ヤングマガジンの感想・レビュー498件<<12345>>男子高生、クズ従姉妹をプロデュース #1巻応援平成敗残兵すみれちゃん 里見Ustarstarstarstarstar兎来栄寿『八雲さんは餌づけがしたい。』、『マリア先生は妹ガチ勢!』に続く里見Uさんの「お姉さんと少年」系最新作です。 前連載の『八雲さん』の1話を読んだときには里見Uさんの覚醒を感じ、実際に長期連載の人気作品となりましたが、この『平成敗残兵すみれちゃん』の読切版を読んだときもまた別ベクトルで里見さんのポテンシャルを感じました。 そして、そのポテンシャルは現在の連載部分で最高潮に発揮されています。『八雲さん』では作品内容的に描けなかったことを、この『すみれちゃん』の方で思う存分解き放っているように感じます。 31歳の元グラビアアイドルのいとこ・すみれを、同人アイドルのコスプレイヤーとしてプロデュースして売っていこうとする高校生の雄星。実に『ヤンマガ』らしいと思うのは、里見さんの魅力的な絵で描かれるすみれちゃんの恵体もさることながら、その性格のクズっぷりです。酒・タバコ・ギャンブルに溺れ、金遣いも壊滅的。時折、人としてのモラルの低さを露呈していくところが逆に魅力的です。 『ヤニねこ』などとの親和性の高さを感じさせますが、里見さんは『ヤンマガ』という媒体に的確にアジャストしたのか、それとも本質的にマッチしているのか。その回答は、おまけマンガに如実に表れています。 サブキャラクターも魅力的で、芸能プロダクション社長のファムファタ任三郎は登場から強烈ですし、雄星に好意を寄せるオタク女子のひよりの想いの行く末も見所のひとつです。 そして、基本的に破天荒に進んでいく中でも ″信頼ってのは勝手にできるものではなく 急造でも作ろうとする事が大事なのだよ″ といった名言がたまに飛び出すのが里見さんの作家性の良さが出ているところで好きです。1話の最後を見れば、この物語に期待せずにはいられません。 すみれちゃんと雄星は、果たしてどこまで駆け上がれるのか。道中のドタバタも楽しみながら、追っていきたい作品です。グルメシーンがもう少し欲しい公爵家の料理番様 ~300年生きる小さな料理人~ 中村ゆきひろ 延野正行 斎藤縹 TAPI岡starstarstarstar_borderstar_borderパイナップルアクションシーン多め。 料理絵は美味しそうなので、もう少しグルメよりだったら良かったのに…残念。初恋なら破れてしまうんじゃ…ねずみの初恋 大瀬戸陸starstarstarstarstar_borderゆゆゆ※ネタバレを含むクチコミです。ラッキースケベって見ていて楽しいセンパイ! わざとじゃないんです! sakustarstarstarstar_borderstar_border宮っしぃラッキースケベ体質のヒロインと、ラッキースケベられの主人公、手を繋ごうとすれば股間に手が入り、事あるごとに乳を揉み、もちろん倒れれば股間に顔を突っ込む、ヒロインが なかなか新しいラッキースケベ漫画で、ラストまでサクッと読める良い作品 こういう頭からっぽにして読める作品大好き! 映画の前日譚的な作品ちーちゃん 押見修造 内藤瑛亮 「毒娘」製作委員会六文銭押見先生の新作かー!とすっ飛んで読みました。 1巻完結?のようだけど、すごい気になる終わり方をして、そこで初めて2024年4月に放映される映画の前日譚的な作品だと知る。 映画の宣伝だとしたら、こんなに続きが気になったの初めてなくらいで、そういう意味では大成功なのではないでしょうか。 作風と内容がマッチしているのも良い。 作家ファンならよくわかると思いますが、人間のもつ狂気というか、えもいわれぬ不気味さが本作も顕著で、虫の死骸を集めているちーちゃんのヤバさってのはわかりやすいんだけど、先生や両親に好かれるため、そんな彼女と仲良くなろうとする優等生の男も個人的にキモかった。 それを見抜いているのか、最後のちーちゃんの暴挙には純粋にビビった。 この後、映画でどう展開されるんだろうか・・・。 映画あんまみないのですが、普通に観たい。 というか、マンガでも読みたいので続刊期待しちゃいます。覚醒剤で人生をやりなおせゴールデンドロップ 草下シンヤ 津覇圭一 上月亮 神里純平六文銭3人の自殺志願者が集まった廃寺。 そこに、突然現れた男・レイジは祖父の遺言でその廃寺の地下にあるものをみつける。 それは、旧日本軍が隠していたという大量の覚醒剤。 しかも、かなり高品質なもの。 