人間昆虫記

手塚先生の惜しい傑作!!!

人間昆虫記 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

なんで人間昆虫記かっていうと、主人公の十村十枝子(本名:臼場かげりさん)が、擬態や寄生を得意としていて、その特技を活かし、各界のトップランナーたちに寄生してはその才能をコピーし、規格外の天才・才女としてのぼりつめていくという物語で、その寄生・擬態のさまを昆虫になぞらえているのだと思います。 演技にはじまり、演出、デザイン、小説執筆、コロシ、ビジネスと、いろいろな分野でトップクラスの実力を身につけて世間をアッと言わせます。 そんな彼女ですが、そうして身につけた才能はあくまでも寄生して擬態したものであって、本当の自分ではなく、彼女自身は虚しさを感じています。 けっこう話は大人向けで、正直主人公は完全に狂人めいているのですが、実はものすごく真面目すぎる性格でピュアだったりもするというところが、なんとなく真に迫っているようでなるほどなぁと思いました。 本作品ですが、正直手塚作品の中ですごくメジャーというわけでもないと思っていたのですが、2011年に実写化されているようですね。全然知らなく、みそびれていたのですが、1970年の作品が40年の時を経て取り上げられ得るというのが、手塚作品の世代を超えた魅力のなせる業!ヅカラーとしては大変嬉しい出来事です!! さて、なぜ惜しいかというと、なんかラストが急足で中途半端に終わってしまっているのですよね〜。。大人の事情等があったのかもしれませんが、主人公が双子かも?とか水野さんのその後は?とかだいぶ回収されなかった要素があるように思われましたので、それらを描き切った完全版を読みたかった!!!それまでの話の流れが最高にノってただけに悔やまれます!!!!

ブッダ

手塚治虫の中でも一番

ブッダ 手塚治虫
さいろく
さいろく

一番面白い、とは言いません。でも一番好き。 漫画を読み始めた小学生の頃、実家にはブッダの愛蔵版と秋田書店版ブラックジャックの単行本とDr.スランプがあり(後に手塚作品は拡充されていってたけど他は自分で買うようになった)それらをひたすらに読み返していたので思い入れも一番深いです。 火の鳥は雑誌ぐらいの大きさの○○編とかごとに別れてるやつがピアノの先生の家にあって待ち時間に読むのが楽しみでした。 なんか書いてるとすぐ脱線してしまう。。。 ブッダ(仏陀)に関して、私は正直この手塚治虫のブッダ以外の知識がないです。本来の意味としては「悟りを開いた人」ということだったと思う。 ただ、どこまでが世間一般で言う意味合いと合致しているのかわからないのでそこは置いときます。 今作はシッダールタがブッダとなり亡くなる(正しい表現じゃなかったらすみません)までの間の物語。 宗教的な背景や知識がなかった小学生でも、シッダールタを取り巻く登場人物たちや出来事のインパクトに惹き込まれあれよあれよと最後まで読み切り、また何度でも読み返してしまうほど深い作品でした。 タッタがすごい好きだったなぁ…ダイバダッタが本当に憎くて、でもみんな憎みきれない感じのストーリーを持ってるんですよ。 一言で言い表せない内容で、なんとも感想が書きづらいけど、本当に面白いし読まないのはほんと損だと思う。 人生への影響が色濃く強い!というほどではないかもしれないけど、きっと心に残ると思います。 大人になってから行ったタイ旅行で見た涅槃像を全部ブッダだと思って見てました。心臓を上にして横になるので右肘で頭を支えてるんですよね。これも事前知識なく手塚ブッダで学んだことだったけど合ってました。楽しい。

ブラック・ジャック

1973年に連載がスタート

ブラック・ジャック 手塚治虫
ゆゆゆ
ゆゆゆ

例えば姪や甥に、何と言ってオススメするか考えてみたけど、ざっくりとしたあらすじでは読んでみようかなという気持ちにならず。 どうにもならないことをどうにかしようとする人たちは喜劇的だったり、悲劇的だったり。 ドラマが生まれておもしろく読めるのだけど、そう言われても未読ではピンとこない。 実際のストーリーを軽く説明してみたら! と思ったものの、印象に残っている話として、「患者の腫瘍の中身から女の子を作り出した話があってね、それがヒロインのこの子」とうろ覚え混じりで話したとして。 この話で興味を持たれたら、それはそれで姪や甥が心配になってしまう。 「図書館で借りて読める、今でもアニメや映画でリバイバルする漫画の一つだよ。50年近く前の漫画になるけど、覚えていたら読んでみてね」のほうが読んでもらえそうだ。 結局、漫画の薦め方は、ジャンプがアプリでは初回無料になったきっかけとして読んだ「タイパ」の話に戻るんだなと気づいてしまった。 たくさん漫画を読んでいた学生の頃は、布教したい漫画は、学校で回し読みしていたもんなあ。 https://twitter.com/HosonoShuhei/status/1583848978747379713?t=h6O1c-DSvn2vuTc2Hj3tYw&s=19

