築地魚河岸三代目

第6巻が特にオススメ

築地魚河岸三代目 はしもとみつお 鍋島雅治 大石賢一 九和かずと
名無し

魚に関してはド素人だった銀行マンが転職して 妻の実家の家業の築地魚河岸の仲卸の三代目に。 ド素人でありながらもそれに甘えず、 けしてプロフェッショナルを軽視もしない。 謙虚でいながら大胆な行動力と才能を活かし、努力をし、 プロの競う場所でありながら義理と人情に 揉まれて包まれて鍛えられる場所でもある 「築地魚河岸」で修行をして、 人間味と魚愛に溢れた魚河岸の男に成長していく物語。 大好きな漫画です。 けれど全肯定も出来ない部分もあります。 プロフェッショナルな世界を描きながら、 採算度外視な面に走りすぎたり。 まあそこは人情ドラマでもあるからとは言えますが。 話のベースは基本的に人情ドラマなんですよね。 けれどもプロの厳しさと人情の甘さを融合しているというか、 その良し悪しが出ているのがそれがまた魅力というか。 特に第6巻に載っている話が好きです。 「カキ喰えば・・・」では食の美味い不味いと安全性と、 それに関する世間の認識について考えさせられます。 まあチョット、前編から後編への引っ張り方には ?と思う部分もありましたが。 「サヨリの意気地」では古典落語に出てくるような人情噺と 食品の旬に関する考え方が見事に絡み合っています。 「魔法をかけられた魚」ではイケスの魚を中心に 魚の鮮度や〆方や、それに携わる人や努力の仕方や、 それらが確立する過程にも色々あるのだということ が描かれていると思います。 「下支えの出汁」今現在も人気の豚骨醤油魚介系ラーメンの 美味しさについての解説とともに、 単純なラーメン味対決漫画よりも一つ捻った兄弟弟子愛が いい出汁として効いている泣けるグルメ漫画。 全42巻を通しての三代目の成長譚や 魚中心の食品に関する面白くてためになる話の以外にも、 とりで寿司さんの努力成功話とか、 スーパーマーケットの横山さんが人間性まで含めて 築地に影響をうけて変わる話とか、 干物屋の息子の若くんの試行錯誤成長話とか、 英二さん千秋さん、雅さんエリさんのラブストーリーとか、 全42巻を読んでこそ味わえる漫画としての物語の 醍醐味もありますので、 ほんと、御一読をお勧めさせていただきます。

七帝柔道記外伝

ネタバレ注意!!

七帝柔道記外伝 一丸 増田俊也
toyoneko
toyoneko

「七帝柔道記外伝」は,増田俊也の原作(「VTJ前夜の中井祐樹」)を漫画化した作品 ……ではないです!! …いや,一応,大枠ではそうなんですが,実は問題があります 「七帝柔道記」は,増田俊也先生による小説(ただし限りなくノンフィクション)であり,物語は,主人公(増田俊也)が北大柔道部に入部するところから始まります。当時,七帝戦(旧七帝大による試合)の中で負け続けていた北大柔道部が,勝利を目指して奮闘する物語です 七帝柔道は,寝技中心の特殊ルールであり(高専柔道の流れを汲んでいるとのこと),しかも15人vs15人での団体戦という特殊な試合形式をとっており,これでもかというくらい泥臭くて熱血な練習と試合が繰り広げられます 一丸先生が,同小説を同タイトルで漫画化しています ところで,七帝柔道記は,主人公が入学してから2年間が過ぎたところでストーリーが終わっています。その後のお話は,「続・七帝柔道記」というタイトルで別途描かれたらしいですが(「月刊秘伝」に連載),これはまだ単行本化されていません さらに,主人公(増田俊也)の後輩で,その後,格闘技の道に進んだ中井祐樹という男がいて,その,格闘技トーナメント(VTJ)での活躍が描かれるのが,「VTJ前夜の中井祐樹」です。これは単行本化されています。 そして,本作,「七帝柔道記外伝」(漫画版) おおまかなストーリーラインは,「VTJ前夜の中井祐樹」と同一です 「VTJ前夜の中井祐樹」を,これまでと同じく一丸先生が漫画化したもの…と表現しても,間違ってはいないと思います しかし,そんなつもりで本作を読むと大やけどします! なぜなら,本作では,ストーリー上の重要要素として,まだ単行本化されていない「続・七帝柔道記」のストーリーのうちもっとも重要と思われる部分が,漫画化されてしまっているからです! これは,「VTJ前夜の中井祐樹」には無い描写であり,『おっ,「VTJ前夜の中井祐樹」を漫画化したのか』などと軽い気持ちで読むと,とんでもないネタバレをくらうことになります!!(私のことです) これは…これは注意書きが欲しかった これから読む人はよくご注意ください

東京ヒゴロ

松本大洋ここにきての最高傑作!?

