きっと「青空」は変わらない俺と悪魔のブルーズ 平本アキラナベテツアメリカの痛ましいニュースが届いた日に、久々に単行本を手に取りました。黒人が明確に差別されていた時代の伝説のブルース・ギタリスト、ロバート・ジョンソン。 RJが生きた時代のアメリカでは、リンチが普通に行われています。それは人々の差別意識が社会における「常識」だったからです。当然、現代においてそれは否定されるものです。しかし、その意識というのは地下茎のように隠匿されているだけなのかもしれないと、悲報を聞く度に突きつけられているような気にさせられます。 ブルーハーツの永遠の名曲に、「青空」という曲があります。十代の頃にこの曲を聴いて、多少は他人に優しくなれただろうかと、四十代の中年は自省をします。RJの生きた時代も、空はきっと青かったのだろうし、100年先でも空は青いままだろうと。 作品についてあまり触れていないのですが、この作品は音楽マンガとしてもアクションマンガとしても歴史マンガとしても超一級の作品です(描くのが難しい作品であることも容易に想像出来るのですが…)。 どれほどの時間がかかろうと、この作品がきちんと完結することを願っています。 マンガとは関係のない蛇足ではありますが、故・石田長生さんがRJを唄った「汚職」という曲があります。悪魔との取引を「汚職」という言葉に込めた言葉のセンスの素晴らしさがとても光る曲なのですが、トリビュートアルバムでヒロトがカバーしていることも併せて記しておきます(「青空」は石田さんもカバーしてます。以下、本当に蛇足でした)あなたの周りにも、バクちゃんはいる #1巻応援バクちゃん 増村十七ナベテツご縁があり、連載前からバクちゃんを読んでいました。毎月ビームを購入していますが、楽しみにしていましたし、単行本が発売されてとても喜んでいます。 夢の枯れた星から、地球に移民としてやってきたバクちゃん。作者の増村さん自身が海外に住んでいた経験があり、実際に海外で過ごした経験と視点が、日本という国や社会を見る眼差しの根底にあると思っています。 一人暮らしを始めて20年以上になるのですが、故郷にいた頃よりも確実に、海外出身の人や海外にルーツを持つ人は増えていると思います。 あなたの周り、自分の周りにも、バクちゃんやダイフクくんはきっといます。彼らは、共存すべき他者であり、共に社会を構成するメンバーです。 この国には、沢山のバクちゃんがいる。この作品は、そのことを教えてくれます。一人でも多くのバクちゃんが、お腹いっぱい夢を食べられますように。子供にも大人にも勧めたい土砂どめ奉行ものがたり 青木朋ナベテツ昔々あるところに、というナレーションが頭に流れてくるのはある年代以上のような気もしますが、近世の日本を舞台にしたお伽噺であり、また史料に基づいた良作でした。 作者の青木朋先生は、中国に材を取った歴史漫画を描いていたり、あるいは現代舞台のミステリを描いたり幅広く作品を描かれていますが、この漫画は大人から子供まで楽しめる良い漫画だと思っています。 現代の日本に生きている自分達は、水で苦労することなんて恐らくほぼない訳ですが、近代以前において水利というものがどれだけ大切だったのか教えてくれますし、お上と庶民という感覚は日本では変わらないのかなあと想像したりもします。柔らかく可愛らしい絵柄で読みやすく、良作として薦められる漫画です。柔らかなポジティブさ月光 ウチヤマユージナベテツイントロダクションで読者に与えられる情報から、何やら不穏な空気が漂う物語だと最初は思ったりもしました。ただ、読後感は爽やかな物であり、作者のストーリーテラーとしての手腕の鮮やかさを称えたくなるのではないかと思います。 実際、作者の他の作品を読んでも、ストーリーのフックの掛け方であったり、伏線の回収の方法であったり、上手いなあと感心します。 些か古い言い方だとは思いますが、「社会派」と呼ばれるような作品だと思います。前向き過ぎないポジティブさを感じる作品であり、ここ最近のこの社会の風潮とか出来事に疲れているなあともし感じている方に読んでもらえたら、なんてことを考えたりもします。異才の原点ツノウサギ 柴本翔ナベテツ柴本翔先生の作品は、「パンデモニウム」を最初に読んだのですが、その後にこの作品を読みました。