あうしぃ@カワイイマンガ
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2020/05/04
教師と児童の恋と依存と、その先と。
両親の存在に苦しみ、不登校になった小学六年生の松田乙女。見かねた教師の那珂川湊は彼女を引き取り、養子に迎える事を目指して、共に生活を始める。 強引に乙女を連れて来た湊。真っ当な愛情を注ごうとする、懸命で正義感の強い女性……なんだけど……。 ♡♡♡♡♡ 第一話では、乙女のためにしっかりしないといけない湊が、とんでもない事をしでかして驚かされる。しかもその理由が「乙女がいない時間が辛い」という、情けないもの。最初のカッコよさとの落差は、衝撃的だ。 しかしこれをきっかけに、乙女は大きな決断をする。そして却って湊への信頼を増し、湊の為に在りたいと想うようになる。 そしてその気持ちは、 信頼を超え、恋心になる。 互いを想い合う様子は温かく、二人の時間は甘く、時に危ないほどに気持ちが昂る。 しかし強い恋心は、過度な依存に形を変える。思ったよりだらしない湊と、思ったより恋にのめり込む乙女の関係には、常に危うさが付き纏い、不安になる。 更に協力者と思っている人物も、法律も、決して二人の味方とは言えない状況。乙女が子供であるために、二人が引き離される不安は常に示唆される。本当の心の絆が試される時、湊と乙女は……。 年の差百合にときめきつつ、恋愛依存関係から自立した人間同士の関係へと成長する過程を追った、真剣で優しい物語だ。
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2020/05/03
傷付け束縛する、壊れた姉妹の愛憎
高1の妹が、高3の姉に首輪をつけて束縛する……そんな始まりのこの物語は、常に幾らかの息苦しさを纏っている。 母を失って「壊れた」家庭で、大切だった家族の関係を妹との間だけでも守ろうとする姉。姉に家族以上の感情を抱いてしまった妹は、気持ちをぶつけ、姉を翻弄する。 好きって何? 女の子同士で? 家族だから何? 疑問符だらけの中を、二人は迷走する。 互いが大切なのに、自分の「大切」の形を守ろうとして、却って互いを縛り、傷付けていく姉妹……二人の張り詰めた心に、重い痛みを覚える。 更に両者とも、友人関係にもこの息苦しさは形を変えて現れ、一筋縄ではいかない重い物語のバリエーションが展開される。最後まで息継ぎをする瞬間は、無い。 この息苦しさを救うのは、小川麻衣子先生の流麗ですっきりとした、軽みのある絵。優しさと、どこか重力を感じさせない浮遊感が、タイトルの様に「水中の夢」を見ているのでは?という気にさせる。 この作品が「夢」なのだとしたら、読み終わった時に、私達は夢から醒める。心の痛みと、纏わり付く甘く息苦しい感情を思い出しながらも、少しずつ、忘れていく。 また思い出す為に、手に取るに違いない。
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2020/05/02
甘美…島の民宿に百合の花咲く!
とある島の民宿「かがや」は女性だけの一家で切り盛りする小さな宿。そこには様々な女性二人組がやって来る。 女性二人組の来客に対応する度、従業員の姉妹達はそれぞれに「萌え上がる」。長女は二人を百合方面にからかい、次女は横目で二人を伺い、三女は二人を盗撮・盗聴しようとし(コラっ)、五女は自分が何とかしなきゃ!とソワソワする。 そんな百合民宿では次々百合カップルが生まれる一方、姉妹達はそれぞれの「姉妹百合」に身を焦がす。さらには彼女達の母の、民宿の女将も、板前の姉(姉妹の叔母)といい感じ……。 何だこれ、百合成分が濃すぎる! 2ページに一回は悶えてる……。 しかし決して、甘く楽しい恋愛がストレートに描かれはしない。 描かれるのは、プライドのために相手の弱みを突き、優位に立って安心を得ようとする者と、それを受け止める者の様々な在り方。そして相手を安心させてマウントを解き、素直にさせて、ようやく向き合う瞬間の高揚感! こんな脳味噌がはち切れそうな幸せな読書体験があるから、「百合」はやめられない。そう思わせてくれる作品だ。 ♡♡♡♡♡ 例えば1巻を読んで気に入ってもらえたら、出来れば2巻の前にもちオーレ先生の別作品『出会い系サイトで妹と出会う話』を読んでいただきたい(『出会い系サイトで〜』は、わかりづらいが2巻ある)。表題作でどうにも救われなかった一人の女性のエピソードが、『ゆりなつ』の2〜3巻に描かれている。
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2020/05/01
愛しさとやましさ…からの、多幸感。
同性愛特有の苦しみとして「やましさ」があるのは、お分かりいただけると思う。 道ならぬ恋に身を焦がし、罪悪感に陰で泣き、恋そのものを捨てようと苦しむお話を、百合好きは狂ったように読み漁り、似たような話で何度も泣きむせぶ。それが自分にとって真に迫った、大切な感情だから。 それがさらに、血の繋がった者……姉妹同士の恋愛であった時の、背徳感とNo Future感。しかし絶望的であればあるほど、奇跡的に2人が結ばれた時の多幸感たるや……! 本作単行本の「無印版」と「ー333日目ー版」の半分を使って語られる、まるで実録物みたいなタイトルの表題作は、出会いはタイトル通りなのだが、姉妹が互いに秘めていた気持ちと、ままならず離れていた時間の重さ、そしてあり得ない偶然の出会いの奇跡を何とか繋ぎ止めようとする、強い気持ちに胸打たれる。 強い想いは却って嫉妬にもなり、一筋縄ではいかない姉妹の関係に目が離せなくなる。こんなに重い苦しみと執着と、愛情と多幸感、なかなか味わえない。 他に掲載されている短編も、やましさや嫉妬、憎しみがちょっと歪んだ愛情へとスライドしていく「昏い」トキメキに満ちていて、一つ一つが印象深い。 萌えや少女漫画的「可愛さ」を排したもちオーレ先生の絵柄は、昏い感情表現や、下衆なコメディに合っている。特に恥ずかしさ、やましさ、悪巧みの表現は癖になりそう。そして恋に落ちた女性は、却って可愛く見えてくる不思議。 ♡♡♡♡♡ それにしても表題作で姉に振られた女性に関して、扱いが酷いので可哀想……という貴方は、『ゆりなつ』全3巻をご覧いただきたい。第3巻で……!
