 窓際三等兵
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何かと話題のタワマン文学なるもののコミック。 「タワマン文学」・・・これ自体、つくづく今の時代っぽいなと思う。 SNSを通して、芸能人だけでなく、これまで見えてこなかった一般人の生活が筒抜けになり、そこでセレブで綺羅びやかな生活を過ごす方々(本当かどうかは別として)と自分を比較し嫉妬や憎悪を募らせる。 特に、その富の象徴と格差の証明としてタワマンがそびえ立つわけです。 本作も、そんなタワマンに惹かれ、そしてタワマンですり減っていく人々を描いた作品。 中の上くらいの一般家庭が無理して住んでしまったケース。 パワーカップルの家庭のケース。 高給取り夫をもつ家庭のケース。 同じところに住んでいるが、異なる悩みと葛藤を抱える3人。 決してわかちあうことなく、建前だけで過ごす日々。 比較され、競争心を煽られ、何が正しいのかもわからなくなっていく。 読んでいてつくづく、本当の幸福ってなんだろう?って思ってしまった。 少なくとも、世間の評価が自分の幸福と必ずしも一致しないことだけは言える。それは、この3人がぞれぞれ出した結論にもつながっていると思いました。 自分らしさ、とは何か? 自分の立ち位置を相対評価で判断したくないものです。 とはいえ、一度くらいタワマン住んでイキってみたいっすね。 後悔するだけ、羨ましいとちょっと思ってしまいました。

吉野家兄弟

牛丼、しかも吉野家のが食べたくなる

吉野家兄弟 ヨコオタロウ 秋鹿ユギリ
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松屋、すき家、吉野家が並んでたら迷わず吉野家を選ぶくらい、吉野家の牛丼が好きです。 他のはあまりそうならないのですが、吉野家だけは、なぜか無性に食べたくなるときがあるんですよね。 麻薬でも入っているんでしょうか?(入ってません。) 少し前に吉野家のマーケティングのエライ人が 「生娘シャブ漬け戦略」 とか称して炎上してましたが、このネーミングがアレであったとしても、中毒性という点においては納得してしまいます。 本作も、そんな吉野家に取り憑かれたサラリーマンが主人公で、絵もそうなのですが、吉野家の牛丼の素晴らしさについて語る部分が共感しかなくて、読んでて無性に食べたくなります。 そして、原作者がゲームの『ドラッグオンドラグーン』『NieR:Automata』で一躍有名になったゲームクリエイターの「ヨコオタロウ」氏というからびっくりしました。 『君死ニタマフ事ナカレ』の漫画原作もされてましたが、こちらは、まだつくっているゲームの世界観と近しいので理解できましたが、こういうアットホームなグルメものも描けるのかと驚きました。 御本人のnoteにも、その経緯が書いてありましたが、宣伝でも何でもなく好きだから描けるものは、打算がないぶん純粋ですね。 その点でも興味深い作品でした。

そんなヒロキも異世界へ

『ソウナンですか?』のタッグが描く異世界マンガ

そんなヒロキも異世界へ 岡本健太郎 さがら梨々
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飛行機事故で無人島に漂着してしまった女子高生たちの、本格的サバイバルを描いた名作『ソウナンですか?』のタッグが今度は異世界ジャンルに。 大分、方向転換されたなと。 特に原作者である岡本健太郎氏は『山賊ダイアリー』なども手掛けており、リアルで生々しい世界の知識や描写が持ち味だと思っていたから、正直びっくりしました。 さて、その内容ですが、ブラック企業に勤めていた主人公は、異世界へ・・・と、ここまではいつもの異世界系のテンプレ。 (主人公がそのテンプレを理解しているのはいつものと違いますが) 主人公は、エルフのミリアを指導者に、そこで魔道士として修行をしていくという展開。 異世界系としては奇をてらっていない、ど真ん中の作品とも言えるのですが、これがなかなかどうして面白い。 自分自身、前作の『ソウナンですか?』は、随所に大笑いではないがクスリと笑えるギャグ要素とかわいいキャラが相まって魅力だと感じているんですよね。 本作も、著者独自の異世界のおもろい設定(魔法は耳からでるとか)や、前述のミリアや竜人ソフィーなど、異種族のかわいいキャラたちが、ジャンルが違えどテイストやノリが同じで楽しめました。 まだ2巻時点ですが、ブラック企業で 「代わりはいくらでもいる」 と言われていた主人公。 異世界で魔道士としてどう変わっていくのか。 また、この異世界の中でも戦争など緊張感のある展開も少しずつでてきて、今後もストーリーが楽しみな作品です。

クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった

2番目にかわいいとは?

クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった 尾野凛
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大枠で言うと 「陰キャ主人公×陽キャヒロイン」が、共通の趣味で、クラスメイトとは内緒で交流するラブコメ的な話。 ラノベ原作だとこの手の構図(『弱キャラ友崎くん』など)増えたなと個人的に思うのですが、在りし日の青春時代の願望垂れ流しなストーリーが、イタくもあり、眩しくもあり読んでしまいます。 本作も、美人でクラスカーストの上位にいながら、B級映画好きという接点から交流がはじまり、陰キャの主人公と同じくゲームや漫画などのオタク趣味も理解があるというから意気投合しちゃう展開。 陽キャ特有の積極性でグイグイ主人公のパーソナルスペースに侵入してくる感じ、嫌いじゃないです。 『冬物語』のレビューでも記載しましたが、ウジウジした主人公(男)を引っ張ってくれたり、無条件に励ましたりしてくれるヒロイン像、昔から好きなんですよね。 いつだって自分の価値観だけで凝り固まった世界を広げてくれるのは、こういうヒロインの力で、こういう人に憧れてしまうんです。 またヒロインはクラスで2番目にかわいいというのも陰キャにはポイント高い。 1番だと恐れ多いから。 たとえ、フィクション、夢想、妄想、幻想でも、学校の1番目のヒロインと良い感じになるのは陰キャにはキツいんすよね。 この点も個人的には良かったポイントです。 今後もヒロインが複数出てきそうで、特にヒロインと親友でもある1番目も主人公のこと気にしだして、2番目との関係がどう展開されるか楽しみです。

気になってる人が男じゃなかった

二人の関係性が最高に心地よい

気になってる人が男じゃなかった 新井すみこ
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いわゆる陽キャのグループに属するあやが気になっているのは、自分の好みの音楽がかるCDショップのクールな店員さん。 しかもその店員は男だと思ったら実は女性で、クラスでは目立たない、どちらかという陰キャな同級生みつきだったという話。 対照的な2人だが、ニルヴァーナやレディオヘッドなどの洋楽ロックが好きという共通点で少しずつ心を通わせていく流れ。 この関係性、もう最高でした。 百合的な作品で紹介されてて、自分はあまり百合系の作品は好んで読むタイプではなかったのですが、本作は刺さりました。 個人的に百合というか、友情として捉えるほうが正しい気がしますし(最初は男だと思っていたし)、それぞれが大事にしているものがあって、どんなものであっても尊重し合う姿は友情そのものだなと思います。 同じ価値観を強制される同調圧力の激しい学校という場所では、自分の好きを貫くのが難しい。 自分もマイナージャンルが好きだっただけによくわかります。 自分の価値観に従うのって勇気がいりますよね。 批判されると人格否定された気分になるし。 だからこそ、それが少しでもわかってくれる人がいる喜びは何事にも代えがたいですよね。 2人の関係がまさに、この価値観の共有にあって、少しでもこの経験があった人には共感できると思います。 まだ、物語は動きだしたばかりですがハイセンスな絵柄で、テンポよく進む展開はやみつきになりそうな予感です。

