あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/25聴覚障害者と心通わす百合 #1巻応援女子高生が聴覚障害者のクラスメイトと心を通わせる過程を描くこの作品。ライトなノリの台詞の遣り取りの中に心の揺れを幾重にも描いて、ハッとさせられる事の多い内容となっています。 聴覚障害の描き方がステレオタイプで無く(参考文献の多さからも窺えるのですが)一人の「その人固有の障害という特性を持つ」女性のリアルが見えてくる様です。そしてその特性故に周囲と壁を作り、入学早々孤立する彼女に、懸命に、悩みながらもきちんと意思を確かめながら接する主人公。 彼女固有の障害についてストーリーの流れで分かりやすく描写されていて、孤独を深める理由が心に響く。それ故に真摯に関わってくる主人公に、彼女が少しずつ心を許す描写にも説得力が生まれるのです。 しかしここで、一つの謎が生まれます。 なぜ主人公は、彼女に関わろうとするのか。 正義感や同情ではない。ただ相手を知りたいと強く願う主人公の動機は……私は誰かと仲良くなりたいと思う時、実はその人に理由無く、目を惹かれてはいなかったかと思い返す。 彼女との出会い、習いに行っていたピアノの女性教師の結婚……そう、これは間違いなく、百合の物語なのです。雨夜の月くずしろ11わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/17女性差別社会をブン殴れ! #1巻応援女性差別がはびこる異世界で、パーティに理不尽な扱いを受けた魔導士の主人公は、八つ当たりの中で伝説の魔女の封印を解いてしまう。二人が手を組みパーティへの復讐を目指す物語は、現実世界にもある女性差別を数多く描き出す。 現実世界での女性差別は、とても見えにくい。例えば〈女性議員が少ない〉という問題意識に「実力のある女性議員希望者が少ない」「そもそも議員になりたがる女性が少ない」という、もっともらしい反論がある。しかしこれは女性に対する教育の不平等(女性に教育は要らないという意識、入試不正等)や女性は表に出るべきではない(=女性は男性に庇護されるべきだ、女性は家庭を守る人だ)という意識等、社会構造に練り込まれた多様な通念、しきたりが起因していて、それは男性にも、そして多くの女性にも気付かれない。 本作の異世界でも、現実世界で行われる差別が全く同じ形で表現される。主人公は身に降りかかった決定的な差別をきっかけとして、社会にある差別構造を伝説の魔女に教わりながら少しずつ自覚するようになる。主人公と一緒に、私もいちいちハッとさせられる。 魔女に肯定される主人公、主人公が肯定する女性達。世の中のおかしな構図に武力で立ち向かう二人の進撃は痛快だ。難しく考えずに勧善懲悪をなしてゆく水戸黄門的なカタルシスを与えながら、差別構造を分かりやすく描いて「女性差別はこんなに分かりやすく〈悪〉なんだ」と気付かせてくれる。 二人が社会をギッタギタにするのを期待したい。女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました三弥カズトモ 蛙田アメコ りりうら世都2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/15多治見で母と陶芸と出会う #1巻応援舞台は岐阜県多治見市。亡き母の実家に父と越してきた高一の女子は、クラスメイトに誘われて陶芸部に入る。そこはかつて、母がいた場所だった……。 1巻では美濃焼で有名な多治見市をあちこち移動し紹介しながら、主人公が陶芸と出会い、作陶家の母と出会う。思いもよらなかった出会いに驚きながらも、少しずつ陶芸にハマってゆく主人公の小さな心の揺れが興味深い。 母との出会いは、高すぎる壁との出会いでもあった。ふと訪れた「自分にも何か特別なものがあるかも」という期待はしかし、容易に裏切られてゆく。 暑い夏の多治見で、何か出来るかもと足掻き始める若者の物語は少し苦しいけれど、時折吹き抜ける風のように爽やかで、心高鳴る。やくならマグカップも こみからいず!梶原おさむ2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/10お茶目な貴女は私だけのもの #1巻応援優等生の瑠東さんは、実はおふざけ大好き!後ろの席のオタク陰キャ・和村さんにちょっかいをかけるうち、不思議な仲になってゆく……「私だけ知ってる貴女の素顔」は屈託のない笑顔。