パンデモニウム~ダキニと続く柴本作品の原点であり、柴本作品以外では中々見ることの出来ない(そして近年珍しい)、西洋のお伽噺を感じさせるファンタジーだと思います。 紡がれる物語には、作者の抱えた「何か」(恐らくそれは創作の原点とも言える衝動なのではないかとも思います)を感じさせ、この世界で作者が描きたいものに一読者として強く惹かれます。 大昔、とあるゲームのコピーとして物議をかもした「竜退治には、もう飽きた」というフレーズかありました。剣と魔法という王道のファンタジーに食傷気味の方に勧めたいと思います。ナベテツ1年以上前【マンバのマンガ履歴書】 ▼はじめて読んだマンガ [多分朝日新聞の「ペエスケ」] ▼はじめて買った単行本・雑誌 [コミックボンボン・プラモ狂四郎] ▼幼少期に読んでたマンガ・マンガ家 [ボンボン・コロコロ・サンデー・ジャンプ辺り] ▼青春時代に読んでたマンガ・マンガ家 [基本、島本和彦先生の作品。] ▼大人になって好きになったマンガ・マンガ家 [山程ありますけど、豊田徹也先生、池辺葵先生、衿沢世衣子先生あたりかな] ▼年齢問わず、ずっと好きずっと好きなマンガ・マンガ家 [マンガだとスローニン、マンガ家だと島本和彦先生] ▼「なんか面白い漫画ない?」って聞かれた時に答えるマンガ [へうげもの、団地ともお] ▼子孫へ受け継ぎたいマンガ [寄生獣、ヴィンランド・サガ、青空しょって] ▼死んだら棺桶に入れて欲しいマンガ [本は知恵の固まりなので焼くなら古本屋に持ってって下さい。] ▼最後に履歴書を書いてみた感想をぜひ! [まあこんなもんでしょうか。何かの参考になれば]自由広場皆さんの『マンガ履歴書』が見たい!4わかる「常識」を越える人々解剖医ハンター 黒釜ナオ 吉川良太郎ナベテツ伝統や風習、常識というものに囚われてしまうのは社会に生きていると仕方ない部分もあるのですが、この作品はそんな常識に真っ向から立ち向かった一人の医師の物語です。 解剖医ジョン・ハンター。「ドクタードリトル」「ナイフマン」「グール」というおよそ医者として不名誉なあだ名をつけられても、全く意に介せず己の仕事「解剖」で人体という地図を描き続けるハンター。 司馬遼太郎さんの「胡蝶の夢」という作品で、西洋の医学が幕末に受容される過程が描かれるのですが、ハンターのような存在が医学を進めたのだと想像させられました。 医学の歴史に詳しくない自分のような人間でも、楽しく刺激的な名作だと思います。還らざる時ホテルポパン 有間しのぶナベテツ心に傷を受け、膝を抱えてうずくまっていた少年の記憶。何に涙していたのかもう思い出せないけれど、悲しみが胸にあったことは覚えている。泣いたり叫んだり、衝動を抑えないでいられた日々を、ふと思い出した作品でした。 少年が少年でいられない日々から、少年に戻ることを許された場所〈ホテル・ポパン〉に辿り着くところから物語は始まります。そこで出会ったのは、時計を止めてしまった幽霊のような美女。彼女もまた、辛い過去を抱えたまま、大人になることを拒んでいました。 倒産寸前からホテルは再生し、またホテルで働く人々も、それぞれの抱えた過去から解放されて行きます。 有間先生の作品はこのマンガが初めてだったのですが、出会えて良かったタイトルでした。ナベテツ1年以上前ナタリーで見たこれからのイベント2つです https://natalie.mu/comic/news/361387 https://natalie.mu/comic/news/361859 自由広場漫画家イベント情報(サイン会・展覧会・原画展・講演など)トピック4わかる愛するという一つの例として純(ジューン)ブライド 𠮷田聡ナベテツまだ少年と呼ばれる頃に、何も知らずにこの作品を買って読みました。マセガギと言われても仕方ないし、母親にこっぴどく叱られたこともあります(それでも捨てられたりはしなかったんで良い親だと思います) 恋愛が甘い物である、ということは流石に否定出来ません。ただ、二人が一つ屋根に暮らすということは、終わらない「日常」に暮らすということでもあります。そこは決して天国ではないし、息が詰まるようなこともある。 