波うららかに、めおと日和
「問題ありません」
波うららかに、めおと日和 西香はち
ゆゆゆ
ゆゆゆ
横須賀を舞台にした、戦前ラブコメです。 ロシアとの戦争が終わったあと、中国と戦争をはじめるちょっと前。 そんな時代の昭和11年に海軍で下士官をつとめる瀧昌と見合い結婚をしたなつ美。 冒頭で写真だけの結婚式を上げたから、瀧昌は亡くなっているんじゃと少しだけハラハラした。杞憂だった。 歴史の授業で艦の数を減らせ減らせと世界的に言われていた時代は、海軍的にはとても大変だったようで。 むっつり無愛想、言葉足らずで「問題ありません」を多用する瀧昌と、日常生活以上のことを知らないおっとりとした、でも家をしっかり守るなつ美。 二人の初々しい新婚生活に、読んでいてニコニコしてしまう。 初夜の内容を知らず、周りからは「旦那様に任せたらよい」と言われ…旦那様というか男性側はどうやって知ったんだろうと、ふと疑問がよぎった。 海軍は、新婚さんでも夫が仕事で家にいないこともしばし。期間も行き先も軍事機密。 家で待つ間のなつ美の心の揺れ動き(主に瀧昌に対する心配と惚気)とにハラハラどきどきし、再会した際の二人のやりとりにほんわかしてしまう。 作者さんのpixiv漫画で描かれていたキャラクターが登場しているのもワクワク感が募る。 もちろんファンタジーではないので魔法も異能も出てこない。 さらに、舞台となる時代を考えると暗い未来しか見えないのだけど、今の彼らが素敵すぎでおもわず読み進めてしまう。 語彙力をなくして説明するならば、ぴゅあぴゅあでキュンキュン。読み終えると、とても良き…とジーンとなれる漫画。 ハッピーエンドじゃなきゃやだよと駄々こねたくなるほど、ステキなラブコメ。
ぜんぶシンカちゃんのせい
進化心理学的ラブコメ #1巻応援
ぜんぶシンカちゃんのせい 汐里 Rootport
兎来栄寿
兎来栄寿
皆さんは「進化心理学」をご存知でしょうか。ヒトの行動や心理を進化論の視点から読み解くアプローチで、本作はそれに基づいたラブコメです。 『サイバーパンク桃太郎』『ドランク・インベーダー』『女騎士、経理になる。』のRootportさんが原作を、『4D』『いちいちせいち』『勇者のひざには猫がいる』の汐里さんが漫画を担当しています。お二方の作品が好きな私としては、嬉しいコラボです。 人がピザやラーメンやケーキを好む理由。 男と女に分かれている理由。 LINEで延々とおしゃべりするのが好きな理由。 人間が持つさまざまな性質を進化心理学的な観点から読み解いていくところは、多分野の知識に長けたRootportさんらしく学術的に興味深いところです。 それを、「薬指が大きいあなたはアソコも大きいはずなので確かめさせて欲しい」とのたまうヒロインのシンカさんを擁した学園ラブコメに落とし込んでいます。 汐里さんが描く美しい黒髪ロングストレートのシンカさんも、そのシンカさんに翻弄される主人公のトウタくんもかわいいです。 進化心理学に精通しているけれど世界史は苦手、なぜなら20万年の歴史のあるホモサピエンスにとって2000年はごく最近の一瞬であり戦争と疫病の繰り返しだからというシンカさん、推せます。 地味に好きなのは、生徒にマラソンを走らせてる時に「お前らがんばって走れよ! 俺も古戦場走るから」という体育教師。 「自然主義の誤謬」であったりゾウリムシには16種類の性別があるということであったり読んでいるだけでさまざまな知識に触れられるのが楽しく、1巻完結でサクッと読めますがもっともっと読んでいたい作品でした。