人生に絶望し失うものは何もない3人は、これを売って人生に再起をかけるという展開。 クスリで成り上がる系の話、最近増えてますよね。 「銭麻」とか「東京カンナビス特区 大麻王と呼ばれた男」とか。 この手の裏社会系ジャンル好きなので本作も、ドンズバでした。 この手の話はとにかく反社的な人間と駆け引きしたり、追われたりする展開がメインなのですが、本作は際立ってスリリングかつ展開が速いのが特徴だと思う。 読んでてたえずヒヤヒヤするし、やばい奴がでれば次の瞬間出会って抗争に発展するし。 あまり休む間もなく、どんどん繰り出してくるので、読んでて飽きない&緊張感がよいです。 暴力表現とか、結構、クズな親とか目を覆いたくなる描写も多いので、その点は注意が必要ですが、ハマればハマルと思います。 プロの仕事ザ・ファブル 南勝久starstarstarstarstaralank主人公自身がプロなのはもちろん、実は周りのキャラクタ達も、それぞれのプロ意識というか、自分の責任みたいなものを考えているように感じられるのが好きです(全員ではない)。殺し屋の話なので当然暴力的なシーンも出てきますが、ちょうどいいハラハラ感。怖すぎずのんびりすぎず、時折ギャグも入れてくるし、時折切なさもある。66話目の最後のページとか、グッとと来ました。 おすすめです。 1日外出券、手に入れすぎじゃない?!1日外出録ハンチョウ 福本伸行 萩原天晴 上原求 新井和也starstarstarstarstar_borderゆゆゆどれだけオイシイ商売なの、チンチロ。 養分たちにはできない、数ヶ月に一度の贅沢な24時間。 その地上生活、日々身を粉にして地上で働く我々も憧れてしまうほど、ゆったりとしている。 そんな休日を先週は過ごしただろうか? では今週は?! 昔、海外旅行前に読んだブログに、旅行費を滞在時間で割って、一分一秒の価値を考えて計画をたて、行動しろと書かれていたのだが。 班長は一分一秒でなく、一食一食に全力投球。 ゆったりとしているというのは、つまるところ班長の大槻が美味いものを食って帰るという、ただそれだけなのだけど、贅沢な時間の使い方に憧れを抱いてしまう。 有名作品のスピンオフで、変化球を楽しもうとしたら自分に当たって体にねじ込まれたような気持ちになった。 贅沢な時間の使い方を真似したい!死ぬほど気持ち悪いちーちゃん 押見修造 内藤瑛亮 「毒娘」製作委員会starstarstarstarstar生卵押見修造っぽくないストーリー 内藤監督っぽい めちゃくちゃ良い この不気味さと気持ち悪さ そして漫画の中で何も解決してくれない こんなの映画見に行くしかないじゃん…最高のプロモーションだよ… 絶対見に行くからな…待ってろよ…ヤニねこ実写化!!!!ヤニねこ にゃんにゃんファクトリー名無しhttps://yanmaga.jp/columns/articles/4633 ポンコツ女先生エロかわいいみょーちゃん先生はかく語りき 鹿成トクサク 無敵ソーダstarstarstarstarstar_border宮っしぃポンコツな養護教諭が生徒のエッチだったり人生だったりな悩みを真剣に聞いてあげて、マジでちゃんと答えてあげるお話 先生も既婚者ながらエロにも敏感で、生徒の身体の悩みや彼氏に言われた事などなど、真面目に答えてくれる優しい先生 第一話から生徒の彼氏にア◯カンしたいと言われ、近くの良いア◯カンポイントを調べる、かなりぶっ飛んだ所からスタートする 最初の掴みもバッチリで今後に期待できる楽しいエロコメでした、こういう頭空っぽで読める漫画好きほのぼの系が好きな方にはいいかも雨と君と 二階堂幸名無し自分には合わなかった。全然面白く無かったです。 ふ〜んで!?って感じでした。可愛いタイトルかと思いきや #1巻応援ねずみの初恋 大瀬戸陸starstarstarstarstarNanoタイトルとカバーだけじゃ絶対こんな話だと思わないんでは…!?というくらい衝撃作。でも実際ちゃんと可愛いです。碧くんとねずみちゃん、お互いへの愛がとっても深い。それでちょっぴりすけべ。良い。ふたりとも初めて同士なのが伝わってきて可愛くてにやけるし、応援したくなる。やってることはとんでもないけど…。 とにかく続きが気になる~~!ふたりで幸せになってほしい…切実に…。けど1巻ラストがまた衝撃でやばい……!! なかなかハードな恋#1巻応援ねずみの初恋 大瀬戸陸六文銭殺し屋のねずみちゃんに恋した、ちょっと冴えない青年・碧くん。 