それが「愛」という感情によって始まることだと、この作品はかつての少年に見せてくれました。恋人は決して美しいだけの存在ではない。自分と同じように肉体を持った存在であり、そのことで苦しめられることもあるんだと、異性のことを何も知らなかった頃に学んだものでした。 バブルの頃、恐らくこの作品のような生き方は現実感を失っていたのではないかと思います。今の時代にはどうでしょう。若者が貧しくなっている現実もありますが、こんな関係からは恐らく逃避するんじゃないかとも思います。ただ、作中に登場する人達は、自分自身を取り巻く日常に対して必死で生きています。誰に笑われても構わない。唯一人のために生きているという現実は、自分のためだけに生きている人間には、まっすぐで美しいものに映ります。 この時期スローニンやDADAを描いていた吉田聡先生にとって、明らかに異なる作品であり、ある年代にとっては忘れられない作品だと思っています。きっと恋は美しい路地恋花 麻生みことナベテツグッドアフタヌーンの創刊号を買って読んで、この作品との出会った幸運に感謝しました。 一話完結のオムニバス形式で描かれる、京都に住む職人の恋と仕事の物語。 恋に焦がれる年齢でも、そんな年ではないと思う大人でも、もし良ければ読んで欲しい。あなたの隣に誰かがいても居なくても、きっとこの物語に登場する職人達に何かしらの共感を抱くのではないかと思っています。 帯に書かれていたコピーも含めていとおしさを感じる、そんな美しい物語です。震災後の「スカイハイ」天間荘の三姉妹 スカイハイ 高橋ツトムナベテツ想像を絶するような災害に遭った時、創作者はどんな言葉を紡ぐことが出来るのか。東日本大震災の後、多くのクリエイターが様々な表現で向き合いましたが、この物語もそんな状況と対峙した作品の一つです。 この作品の前に描かれた「ヒトヒトリフタリ」の基底に感じられたのは怒りと前に進む意思でしたが、本作はより深い哀しみと、前を向く希望でした。 作者の代表作の一つであるスカイハイシリーズの中で、本作は恐らく最も広範な読者に受け入れられる作品なのではないかと思います。 自分の好きな劇作家の鴻上尚史さんの文章に、「現実の出来事に対して、演劇は無力であり、涙の根元の原因を無くすことは出来ない。ただ、その涙をそっと拭うハンカチのような作品になれば幸いです」といった主旨の言葉があり、この作品にもそんな想いが感じられました。 災害で辛い気持ちを抱えている人の現実に、何か出来ることがあると思うほど傲慢ではありません。ただ、自分のいる所で日々出来ることをする。他者に想いを馳せる想像力のきっかけにとなる作品の一つなんじゃないかと思っています。 « First ‹ Prev … 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 Next › Last » もっとみる
きっと「青空」は変わらない俺と悪魔のブルーズ 平本アキラナベテツアメリカの痛ましいニュースが届いた日に、久々に単行本を手に取りました。黒人が明確に差別されていた時代の伝説のブルース・ギタリスト、ロバート・ジョンソン。 RJが生きた時代のアメリカでは、リンチが普通に行われています。それは人々の差別意識が社会における「常識」だったからです。当然、現代においてそれは否定されるものです。しかし、その意識というのは地下茎のように隠匿されているだけなのかもしれないと、悲報を聞く度に突きつけられているような気にさせられます。 ブルーハーツの永遠の名曲に、「青空」という曲があります。十代の頃にこの曲を聴いて、多少は他人に優しくなれただろうかと、四十代の中年は自省をします。RJの生きた時代も、空はきっと青かったのだろうし、100年先でも空は青いままだろうと。 作品についてあまり触れていないのですが、この作品は音楽マンガとしてもアクションマンガとしても歴史マンガとしても超一級の作品です(描くのが難しい作品であることも容易に想像出来るのですが…)。 どれほどの時間がかかろうと、この作品がきちんと完結することを願っています。 マンガとは関係のない蛇足ではありますが、故・石田長生さんがRJを唄った「汚職」という曲があります。