チェルノブイリの祈り

今はその国で戦争が行われている。

チェルノブイリの祈り スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 熊谷雄太(STUDIO H) 今中哲二
ゆゆゆ
ゆゆゆ

戦争前は聞いても覚えられなかった地名。 すっかりわかるようになっていた。 キエフ、チェルノブイリ通り。 戦争がある日常が通常となってしまっている国。 読んでいて思い出したのは、その戦争が起こる前、コロナよりも前、まだスマートフォンもなかった頃。 原発跡地がある街に、ガイガーカウンターとともにバイクで出かけ、自然に帰ろうとする街を写真に撮っていた女性(たしか女性だった)のホームページがあった。 森に飲まれつつある、時が止まった美しい街だけど、これほど線量がある。ここから先は行けない。 など、写真とともに彼女は書いていた。 そのホームページに、街の手前、まだ放射線量が高い地域に、よそへ越さず、昔からの生活を続けている家族がいたとも書かれていた。 線量の高いものを食べる、それがなんだ、この土地から離れたくないのだと言っていた。 あの人たちは今どうしているんだろう。 さて、漫画に登場する人たちの行動に、どうしてそんな恐ろしいことを!と思ってしまう。 でも、そもそも知らないのだし、放射線も放射能も見えないからわからないのだし。 自分も言われなければ同じことをしているのだろうし。 未来人はやるせない気持ちにしかなれない。 読んでみて、第一話が鮮烈な印象を残してくれたのだけど、その中でも街の人がバタバタと亡くなっていく様子が淡々とした描写で、なんともそら恐ろしかった。 そして主人公の女性が少しでも幸せに今を生きるのはどの方法だったのか、考えてしまった。 口述史というのは非常にセンセーショナルなものだけど、この作品も類に漏れず、読んだ人に思うことを残す激しさがある。

動物人間

人間が家畜のように扱われる世界

動物人間 岡田卓也
六文銭
六文銭

他の方も言及されていますが、この著者 『ワニ男爵』とか『愛しのアニマリア』とか『ナマケものがナマケない』とか、ゆる~い動物ギャグが特徴だったのですが・・・ 新作は、その真逆! シリアスな猟奇的かつホラーな衝撃作。 めっちゃたまげました。 『動物人間』というタイトルからして不穏でしたが、全くその通りの内容。 動物が人間のようにふるまい、喋る村。 そこに迷い込んだ人間を、時に家畜のように飼育し、時に狩りのように追い込む。 そして、動物が人間を食べるのである。 普段、人間がやっていることを逆にするだけでめっちゃ怖い。 両方、知恵があって喋るからより一層不気味だったりします。 これまでの作風とのギャップにおったまげましたが、独特の目線が持ち味な著者だったので、本作も普通の展開で終わりません。 ネタバレなので控えますが、オムニバス形式で村に迷いこんだ人間を描くのかなと思っったのですが、そうではなく話が繋がっていたのも秀逸だし、最後は結構衝撃的でした。 あーそういう終わり方するのか?と。 『ジンメン』とか動物が襲う系の話だけでなく、ホラー好きな人にもおすすめなので、1巻完結ですしぜひ読んでほしい!