彼の強烈なアプローチに、こういった経験が初めてなねずみちゃんは戸惑うも、まさかの付き合いはじめてしまう。 しかし、殺し屋だから、当然裏稼業ともつながっているわけで、碧くんも捕まってしまい酷い拷問をうける。 そこでねずみちゃんが取った行動は・・・という展開。 殺し屋と恋。 冷静と情熱みたいな感情の対比が良い感じなのですが、なかなかエグイ内容。 だけど、2人のしょーもない掛け合い(イチャコラ)が緩衝材になって、緊張と緩和の緩急をつけてくるのも面白い。 バズっていたので読んでみましたが、先が気になる展開なのと、2人の関係がどう転んでいくのか予想つかなくて今後が楽しみな作品でした。 彼岸島で一番グロい彼岸島 48日後… 松本光司名無し閲覧注意。24巻の表紙が今までで一番グロいと思う。 めちゃくちゃゾワゾワする。グリマスの感想 #推しを3行で推すグリマス 活又ひろきstarstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ なんか妙なエロが入っていたのであんまり好きじゃないかもなとか思っていたが1巻の終わりあたりから面白くなってきた。さてオーナーの過去もわかったし謎だった能力もわかった。じゃあこれからどうなるのかと思ったら終わった。 ・特に好きなところは? オーナーの能力を予測するところ。 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 電車の中で読んだ後に、どうやったらオーナーの能力を防ぎつつオーナーを倒せるかを考えたがかなり難しくないか?オーナーの倒し方が思いつく人がいたらぜひ教えて欲しい 頭空っぽで寝る前に読むみなみけ 桜場コハル六文銭これがおすすめ。 こういう日常系って雰囲気が重要だと思うんですけど、『よつばと!』もそうですが、本作も最高なんです。 タイトルのとおり南家の3姉妹、高校生の長女・ハルカ、中学生の次女・カナ、小学生の三女・チアキの日常を描いた作品。 ホントにそれだけ。ざわつくようなことは一切ない。 なんてことない、ゆる~い展開と、あまりごちゃごちゃしていない絵柄も相まって、寝る前に読むとアルファ波でまくって、リラックスできます。 ちょっと前にアニメなどあって、そこそこ有名になりましたが、まだまだ続いているので、忘れないで欲しい。 1年に1~2冊程度の刊行速度だけど。 あと、この3姉妹の両親問題(出てこないし、話にも出てこない)については考えると闇が深くなるから、考えないほうがいいです。 現実逃避したい人におすすめの作品です。サムネ自体がエロすぎる.....サタノファニ 山田恵庸名ありエロすぎ注意!誰の心の底も見えない。貴族社会、こわい。雪と墨 うの花みゆきstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ大量殺人&放火をした極悪人ネネオの前では、ほわほわのほほんとした追放令嬢のフレイヤがかわいい。 そんな彼女に癒やされている、男二人もとても良い。 ネネオの傷を隠していたものは2巻でペリッと剥がされ、過去の傷が少しは癒えて生きていきやすくなった。 3巻以降はフレイヤの番ということだろうか。 ほわほわのほほんとしていたから、腹芸なんぞできるのかと思ったら、さすが本家筋の大令嬢。 ちゃんと言うことは言えていた。 義姉が単なる極悪な性格の姉だったら、もっと勧善懲悪展開ですっきりしたのだろうけど、そうでもなさそう。 しれっとひどい言葉を言い合うのに、誰も腹の底を見せない。 イラストはとてもきれいで、笑うフレイヤはとてもきれいで、きっと顔立ちが似た義姉も笑んだらとても優しい顔をしている。 ネネオはいい加減にフレイヤの名前を呼ぶべきだけど、身分差のせいなんだろうか。 4巻発売が楽しみ。 現代的な主人公によるJ2からの立身 #1巻応援ナリキンフットボール 明石英之 清水海斗兎来栄寿旧来の作品においては、データや科学的アプローチを重視する頭脳派キャラというのは噛ませ犬ポジションであることが非常に多いものでした。データを過信して、データを超える強さや成長やチームワークを見せる主人公側に敗れるというのが様式美です。 しかし、今は逆にデータで戦う頭脳派キャラクターが主人公になる時代なのだなぁとこの『ナリキンフットボール』を見てもしみじみ思います。 古くから行われてきたスポーツアナリティクスが近年では現実世界でも非常にメジャーな存在となってきたことはSports Analytics Labのこちらの記事に詳しいです。 