陽だまりの樹

手塚先生による幕末もの

陽だまりの樹 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1981年〜1986年にビッグコミックで連載ということで、時代的にはキャプテン翼と同じ連載開始年ですね。感慨深いです。 内容は、鉄板のビッグコミックものですので、ハズレがありません。 よく「手塚先生の先祖(曽祖父)の手塚良庵を主人公とした物語」「手塚治虫のルーツを描いた作品」みたいに紹介されたりするのですが、あまりそこがメインのテーマではないので、ミスリードな感じがします(メインキャラとして手塚良庵はガッツリ出てきますが)。 手塚良庵も結構好感が持てる性格(女好きでだらしないが、やるときの集中力がやばい)で愛せるのですが、もう一人の主人公の伊武谷万二郎もそれとは反対(不器用で融通が効かない正義漢)ですが、かなり愛せます。 二人はいつも殴り合ってるのですが、本当は仲良くて尊敬しあってるところが良いですね。退廃の時代に咲いた一輪の友情の花ですね。現代にこれが連載されていたらBLの同人誌が多数作られていてもおかしくないです。 色々な人に目をかけられるほどの資質を持った万二郎でしたが、その性格のためにあまり出世せずに、最後は悲しい最期を遂げてしまいます。わたしも出世とかは良いので、自分に正直に生きようと思いました。

一輝まんだら

再読したら良さUPしてました!!

一輝まんだら 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1974〜1975年に漫画サンデーに連載された作品です。1900年、清朝末期の中国での物語から、主人公の亡命によって舞台は日本へ。史実の事件や人物等も交えながら展開します。 正直、最初に読んだときはピンと来なかったんですよね。当時は火の鳥から手塚にはまって読み漁っていた時期だったので、火の鳥っぽい要素を求めすぎていたのかもしれません。 それから幾星霜、わたしも大人になりまして、そういうのヌキで読めるようになったのですが、ムムム意外と面白い!!ちょうど盛り上がってきたところで打ち切りにより終了してしまうのですが、本当にもったいないですね!!昭和初期まで各構想があったようで、続きがすごく気になります!! あとがきで、「第二部では、日本の軍閥の跋扈と退廃、北青年の失意と上海での執筆活動、そして二・二六事件の青年将校の蜂起、という核心に移していきたいと思っています。どこかで連載をやらせてくれないでしょうか。」と手塚先生自ら営業されてます。実現しなかったのが残念でなりません。 あと短編が6編併録されています。サスペンス感あふれる作品中心にまとまっていて、ものすごく読ませるもので溢れてます。 ■時計仕掛けのりんご ■バイパスの夜 ■嚢 ■イエロー・ダスト ■悪魔の開幕 ■山楝蛇 特に「嚢」は奇形嚢腫を扱った1968年作品で、ピンときた方もいらっしゃるかと思いますが、ピノコ誕生の話のプロトタイプ的なものです。 「時計仕掛けのりんご」も全集のタイトルとなったこともあるほどの作品で、当然面白いですし、「バイパスの夜」は世にも奇妙な冒険でドラマ化もされたようです。

どろろ

最近もなにかと話題の作品ですが、ちょっと待ってください!!!!

