仮面のメイドガイ【巻末書下ろし付き】

小山力也イロモノ伝説の切っ掛け、筋肉メイドの大暴れ

仮面のメイドガイ【巻末書下ろし付き】 赤衣丸歩郎
ピサ朗
ピサ朗

まあ何というか、作品自体は異邦人が来てドタバタな日々を送るギャグコメディであり、異邦人ポジションの有能メイドさんなフブキさんと仮面のメイドガイ(男)コガラシが、襲い来る刺客の撃退や嵐を起こし鎮めるドタバタな日常を過ごしていく作品で とにかく仮面のメイドガイ、コガラシがインパクト抜群、巨漢で仮面で文武両道だが明らかに無理のあるメイド服を着こなし幾つもの特殊能力を持つ破天荒な存在で、強烈なキャラクター。 そしてこの作品、アニメ化された際に当時「頼れる兄貴分」「カッコいいおじさん」的なイメージのあった小山力也氏がメイドガイを怪演し、さながら若本規夫氏のちよちゃんのお父さんのような転機…とまでは行かないが、この作品のアニメ以降イロモノキャラを多数好演する等、その演技の幅を見せる切っ掛けとなった感がある。 ハッキリ言ってメイドガイの怪人っぷりに乗れるか否かなのだが、外見も中身も無茶苦茶だがメイドとしてのスキルは高く、多少エロネタも有るし、当時決して大ヒットというわけでもないのだが、小山力也氏の怪演も手伝ってか観測範囲では意外と女性人気もあった。 変態の域にまで達した超人メイドスキルの数々や、悪気はなくとも死ぬほど疲れる行動をとりまくる、ギャグの為のキャラではあるのだが、見ようによっては主人に忠実ながら甘やかさず試練を促し、しかし本当に危ない危機からはしっかり守り、逞しいボディに顔を隠して声が小山力也氏とくれば、なるほど、男目線でも人気が出るのは分からないでもない。 一応ご主人様のなえかや、ちゃんとしたメイドさんなフブキさんとか、可愛い女性キャラもいるし、コガラシの暴走っぷりやそれに振り回される面々も笑える。 ただ若干尻切れトンボというか、打ち切りの感は有るのだが後半は息切れか冗長な部分も有ったので、コガラシのキャラの強烈さも含めて文句なしにおススメできるかというと難しい。

手天童子

漫画家に何かが憑りついて描かれた漫画と言えばこれ

手天童子 永井豪
完兀
完兀

作者に何かが憑りついて生まれる作品、あるいは見えない力に突き動かされて生まれる作品は名作率が高いと思われる。 どの創作物がこのことに当てはまりそうかは各人が知っているものに思いを馳せてくれればいいが、永井豪作品なら、いや漫画ならこの手天童子がその代表だ。 永井先生は本作制作にあたって「鬼が赤ん坊をくわえている映像が見えて、導かれるように描いた」と巻末解説やインタビューで語っている。また鬼の首取材をきっかけに執筆中は「鬼に祟られていた」とも語り、数々の怪現象と悪夢に苦しめられた結果、おはらいを受けることで最後まで描き切れたと振り返っている。 こんな背景を基にして描かれた作品、締まらない終わり方じゃ一生祟られるんじゃないかと不安になるが、そこはご安心。まさに導かれたかのような綺麗なハッピーエンドを迎える。涙涙で描いたというあの最終回をもってお祓いは完了したといえるだろう。     本作は夫婦の前に突如として現れた、恐ろしい鬼同士の取っ組み合いの争いから始まり、鬼の口の中の赤子の存在に気付いた妻・京子の、鬼にも臆さない愛ゆえの行動から物語が動きだす。 ストーリーは第一話で鬼から語られた「15年後に迎えに来る」という約束が果たされるまでの前半、果たされてからの後半に分けて考えられる。 そう、前半の終わりこそが、物語の始まりから続いてきた、子を思う母の愛が鬼によって引き裂かれる悲劇の場面なのだ。この辺を描いてるとき、永井先生は無茶苦茶苦しめられたに違いない。もしここで読むのをやめれば、読者だって悪夢にうなされかねない。 前半はサスペンス・バイオレンスホラー漫画に分類できそうだが、後半では一気にSFスペクタクルにスケールが広がる。主人公は自身の出自の謎を追いながら宇宙と時空を駆け巡るのだが、子と妻を思って孤軍奮闘する父・竜一郎パートが都度挿入され、やがて家族愛で結ばれるべく物語はクライマックスへ収束していく。 あの父がこれまたかっこいいのだ。彼の「鬼とは…」と語って狂気じみた行動に出るシーンに私は痺れた。     本作は鬼の伝承について取り上げ、またその伝説を巧みにストーリーに組み込んでいるのも魅力の一つだが、展開的に取り上げられても不思議ではなかった、ある有名な鬼がいる。しかしその鬼は作中で触れられることはない。 その鬼について触れれば、「鬼とは…」で語られる本筋からやや外れたところに焦点が合うことになりかねないから、あえて避けられたのだろう。それがまた、本作を引き締まったものにしてくれている。