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2020/04/30
天使の妹と、壊れそうな姉妹百合
仕事以外は人と関わらずに、孤独に生きていた小百合の前に、13年間音信不通だった妹の美琴が現れた。 幼い頃、天使の様だった美琴の久しぶりの姿に、小百合は愕然とする。女子高生になってもふわふわとした愛らしい美琴の、頭には光輪、背には白い翅。 ……美琴は、天使になっていた。 そして美琴は唐突に言う。 「お姉ちゃんと恋人になりたい」と。 ♡♡♡♡♡ 愛くるしさを振り撒きつつ、小百合に迫る美琴はマジ可愛い天使!と思う瞬間、私の目は彼女の光輪と翅を捉え、ふと我にかえる。ああ、本当の天使なんだっけ……。 彼女が天使である理由は、なかなか語られない。光輪と翅はちょっとした違和感となり、美琴の強引さや焦りと共に、単純に可愛さを消費させない澱みを小百合にも、私達の心にも残す。 二人は日常を共にし、愛情を深め、感情を確かめ合う。 春夏秋冬を美琴と暮らす小百合の日々は煌めきに満ちていて、小百合の閉ざされた心が少しずつ明るくなっていく物語に、私達の心も温かくなる。 それなのに、光輪と翅の存在は私達に違和感と、一筋縄ではいかない複雑さを常に忘れさせない。 私達は壊れ物を優しく掌で包むように、二人を見続ける。二人の小さな幸福は続いていくのか、それとも……。
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2020/04/29
古事記から「藤原」を巡る秘史へ #1巻応援
藤原(中臣)鎌足の息子、史(ふひと)は朝廷で一官吏に甘んじていたが、大海人大王(天武天皇)より歴史書の編纂を秘密裏に命じられる。抜群の記憶力で叩き込んだ史文を、彼はある思惑から名を隠して口述する事に。しかし、倭語で筆記する者に正体を隠す為、止む無く女装をする。稗田阿礼と名乗る女装した史を見た筆記者の太安万侶は思わず言ってしまう……「愛(うつく)しい」と。 ◉◉◉◉◉ 歴史書とは「古事記」の事。梅原猛の「稗田阿礼=藤原不比等」説に「稗田阿礼女性説」を掛け合わせた感じのストーリーは、様々な秘密や疑問が折り重なった、多様な面白さが詰め込まれている。 女装を巡る秘密と太安万侶のドキドキはコメディとして。分かりやすくコミカルな神話語りは知的好奇心として。神話への思いがけない疑義は政治ミステリーへ……等々。 見所を沢山詰め込みながら、史の「中臣」への疑問は、「藤原」を巡る大きな秘密に向かって静かに、だが大きく進んでいく。 歴史を少し知っている人なら、家名を変えながら1200年もの間続く藤原家の権勢の、理由を知りたいと思うのではないか。始祖・鎌足の後、没落した藤原を再興した、史=不比等の存在にその根本理由があるとしたら……という大きな運命に、記憶力以外は割と真っ当な若者の不比等が今後、どのような心持ちで挑んでいくのか。 また一つ、嘘みたいな本当の様な、不思議に胸躍る歴史ミステリー(エンタメ要素もバッチリ!)が生まれてしまった……。
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2020/04/26
地球を守るのは、先輩のキス!?
西暦2030年、地球は宇宙生命体の脅威に晒されていた。それに対抗するのは、一人の宇宙人・琴平ベガ(通称ベガ子)。闘い続ける高校生の彼女は、ある日急に能力の大部分を失う。取り戻す為に必要なのは……同じ部活の鷲峰先輩のキス!? ♡♡♡♡♡ 冒頭少しだけ試し読みされた方は「芸能人お料理番組百合」だと思うことだろう。これはこれでいい!しかし本編は、この料理番組が終わってから。 怪獣と闘う宇宙人・ベガ子の腕には光る石、それを囲むストライプ紋様。本来は巨大化し、光線で怪獣を倒す……要はウルトラ的なやつ。 しかし彼女はある時から、同じ料理部の鷲峰先輩が原因で力を失い、先輩とのキスで力をチャージしないと闘えないと言い出す。キスをせがむベガ子だが、力の事ばかりを言う無神経なベガ子を、鷲峰先輩は拒絶する。 一冊を通して、大事な事をすっ飛ばしている宇宙人ベガ子の「見えない本心」に鷲峰先輩は翻弄される。 何しろ相手は宇宙人。地球人の心の機微や物事の順序がすっかり抜け落ちていて、二人は見事にすれ違い、やきもきさせられる。鈍感な人に振り回される王道ラブコメが、もっとすっとんきょうになった感じ……これは普通でない面白さ! 「キス」を巡る二人の派手なボケ&ツッコミを笑いながら、想いが噛み合う至高の瞬間を待ちたい、そんな作品だ。 そして締めはまた別の(本編と関連する)芸能界百合だ!