とても明るいストーリーとなっています。 イタズラ大好きな瑠東さんも、それにツッコミつつ付き合う和村さんも、人としてとても善良で、けっこう気を使い合うし、気持ちよく笑えて和む場面が多い。そこに絡む和村さんの友達の小守さんも、両方を好きすぎるために愛は重くても良い絡み。 優等生な瑠東さんの隠れた一面を和村さんと共有しつつ、和村さんの内気さを瑠東さんがほぐし、二人の心の距離は縮まって……こういうのいくらでも読みたいです!瑠東さんには敵いません!相崎うたう4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/09恋の無い結婚に愛はある #1巻応援同性婚が法制化された日本を舞台に、二人の女性が試しに結婚してみる、という物語ですが、同性婚についてだけではなく、もっと広く結婚について考えさせる内容だと感じました。 女性同士、友達関係のまま恋愛をすっ飛ばして始める結婚。性格も生活スタイルも違う二人だが互いに生活能力はあり、男女の結婚のような性役割がないので、お互いにどうしたいかを話し合って進める結婚生活は理想的に見えます。 その中で、奔放な相手に恋しているが、その奔放さを愛する故にそのまま受け止めてそれ以上を求めない女性の愛の在り方に打たれる。私はこんな見返りを求めない、大きな愛を持てるだろうか……。 そしてその愛に少しずつ気付く、奔放な女性。彼女が相手を大切にしたい、という感情を獲得する過程……それは思い遣りという、小さな愛を積み重ねる過程。 恋から始める結婚だって、半ば賭け。恋が冷めた時、そこに愛が残るかはその時になってみないと分かりません。盲目な恋の先に残ったのはよくわからん人だった、という可能性は高い。 そんな曖昧な恋に頼るよりも、お互いに過ごしやすい、気楽にいられると感じる相手と暮らた方が、楽しい生活を送れる確率は高い。もし「積み重ねた時間の分だけ愛が生まれる」と言うなら、なおさら一緒にいて楽しい友達と結婚する方が、理屈は合ってる。たった1巻で強い絆を結びつつある二人を見ていると、そんな風に思ってしまうのです。女ともだちと結婚してみた。雨水汐1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/03「百合」は終末世界を自由にする終末世界は「二人」の関係を強化する。 多くの人が死に絶えたり、滅亡が身近にあったりすれば、どうしても隣の人が大切になる。人は一人でも生きていけるが、会話をする相手がいて初めて心が動く。二人という最小単位から「物語」が生まれる。 描かれるのは、死の影が濃い終末世界。何故人は生きて、ただ意味もなく死んでいくのか……そんな思考に陥りやすい状況だが、様々に生きる女性二人の物語達はとても自由だ。それは「百合」という枠組が「生殖」や「社会秩序」という枷から自由だからかもしれない。 「百合」は困難と絶望の終末世界を自由にする。 ●『introduction』(しろし先生)…地上採掘団に加わりながら本を求めて外に出たい女性と、彼女を見つめる女性。 ●『海は何色』(結川カズノ先生)…外の世界の海を夢見る管理官は無気力な女給の秘密に触れる。 ●『SPUTNIK』(吐兎モノロブ先生)…遺伝子操作で生み出された新人類の二人はロストテクノロジーを求めて荒野を駆ける。 ●『Touch me if you can』(田口囁一先生)…一人生き残った少女と都市管理AIと、発見してしまったセクサロイドのボディ。 ●『卵の殻を破らねば』(岡ぱや先生)…学園都市に暮らす優秀な二人は、優秀すぎた故にある真実を見てしまう。 ●『チュウ虎シャングリラ』(くわばらたもつ先生)…汚染が広がる世界で敵対する二つのグループ。代表二人の決闘に皆沸き立つが……。 ●『トワイライトにおやすみ』(tsuke先生)…永い時を生き、信仰を集める聖女は、自分に好意を寄せる少女にあるお願いをする。終末世界百合アンソロジー一迅社アンソロジー