映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ ストーリーブック

映画を見てから読みました

映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ ストーリーブック サンエックス 主婦と生活社
酒チャビン
酒チャビン

マンガというか、絵があって、キャプション的な文章がついてるというもので、どちらかというと、字の多さ的にはけっこうある方なので、小さいお子さん向けに購入を検討されている親御さんは注意です。(そもそもすみっコたちは話せませんので、マンガにするとスラムダンクの山王戦の後半みたくならざるを得ず、その方がお子さんには理解が難しいかもしれません) 私は大人なので、難なく読破できました。 基本は映画があって、それを再構成したものなので、映画を見た自分としては特に目新しさはなかったのですが、映画を見て感じたジンワリとした感動を手元に何かしらの形で残しておきたく購入しました。たまに今でも見返しています。 終盤の、帰り道にふぁいぶがとかげののほほんとした顔から何かを感じ取ってしまうシーンと、その夜にふぁいぶがとかげの宝箱をぶちまけてしまうシーンはいつ見てもほのぼの泣けてきます。 再構成のレベルも総じて高く「映画を見逃してしまったけれどもDVDを買うほどでもないんだよな、レンタルも返すのめんどくさいし・・・」という方は、こちらの本だけ読んでも十分余すところなく魅力を堪能することができると思います。 イノッチと本上まなみさんの音声が聞きたい方はごめんなさいDVDでお願いします。 ちなみにこの映画はすみっコぐらしの映画の第2弾なのですが、第1弾と比べると、人気のとかげをメインにしたり等、少し「すみっコスピリッツ」を忘れてるところがあるんじゃないかと感じてしまいました。ほんの少しですが。 第3弾があるようなので、ぜひとんかつメインでお願いしたいです。

43歳、子供部屋おばさんだって愛されたい

闇と言えるのか、これが当たり前なのか

43歳、子供部屋おばさんだって愛されたい 丘邑やち代 松浦すみえ
六文銭
六文銭

子供部屋おじさんという、いつまでも実家にいる妙齢男性のことを指す言葉があるように、当然、子供部屋おばさんだってある。 考えればわかることだ。 本作の主人公は、まさにこれ。 正社員ではなくパート勤務なこともあり、自立するだけの経済的ゆとりがないので母親と一緒に暮らす主人公が、マッチングアプリを通して男性と出会い、結婚を狙うという話。 齢は43歳。 色々思うことはグッとこらえるのだが、それでもマジかよと声をもらしたのが、この年齢で結構軽薄なところ。 つまり、マッチングアプリを通して出会う男性と、体だけの関係だけでも求めてしまうところ。 20代ならまだしも、40代でこの境地なのが、たまげた。 漫画の脚色なのかもしれないが、全部が嘘とも思えないほどリアリティを感じるので、コレが令和の時代の現実なのかもと考えなおすと読んでいてなんともいえない気持ちになった。 何事も自分のことは客観視しにくいから、明らかに間違ったことをしていても気づかないもんだし。 案外、こういう人が多いのかもしれないと納得してしまった。 最後どうなるのかわからないけど、安易に、結婚ENDにしないでほしいとか思ってしまう。