どろろ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1967〜1968年に週刊少年サンデーに、その後1969年に冒険王にて連載された作品。サンデー時代は「暗い」という理由で打ち切りになったようです。 なぜか手塚治虫先生の代表作の一つっぽく扱われることが多いのですが、自分自身(ヅカラーです)はそこまで好みではありません。 2000年代に入ってからも、2度の小説化(2001、2006)、ゲーム化@PS2(2004)、アニメ化(2019)、映画化(2007)、舞台化(2004、2009、2019)と、ひくて数多のメディアミックス王となっています。 そして2022年12月になんとタテヨミマンガとしてリメイクされ、日韓同時配信開始とのことでしたので、再読しました。 https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/26314.html ストーリーは、戦国時代に、父の天下統一の願いと引き換えに魔神の生贄とされた主人公(百鬼丸)が、失われた自己の48個の体のパーツを取り戻すため、48匹の妖怪を倒す旅に出るというものです。 つくりは、基本的には1匹とのバトルを1週〜数週で描くのの繰り返しで、いわゆるバトルものの王道ともいえるものになりましょうか。ちなみに百鬼丸は拾って育ててくれた医者に、ピノコ的な魔改造を施され、失ったパーツの各部分に武器(剣や爆弾など)を仕込まれており、それらを駆使して敵と戦います。 ヅカ先自らお認めになられてるとおり、水木しげる先生の各種妖怪もののヒットに触発されて生み出された作品とのことですが、正直手塚先生にこういった王道バトルものは向いてないように思われます。 各種メディアミックスの影響や、あたかも先生の代表作かのような扱いで誤解してほしくないのですが、手塚先生の作品に興味を持つことがあったら、個人的には、絶対にどろろからは読んでほしくないです!!!火の鳥やブラックジャック、ブッダ、きりひと讃歌、奇子、陽だまりの樹、アドルフに告ぐあたりがまだでしたら、そちらの方を先に読んでほしいです!!!! もし「どうしてもバトルものが読みたいんだ!!」ということでしたら手塚先生の作品ではなく、宮下あきら先生の「魁!男塾」にしてください!

ミッドナイト

夜はいろいろな顔をもっている その顔をひとつひとつのぞいていく男がいる その名をミッドナイト

ミッドナイト 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

医者のブラックジャック、代役専門の舞台役者の七色いんこと並ぶ裏稼業プロ三部作のひとつです!今回の主役は、無免許タクシードライバーのミッドナイトこと三戸真也!!1986〜1987年にチャンピオンで連載された作品です!! ブラックジャックこと間黒男もゲスト出演しています。ゲスト出演どころか、最終話のかなり美味しいところでもガッツリ出てるので、見ようによっては、ミッドナイトという作品自体がブラックジャックの壮大な長編の1話のようにも思えてきます。 そのラストはかなり意外なおわり方でした。。。基本的にはヒューマンドラマ・人情ものの1話完結が続くBJ方式ですが、通底するストーリーがあり、入院中の女(スケ)のため、タクシードライバーをやりつつお金を稼いでいる、というものでした。なので、そのスケの病状のゆくえや、背景に隠されたドラマなどがものすごく気になりながら読んでいったのですが、まさかあんな感じの終わりかたとは・・・。けして期待はずれで面白くない、ということではないのですが、想像と違ったのでびっくりしました。繰り返しますが、完全にブラックジャックの話になってます。 ちなみに私が好きな話は、以下のとおりです。  ・トン骨の話  ・お茶の水博士の話  ・タヌキの話  ・平さんの最終出勤日の話  ・猫の引っ越しの話 気に入ったセリフは「空き巣は芸術だぞ、オレ芸術家だからベレーをかぶる」です。

やけっぱちのマリア

保健の授業 × 番長もの × 学園ロマンス × オカルト

やけっぱちのマリア 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

ヅカラーの間では「ぱちマリ」の愛称でお馴染みの同作品。1970年にチャンピオンに連載された作品となります。文庫全集版の表紙のマリアはかなり良く描けてますね。本文中とは印象が違います。 一応、性に関する描写などあるのですが、いまどきのジャンプとかマガジンとかに比べるとおままごとレベルですし、だいぶ健康的で文化的です(性的な興奮を得ることが目当ての読者は別のマンガにしたほうがいいと思います)。ですが信じられないことに、ぱちマリが掲載されたチャンピオンが福岡で有害図書指定されたことがあったようですね。時代を感じます。 主人公の焼野と、焼野から出てきたエクトプラズムが入り込んだダッチワイフのマリアがほのぼのとした恋をはぐくみますが、ビニール製のダッチワイフでは何事も如何ともし難く、最後の最後で羽澄マリという激かわの転校生に持ってかれます。 ただ、相手がダッチワイフという存在だったからこそほんのりとした健康的な愛情を育むことができたのかなと思います。 また、舞台が私と同じ市立第十三中ってのも愛着が湧きます。ちなみに作中手塚先生が書いたオバQと鬼太郎が出てきますが、激うまです。さすがプロ。 最後に、主人公に敵対する組織のトップであるボスナンバーワンが女性ってのも当時かなり新しかったと思いますが、そのデザインも2022年の今でも通用するモダンさで、昨今大ブーム中のスプラトゥーンとかに通じるものを感じます。さすが天才。

漫画大学

あまりマンガ教室っぽくありません!!

