用九商店

よろず屋と縁と人生達 #1巻応援

用九商店 ルアン・グアンミン 沢井メグ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

台北で地上げに従事していた青年が、台北から3時間離れた田舎のよろず屋を受け継ぐ物語。そこには「懐かしさ」と一括りにできない、老若男女たくさんの人の縁の物語が待っていた。 よろず屋「用九商店」で提供される品は、よく見ると日本人の私にはよく分からないものが多くて面白い。日常的なもののはずだが一体何に使うのか……。 近所の顔馴染みが集い、話し笑い合うお店の雰囲気も、町の様子も全く垢抜けない。しかし主人公を含めた人の歴史、変わらない廟、ゆっくりとした仕入れと時の流れ、ざらつく質感……店に結びつくそれらが一つひとつ丁寧に描かれると、そこで人生を大切に生きてきた人達の物語を肯定したくなる。 主人公の青年が、周囲の人々に助けられて創り出す新しい店の形も素敵だ。 古い物をただ否定するのではない、過去を大切にしたままで、新しい時代を迎える方法があるのではないかという、今までにない希望の様な物がそこにはある。 ここに住む人達の悲喜交々を、小さくても豊かな人生達をずっと見ていたい。生きる充実感でこちらも満たされる、少しずつ時の進む台湾の田舎の物語を、もう一度読み返したい。 (#1巻応援 としましたが、1・2巻同時発売なので2巻の内容まで含みます)

アンナ・コムネナ

自己"皇帝"感高い皇女の生き様 #1巻応援

アンナ・コムネナ 佐藤二葉
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

時は十字軍初遠征の頃、ビザンツ帝国の皇帝の娘として生まれ、夫を早くに亡くしたアンナ皇女は新たな婿を取る。 弟が生まれた事で皇位継承権を失っていたアンナ。弟と敵意剥き出しに口喧嘩するのが可笑しくもありつつ、頼りないと思っていた夫に自らを深く理解され、強く想い合う様子にときめきを貰える。 アンナはめげない。どこまでも自分らしさを失わないまま、素晴らしい皇帝になれると信じて疑わない。知恵と好奇心と気高さに満ち、そして理性的な思考は現代人から見ると真っ当に見えるが、時代的には異端。 宮廷の女性の生き方に反発を覚える様子が、何度も描かれる。女性だから能力を軽んじられる、生きたいように生きられない、美貌も結局男性の所有欲に絡め取られる、女性は女性なりの戦い方しか出来ない……これらにほんの12、3歳のアンナが否を突きつけ、男とか女とかではない、アンナらしく生きるのだ、と宣言するのが小気味良い。 歴史物に現代的言い回しを取り入れた、軽やかなやり取りを笑いつつ、自分らしい人生を歩み始める一人の女性の真っ直ぐな意志に胸打たれる、そんな作品だ。

ほろ酔い道草学概論

酒と好奇心と隣に君と #1巻応援

ほろ酔い道草学概論 zinbei
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

お酒をテーマにした作品から、私はずいぶんたくさんの事を学んでいるようだ。 醸造は化学だし、原材料は農学や地理・地政学、歴史も関係するだろう。共に楽しまれる文化や趣味も様々だ。例えば『もやしもん』は、酒と食と発酵の学問を提示し、世界の広さと到底知り得ない深さを教えてくれた。 この『ほろ酔い道草学概論』は、『もやしもん』のような深さはないが、広大な「繋がる世界」を提示してくれる。 主人公のOL・秋川さんは調べ物が好きな人。好奇心はあるものの、インドアな性格で調べるにとどまっていたところを、会社の先輩の正宗さんにあちこち連れ回される。 連れられて飛び込む場所は点でしかない。しかし何度も飛び込み続けるうち、点は自分を起点とした神経ネットワークのような広がりとなる。 やる事は多様で、一つひとつが面白い。珍しいお酒、新しい知識、奥深い趣味、そして知らない所を歩く楽しみ。いろんな事がたくさん詰め込まれている。そしてお互いを気に入った二人は「気になる所に付き合ってくれる人」という関係を築いてゆく……必ず一緒に楽しめるはず、という信頼感を育んでゆくのだ。 広大な世界への好奇心を共に楽しむ女二人。そこで醸成される関係も、ワクワクするような大きさだ。

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