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/02冒険者はカレーを目指す!伸縮する棒で戦う子×知識情報担当の子のバディ物である本作。『ドラゴンボール』の初期を想起させるものがありますが、本作は途中からトーナメントバトルになったりせずに、終末世界SFとして、かなり独特な作品になっています。 廃墟を冒険する超強い探索師・ハルカは、廃墟から小さなデバイス・ソルを発掘する。ソルの力を借りて、ハルカはある物の探索を始める。 彼女が探す物、それはカレー。 食料が統制されて、皆同じ物を食べている社会。供給されるブロック状の食糧。皆が食の楽しさを忘れている中で、一人食を追求するハルカの自由さと、食料の供給を通じて人々を支配する「教会」との対立は、寓話/風刺としても面白い。 勢いと戦略性のあるバトル描写、ブロック状の……どこかで見たことのあるような食料の汎用性、教会がひた隠す世界の秘密、そしてカレーを求める事と人間らしさ等々、読みどころ満載で充実したSF。どっこい生きてる人間の逞しさと駄目さと楽しさが、この作品には詰まっていると感じました。廃墟のメシムジハ1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/10/01メイド服ロボ×義手犬、出会いの旅自己を形作っているのは、それまでに出会った人々なのかもしれない。それが失われる事を「輪郭が失われる」と表現するこの作品、かなり深くて優しい作品である事は保証します。 メイド服を着た少女型の機械生命体・蘇芳。AIより人に近い、自立した思考を持ち学習する彼女は、自分を作った設計士=ご主人様を探すべく、犬のミュートと共に旅をする。人語を話し、機械の義手を持つミュートは頼れる存在。蘇芳の成長を見守ります。 旅をするのは、多くの人が死んだばかりの終末世界。残された文明は高度だが、維持が間に合わず、かなり崩壊している。そんな中で印象的なのは、ごはん大好きな二人の食事。 食料調達から調理まで、食事は蘇芳の担当。ミュートも感心する腕前で作られる料理は、旅の途中で出会う人達にも振る舞われます。 出会う人達の様々な事情。ひと月ほどの間に出会ったほんの少しの人達は、ご主人様しか知らなかった蘇芳に人との繋がりと思い出を与えてくれる。一方、見守るミュートに去来する思いは……? 3巻の間にしっとりとした世界観と様々な思索の種が埋め込まれ、蘇芳とミュートの物語もこれ以上ないくらい切なく温かく、充実の一作でした。旅とごはんと終末世界文ノ梛4わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/29衰退を楽しく生きる子供達 #1巻応援人間の女の子スイと、ナマケモノの男の子ネリはまだ子供だけれど一緒に民宿をやって暮らしている。目下の悩みは、お客が来ない事。 人間が宇宙へどんどん出てゆき、人口が減ってゆく黄昏の星・地球。残されたのは少ない人と、人語が話せる動物達……と言うと寂しそうですが、お客が来なくてもスイとネリは逞しく、楽しそうに生きて遊んでいる。 世界は海面水位が上昇し、朽ちつつあるがゆったりとしている。そんな中を遊ぶスイとネリ、久しぶりのお客の大学院生・シダ、市場や地下の人々、みんな穏やかで優しい。不便でもいいからこの穏やかさを得たい、と私は言えるかどうか……考えてしまいます。 描き込まれた光景、味がありつつ可愛らしい絵で描かれる世界の中で、誰かと一緒にいる喜び、出会いの喜びが綴られて、じんわりと温かくなる作品です。黄昏星のスイとネリ徳永パン
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/22キスの強度と伝統女子校この作品は、女子同士の「キス」が印象的だ。 そんなにしょっちゅうキスしているわけではない。1巻に1、2回描かれるキスはしかし、とても強く心を打つ。キスが心を打つ。それは一つ一つのキスに大きな意味が込められているからだ。 第1巻で描かれる、生徒会長・相原芽衣と男性教師との辛そうなキス。主人公のギャル・相原柚子が妹になった芽衣からされる、投げやりなキス。酷いイメージから始まるキスは、恋心を自認する混乱から相手を受け入れる過程を経て、熱いキスへ。そこに女性同士、姉妹という葛藤、芽衣にのしかかる重圧……唇を重ねる行為に意味が加わる度に、キスから受け取る感情が強くなってゆく。 とりわけ芽衣にのしかかる、学園を継ぐ者としての重圧、伝統ある女子校の規律を守る立場、そして家の為の結婚……それらをポジティブな柚子が解きほぐす度、二人のキスは心の解放の表現として、強度を増してゆく。 キスの度に訪れる、切ない程の多幸感。 キスを含む二人のエロス表現は、想いを通じ合ってからはトーンが落ちるのもまた、印象を深める。様々な物を乗り越えた先の、短い確かめ合い。