漫画大学 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

手塚治虫先生のような上質なマンガ家になろうと思い、手に取りました。ただ色々な事情があったようで、あまりマンガの技法だったりとかそういったことには触れられておりません。 なので、これを読んだからといって、明日から手塚治虫先生のような上質なマンガが描けるようにはなりません。ちょっと残念でした。 ただ、所々メッセージは込められています。良い漫画を描くには「まず下品な言葉をかかないこと」だそうです!!!ことに不良の使う言葉やきたないいなか言葉はNGです! といいながらご自身の作品にも「このオッタンチンのやきブタオヤジのデベソッパゲ!!」など出てくるのですが、確かに不良はこのような言葉は使わないし、いなか言葉でもないのでセーフですね。非常に上品です。 表題作の他、  ・珍アラビアンナイト  ・化石島  ・罪と罰 の3本が収録されています。 いずれも1950年代前半の単行本作品です。 さすがに70年前の作品ですので、今読むと技法的にもストーリー的にも若干厳しめな部分もあり、手塚ファン以外では、あえて今この作品を読む必然性は全くないと思います。残念ですが。 ただ、現代でも皆があまりやっていないような実験的なコマ割りや手法が使われてるシーンも多々あり、キラリと光る作家性を隠しきれていない部分はさすがだなと思いました。

ネオ・ファウスト

手塚先生の遺作 その3

ネオ・ファウスト 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1988年に朝日ジャーナルに連載された作品です。 手塚先生はファウストが大好きだったらしく、取り上げるのは今回で3度目です。タイトルにファウストと入っているので、そこから材を採ったことは明らかなのですが、基本的なテーマだけ借りたオリジナル作品といった方がいいと思います。 流石にファウストは何度も読まれていたそうですし、マンガにするのも3度目ということで、かなり手塚先生の中で消化され、こなれた手塚マンガとしてアウトプットされていると思います。遺作となった3作品の中では、個人的に一番完結して欲しかった作品です。 第2部突入直後にお亡くなりになられて未完になっているのですが、お亡くなりになる4ヶ月ほど前(1988年9月27日)の講演で、本作の2部以降の壮大な構想について語られており、そのバイタリティの豊富さに尊敬の気持ちを超えて呆れてしまうほどです。すごすぎる・・ その講演の文字起こしや、未完成ネームも併録されていますので、気になる方は購入されるとよいと思います(私が読んだのが文庫全集版ですので、他バージョンにそれらが収録されてるかは未確認ですのでご注意ください)。

グリンゴ

手塚先生の遺作 その2

グリンゴ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1987年〜1989年にビッグコミックに連載された作品で、途中までは手塚版の島耕作みたいな感じです! 途中からアクションも激しくなって冒険もの的な感じに変わっていき、未完で終わってしまう直前は、なんと相撲トーナメントの話が始まろうとしていました。 何気に見たかったですね。手塚先生の相撲マンガ。 あとがきなどによると、日本人についてとことん書いてやろうとのことで構想された作品とのことです!ですので、外国に行って徹底的に差別されたり、奥さん(フランス系カナダ人)に日本ほど閉鎖的で変わっている国はないと言われたりします!! 後半アクション色が強くなってしまったのですが、個人的には前半のようなリーマンもので続けてくれてたらもっと神作品に近づけたと思います! それからこれは特筆すべきことがらだと思うのですが、体調不良による休載から復活した時のオマケマンガも収録されています!痩せ切ってしまったご自身の姿が描かれていますが、病室でもお仕事を続けれおられたらしく、改めてその創作への執念や、マンガ愛に畏敬の念を感じざるを得ません! あと以下の作品(おもに短編)が併録されています。サスペンスものが多いですが、中でも私は「料理する女」が好きでした。 ■サスピション(3話) ■山の彼方の空紅く ■雨のコンダクター ■料理する女 ■お客様は悪魔です

