コミックアウルの感想・レビュー13件悲惨な主人公&想い人 と 残酷過ぎるDV恋人 が織りなす悲劇君がそれを愛と呼んでも【単行本版】 ひびき澪名無し※ネタバレを含むクチコミです。最強すぎる復讐屋復讐のレシピ 市原和真starstarstarstarstar_border野愛スカッと爽快いうよりはどろどろじわじわ粘着質なんだけど、いざ復讐の時になるとめちゃくちゃ力技でフィジカルでやり込めるからそのギャップが面白い。 ひとりで小料理屋を切り盛りする文子と、人生を諦めた元教師の小山田。 かつて生徒と先生であった2人がバディを組んで復讐屋として暗躍するお話。 復讐屋やるなら男手あったほうがいいもんね〜と思うものの、文子が最強すぎるので別にいらないんじゃない?とも思ってしまう。 人心掌握から肉弾戦までこなし、お料理でおもてなしまでしちゃう。強すぎる。 じっとりした暗さもありつつ要素盛りだくさんでエンタメ性もあっておもしろい!失った幸を取り戻すつながりの物語 #完結応援サチある道々~私をいらない両親へ【電子単行本版】 岡本一広starstarstarstarstar兎来栄寿『トランスルーセント~彼女は半透明~』に出逢って以来、大好きな岡本一広さんの最新作です。今も変わらず本当に素晴らしいマンガをお描きになっていて、胸が一杯になります。 岡本一広さんが描く痛み、そしてそれを包み込むような優しい温かみは必ずこの世界に生きる誰かの救いとなることでしょう。 母親に捨てられ、父親と暮らしているもののその父親もクズの極みで11歳のサチが家から放り出されるところから始まるこの物語。日々まともにご飯を食べることもできず、お風呂にも入れず、髪も爪もボロボロ。たくさんの否定や拒絶を受けてきてトラウマも抱え十円ハゲもある、およそ現代日本で多くの子どもたちが普通に与えられているものを与えられずに育った少女が本作の主人公です。 行くところのないサチはとりあえず母・スミレの家に行きますが、そこにスミレはおらず代わりにやってきたのがスミレを慕う鍵職人の男コジロー。サチは、コジローの車で長野に住む祖父母の家を目指す旅をふたりで始めていきます。 行く先々でいろいろな人々に出逢い、優しさや悲しみに触れていくさまはロードムービー感もあります。それぞれの出逢いと別れの中にもたっぷりとドラマが詰まっており、各エピソードに味わい深い良さがあります。 そうした良さもある上で、この物語の根幹にあるのは家族を中心とした人と人との繋がりです。 コジローもコジローで幼くして母親を亡くしており仕事で家にいない父親の代わりに歳の離れた姉が親代わりであったという生い立ちで、 ″死んだお母ちゃんがよう言うとった さみしいとか悲しいとか苦しいとか どうしようもないイヤなことがあってもな 「楽しいこと」が埋めてくれる せやきコジロー楽しいことをたくさんしい 「楽しいこと」がお前を助けてくれるんよ″ という姉から受けた言葉、それにまつわるエピソードなどはグッときます。普段は人にバカにされてばかりだけれど、そんな自分をバカにしないスミレが好きであるという人間的な部分も魅力的です。 そして、他の多くの物語だと毒親という類型的なキャラクターとして片付けられていそうな母親のスミレも彼女がどのようにして育ってきたのか、どのような家族との関わりを通して今のようになるに至ったのかが詳らかに描かれます。継母との関係が上手くいかず、 ″あたしには母親のお手本がなかった″ と語るスミレ。本当は子供を愛してあげたい、でも上手く愛せないしそのやり方を知らない。そんなスミレの苦悩もまた感じ入るところや考えさせられる部分が多分にあります。そしてまたスミレの継母の方の気持ちもとても解るように描かれているのが巧いです。 そうした彼らの、儚くも貴い結びつき。