相手を軽く束縛するだけの表現なのに、脳が沸騰するほどの感情が訪れる。 特に続編『citrus+』以降の、驚く程の清いお付き合いには、謎の喜びと「見守りたい」感覚が沸き起こる。 #マンバ読書会 #続編・スピンオフcitrusサブロウタ2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/19チグハグな四人とシューベルトの怪『音のレガート』1巻と『q.天上の音楽』完結に合わせて、何かコンチェルト漫画をクチコミしたいな、と思った時に、真っ先に浮かんだのがこの作品でした。 『ママレード・ボーイ』等で有名な吉住渉先生の作品集。私は『ハンサムな彼女』と共に妹に借りて読んだのですが、その面白さは強く印象に残っていて、改めて読み返したら、その魅力は今でも色褪せないのに驚きました。 表題作は、音大附属中の弦楽器専攻生四人が集められ、あるコンサートのためのカルテット(四重奏)を組むお話……なのですが、個性的な四人の対立から融和、音の調和への過程に「シューベルトの未発表曲」の謎が組み込まれ、それは事件性のあるミステリーへと発展してゆく。 110ページ程の中に、人物造形の奥行きも、音楽の話題もかなり重いミステリーも、そして恋も組み込まれ、それを愛らしさを失わないままテンポ良く、ぐいぐい読ませる。こんなに面白かったか……。 昨今のあらゆる漫画と比較しても引けを取らない、完成度と充実度の高い作品だと思います。もう一度言いますが、こんなに面白かったか……。四重奏ゲーム吉住渉2わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/17機械と人の調和は彼女を引き止めるか #完結応援本作に出てくる「ヒューマノイド」は、人間の生体に機械の脳が入っている、という存在。目的を設定されて生まれてきた彼女達(性的機能は無いので無性なのですが、姿が女性的なので便宜的に彼女と呼びますね)は、その目的を達成するために自律思考で行動できる存在。彼女達なりに悩み努力する様子は、ドラえもんや鉄腕アトムよりもやや陰影のある造形となっています。 芸術科特待生のヴァイオリニスト・憬と、ピアノ特化型ヒューマノイド・キリエ。二人がデュオとしてコンテストを目指す物語ですが、二人にはいつも、憬の幼馴染で元伴奏者・シオンの影が付き纏います。 シオンに執着する憬。己の目的のために憬と演奏したいキリエ。憬を想いながらも去って行ったシオン。3人ともコミュニケーションを拗らせて、苦しみを募らせる様が切ない。 心が揃わない憬とキリエはそれでも、その都度目標を定め、演奏を繰り返す。シオンを基準にしますが、シオンに近づくたび「基準」は揺らぎ、過去のものになるのが興味深い。 果たしてシオンの望みとは何なのか。二人が創り上げた演奏の先に、シオンが憬を振り返り、何を言うのか……この物語はコンクールよりも、3人が上手く言葉に出来ない「求める物」を明らかにする事が、何よりも大事なのです。q.天上の音楽植下1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/15心を音を、滑らかに繋げる #1巻応援楽器未経験の病弱女子が、高校で金管五重奏の仲間に加わるお話。音楽を演奏する理由や仲間とは何なのかについて、優しくも真剣に伝えてくれる内容でした。 秋のアンサンブルコンテストが目標の五人。しかし初心者の主人公と、とにかく音を合わせるのが楽しい面々に、上を目指す緊張感は当初ありませんでした。 私はそこがすごく良いと思うのですが、強豪校との強烈な出会いによって、難しく考え始めてしまう。しかしそこで得られる新たな思考も前向きで、音楽の楽しみに向き合えているのが良いのです。 とかく部活漫画は、頂点を目指してキツい遣り取りがなされるのが常ですが、本作の五重奏は、仲間の結束を強めながら皆で目標を決め、真剣でも楽しく穏やかに取り組む。 タイトルの「レガート」とは音楽用語で「音を滑らかに繋げる」という意味。メンバー達の絆が次第に強まるのを見ていると、心を重ねて思いを繋げ、滑らかで美しい調和を作り上げる、そんな「音楽の喜び」のための作品になってくれそうだ、と感じました。 ★余談★ 高校生の吹奏楽部員にとって、夏の普門館(今は別会場)と秋冬のアンサンブルコンテストが二大大会になりますが(あとはマーチングもあるけど……)大所帯の吹奏楽部のアンコンはまず部内選抜から始まります。