宇宙の卵

すべての人がインスタント殺人能力を持った世界 #完結応援

宇宙の卵 程野力丸
兎来栄寿
兎来栄寿

程野力丸さんは、読み切りの「毒で探して三千里」も尖ったセンスを感じさせてくれていました。そして、ジャンプルーキーで金賞を獲ったものをリメイクしたこの連載版『宇宙の卵』も、その独特のエッジを更に研ぎ澄まして送り出してきています。 最初の1ページから、主人公・ルイの祖父による ”世の中はな… 「事象の連続」に過ぎん” ”…遠い未来からこの世を見るとな… ”戦争”も”飢饉”も”虐殺”もただの"事象” 出来事でしかないんじゃよ” と、非常に俯瞰的かつ示唆的なセリフから始まり、ちょっと普通ではない雰囲気が溢れ出します。それは、個人的にかなり好みな雰囲気でもあります。 そして、1話目にして世界は劇的な変化を迎えてしまいます。世界人口の2割が死滅した後、「人を数秒見つめるだけで殺す能力」を世界中のあらゆる人間が持つようになってしまうのです。当然、秩序は崩壊し世界中が滅茶苦茶になるわけですが、そんな世界でルイが自責を感じながら祖父の教えを胸に、学習をして世界の事象を変えていこうとする物語です。 かなり破天荒な設定でその気になれば重箱の隅をつつくような指摘はいくらでもできそうですが、さまざまな状況に対する仮定を立てて楽しむことができる、想像力の凝らされた設定は魅力です。また、一見すると荒唐無稽な殺人が能力の行使によって行われますが、そのメカニズムを検証しながら突き詰めて真相に迫っていくところも面白いです。宇宙の卵とは一体何なのか? それによってもたらされる事象にはどのような法則があるのか? といったさまざまな謎に対して、段々核心へと迫っていくところは引きが強いです。 圧倒的な貧困に喘ぎ、差別され、迫害され、教育すらまともに受けられなかった持たざる者であるルイが、学ぶことを始めて少しずつ考える力を伸ばし成長していく姿も王道的な気持ちよさがあります。参考文献からも、実際の世界にある様態を問題意識を持ちながらリアルに描いていることが伝わってきます。ただ、強いテーマ性を込められながらもしっかりとマンガとしてのエンターテインメント性もあり、そのバランスが秀逸です。 上下巻で綺麗にまとめられているのも素晴らしいです。とりあえず上巻だけ、と買ったら続きが気になって仕方ないと思いますので、2冊同時に買ってしまうことをお薦めします。 程野力丸さんには今後も独自の路線を驀進して欲しいです。

ダンダダン

タイトルの意味を知りたい

ダンダダン 龍幸伸
ゆゆゆ
ゆゆゆ

ジャンプ+でタイトルを初めて見たとき、肉汁餃子とビールのイラストが思い浮かび、餃子屋の話かと思った。 餃子屋の話ではなく、オカルトの話だった。 「ダンダダン」は幽霊や宇宙人などが登場する、オカルトかつバトルもののマンガ。 主人公は、気が強くてカワイイ女の子と気弱な男の子の二人、もしくはどちらか。 それからカワイイ女の子は他にも登場する。 マガジンのようなキャラクター設定だけど、これは友情・努力・勝利が鉄板のジャンプマンガ。 ジャンプなので、男の子は変身するし、女の子も一緒に戦い始める。 「勝利」をめざして。 戦いのシーンもおもしろい。 オカルトパワーのせいか、敵の姿は「地獄先生ぬ〜べ〜」の怖かった場面を思い出させる不気味さ。 そうきたか!と読み進めてしまう展開。 ただ、だんだん男の子がかわいそうに思えてくる。 変身後の姿のせいだろうか。第一話の印象のせいだろうか。その後の展開のせいだろうか。いたたまれなくなってしまう。 まだ序盤を読書中なので、この後の展開は未知だけど、きっとおもしろいに違いない。 そして男の子にはなんとか、良いようになってもらいたい。