七色いんこ

裏稼業プロフェッショナル三部作のひとつ

七色いんこ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

医者のブラックジャック、タクシードライバーのミッドナイトと並んで舞台役者の七色いんこが活躍する、裏稼業プロ三部作のひとつです!いずれもチャンピオン掲載作品で、こちらはBJ終了後、ドンドラキュラを挟んで1981年〜1982年に連載されたモノです! つくりはブラックジャックなどと似た感じで、一話関係で何かしかを解決していくヒューマンドラマです。役者が主人公だけあって、毎回のテーマが実際の演劇に準えたものとなっています。 最初はかなり面白く、正直中盤は少しダレてきてパワーなくなってくるのですが、最後の最後のまとめ方が圧巻です。再読で結末がわかっていてもゾワゾワします!!ヅカ先の作品でも、そこまで知名度が高い方ではないと思いますが、もう少し中盤が短くてこのラストだったら名作になってたと思います。 途中からホンネが登場するのですが、これがいまいち最後まで効いてこなかったのが少々残念でした。本人はホンネに苦しめられるも、他人から見るとボロ布に見えるってのはアイデアとしては良かったと思います。 ロボットカーの話も、ここ数年自動運転がメジャーになってきてるので、興味深く読めました。 なお、ピーターパンの回では、手塚先生が描いたドラえもん(ヘタです)も登場するので必見です。

ユフラテの樹

もうひと声ほしい!!

ユフラテの樹 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

ユフラテの樹:1973〜1974年に学研の高1コース連載 日本発狂:1974〜1975年に学研の高1コース連載 どちらも高1コース連載ということで、主人公たちは高校生です。表紙でもツメエリをお召しになってます!!! 表紙も雰囲気ありますし、タイトルもかなりカッコ良いので、期待してしまうのですよね!!その期待に比べて、若干もう一声ほしかった感はあります!いや、別に普通に面白いので良いのですが!!! ユフラテの樹は、主人公は3人組なのですが、その中でも序盤に「こいつがメイン主人公っぽい」と思われた正義キャラの鎌くんが、ひょんなことから闇落ちしてラスボスになってくる展開はヅカ作品では珍しいかもしれません。 同時収録の日本発狂ですが、ユフラテの樹と比べるとこちらの方が好みでした。特に序盤はサスペンス感があり楽しめました。 ちなみに手塚先生はあとがきにおいて、「ユフラテ」は何から取ったか忘れたと書かれてますが、Googると、聖書とか神話とかに出てくる地名だったり河川名だったりするようです。ユーフラテス川も派生語でしょうか。 確かにそう考えると、手塚先生の時代はGoogle社の設立前なので、ググるという概念がなく、そんな時代にあれだけのバラエティに富んだ作品を生み出されたことを考えると恐ろしすぎますね。。。たぶん目の前に手塚先生が現れることがあれば、怖すぎて失神すると思います。 かりに手塚先生がご健在のみぎりにGoogleがあったとしたらどんな作品ができていたのでしょうか。そして手塚先生は電車の中で99%の人がスマホをいじってる世界をどのようにお考えになるでしょうか。。

ザ・クレーター

チャンピオン創刊号から連載の由緒ある作品!!

ザ・クレーター 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

1969年の創刊から1970年にかけて少年チャンピオンで連載された作品。 同時期に同じ秋田書店のプレイコミック(青年向け)に空気の底シリーズをやってました(手塚先生がです)。 ちなみに単行本の収録順は、連載順とは異なっていて、「二つのドラマ」(私も気に入っている話です)が第1話だったようです。「二つのドラマ」冒頭には、連載を開始するにあたっての簡単な導入部があったようなのですが、カットされています。 導入部は以下のとおりですが、これによると人間の心をテーマにした連作だったようです。三百億話まで続く可能性があったかと思うと、手塚先生のストーリーテラーとしての天賦の才に畏敬の念を禁じ得ません。 『ーたった一キロ四百グラムの人間の脳髄の中に 心のトビラがある もしかりにこのトビラの中をのぞけば そのおそろしいほどのひろがりと深さに おそらくゾッとなるだろう 人間は 心の中をあらわすのに よろこんだり悲しんだりおこったり苦しんだりする・・・ だが 世界三十億の人々が・・・みんなそれぞれ・・・ 別々の気持ちを持ったとしても・・・ もし心の中をのぞくめがねをかけさせたとしても 自分とまったくおなじ心を持った人間はひとりとしていないことがわかるだろう だから 人間の心をテーマにした物語は 三十億か あるいはその十倍もできるはずである そのうちのほんのいくつかをえらんで・・・皆さんに紹介するのだ・・・』