https://www.sportsanalyticslab.com/column/sports-analytics-history.html 特に、2003年に発売され2011年にブラッド・ピット主演で映画化もされ大人気となった小説『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』の大ヒットもあり、一般的にもプロスポーツの世界でデータを分析し活用することを重視して戦うことはメジャーになりました。 それから更なるテクノロジーの発達によりGPSやドローンでより多角的にデータを採ることができるようになり、得られたビッグデータをAIによって解析させることも可能となりました。それによって、人間が抱く印象を超えたいくつもの真実が浮かび上がってきます。 本作の主人公は、サッカーIQが非常に高く目に見えない部分のチーム貢献度が大きいセンターバックの我王(がおう)。彼が、J2という舞台から最高の選手を目指していく物語です。我王は体力テストにおいてはJ2でも最下層で、技術的にも優れているわけでもない選手です。しかし、対戦相手や味方の分析を誰よりも深く緻密に行っており、俯瞰した視点から試合全体を見通すことのできる能力を持っています。 近年では、運動能力の66%は遺伝的な要因で決まるという研究もあるそうです。体格や骨格、柔軟な筋肉などはどうしたって天与のものです。フィジカルやスピードはいくら鍛えても先天的な才能の差で負けてしまうことも多いでしょう。しかし、たくさんの知識を得た上で他者よりも多く思考するというところに関して言えば、時間さえかければ誰にでもできる、努力の余地か大いにある部分です。 実際、近年目覚ましい活躍を見せる日本代表の三笘選手も目に見えるドリブルや決定力のすごさはもちろんのこと、それ以上に高いサッカーIQこそが特筆すべきものであると言われることもあります。 超常的な身体能力を持たなくても圧倒的なインテリジェンスがそれ以上の武器となること、それが主人公像にさえなり得ること。「頭が良いことはかっこいい」という、現代的な価値観が反映されています。 なお、我王はアナリストではなくあくまで選手としてのトップを目指します。なぜなら、アナリストではどれだけ頑張っても億単位の収入を得られないからです。サッカーが下手なままで、頭脳によって最上位のプレイヤーを狙っていく。そこに新鮮味のある面白さと熱さが詰まっている作品です。11人でやるチームスポーツだからこそ、個の能力以上に戦略やチームワークがものをいうサッカー。個性豊かなチームメイトと共に、我王がどのような戦略を打ち立ててチームを躍進させていくのかワクワクします。描かれているのはサッカーではありますが、ビジネスなどにも通じる物語でもあります。 J2のチームの予算配分などプロスポーツの経済的な部分も詳しく語られるので、『グラゼニ』のような作品が好きな方にもお薦めです。ゴリラーマン40の感想 #推しを3行で推すゴリラーマン40 ハロルド作石starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 連載中も読んでいたがまた読み返してみると、「ストッパー毒島」のネタとかも思い出したりできたのでよかった。トイレに鯉を流す話はゴリラーマンでも面白いし、思い出話でしても面白すぎるだろ。 ・特に好きなところは? やはり注釈もふくめてべかちゃん。高校時代とあまり変わっていないと考えるか研鑽を積んだべかちゃんと見るかで感想は変わりそうだな ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! いきなりゴリラーマン40を読むよりも「ゴリラーマン」を読んでからの方がより楽しめると思います。 ポルノ原理主義みょーちゃん先生はかく語りき 鹿成トクサク 無敵ソーダstarstarstarstar_borderstar_border江戸川ネタバレ含まないように内容には触れず。 タイトルは、ニーチェの名著「ツァラトゥストラはかく語りき」から取ったのは明らかだが、内容は一切関係ない。 気持ちいいくらいポルノ(商品)として作っている作品。 たくさんの美少女たち(年齢は違うが、造形は全て幼さが残る女性たち。エイジズムを感じさせる)が、性にまつわる話しや実践を行う。読者は傍観者であり、覗き見している感覚にさせる。