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2020/04/24
ヒーローお悩み相談課、担当は姉妹百合!
宇宙人の侵略をきっかけに、怪人や怪獣の脅威に次々と晒される近未来の地球。しかし地球人の中からは、それに対抗するヒーローも生まれ続けていた。 あちこちで繰り広げられる様々なヒーロー達の闘い。しかし、ヒーロー達にもそれぞれ悩みがあった……そんな彼らの相談に乗るのは、防衛軍相談課の北鹿姉妹。妹は、かつて最強ヒーローだった……。 ★★★★★ 特撮フィクションのお約束を打ち壊すように、怪獣も怪人もあちこちで同時に出現するし、それに対抗するヒーローも盛り沢山。ライダー系、ウルトラ系、戦隊系、マーベル系、魔法少女系……アベンジャーズもビックリの多彩さだ。燃える! 宿敵を倒して力を失ったヒーローは闘えないことに悩み、特殊能力を得たばかりの人間は力の振るい方に悩み、強力なヒーローも時に心折れ闘えなくなり……様々な事情を抱えた超人達は、相談課の世話になる。 それに対応する北鹿姉妹の妹は、無類のヒーローオタク。そして、かつて最強のヒーローとして活躍し、今は力を殆ど失っている存在。そんな彼女はヒーローの本心を突き、的確なアドバイスをするが、実は少しだけ残った力のせいで自分の呪縛を解けずにいる。そしてそんな妹を、姉は心配し、何が何でも守ると誓う。 妹の為にあろうとする姉と、苦しみ故に甘えずにはいられない妹の過剰に想い合う心は、甘いトキメキに近い感情を感じさせる。 暗躍する勢力に削られ続けるヒーロー達。その残酷さとグロテスクさ、黒幕の壮大な世界変革のストーリーは、現人類の終末を悲愴に演出する。 コメディもありながら、かなり暗く生々しい物語に引きずり込まれる。平和の無い世界で寄り添う姉妹の行く末と、希望の光として闘うヒーロー達の超パワーが炸裂するド派手なバトルを、手に汗握りながら見つめたい。 全てのヒーロー・特撮・魔法少女好きの心に、熱く・甘く・不穏に響く作品! (勿論百合好きにもね!)
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2020/04/22
並行世界からの侵略防衛百合 #1巻応援
並行世界からの侵略者「壊獣」を、緩衝地帯の「壁の中」で殱滅する「防壁師」。共に防壁師を目指していた親友を壊獣によって喪った新更命乃は、親友の為に壊獣と闘うと決める。 闘い続けるうちに明らかになる事実、隠された秘密。バディを組む隊長が口にする「地獄」とは……? ♡♡♡♡♡ 『γ―ガンマ―』で悩めるヒーロー達×怪獣・怪人の闘いと姉妹百合を描いた荻野純先生。今作では並行世界からの侵略との闘いに相棒百合を掛け合わせて、最初から重い世界観を描いている。 人間と似た体型の巨大な「壊獣」、人工的で無機質な地形の「壁の中」、人知れず戦う防壁師……そこはかとなく暗く、冷徹な世界観に、悲観的な先行きを想起せざるを得ない。 世界や敵に関する重要な事は、毎話少しずつ明かされる。プロの防壁師になった命乃にも、少しずつしか事実は明かされない。そしてふと辿り着いてしまった真相が、命乃を混乱させる。 思いがけない事実に苦悩する命乃に、寄り添う隊長も何かを胸に秘めている。力を合わせて闘う、重い物を背負った二人の関係は、切ない程に尊い。 この先の世界と二人の関係に待ち受けるのは、悲劇か、それとも幸福か……命乃と共に秘された世界の全てを見るまで、気持ちが落ち着かなそうだ。 (個人的には、やはりタイトルの「セメルパルス(semelparous)という言葉が気になるところ。一回結実性、つまり多年草植物が生涯に一度だけ花を咲かせ、枯れてしまうこと。竹やリュウゼツランが有名。この言葉は世界観に関わるのか、防壁師の能力に関わるのか、それとも女性同士の関係性に関わることなのか……。他にも色々なワードから作品世界の空想・予想を楽しめる作品だと思います。絶対考察ブログとか書きたくなるやつです!)