サチが好きな祖父の ″人間はよいろんな人と関わるけどよ 大切に思う人とは心の底でちゃんと手を繋いで つながっていればな 実際には離れたとこにおったとしても へいちゃらでおれるよ つながり方が大事なんだに″ という素晴らしいセリフにすべて集約されています。みんなそれぞれどこかしらが欠けてしまっている登場人物たちが、辛いものを乗り越えながら少しずつ繋がって生み出していく温かなもの、失ったものを取り戻していく素晴らしさ。 たくさんのそこに体温と心臓の鼓動と息遣いがあるのを感じられる人間たちと、その複雑でかけがえない繋がりが描かれている秀逸な作品です。どうなるのかな・・・ディストピア~移住先は不貞の島でした~【単行本版】 杉野アキユキ名無し閉鎖空間が約束される島系漫画。安易な移住をした若い夫婦。 ドロドロやまさかの展開がありそうで続きが気になる作品です。 少しリアリティのあるすべり出しなので、ついつい先を読みたくなってしまう。 移住は現実でもトラブルが多いと聞くけど、こういうケースもあるのだろうか? もっとホラー的な感じかとも思ったけど、やっぱりかって感じです。 主人公になれない主人公 #1巻応援特別じゃない、君が特別。 あむ兎来栄寿先月完結巻の2巻が発売した『私が15歳ではなくなっても。』で、その異才を遺憾なく発揮していたあむさん、やはり好いです。 『うちのアイドルが可愛いすぎる! アンソロジーコミック』に収録されている、あむさんの「特別じゃない、君が特別。」。こちらを単話で買って読むこともできます。シーモア先行配信で1ヶ月前に発売していましたが、今日から他の電子書店でも展開されているようです。 まず、表紙絵の引きが強いですよね。今をときめく『【推しの子】』にも負けていないと感じます。そして、その画力がかわいい部分だけでなくエグい部分にも用いられているのが良いです。 アイドルアンソロ収録作品ということでアイドルを題材にしており、『私が15歳ではなくなっても。』ほどまではダークではないのですが、輝くスターたちの裏で燻って儚く消失していく地下アイドルの、現実にもあるであろう無数の物語のひとつが描かれます。それはまるで、小さな星の輝きを太陽がまるごと飲み込んで巨大な力で宇宙から消失させてしまうかのように。 自分のマイナスの立ち位置を正しく認識して、すべき努力を言語化して、少しずつでも前に進もうとするその先に待ち構えるもの。短編だからこそ描ける特別ではないから特別で、主人公ではない主人公。 「夢を追う時」から始まるモノローグは蓋し名言です。 あむさんの描くマンガをもっともっと読みたいと思わせてくれる、24Pです。15話まで読んで思うこと(ちょっと要約)君がそれを愛と呼んでも【単行本版】 ひびき澪名無し朋和は明日花のことが好き。 そのことを知らずとも朋和の目の前で酷いDVを繰り返す明日花の彼氏・陽平のことが大嫌い。 ある日、朋和は陽平と体が入れ替わってしまう。 そのことをネタに明日花を助けようとするが、退院した陽平はウソをついていたのかとブチギレ。 朋和は陽平によって全財産を失ってしまった…。煮え切らない彼氏との別れからの意外な展開 #1巻応援スカビオサ【電子単行本版】 深月くるみ兎来栄寿スカビオサの花言葉は色によって違いますが、 紫 私はすべてを失った、未亡人 青 悲しむ花嫁、朝の花嫁 白 不幸な愛 ピンク 悲哀の心 黄 再起 赤 感じやすい心 と、基本的にはマイナスのイメージが暗示されます。そして、カラーページや単行本の表紙のカラー的には青や紫系の寒色の印象が強いです。実際にどうなるかは結末を見るまではわかりませんが、現時点では明るい未来が待っている可能性の方が低いように思えます。 