よってアンコンに出たことのある人は、実は少数派です。私は出られませんでした……。音のレガートすいと3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/11JD×FX=ホラー #1巻応援〇〇×女子という作品は、ジャンルを緩く紹介するものを想像しがちですが、本作はそういう感じではありません。1巻を読み終わって、私自身の経験……FXでは無いけれども少しだけ相場(個別株)に触れていた時の事を思い出して、身体が強張りました。 主人公の女子大生は、過去に母親がFXで大損の末自殺に追い込まれたのを、自分の責任の様に感じている。 お金のためではなく、自分の戦いとして始めるFX。奨学金が貰える程の頭脳で、時間をかけてFXを学び、冷静さをもって始めたトレードでしたが、次第に泥沼にハマり冷静さを失ってゆく。危機に陥るたびに口当たりの良い言葉で自らをごまかし、気高い言葉で博打を正当化する主人公は見ていて辛い程。そこにゆるふわさはありません。 主人公を煽る投資仲間の存在も不穏。よく投資について助言したり情報を流す人はオンライン・オフライン問わず存在しますが、そういう人達が何を思っているのかを考えると、こういう人もいるのかもな……と、正直怖くなる。 カワイイ絵で描かれる表情の変化は次第に狂気を伴って、激しいチャートの浮き沈みに人が翻弄される様を残酷に描き出す。今まであった金融系漫画の泥臭さよりはむしろホラーに近い読み心地の、恐ろしい作品でした。FX戦士くるみちゃん炭酸だいすき でむにゃん6わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/10車で始めるアウトドア! #1巻応援何か始めるのに、勢いって大事ですね。無鉄砲さ、浅慮、そして欲望で飛び込んで、夢中で進んでふと息をつき辺りを見渡す時、見知らぬ光景に感動する。この作品は、そんな行き当たりばったりの冒険の始まりの書です。 大学入学前に、勢いで車の免許を取った女子。その思い切りの奥にある「充実していたい」という思いは妙にしっかりしていて可笑しいのですが、その「充実」への欲望は後の行動を加速させる。 車があるとアウトドアは可能性が広がる。羨ましい……。飯ネタが多いですが、車のトラブルネタなどハラハラ。そしてアウトドアの解放感は爽快! 姉との活動と、アウトドアサークルの活動。興味と欲望のままに、時に危なっかしい主人公は、先達に導かれて「充実」してゆく。緩いけれどもワクワク感を共有できる、キモチイイ冒険の書でした。はじめてのキャンプさん双葉末月3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/09あかりおいしいよあかり #1巻応援『ゆるゆり』のスピンオフである本作、内容はもうタイトル通り。VRゲームの世界に転生したごらく部の四人。しかし何故かあかりだけスライムの姿に! かくしていつも通り、あかりはオチ要員として愛すべきポジションに。異世界でもやる事はいつも通り、京結のボケツッコミ、ちなつの猛アタックの中で、あかりの順応性の高さが強調される。それでいいのか、あかり……スライムやぞ……。 1巻はごらく部の四人に終始しますが、異世界の人たちも可愛いし、他の登場人物もこの世界にいるみたい。ギャグの切れ味もゆるゆりと変わらず。楽しいわぁ。 そして異世界に来るきっかけのVRゲームにいた魔王の二人(私の大好きな爆発cp)は、この世界でも魔王なのかな?まだスライムも倒せない雑魚四人の運命は!? #マンバ読書会 #続編・スピンオフ転生したらあかりだけスライムだった件なもり 水鳥なや1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/08不死者と死の匂い #1巻応援死の匂いがする、と感じて読み進める。不死者の物語であるはずなのに、登場人物の誰もが死と隣り合わせの様な、妙な悲壮感で前のめりに進んでゆく。 不死の眷属の女性と、彼女から血を分けられた元会津藩士。不死者を殺す事ができる刀を求める二人の戦いは、「大切な者」を殺す予定に向かって進んでゆく。 新たな目標に再び生き甲斐を見つける元会津藩士。美味しい食べ物を知る不死の女性。活き活きと前進し、刀を振るって躍動する二人。 しかし切られれば深く傷つくし、強力な敵の前に危険は尽きない。不死者の尊厳を奪う構造は江戸幕府滅亡後も残り続ける。