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2020/04/20
ガチオタに布教される同居生活、からの… #1巻応援
海外赴任する親についていくのが嫌で、実家を他人に貸して大家業をすることにした19歳の今野ゆめ。同居人のお姉さん達はいずれも重度の「ガチオタ」だった! 大家業に悪戦苦闘しつつ、お姉さん達に触発される無気力なゆめに、何か変化は訪れるか?発見の日々、始まる! ▼▼▼▼▼ 「マンバ」に集まる皆さんは、漫画オタクだったり、他にも何らかの濃い趣味をお持ちかと思う。 そういう人であれば、自分の趣味を誰かと共有したい……つまりは「布教」したいと思う一方で、あまり趣味を他人に押し付けて、相手に引かれるのが怖い、という引き裂かれた思いに悩んだ経験がおありではないだろうか? 主人公・ゆめとルームシェアする社会人の2人の女性は、それぞれ何らかのジャンルの「ガチオタ」である。そして、大家のゆめに対して最初は、その事を告げてはいなかった。 しかし、少しずつそれぞれの「推し」がバレていくと、オタクの彼女達はオタク語りが止まらなくなり、その勢いで布教活動を始めてしまう。強く推したいけど、反応が怖くて腰が引ける2人の布教の様子は、きっと多くの人が共感するだろう。 私はとても共感した! 主人公・ゆめは無気力で面倒臭がり。好きなものもなく漫然と生きてきたが、2人との同居で、まずアクティブな2人に惹かれ、関心を持つ。 今まで面倒臭いと切り捨ててきた、目の前の人への関心・共感。それを取り戻すために、興味を持とうという気になったゆめは、努力するうちに、ガチオタ2人が思いもよらなかった方向へ、足を踏み出す。 意外だけれどもしっくりくる、ゆめの「発見」に、読んでいて思わず「そうきたか!」と膝を打ってしまった。 自分で見つけたものほど、強く思い入れてしまうもの。巻末、ゆめが「自分で」見つける瞬間を見てしまうと、もう次巻の展開が楽しみで仕方ない!
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2020/04/19
ヘタレ×天然の百合感情はすれ違う?
人気アイドル・橘樹里亜(16)は同じ事務所の新人・浅川蘭(16)に一目惚れ。悶々と妄想するだけで何も出来ない樹里亜と、樹里亜への想いが徐々に募っていくのに全く気づかない蘭の、仲良しなのにすれ違うヘンテコ恋物語……この物語に、終わりは来るのか? ♡♡♡♡♡ 蘭に恋した樹里亜は日々、蘭の妄想に勤しみ、息を荒くして悶える変態。しかし蘭はそんな樹里亜の下心に全く気付かず、仕事上ではカッコいい先輩に憧れ、尊敬の眼差しを向ける、見事な天然。真っ直ぐに樹里亜を想う蘭に、ヘタレの樹里亜は気持ちを伝える事すらままならない。 基本噛み合わない、突っ込みどころ満載の二人のやりとり。そこに百合百戦錬磨のヘアメイク×アイドルのカップルや、メンバーがみんなレズビアンのバンドZLAYが絡んで百合濃度を高めるものの、奔放な彼女らは突っ込みどころを増やすばかり。百合ボケのカオス状態……。 そのボケを全て拾うのは、樹里亜のマネージャー・冴木。鬼の様に厳しく樹里亜に突っ込んでいくが、樹里亜は止まらないし、蘭は自覚なく育っていくし、突っ込む対象は増えていくし……。 舌打ちし、毒付き、体を張りやがて疲れ、諦めていく冴木……何気にこの人が、一番面白い。 想い合っているのに噛み合わない樹里亜と蘭のやり取りに、「お付き合い前夜」の甘いドキドキを思い出しながら、行く先にある感動的なドラマに期待して読んでいただきたい!絶対泣くから! そしていちいち名言が多い百合ビジュアルバンドZLAY×樹里亜&蘭のコラボレーションは熱い!ライブの空気感まで想像しながら読みたい。
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2020/04/17
天地の星、黒鉄の星。
はやて×ブレード、読みました? どうでした?最高でしょ? もちろん続編読みますよねー? というわけで『はやて×ブレード2』です。ツーではありません、「ニャーン」と読んでください。 ★★★★★ 中高一貫女子校・天地学園で、剣技に優れた「剣技特待生(剣待生)」達が、「刃友」(しんゆう)とバディを組んで「星奪り」というランキングを競うお話。 前シリーズでは、熱いドラマと暑苦しいおバカなギャグで、様々な「刃友」達の関係性を描き、感動と笑いで悶死させられた訳ですが、終盤に新たな勢力が編入してきた事で、物語は新たなフェーズに入り、それは「2」に引き継がれます。 「2」の大きな柱として、新勢力「黒組」と旧勢力の、学園統治を巡る全面戦争……会長を完全に引き摺り下ろそうとする黒組に対し、旧勢力が「やっぱ天地会長がラスボスでないと、つまらん!」という結束で立ち向かう争いになっていきます。 しかし一筋縄で行かないのが、我らのラスボス・天地会長。 会長の意向は全ての剣待生を翻弄し、自分を脅かす者達が「自分を見ていない」事に腹を立てると、とんでもない舞台を設定。全ての剣待生が自分を目指し向かってくるように仕向けます。 この物語は全ての剣待生の為に在りながら、最終的には「天地会長」が光り輝く独壇場となっていくのです。 その存在感、圧倒的。 しかし、天地会長の大きな物語から、はみ出す物語がありました。前シリーズで解決しなかった、主人公・黒鉄はやてと、双子の姉・ナギの因縁です。 二人は自らの存在証明を賭けて、ようやく刀を交えます。分かり合えない心、分かってしまう互いの感覚、よく覚えている相手の動き……双子ならではのバトルと感情交換は、どこまでも熱く、尊い。 いつもバカみたいにはしゃいでた黒鉄はやての、全てを曝け出した全身全霊の闘いを、最後まで見届ける物語……その感動も、圧倒的!