劣情の煽り方がうまい。 ニーチェの言うところの「深淵」はない。深堀りするのが野暮なほど、ポルノに徹している。 こういうお粗末でシンプルな作品は、気持ちいいので嫌いではないが、哲学的に考察することが趣味なので、あえて違う角度から。 ポルノに徹するこの作品、ある意味、漫画家たちの高尚なものを作りたいという有りがちな心情へのアンチテーゼに思える。 なぜニーチェの言葉を引用したのか。 「神は死んだ」という有名な言葉があるが、作者は「高尚なものの存在価値は死んだ」と、言いたいのではないか。 ある意味、正解である。 漫画を通して、何かを伝え、誰かを救ったり世界を少しでも良くできるか? 非常に難しいだろう。 それならば、一日の疲れを癒やすようなサプリメントのような役割に徹する。そちらのほうが役に立つのではないか、と。 間違っていないような気がする。 しかし僕は、宮崎駿や高畑勲などの「漫画やアニメという媒体は、思想の伝達のツールとして有能」という理由からの、ある種のアンガージュマンに感動する。 日本はもう下降する一方だ。景気のいい時代のように、考えないままでいるわけにはいかない。「パンとサーカス」を与えている場合ではないのだ。 商業主義、拝金主義に迎合せず、使命感を持って、血も滲むような努力をしながら、「微かな可能性」にかけて制作する作家たちを応援したい。 ニヒリズムに陥って居直る作家たちよりも。 「架空戦記」でもあり「歴史」でもあるアルキメデスの大戦 三田紀房starstarstarstarstarmampuku極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。感情が生々しく表情から伝わる。ちーちゃん 押見修造 内藤瑛亮 「毒娘」製作委員会starstarstarstarstar_border江戸川さすが押見修造。その世界に入り込んだ感覚になる。前回の血の轍は、読んでいて正直辛かった。今回もそんな予感がするが、原作?が付いてるようで、新たな押見修造ワールドを見れそうだ。 ネタバレは避け、作者の思想について語りたい。 押見修造の世界は、バタイユの著書エロティシズムに通じる。死や破滅と性的興奮はリンクする。彼は一貫してそれを描いている。暗くて救いようのない話なのに、それが劣情を発動させる。ではなぜ、愛ではなく、死や破滅がそうさせるのか?そこをさらに深堀して物語として提示されたなら、名作になるに違いない。僕なりの答えはあるけれど。 兎にも角にも、本当に描きたいのは、苦悩や閉塞感ではない。性的興奮の正体だ。<<12345>>
『八雲さんは餌づけがしたい。』、『マリア先生は妹ガチ勢!』に続く里見Uさんの「お姉さんと少年」系最新作です。 前連載の『八雲さん』の1話を読んだときには里見Uさんの覚醒を感じ、実際に長期連載の人気作品となりましたが、この『平成敗残兵すみれちゃん』の読切版を読んだときもまた別ベクトルで里見さんのポテンシャルを感じました。 そして、そのポテンシャルは現在の連載部分で最高潮に発揮されています。『八雲さん』では作品内容的に描けなかったことを、この『すみれちゃん』の方で思う存分解き放っているように感じます。 31歳の元グラビアアイドルのいとこ・すみれを、同人アイドルのコスプレイヤーとしてプロデュースして売っていこうとする高校生の雄星。実に『ヤンマガ』らしいと思うのは、里見さんの魅力的な絵で描かれるすみれちゃんの恵体もさることながら、その性格のクズっぷりです。酒・タバコ・ギャンブルに溺れ、金遣いも壊滅的。時折、人としてのモラルの低さを露呈していくところが逆に魅力的です。 『ヤニねこ』などとの親和性の高さを感じさせますが、里見さんは『ヤンマガ』という媒体に的確にアジャストしたのか、それとも本質的にマッチしているのか。その回答は、おまけマンガに如実に表れています。 サブキャラクターも魅力的で、芸能プロダクション社長のファムファタ任三郎は登場から強烈ですし、雄星に好意を寄せるオタク女子のひよりの想いの行く末も見所のひとつです。 そして、基本的に破天荒に進んでいく中でも ″信頼ってのは勝手にできるものではなく 急造でも作ろうとする事が大事なのだよ″ といった名言がたまに飛び出すのが里見さんの作家性の良さが出ているところで好きです。1話の最後を見れば、この物語に期待せずにはいられません。 すみれちゃんと雄星は、果たしてどこまで駆け上がれるのか。道中のドタバタも楽しみながら、追っていきたい作品です。