そしてなんと言っても「不死者を屠る刀」という、強力なジョーカーの存在。残酷さに震えながら、読む手を止められない。 そこにある切なさからは「強力なサイボーグだが代償に短命を宿命づけられる」という『GUNSLINGER GIRL』と同様の、悲しい袋小路を想起してしまうが……。勇気あるものより散れ相田裕1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/06「映える」金沢、夏の写真物語夏の金沢で、写真を撮る女子高生がドイツの写真家と出会う物語は、フォトジェニックな町を観光案内しながら、淡々と進んでゆきます。 金沢の有名スポットから裏側まで、歴史も地形も詳細に紹介していて、これ一冊持って金沢を歩いてみたくなります。 そんな金沢を撮影しながら、女子高生と写真家の人生はひととき交わり合い、少し互いに何かを残しつつ、それぞれのエピソードを淡々と刻んで行きます。割とシビアな内容もあっさり描き、心に響く余韻が心地良い。 カメラに関しては、フィルムからデジタルまでマニアック。女子高生がα7+オールドレンズとか、Sigma dp2 Quattroとか、ちょっと笑ってしまう程。また著名な写真家が実名で出演されたり、構図へのこだわりが随所に見られたりと、写真的見所も多い。 それにしても、竹久夢二的モダン女性絵で描かれる女子高生が、金沢の古い街並を歩くなんて、もうそれだけで雰囲気満点!な作品です。 ------- ★オールドレンズについて★ オールドレンズとはフィルムカメラ全盛時代に作られたレンズで、良質な物から怪しげな物まで様々あります。 中古屋でジャンク的に転がっている事もあるこれらを使うには、手持ちのデジカメと古いレンズの規格を合わせる「マウントアダプター」を探す必要がありますが、大抵どこかに売っているものです。マニアは怖いですね。 現在のデジカメ用に作られた、出力がある程度計算されたレンズとは違う、思いがけない味わいやハプニング的な要素等、深い世界です。 ★Sigma dp2 Quattro について★ Sigma(シグマ)は日本のレンズメーカーですが、センサー製造のFOVEON(フォビオンorフォベオン)社を子会社化しデジタル一眼レフに参入しました。 FOVEONというセンサーは三層のセンサーを垂直に並べてそれぞれが違う色を拾う事で同一位置の色情報を3倍拾う。実質的な画素数はAPS-Cでありながら2900〜4600万画素まで得られ、画質も解像感がとてつもなく高い。 これを使った機体は画質の良さの一方で実はとても扱いにくく、愚痴をこぼしながら使うマニア向けの物となっています(その辺は安倍吉俊先生の同人誌『飛び込め!!沼』に詳しいらしいです)。 dp2 Quattroは、単焦点レンズ固定型(レンズ交換できない)のdp0〜3シリーズの一つ。変わったカッコいいボディですが、使い勝手は……これを使う女子高生は、既に自分の世界観を持って撮影をしていて、そんなこだわりがよく似合うカメラです。金沢シャッターガール桐木憲一3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/04ストーカー vs 親友 vs …?ストーカー、自傷、殺人未遂と、ヤバい描写のオンパレードなこの作品だが、1巻は意外な程コミカルで、読んでいて辛くない。 小さい頃離れた女子・ひかりを想い続け、高校を突き止めてストーキングを始める沙慈ちゃん。それはひかりの親友・メロに見つかり、ストーカーvs親友の攻防に。鈍いひかりと沙慈を受け止めるメロのお陰で成り立つコメディは、キャラ達には申し訳ないが楽しい。 痛々しい描写が多いが、絵が物凄く美麗で可愛いので、このコメディ具合なら読めるじゃん……と思っていると、2巻からとある人物の介入で、内容は一気にヤバくなっていく。 ものすごい勢いのサイコっぷり。そこから得られる結末は、人によっては納得いかないかもしれないが、募らせた想いの「ヤバさ」にキチンと向き合わせてくれる、確かな結末だったと私は思う。サジちゃんの病み日記アサギユメ3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/03倫理の数だけ〈やみ〉がある暴力や陰湿なイジメ、ネットリンチの元となる「あいつがムカつく」という感情は、実はその人の(こうあるべきだ、という)「倫理」の投影である。