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2020/04/15
バカ・大袈裟・暑苦しい剣撃乙女の相棒物語
中高一貫女子校の天地学園には、剣の腕が評価される「剣技特待生」制度がある。双子の姉の因縁と、古巣の存続を背負って剣技特待生となった中1の黒鉄はやては、過去のトラウマに苦しむ中3の無道綾那と「刃友(しんゆう)」となり、共に上を目指す。 様々な目的とこんがらがった思いを抱えた剣撃乙女達の、熱い青春友情コメディ……笑って泣いて、バカになれ! ★★★★★ 互いの背中を預けて闘う二人、という最高に燃えるシチュエーションの為にあるような、天地学園の「刃友」という相棒システムは、様々な女子二人の関係性を描き出す。 友情、取引、相互補完、主従……スタートはそれぞれだが、そこから信頼関係を構築し、本当の相棒になっていくドラマは熱い。 剣闘漫画としては、速さ・勢い・軽いいなし・重い斬撃etc……強烈なギャグとバトルがテンポ良く交互に展開していく。そして美しい戦闘姿勢の描写が印象的だ。 頂点の天地会長×宮本組から駆け出しのバディまで、性格にリンクした様々な戦闘スタイルも面白く、単純にバトル漫画としても、ワクワクする。 対戦に細かいルールはあるが、面倒な説明は最小限に、様々な例外やイベント、面白ければ何でもありな(天地会長の)姿勢で盛り上げ、見ていて飽きない。 その上で、闘いの中に交わされる感情が、昂り熱を帯びてゆき、私達を揺さぶる。剣を通して、ぶつかり合い理解り合う二人の魂の交感……体を張った激しい漫才の中に織り込まれる感動で、笑い泣きが止まらない! 主人公・黒鉄はやてのハイテンション百合ボケと、あらゆる女子に百合エロを妄想する久我順の存在はあれど、それ以外の人はエロや恋愛とは無縁。それなのに刃友同士の関係性は、ひとつひとつが愛おしい。 百合好きでない人にも、熱い相棒バトルコメディとして絶対楽しめる作品。その一方で、「百合とは女性同士のあらゆる感情の描写である」ということがよく分かる作品でもある。 (それ故、この作品を百合ではなく、敢えて「ロマンシス(女性同士の強固な友情)」と紹介するのもありだと思う) 先ずは3巻〜4巻冒頭、静馬×久我組vs黒鉄×無道組のバトルと、静馬×久我組の「主従」「無二の親友」の関係を越えた重いドラマに泣こう。その先にある沢山のドラマを、読まずにはいられなくなる、はず!
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2020/04/12
強がり戦闘少女meets正直少年 #1巻応援
転入生の深田一花は、巨大魚の脅威と闘うヒロインだった!彼女は転入早々「私に近づくな!」と宣言する。しかし、隣の席の海月夏蔵は見てしまった。勇敢に巨大魚に立ち向かう一方で、闘いを恐れて泣いている一花の姿を……。 「彼女を守る!」と側にいようとする夏蔵と、彼にツンツンしながらも助けられる一花の、ドタバタバトル&ラブコメディ、面白カワイく進行中! ★★★★★ 「国家公安 対巨大海洋生物治安総局所属、サメガール!」と名乗りを上げて闘う一花は、一瞬、カッコいいのだが、それまでがどうも締まらない。 敵の巨大魚は、様々な魚種の性質が意外と面倒臭く、何処か抜けている一花は簡単に翻弄されてしまう。 それをサポートする夏蔵だが、特別な能力もない彼は、攻略法を見つけるまでに二人で翻弄されながら、いつもエッチなハプニングを起こしてしまう。 日常でもバトルでも、何とも締まらない二人が起こす笑いと、思春期的ドキドキ感が、可愛らしくて面白い! しかし要所で機転と漢気を見せる夏蔵と、それに応えて決める一花のコンビは、何となくいい感じ。そして馬鹿正直に、真っ直ぐに一花に接する夏蔵に、一花は困り、照れ、怒りながらも、彼を信頼し始め……。 このツンデレ、最高やで! 例えば『事情を知らない転校生がグイグイくる。』の川村拓先生や、山本崇一朗先生、または「ツイ4」に見られる様なラブコメを好まれる方には、「こういう先生方がバトル物を描かれたら、こんなかなぁ」という感じで是非読んでみていただきたい。 世界観的には、あらゐけいいち先生や、『不思議なゆうなぎ』の大庭直仁先生が好きな方にもおすすめ! サメのぬいぐるみを装着して繰り出す「サメパンチ」の決め絵が、凝ってて可愛くてすごくいい!