悪魔との取引を「汚職」という言葉に込めた言葉のセンスの素晴らしさがとても光る曲なのですが、トリビュートアルバムでヒロトがカバーしていることも併せて記しておきます(「青空」は石田さんもカバーしてます。以下、本当に蛇足でした)あなたの周りにも、バクちゃんはいる #1巻応援バクちゃん 増村十七ナベテツご縁があり、連載前からバクちゃんを読んでいました。毎月ビームを購入していますが、楽しみにしていましたし、単行本が発売されてとても喜んでいます。 夢の枯れた星から、地球に移民としてやってきたバクちゃん。作者の増村さん自身が海外に住んでいた経験があり、実際に海外で過ごした経験と視点が、日本という国や社会を見る眼差しの根底にあると思っています。 一人暮らしを始めて20年以上になるのですが、故郷にいた頃よりも確実に、海外出身の人や海外にルーツを持つ人は増えていると思います。 あなたの周り、自分の周りにも、バクちゃんやダイフクくんはきっといます。彼らは、共存すべき他者であり、共に社会を構成するメンバーです。 この国には、沢山のバクちゃんがいる。この作品は、そのことを教えてくれます。一人でも多くのバクちゃんが、お腹いっぱい夢を食べられますように。子供にも大人にも勧めたい土砂どめ奉行ものがたり 青木朋ナベテツ昔々あるところに、というナレーションが頭に流れてくるのはある年代以上のような気もしますが、近世の日本を舞台にしたお伽噺であり、また史料に基づいた良作でした。 作者の青木朋先生は、中国に材を取った歴史漫画を描いていたり、あるいは現代舞台のミステリを描いたり幅広く作品を描かれていますが、この漫画は大人から子供まで楽しめる良い漫画だと思っています。 現代の日本に生きている自分達は、水で苦労することなんて恐らくほぼない訳ですが、近代以前において水利というものがどれだけ大切だったのか教えてくれますし、お上と庶民という感覚は日本では変わらないのかなあと想像したりもします。柔らかく可愛らしい絵柄で読みやすく、良作として薦められる漫画です。柔らかなポジティブさ月光 ウチヤマユージナベテツイントロダクションで読者に与えられる情報から、何やら不穏な空気が漂う物語だと最初は思ったりもしました。ただ、読後感は爽やかな物であり、作者のストーリーテラーとしての手腕の鮮やかさを称えたくなるのではないかと思います。 実際、作者の他の作品を読んでも、ストーリーのフックの掛け方であったり、伏線の回収の方法であったり、上手いなあと感心します。 些か古い言い方だとは思いますが、「社会派」と呼ばれるような作品だと思います。前向き過ぎないポジティブさを感じる作品であり、ここ最近のこの社会の風潮とか出来事に疲れているなあともし感じている方に読んでもらえたら、なんてことを考えたりもします。異才の原点ツノウサギ 柴本翔ナベテツ柴本翔先生の作品は、「パンデモニウム」を最初に読んだのですが、その後にこの作品を読みました。パンデモニウム~ダキニと続く柴本作品の原点であり、柴本作品以外では中々見ることの出来ない(そして近年珍しい)、西洋のお伽噺を感じさせるファンタジーだと思います。 紡がれる物語には、作者の抱えた「何か」(恐らくそれは創作の原点とも言える衝動なのではないかとも思います)を感じさせ、この世界で作者が描きたいものに一読者として強く惹かれます。 大昔、とあるゲームのコピーとして物議をかもした「竜退治には、もう飽きた」というフレーズかありました。剣と魔法という王道のファンタジーに食傷気味の方に勧めたいと思います。ナベテツ1年以上前【マンバのマンガ履歴書】 ▼はじめて読んだマンガ [多分朝日新聞の「ペエスケ」] ▼はじめて買った単行本・雑誌 [コミックボンボン・プラモ狂四郎] ▼幼少期に読んでたマンガ・マンガ家 [ボンボン・コロコロ・サンデー・ジャンプ辺り] ▼青春時代に読んでたマンガ・マンガ家 [基本、島本和彦先生の作品。] ▼大人になって好きになったマンガ・マンガ家 [山程ありますけど、豊田徹也先生、池辺葵先生、衿沢世衣子先生あたりかな] ▼年齢問わず、ずっと好きずっと好きなマンガ・マンガ家 [マンガだとスローニン、マンガ家だと島本和彦先生] ▼「なんか面白い漫画ない?」