5年ほど付き合い同棲中の恋人・拓磨と真剣に結婚を考えているのに、相手には全然その気がなさそうで家政婦のような生活に嫌気が差して別れる決意をする千尋。そんな千尋に、新たに距離を縮めてくる男性・潤平が出現。拓磨より優しくスマートな潤平にどんどん惹かれていく千尋の運命やいかに……というお話です。 女性向けの作品で彼氏や夫のダメっぷりと別れから始まる物語は数多くありますが、その中にあって意外に感じる展開・掘り下げがありました。それ故、読んでいてこの後の物語がどうなっていくのか気になります。 本作は主要キャラ以外の周りのキャラクターも立っていて、特に拓磨のお姉さんは竹を割ったような性格のとても良いキャラで、推せます。 筆者の深月くるみさんの、スタイリッシュな絵柄もお話のテイストにマッチしていて好きです。 大人の男女の痴情のもつれを見たい方にお薦めします。実写化も非常にしやすく人気を得られそうな内容なので、ドラマ化などしたら一気にブレイクするポテンシャルを感じます。 なお、続きは単話で売られていますが、単行本2巻目も3月2日発売予定です。 シングルマザーの隣人への恋心と部屋に現れた謎の幽霊 #1巻応援アイニージュー【電子単行本版】 上田耀子sogor25スーパーで働くサラリーマンの佐伯航には2つの大きな悩みがありました。 1つは、アパートの向かいの部屋に住んでいる若宮冬子という女性に一目惚れをしたこと。そこそそ親密な関係を築いてはいますが、冬子がシングルマザーということもあっていろいろなことを気にしてあと一歩が踏み出せずにいました。 そしてもう1つの悩みが、ある時から自分の部屋にいる男の幽霊が見えるようになってしまったこと。 部屋でコンタクトレンズを外したときにだけ見えるその幽霊は、航が冬子のことを気に掛けていることにも気づいていて、航の恋を応援していると言いながら彼のことをやたらと煽り立ててきます。 そんな感じで、一目惚れの相手と幽霊という不思議な板挟みの中で、航が大きな一歩を踏み出そうとする、甘酸っぱさともどかしさの入り混じった大人の恋愛模様を描いていく作品です。 1巻まで読了妻を亡くした男性が出会ったのは"人魚"を名乗る少女 #1巻応援海の底で君と死ねたら【電子単行本版】 野崎アユsogor25自殺を試みるも最後の最後で躊躇いが生まれ、失敗を繰り返す日々を過ごしていました そんなある日、仕事帰りにふと亡き妻にプロポーズした"人魚伝説"のある海を訪れた省吾は、岩場から足を滑らせてそのまま海に落ちてしまいます。 沈みゆく中で一瞬b死を覚悟した省吾でしたが、そんな彼を謎の少女が助け出します。 渚と名乗ったその少女は自身のことを"人魚"だと言い、人間の世界を見てみたいからデートをしてほしいと省吾に申し出ます。 そこから、省吾と渚の不思議な逢瀬が始まります。 渚と過ごす時間に心を癒やされながらも亡き妻への思いが心に残り続ける省吾と、省吾との時間を純粋に楽しみつつも時折影のある表情を見せる渚。 2人が何度も同じ時を過ごすうちに渚の本当の姿が明らかになり2人の物語は佳境を迎えます。 1巻完結で2人の関係性が丁寧に描かれ、最後には美しい結末へと辿り着く物語です。"歪んだ愛"に翻弄される2人の物語 #1巻応援君がそれを愛と呼んでも【単行本版】 ひびき澪sogor25主人公のサラリーマン・望月朋和は友人に無理やり予約をされ、デリヘル嬢を呼ぶことになってしまいます。 しかし彼は、やってきた女の子が中学の後輩・江野明日花だと気付きます。 結局その時は話をするだけで明日花を帰らせてしまった朋和ですが、後日、どうやら彼女が交際相手にDVを受けているかもしれないと知ります。 それから朋和は明日花を助けるためにある行動を起こすのですが、そこからこの物語は彼の思わぬ方向にどんどん転がっていくことになります。 