東京ヒゴロ 松本大洋
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

『鉄コン筋クリート』やスポーツ漫画の大傑作『ピンポン』を送り出した 漫画界の生きるレジェンド松本大洋待望の最新作 物語は主人公塩沢が30年務めた出版社を退職し漫画編集者として引退したところから始まり、彼が辞めたことで起こる周りの担当作家や編集者達の変化を丁寧に描写していきます。 私が個人的に松本大洋作品前作で通底して素晴らしいと思う点は『人間の暗い部分弱い部分を逃げずに描写するところ』で、例えば大傑作『ピンポン』でも類稀な才能を持ちながら高い壁にぶつかり一度は卓球から逃げ出してしまうペコという場面で自尊心が打ち砕かれた人間の脆さをしっかりと描写しています。 もちろん今作でもそう言った要素が見事に描かれており 例えば、一度は大ヒットを生み出しながらも長い漫画家生活の中で情熱が擦り切れてしまったベテラン作家長作が様々な葛藤を抱えながらもう一度奮起して漫画に向き合う姿が情感たっぷりに描写されており、 私個人としては「もしかしたらそう言った描写に関してはこれまでの作品の中でも一番なんじゃ?」と思っています。 というのも、今作は漫画に関わる人々というおそらく松本先生から見て最も身近なところに生きる人々を書いているので、人間描写がこれまで以上に切実感とリアルさを持っているのではないかと思います。 ここからは読んだ人向けですが、長作が爆音で包まれるパチンコ屋の中で涙を流すシーンには思わずこちらも涙を流してしまいました。

僕らはそれを越えてゆく~天彦野球部グラフィティー~

僕らはそれを越えてゆく ~天彦野球部グラフィティー~の感想 #推しを3行で推す

僕らはそれを越えてゆく~天彦野球部グラフィティー~ 中原裕 市田実
名無し

・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ ラストイニングのファンレター(2020年5月)を書いた当時68歳の開業医です。今は70歳になってしまいました。私は野球に憧れながら進学のために野球を諦め、青春を医学部の勉強に取られ、医師になってからは飲めない酒の席の出席や講演会、医師会などの出席で夜を潰されました。 中原裕先生が描く高校野球マンガのラストイニングは心理戦でした。 今度も心理戦には期待しますが試合を描くと同時に、さらに筋トレ場面を間に多く登場させそのやり方を紹介し、練習場面を多くし練習の問題点を指摘下さい。 長編は長寿でないと描けないです。ラストイニングは10年掛かってますよね。マンガ家も長寿のために筋トレの勉強した方が良さそうです。 ラストイニングの教育的効果は大きいです。「どんなに頑張ってもどうにもならないことが世の中には沢山あるのだ」と教えています。しかも野球は「相手のために尽くす」のではなくて「相手の嫌がることをやって点数を稼ぐ」スポーツとラストイニングにありました。「筋トレは重要性だけど練習し過ぎは技術低下になるから考えて行動するように」と強調ください。「週に200球以上投げないように」も重要です。でも10分あれば50球投げ終わりますから時間が余ります。だからこそ練習は要領よくやらないといけないと強調ください。イチローがシーズン開幕前に毎年のように肉離れ起こしていました。オフに筋トレマシンでアウターマッスルを鍛えてシーズン初めに走り始めるからインナーマッスルとアウターマッスルの間にズレをきたし肉離れを起こすのではないでしょうか。 ・特に好きなところは?  球斗のセリフ「僕は野球が好きなんだ」 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 良い学校に入り良い会社に就職するという教育モデルはすでに崩壊しています。「好きなことを懸命にやることが本人も楽しくて結局うまくゆく」しかし「ただ努力すれば良いのではなく考えて行動すること。野球は考えてするもんだ。バカではできない」と教え「でも才能がないと、どんなに頑張ってもどうにもならないことが世の中には沢山あるのだよ」と教えてあげて下さい。 時折、努力すれば何でも夢は叶うなんて言う結論、神様は超えられない試練は与えないなんて言う結論を見ますが、間違っていると思いませんか? 

君の大声を聞いたことがない

ジャケ買い大当たり!

君の大声を聞いたことがない くれよんカンパニー
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

1巻にして傑作の匂いがプンプンする! 生まれてこの方ずっと日陰を歩んできたような地味な女性が、30歳の誕生日に芝居のチケットを買わされ初めて観劇したことで、舞台上のキラキラ華やいだ世界に想いを馳せ、人生に光が差し始める。 「まぶしい・・・。 私も・・・私も、舞台に立ちたい! 私も、キラキラしたい!」 出てくるキャラクターが全員一面的でなく、ほどよく癖があって場面によっては良くも働き、ときとして悪くも映る。 かわいくて派手で嫌味なようで、実は素直でとても姉想いの妹。 娘の幸せを願ういい親であるようで、偏見まみれで視野狭窄的かつ前時代的な母。 他人を見た目で判断し、下に見ることで安心を得ようとする職場の同僚たち。 おじさんになるまで芝居の夢を追い続け、他人の心にズカズカ踏み込む押しが強い売れない舞台俳優。 絶世のかわいさでちやほやされ、地味なものに何の価値も感じなかった人気女優。 ただ悪いだけの人は登場しないし、同じように全くの善人もいない。 世の中、はっきり白黒つけられることの方が少ない。 とにかく人をすごくよく見て描かれているなと思わされる。 30歳にして初めて一歩踏み出し、ゆるやかに青春が始まっていく様がたまらなくワクワクするし、まだ何者にも染まっていないピュアすぎる主人公に「頑張れー」ってエールを送りたくなる。 一話のラストなんて最高だ。 ストーリーの進行具合にもよるだろうけど、すぐにでもドラマ化してもおかしくなさそう。 描写力がずば抜けて良くて、デフォルメされたかわいい絵でも感情がしっかり伝わってくるから、心の声がほとんどないにも関わらず何を考えているか手に取るように分かる。 ビッグコミックオリジナル2018年第17号に載っていた同作者の読切「特別読切『初恋』」も素晴らしかった。 早く2巻出てくれないかなー!