もしも徳川家康が総理大臣になったら―絶東のアルゴナウタイ―

歴史好きには設定が秀逸すぎ期待大

もしも徳川家康が総理大臣になったら―絶東のアルゴナウタイ― 藤村緋二 眞邊明人
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歴史上の英雄が時代を超えてバトルする漫画はよくありますが、なんと本作は政治をする話。 まずは、何もいわずに添付画像みて欲しいんです。 もうこの時点でワクワクしかなくないですか? よくアンケートで 「歴史上の人物の誰に総理大臣やってほしいですか?」 とかみたことあると思いますが、皆一度は考えると思うんですよね。 それが、大臣全てが歴史上の人物ってもうヤバい。 官房長官 坂本龍馬 財務大臣 豊臣秀吉 経済産業省 織田信長 文部科学大臣 菅原道真 ここらへんは教科書的な知識でもわかるし、 秀吉と信長、逆でもよくない? とか 坂本龍馬って外務大臣のほうがよくない? とか議論したくなるのも楽しい。 (だけど本作の外務大臣に足利義満をもってくるあたりに唸ってしまうのも、また一興なんです。) さらに 総務大臣 北条政子 厚生労働大臣 徳川綱吉 というのも、意外性があって、今後どう動いていくのか予測できるようでできない感じが良い。 この曲者揃いの大臣を束ねるのが家康というのも良い。 まだ序盤なので全部はでてませんが、いずれにせよ未曾有の窮地の日本に、この歴史をつくってきた英雄たちがどう議論し決断し、新たな歴史を刻むのか、今後がますます楽しみな作品です。

瓜を破る

登場人物全員が生きている

瓜を破る 板倉梓
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久しぶりに 「人間をきっちり描いてる」 と思えるような作品に出会えました。 タイトルから処女をこじらせた主人公の恋愛話かと思ったのですが、主人公の周囲にいる登場人物までも背景や価値観を丁寧に描き、しかもどこかしら自分と通じる部分もあって、全員に共感しかなかったです。 バリキャリもいれば、家庭に入った人もいたり。 彼氏とうまくいっている人もいれば、うまくいっていない人もいる。 言いたいことガンガン言える人もいれば、言えない人。 ホントに多種多様な、そしてある点において自分によく似た環境や考え方の人もいて、どの登場人物にも感情移入が凄まじしいんです。 漫画のキャラクターなのですが、まるで生きているかのような、読んでいてそんな感覚をおぼえました。 基本的には主人公が、処女で焦り悶々としている様を軸に、他の人物のストーリーも出てきて、この視点変わる展開の仕方も飽きさせずひきこまれます。 結果として、主人公も素敵な彼氏と出会えるのですが、そこに至るまでのもどかしい感じもたまらんのです。 自分もコミュ障で恋愛奥手マンだったから、何するにしても相手がどう思うか考えてしまい、結果、何もできない or すれ違う様が、じれったくて、でも、お前は俺かと共感に首がもげそうになりました。 何にせよタイトルからくるイメージとは良い意味で全然違った、ピュアな恋愛と、多様な人物描写が魅力的な作品でした。

信長を殺した男~日輪のデマルカシオン~

『信長を殺した男』の秀吉版

信長を殺した男~日輪のデマルカシオン~ 藤堂裕 明智憲三郎
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『信長を殺した男~本能寺の変 431年目の真実~』が非常に興味深い内容でしたので、本作も手にとってみました。 まだ4巻ですが、これもめちゃくちゃ面白い。 前作の主人公が明智光秀で、黒幕である秀吉との対立構造を中心に描いておりましたが、本作は、本能寺の変以後も含む、より秀吉に物語がフォーカスした内容になっております。 前作同様、引き続き秀吉は悪役のようなテイストになっておりますが、それでも出自のエグさを中心に、秀吉のあらゆる行動の動機や経緯を丁寧に描かれており、どちらかというと秀吉に共感したくなってしまうのが良かったです。 誰の子かもわからない、卑しい身分から立身出世し、いかにして最高権力者まで昇りつめることができたのか。 そのバイタリティの一旦が垣間見えます。 具体的に、なぜ、朝鮮出兵したのか? 諸外国の交流とくに宗教の制限をした理由など、出生時の経験とともに描かれており、また膨大な参考文献の数々で裏打ちされているのも、説得力増してよかったです。 マンガでありながら、秀吉が思い描いた大望について(あくまで諸説あるなかの一説としてですが)知れる重厚な内容です。 デマルカシオンの意味も本作で知りました。 歴史好きにはぜひ読んでいただきたい一冊です。

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