その「倫理」は人の数だけ存在し、それは時に酷く歪な形を取る。 本作の登場人物はそれぞれに、倫理感や強い想いがある事が語られる。ストーカー女子、ストーキングされる女子、それにある思いを抱く親友、そしてストーカーを退治したい女子。それぞれの背景が語られると、全員の同情できる部分と、到底受け入れられない部分が見えて来る。 閉じた場で増幅し伝播する、正しさの〈やみ〉。 彼女達が倫理を振りかざし、正しくあろうと画策する先にあるのは誰もが「悪」と断定するはずの構図だ。しかし、その場にいる人達はある程度気付かずに、そしてある程度確信犯的に、その「悪」に踏み込んで行く。 誰が生き残るかの理由は少し語られるがそこは重要では無いだろう。そんな事よりこの歪みに、一人一人同調していたら気が狂う。全てが最後まで正しさを主張しながら狂って、終わっていく……私はそれをただ見ていた。病月もちオーレ 箕田海道3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/02歪み百合は強姦を乗り越えるか性犯罪はどうしたって、被害者や当事者を苦しみで縛る。本作でも強姦された女子と、彼女を守れなかった先輩女子の苦悩が描かれるが、強姦という事実は描かれる以上の重さでのしかかると感じた。 守ってくれれなかった先輩を責める事で「奴隷」とする女子と、罪の意識でそれを受け入れる先輩。その関係性は袋小路で、解決しようの無い息苦しさがある。 しかしこの作品で凄いのは、強姦を起点に女性二人の関係性を突き詰める事で、強姦した男の影を薄めてゆく点にある。 本当に苦しい作品だが、女の絆を強固にする事で暴力的な「男」をページの外に消失させるこの作品、ある意味本当に〈百合の力〉への信頼で出来ている作品だ。 (この作品には「完全版」というのもあります。私は追加エピソードがある完全版の方を読んだのですが、現在電子書籍化しているのは無印版なので、こちらにクチコミを書きます)不自由セカイコダマナオコ1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/01停車場で、義姉妹は確かめ合う #読切応援 #推しを3行で推す①雪の舞うホームで、出てゆく姉を見送る妹は、姉に何かを告げようとする。 ②親の再婚で姉妹となった二人。微妙な距離感の中で姉はある事を決心していた。 ③想い合う事は同じでも、その心は微妙に違っていたりする。もどかしさと苦しさにけじめをつける物語は切なく胸に残った。 ★ひとこと★ コミック百合姫2021年10月号は、きぃやん先生の新連載『君としらない夏になる』とコダマナオコ先生の読切『pretender』、そしてこの読切と素晴らしいラインナップ。ちょっと記念に残したくて、読切応援のクチコミを書いてみました。ふた切れのケーキカボちゃ1わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/09/01顔の良いクソ女と私 #読切応援 #推しを3行で推す①男をスペックで選別するクソ女に惹かれる女。二人の女子大生は今日も合コン。 ②本当にクソ女だと知ってゆく。軽蔑とそれでも恋する心の狭間で……。 ③美しさと下衆さの狭間でこちらも感情がぐちゃぐちゃになる読書体験は凄かった。 ★ひとこと★ コミック百合姫2021年10月号は、きぃやん先生の新連載『君としらない夏になる』とカボちゃ先生の読切『ふた切れのケーキ』、そしてこの読切と、ちょっとありえないくらい凄い作品が揃いました。この号を買ってみるのもよし、短編集を買う時の参考にするもよし。pretenderコダマナオコ3わかる
あうしぃ@カワイイマンガ2021/08/29エスケープfromクソな現実 #新連載就職活動に挑む二人の女子大生は付き合っている。上手くいかずに追い詰められる恋人を救うべく、手を取り向かう先は……離島!? 病むほどに追い詰められる描写から一転、開放的な夏の光景が気持ちいい。不安の圧縮と解放の第1話。 しっかり生きるためにする就活。しかしそこに挑む人は、見るからに死んでいる。そんな思いをして就活などしなきゃあいけない?と思うが、もちろん生きていかなきゃいけないわけで……人生の不安はどこに行っても付き纏う。 それでも先行きが明るく感じられるのは、夏のせいだろうか、それとも「あなたとなら怖くない!」からだろうか……逃避中の二人の笑顔、プライスレス。君としらない夏になるきぃやん3わかる