って聞かれた時に答えるマンガ [へうげもの、団地ともお] ▼子孫へ受け継ぎたいマンガ [寄生獣、ヴィンランド・サガ、青空しょって] ▼死んだら棺桶に入れて欲しいマンガ [本は知恵の固まりなので焼くなら古本屋に持ってって下さい。] ▼最後に履歴書を書いてみた感想をぜひ! [まあこんなもんでしょうか。何かの参考になれば]自由広場皆さんの『マンガ履歴書』が見たい!4わかる「常識」を越える人々解剖医ハンター 黒釜ナオ 吉川良太郎ナベテツ伝統や風習、常識というものに囚われてしまうのは社会に生きていると仕方ない部分もあるのですが、この作品はそんな常識に真っ向から立ち向かった一人の医師の物語です。 解剖医ジョン・ハンター。「ドクタードリトル」「ナイフマン」「グール」というおよそ医者として不名誉なあだ名をつけられても、全く意に介せず己の仕事「解剖」で人体という地図を描き続けるハンター。 司馬遼太郎さんの「胡蝶の夢」という作品で、西洋の医学が幕末に受容される過程が描かれるのですが、ハンターのような存在が医学を進めたのだと想像させられました。 医学の歴史に詳しくない自分のような人間でも、楽しく刺激的な名作だと思います。還らざる時ホテルポパン 有間しのぶナベテツ心に傷を受け、膝を抱えてうずくまっていた少年の記憶。何に涙していたのかもう思い出せないけれど、悲しみが胸にあったことは覚えている。泣いたり叫んだり、衝動を抑えないでいられた日々を、ふと思い出した作品でした。 少年が少年でいられない日々から、少年に戻ることを許された場所〈ホテル・ポパン〉に辿り着くところから物語は始まります。そこで出会ったのは、時計を止めてしまった幽霊のような美女。彼女もまた、辛い過去を抱えたまま、大人になることを拒んでいました。 倒産寸前からホテルは再生し、またホテルで働く人々も、それぞれの抱えた過去から解放されて行きます。 有間先生の作品はこのマンガが初めてだったのですが、出会えて良かったタイトルでした。ナベテツ1年以上前ナタリーで見たこれからのイベント2つです https://natalie.mu/comic/news/361387 https://natalie.mu/comic/news/361859 自由広場漫画家イベント情報(サイン会・展覧会・原画展・講演など)トピック4わかる愛するという一つの例として純(ジューン)ブライド 𠮷田聡ナベテツまだ少年と呼ばれる頃に、何も知らずにこの作品を買って読みました。マセガギと言われても仕方ないし、母親にこっぴどく叱られたこともあります(それでも捨てられたりはしなかったんで良い親だと思います) 恋愛が甘い物である、ということは流石に否定出来ません。ただ、二人が一つ屋根に暮らすということは、終わらない「日常」に暮らすということでもあります。そこは決して天国ではないし、息が詰まるようなこともある。 それが「愛」という感情によって始まることだと、この作品はかつての少年に見せてくれました。恋人は決して美しいだけの存在ではない。自分と同じように肉体を持った存在であり、そのことで苦しめられることもあるんだと、異性のことを何も知らなかった頃に学んだものでした。 バブルの頃、恐らくこの作品のような生き方は現実感を失っていたのではないかと思います。今の時代にはどうでしょう。若者が貧しくなっている現実もありますが、こんな関係からは恐らく逃避するんじゃないかとも思います。ただ、作中に登場する人達は、自分自身を取り巻く日常に対して必死で生きています。誰に笑われても構わない。唯一人のために生きているという現実は、自分のためだけに生きている人間には、まっすぐで美しいものに映ります。 この時期スローニンやDADAを描いていた吉田聡先生にとって、明らかに異なる作品であり、ある年代にとっては忘れられない作品だと思っています。きっと恋は美しい路地恋花 麻生みことナベテツグッドアフタヌーンの創刊号を買って読んで、この作品との出会った幸運に感謝しました。 一話完結のオムニバス形式で描かれる、京都に住む職人の恋と仕事の物語。 恋に焦がれる年齢でも、そんな年ではないと思う大人でも、もし良ければ読んで欲しい。あなたの隣に誰かがいても居なくても、きっとこの物語に登場する職人達に何かしらの共感を抱くのではないかと思っています。 