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2020/04/03
サンリオ的カワイイ姉妹を見守る会
表紙と冒頭カラーの、パステルカラーよりももっと淡い色調のふわふわした感触に、暫しボーッとしてしまう。余りに目が慣れていなくて……でもカワイイ! 本編に入っても、丸い目の女の子達、お菓子、花模様にドットのトーン、そして主人公の父母のあしらい……この可愛さ、サンリオ的。 ♡♡♡♡♡ 主人公は有名子供タレントを妹に持つ女子高生。妹が可愛くて可愛くてたまらない彼女は、妹のために色々頑張るが、料理以外はいまいち不器用。 そんな彼女を妹は頼りなくは思うが、それで全然構わないとも思っているし、しっかりした妹はむしろ姉をリードしていく。 ポヤンとした姉を励まし、操縦し、慰め、それでも結局甘えてくっつく時の、損得抜きの信頼感が微笑ましい。 そしてそんな信頼に応えるべく、妹の無茶振りに奮闘する姉の懸命さ。 うーんこの二人、いつまでも眺めていたい……。 直接的な恋愛表現はほぼ無いが、姉妹の日々の触れ合いの中ではちょっとドキッとする場面もある。それでもいやらしさは無く、ただただ深く想い合う姉妹のやり取りが可愛らしく描かれていて、優しい気持ちになる。 その微笑ましさは周囲に伝わってゆく。妹のマネージャーは「キモい」と言われながらも姉妹を愛で、姉の親友は妹のファンだが、騒ぎ立てずに二人を大切に見守る。 マネージャーや姉の親友の言動に「わかる」と同意しながら、一緒になってファンシーでカワイイ仲良し姉妹を見守っていたい!
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2020/04/01
世話焼き妹はイケメン姉に敵わない
容姿端麗、みんなに好かれる「カッコいい」高校生のちかみ。彼女の裏の姿は、妹の小学生・るみかしか知らない。 その裏の姿とは…… ●家ではめっちゃダラシナイ ●野菜大嫌い そして…… ●女児アニメのコスプレイヤー そんな「痛い」姉・ちかみを何とかカッコよく保とうと、何かと世話を焼く妹・るみか。ちかみはるみかに叱られながらも、口八丁手八丁でるみかを籠絡。しっかりしてるようでいてコロッと騙される、るみかが可愛い。 カッコいいお姉ちゃんを周囲に自慢したくて奮闘し、姉の交友関係にヤキモキするるみかを、奔放に振舞いながらも要所で安心させてやるちかみ。家庭の都合で二人暮らしの、互いを強く想う心がコメディの要所要所に描かれ、はっきりとした恋愛描写はあまりないのに、しっかり姉妹百合している。 妹に親友にと、ちかみは周囲に恋情と嫉妬心を起こさせる。それだけちかみが良い奴なわけだが、そんなモテモテ姉を、るみかは信頼して愛し続けることが出来るのか? 強い想いはあれど、そんなに深刻にならずに笑いながらもグッとくる、愛らしい姉妹百合コメディだ。 絵とカバーデザインの可愛さだけでも、手元に置いておきたい作品!
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2020/03/29
それぞれの恋、ゆっくり同時進行中。
短いページに二人の女子の、様々な百合感情のやりとりを切り取る、はちこ先生。この『百合もよう ~咲宮4姉妹の恋~』では、また面白いやり方で様々な百合恋愛模様を描いている。 姉妹物だが、姉妹百合ではない。というか、四姉妹が一緒にいる場面は数少ない。しかし冒頭、女の子同士の恋愛についての姉妹の会話の様子だけで「ああ、この子たちは確かに姉妹だわ……」とはっきり分からせるのがもう、凄い。 本編は長女・次女・三女・四女の恋愛模様を4ページずつ、順番に描いていく。 同じ血を分けた姉妹だが、性格も恋愛模様も四者四様。 ●高校教師の長女は、教え子の高1女子と恋愛中。卒業まで秘密にしたいが……。 ●新人OLの次女は女性課長に片思い中。なかなか踏み込めないが、段々仲良くなってきて……。 ●高校生の三女は大好きな幼馴染に告白される。言われて次第に意識し始める恋。 ●こちらも高校生の四女は「王子様」女子の先輩と交際中。先輩の本当の顔を知っているのは私だけ……。 様々な形の恋模様が、同時進行で少しずつ進んでいく。毎話毎にときめく瞬間やちょっとエッチなやり取りにドキッとさせられる。 四者とも感触の違う、それでいて同じように甘い百合のトキメキを交互に突きつけられると、一人の物語を連続して紡ぐのとはまた違った中毒性があるという、凄い百合発明。 重さは要らない、ただ百合のイチャイチャが見たいんだ!という方……そんな貴方を中毒にする作品だ。
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2020/03/27
心も体も触れたい二人の百合SS
1ページに百合感情を端的に表現されると、そのページに目を奪われ先に進めなくなる、という感じ、『百合ドリル』を読まれた方にはお分かり頂けるだろうか? 『百合ドリル』は複数の作家さんが寄稿されていたが、『百合百景』とその続刊『百合ごよみ 百合百景2』は、はちこ先生がお一人で、1ページ(時々2〜4ページ)の百合ショートショート(SS)を描き綴っている。 少ないコマで、あるいは一枚絵で、二人の百合的関係性を、割と明るく大らかに、そしてしばしばエッチに描き出す。 非常にスキンシップが多く、読んでいてドギマギしてしまうが、触れたいのに間合いを測りかねたり、触れていても想いは微妙に追いつかなかったり、想い合っているのに互いに気付かなかったり……二人の感情の距離感が色々で面白いし、端的に表現されるせいか心にストレートに響く。 2巻とも女子高生のお話が多いが、女子二人のあらゆる百合関係性を描き出し、更に進んでいくとOLや年の差百合、そして『百合ごよみ』には時節要素も加わり、百合関係性の博覧会の様相。飽きることがない。 私はこの2冊を読むのに、概ね5日はかかった。そのくらい濃厚なこの作品。あなたは何日かけて読む?