1つだけ言えるのは、明日花は朋和の助けを望んでいなかった可能性が高いということ。 果たしてタイトルの『君がそれを愛と呼んでも』の「それ」とは何を指しているのか、2人の過去も絡んだこの倒錯した愛の物語は一体どこへ向かっていくのか、続きが非常に気になる作品です! 1巻まで読了 中年男性とパパ活少女、それぞれの絶望 #1巻応援私が15歳ではなくなっても。【単行本版】 あむ兎来栄寿今とても熱いレーベルのひとつであるコミックアウルから、新進気鋭の才能により放たれた鋭利なる一撃。 「これが令和の『罪と罰』だ!!!」と帯に銘打たれていますが、読んでいる時の常在的な息苦しさはまさにドストエフスキー作品を読んでいる時のそれです。 「中年になっても性欲はみじめに残る 俺は生きているだけで害悪だろうか」 と吐露する40歳中年男性がこの物語の主人公です。幼い頃は「お父さんみたいな人と結婚したい」と自分を慕ってくれた娘が思春期になると自分を汚物のように嫌悪してくるようになり、奔放に浪費する妻を尻目に辛い労働に勤しむ日々。 ぱっと見は普通の中年男性なのですが、娘のブラジャーを見て劣情を催したり、醜く毛が突き出た自分の手指を見て「俺 指も汚な…」と自己嫌悪を深めるシーンなどディティールの積み重ねによる絶望感が利いてきます。 父としても夫としても自分の存在意義に悩む主人公は、ある日15歳の訳ありパパ活少女と遭遇します。彼女もまた、とある事件とそれに起因する鬱屈した日常を送る人間でした。若い身体に価値がある内に小銭を稼いで海の見える遠い町で花屋を営み穏やかに生きて死にたい、と願う少女。二人の歪みが重なり合うことで生じる奇矯な関係性から、物語は駆動していきます。 とにかく本作はさまざまなシーンでの表現力と迫力が見どころです。全力の嫌悪感や全力の絶望感、背徳感と欲求との鬩ぎ合いが、叩き付けるような描写によって暴力的に繰り出され続けていきます。ひたすら辛いのに、ある種の疾走感すら覚えるほどです。 表紙のかわいい女の子からは想像しにくいかもしれませんが、読感としてはビーム系の作品に近いです。かわいい女の子を描けるからこそのギャップが非常に活きていると言えるでしょう。 闇の深い物語を好きな方には強く推します。マスクが"常識"となった世界の少年少女の物語 #1巻応援ニューノーマル【単行本版】 相原瑛人sogor25この作品の舞台は"ある感染症"のパンデミックにより、人前でマスクをすることが常識であり文化となった世界。 そんな新しい価値観が広まった世界における思春期の少年少女を描く作品です 「マスクの着用が普通になる」という、現実に近い設定の作品のように視えるのですが、この作品が現実と大きく異なるのは、公共の場でマスクをすることが感染症対策という目的を越えた"常識"となっていること。 つまりマスクはほとんど衣服と同様の扱いになっていて、「マスクをしない時代」を知らない思春期の少年少女にとってはマスクの下の鼻や口を見られることは"恥ずかしいこと"なのです。 ただ、衣服と違ってマスクは食事のときなどには外す動作が必要なため、日常生活の中でマスクの下を見られる隙が生じるということ。 この作品では「マスクを外した状態の顔を見られる」という私達にとっては普通の出来事が、登場人物にとって極めて衝撃的でビビッドな瞬間として描かれています。 この作品は"マスクが常識となった世界"という設定で現代の情勢をSF的に組み込みつつ、その中で生きる思春期の少年少女を瑞々しく描いている、設定の新しさと思春期という普遍的なテーマの両方を兼ね備えた作品です。 1巻まで読了新海誠が映画化してくれないかなニューノーマル【単行本版】 相原瑛人名無し※ネタバレを含むクチコミです。
※ネタバレを含むクチコミです。