帯に書かれていたコピーも含めていとおしさを感じる、そんな美しい物語です。震災後の「スカイハイ」天間荘の三姉妹 スカイハイ 高橋ツトムナベテツ想像を絶するような災害に遭った時、創作者はどんな言葉を紡ぐことが出来るのか。東日本大震災の後、多くのクリエイターが様々な表現で向き合いましたが、この物語もそんな状況と対峙した作品の一つです。 この作品の前に描かれた「ヒトヒトリフタリ」の基底に感じられたのは怒りと前に進む意思でしたが、本作はより深い哀しみと、前を向く希望でした。 作者の代表作の一つであるスカイハイシリーズの中で、本作は恐らく最も広範な読者に受け入れられる作品なのではないかと思います。 自分の好きな劇作家の鴻上尚史さんの文章に、「現実の出来事に対して、演劇は無力であり、涙の根元の原因を無くすことは出来ない。ただ、その涙をそっと拭うハンカチのような作品になれば幸いです」といった主旨の言葉があり、この作品にもそんな想いが感じられました。 災害で辛い気持ちを抱えている人の現実に、何か出来ることがあると思うほど傲慢ではありません。ただ、自分のいる所で日々出来ることをする。他者に想いを馳せる想像力のきっかけにとなる作品の一つなんじゃないかと思っています。
ナベテツ1年以上前【マンバのマンガ履歴書】 ▼はじめて読んだマンガ [多分朝日新聞の「ペエスケ」] ▼はじめて買った単行本・雑誌 [コミックボンボン・プラモ狂四郎] ▼幼少期に読んでたマンガ・マンガ家 [ボンボン・コロコロ・サンデー・ジャンプ辺り] ▼青春時代に読んでたマンガ・マンガ家 [基本、島本和彦先生の作品。] ▼大人になって好きになったマンガ・マンガ家 [山程ありますけど、豊田徹也先生、池辺葵先生、衿沢世衣子先生あたりかな] ▼年齢問わず、ずっと好きずっと好きなマンガ・マンガ家 [マンガだとスローニン、マンガ家だと島本和彦先生] ▼「なんか面白い漫画ない?」って聞かれた時に答えるマンガ [へうげもの、団地ともお] ▼子孫へ受け継ぎたいマンガ [寄生獣、ヴィンランド・サガ、青空しょって] ▼死んだら棺桶に入れて欲しいマンガ [本は知恵の固まりなので焼くなら古本屋に持ってって下さい。] ▼最後に履歴書を書いてみた感想をぜひ! [まあこんなもんでしょうか。何かの参考になれば]自由広場皆さんの『マンガ履歴書』が見たい!4わかる
ナベテツ1年以上前ナタリーで見たこれからのイベント2つです https://natalie.mu/comic/news/361387 https://natalie.mu/comic/news/361859 自由広場漫画家イベント情報(サイン会・展覧会・原画展・講演など)トピック4わかる
アメリカの痛ましいニュースが届いた日に、久々に単行本を手に取りました。黒人が明確に差別されていた時代の伝説のブルース・ギタリスト、ロバート・ジョンソン。 RJが生きた時代のアメリカでは、リンチが普通に行われています。それは人々の差別意識が社会における「常識」だったからです。当然、現代においてそれは否定されるものです。しかし、その意識というのは地下茎のように隠匿されているだけなのかもしれないと、悲報を聞く度に突きつけられているような気にさせられます。 ブルーハーツの永遠の名曲に、「青空」という曲があります。十代の頃にこの曲を聴いて、多少は他人に優しくなれただろうかと、四十代の中年は自省をします。RJの生きた時代も、空はきっと青かったのだろうし、100年先でも空は青いままだろうと。 作品についてあまり触れていないのですが、この作品は音楽マンガとしてもアクションマンガとしても歴史マンガとしても超一級の作品です(描くのが難しい作品であることも容易に想像出来るのですが…)。 どれほどの時間がかかろうと、この作品がきちんと完結することを願っています。 マンガとは関係のない蛇足ではありますが、故・石田長生さんがRJを唄った「汚職」という曲があります。悪魔との取引を「汚職」という言葉に込めた言葉のセンスの素晴らしさがとても光る曲なのですが、トリビュートアルバムでヒロトがカバーしていることも併せて記しておきます(「青空」は石田さんもカバーしてます。以下、本当に蛇足でした)