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2020/03/25
十歳差妹の「成長」に姉たじろぐ。 #1巻応援
二人の百合シチュエーションを、あっけらかんと、そしてちょっとエッチに描くはちこ先生の新作は、10歳差姉妹の関係性コメディ。 Twitterで時折見られたこの姉妹のお話が、遂に、ついに書籍化となった事を、まずは言祝ぎたい。待ってました! 形としては、16歳の姉と6歳の妹のやり取りと、それから10年後、26歳の姉と16歳の妹のやり取りが比較されながら描かれる。 姉は年の離れた妹を溺愛。いわゆる「目に入れても痛くない」というやつだ。そして妹も、姉が大好き。 しかし、この「大好き」という言葉が曲者だ。 姉はいつまでもこの言葉を「親愛の情」と受け取るが、成長してしまった妹の感情は……? そして単なるスキンシップからキスに至るまで、6歳と16歳でこんなに意味が変わるのか、ということに、こうして比較して描かれるとはっきり気付かされ、軽く驚く。 ほのぼの仲良し姉妹を見た後に繰り広げられる、妹の成長を掴み切れていない姉にグイグイ迫る妹、ドキドキしつつも妹の真意を図りかね、たじろぐ姉……というやり取りが、クセになる。いつまでも眺めていたい、至上の姉妹百合!
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/03/22
甘味+和雑貨、究極の癒しスポット。 #1巻応援
ああ、心がささくれ立っている。気が滅入る。心を手っ取り早く立て直したい、口角を上げて笑いたい……私はそんな時に、甘味が食べたくなる。 まずは一口、ほんの少しでいい、甘味を口に入れた瞬間の、脳がすうっとして、幸せな気持ちになるあの瞬間。 形は可愛く。目でも楽しんでから、少しずつ形を崩して、口の中に運んでいく。 そして食べる場所も、素敵な方がいい。あのいい感じの店に行く、という高揚感が、甘味の浪漫を倍増させる。 そんな素敵な甘味処を夢見る私の理想郷が、この作品にはあった。 ★★★★★ 場所は東京、「雑貨店とある」と看板が出ているお店。中には和雑貨が並び、落ち着いた雰囲気。店内には飲食スペースが設けられ、店主の手による飲料や甘味が提供される。 その店には何かに躓いたり、落ち込んだりする人が引き寄せられる。彼らは店の雰囲気と、何よりも提供される甘味に驚き、癒されていく。 季節のメニューが響いたり、懐かしの味に感涙したり、食材の意味に感動したり……という「メニューの小粋さ」も素晴らしい。しかしそれ以上に、どのメニューも甘さが脳天に響きそう! 店主の甘味は、自分のこだわりよりも食材や食べるお客の事を考えて作られていて、甘味好きのツボを徹底して突いてくる。お客と甘味の話をする、どこか呑気な店主は楽しそうだ。 そんな「雑貨店とある」は素晴らしい癒しスポットなのだが……店主もバイト君も暇そうなのが、ちょっと心配。 お客を立てて損をする店主と、店を心配するバイト君、そして大量の柚子の行方は……次巻も、大切な癒しスポットがつぶれてしまわない様に祈りながら、出てくる甘味の味を空想して愉しみたい。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/03/22
美しすぎる日本代表の、重責と苦闘。
【世界と戦うアスリート漫画③〜スポーツコラム風に】 2020年3月17日現在、バドミントン女子ダブルスの世界ランキング十傑には、日本ペアが三組入っている。永く日本のトップであった福島×廣田組を、永原×松本組が猛追。そして2016リオ五輪金の髙橋×松友組は、2020東京五輪代表の二枠から遠ざかりつつある。 (2021.7.29追記あり) 新勢力の後塵を拝している髙橋×松友組も、かつては2012ロンドン五輪銀の藤井×垣岩組を乗り越えてきた。 世界レベルの国内選手と争い、乗り越える事で進化してきた、日本バドの女子ダブルス。その源流には、小椋×潮田組という伝説がいた。ルックスと実力を兼ね備えた二人には、余りにも過剰な期待と注目が集まったものだった。 ★★★★★ 『シャトル・プリンセス』の主人公は、日本トップクラスの女子バドミントン選手達。 インターハイを制して高校を卒業した有沢は、勝ち続ける事の重圧からバドミントン自体を辞めたいと考えるが、気迫で圧倒してくる西条に惹かれ、西条とのダブルスを申し入れる。 二人はすぐに頭角を現し、日本の頂点を獲ると世界への挑戦を始める。 界隈からの期待とやっかみ、ビジュアル面での過剰な人気、それに反して結果を残せないことへの批判、そして世界の壁。……2013年発表のこの作品は、恐らく2008年迄に小椋×潮田組が通ってきたと思われる苦闘の歴史をなぞる。 その上で、勝気で正直な西条がストレートに状況への違和感を表明するのを、若いのに落ち着いた有沢が冷静に受け止める、というやり取りで、過剰な重圧を二人で乗り越える過程が描かれ、この二人なら……という期待感が高まる。 長年『スマッシュ!』で高校生のバドミントン競技を描いてこられた咲香里先生が、この世界を見てこられた知見が詰まっているのだろう。観戦者の私が感じていた「オグシオ・フィーバー」への違和感も、当事者達の「それでも競技が注目されたい」という願いも、選手達の複雑な思いも……様々な思惑の絡んだ「女子ダブルス」が描かれていて、これは相当な問題作となるかも、と期待しながら次巻を待っていた。 ……残念ながら1巻で(中途半端な状態で)打ち切りのようだが、今後も各競技で現れるだろう「美しすぎる○○選手」を考え、日本代表の重責に思いを馳せるために、続刊は無いことを念頭に置いて、読んでみてもいいかもしれない。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/03/21
仕事帰りは一人、ビールでOFF! #1巻応援
ビールは解放のお酒、と言ってしまいたい。 仕事帰り、飲み屋でソワソワビールを待つ。本当にもう仕事終わりにしていいの?と思いながら、やって来たビールを口に含み、苦味を感じる前にグイグイ喉に流し込み……クハァー!の瞬間、スイッチがONからOFFに切り替わる、そんな気がする。 おひとりさま女子の主人公は、仕事帰りや面倒な飲み会の後、一人色々な店でビールと、こってり目の料理を堪能する。 ビールを飲んでクハァー!で対外モードから一人モードにスイッチを入れ替える。そして回想で、様々なビールと人との縁を思い出す。 一人で飲むという行為で、大切な人の存在をしみじみ確認する……そういう自分の保ち方、いいなぁと思う。 様々な地域や国の食文化が入り乱れる日本の都市では、共に提供されるビールもバラエティ豊かになる。分かる人ならこの作品の目次を見ているだけでも楽しいだろう。 海外勢はドイツ、ベルギー、イタリア、メキシコ、アメリカ、中国。日本からもメジャー会社のお馴染みの奴からクラフトビールと、幅広い。ビールの蘊蓄は最小限に、料理との取り合わせを魅力いっぱいに取り上げており、読んでいて喉が鳴る。というか、一緒にクハァー!をやりたくなる。 読み終わった後、取り敢えず身近でどんなビールが飲めるかな……という基準で飲食店を探したくなる、そんな漫画だ。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/03/20
世界と闘う乙女の身体美!
【世界と戦うアスリート漫画②〜スポーツコラム風に】 『もういっぽん!』等の柔道女子漫画を描かれる村岡ユウ先生が作画を担当された、七人制ラグビー女子日本代表が2016年リオ五輪出場を目指した記録であるこの作品。まず注目すべきは、闘う女子の身体描写である。 肥大した太腿、広い肩幅、鍛えて大きくなった身体に比して、小さな頭。そのプロポーションが、自然かつ美しく描かれている。レオナルド・ダ・ヴィンチがかつて導き出した理想の比率が、コートで躍動する、その美しさ、力強さ! 世界で闘う為に、極限まで鍛えられた身体に感動させられた後で、それがむごい程にぶつかり合い、弾き飛ばされ、振り解かれるのを見る時、私達は世界レベルの厳しさを共に体感する事になる。これでもまだ、敵わないのか……と。 日本の女子ラグビーの競技人口は2012年で2355人(https://www.jpnsport.go.jp/kokuritu/sisetu/kankou/tabid/409/Default.aspx )。世界1位のニュージーランドの約1万人には敵わないが、1988年の女子協会設立以来の普及・強化の努力で幼少からラグビーに親しむ女子も増え、その中から生まれた代表選手達が、より高い世界を見据えていた。 そしてそこに、他競技からの転向組が混ざり合っていく。 物語は陸上の円盤投げからの転向組・ラグビー歴1年の桑井亜乃選手が代表に招集されるところから始まる。 ラグビーにおいては当たり負けない事も重要だが、七人制では更に、走り負けない事が重視される。短い試合時間・速い展開・短いインターバルという特性から、気持ちの切り替えの速さも大切なようだ。 そういう点に強みを持っていれば、他競技で活躍してきた転向組にもラグビー経験の浅さを補ってチームを底上げし、鼓舞する可能性はある。 陸上の円盤投げで上を目指すのを諦めた桑井選手は、特性を見込まれてラグビーを始めるが、すぐに次を見据え前向きなスピリットで走り続け、苦しいチームに明るい風を入れる事で、リオ五輪出場の夢を繋いだ。そんな風に個人もチームも、例え挫折があっても、前向きにチャレンジし続ける事が大事なのだ、という事をこの作品は教えてくれる。 因みに、日本のラグビー女子競技人口は、平成30年度で4672人に増えた。(https://blog.rcn.or.jp/rugby/ ) リオ五輪代表の頑張りが、結果としてこの様な所にも現れている。その頑張りの軌跡、前を向いて進んだ姿の記録として、この作品は大事な物と言えるだろう。