それいけ岩清水
こっ、こんな作品が・・!
それいけ岩清水 小林まこと
酒チャビン
酒チャビン
1・2の三四郎に出てくる「君のためなら死ねる」でおなじみの名脇役、岩清水くんのお兄さんが主人公のマンガです。 こんな作品が出ていたのですね・・・知らんかった・・。普通の本屋ではこの時代に絶対に入荷しない作品だと思うので、電子書籍の偉大さをひしひしと感じました。ビバ・マンガテック! ちなみにこの作品は「青春少年マガジン 1978〜1983」で紹介されていたので知りました。同作中で、読切のつもりで書いたのが、栗原編集長の「この漫画はまだ描ききってないな」(同氏の有名な名言だそうです)とのひと言により連載になったと紹介されていました。 確かに実際に読んでみると、そんなやりとりがあったと感じます。とにかく1話目(読切のつもりで書いた部分)はめちゃ完成度が高く、ギャクの品質も密度もかなり濃い傑作に仕上がっているのですが、2話目以降はいかにもネタ切れ(すいません・・!!)といった感じで、むしろ清々しいくらいに開き直って適当に(いい意味です)書いている感じが気持ちいいくらいに伝わってきます。別の作品で書いていた〆切がヤバいときのゴマかしテクも頻繁に使われてますし、そういった意味では貴重な作品なのだと思います。 後半は、常人では理解が追いつかないナンセンスギャグものになっており、これはこれで見ものかと思うので、お時間に余裕がある方は読んでみられるといいと思います! ただ繰り返しますが、1話目はめちゃくちゃ面白い名作だと思います!!!なので、1話目は時間がない方もスケジュールをやりくりして読みましょう! 表紙の感じもB級感が出てて好きです!
修羅の門 第弐門
14年後、伝説のリスタート
修羅の門 第弐門 川原正敏
名無し
第一部の連載終了から14年をへて第二部の「第弐門」連載開始。 漫画の中では第一部の最終回からだいたい4年後の世界から 描くというかたちで第二部は始まる。 第一部を少年時代に読んでいた読者もすっかり青年になっており、 また現実の格闘技界も変化や進化を遂げたのちの第二部。 読者の格闘技を見る目や認識や現実の格闘技界も レベルアップしている。 そんな中であらためて 「千年不敗の伝説の地上最強の格闘技」 をあらためて描くとか、作者の川原先生も大変なのでは とも連載開始当初には思った。 だが、そこがやはりすごいというか上手いというか、 運命のケンシン・マエダ戦の結果をちらつかせたり、 負傷した九十九を「壊れている」と評したり、 「零から始めるつもりかも」などと思わぜぶりに描いたりで。 かつて強くなり過ぎた?主人公にかんして 「まだ強いのか?」「もしかして負けるの?」 と改めて興味を抱かせ面白くしてくれた。 またそういった「壊れているのか?」というような謎の他にも 台湾の戮家とか変な着物の山田のオッサンとかの 謎の存在や働きも面白かったし、 ケンシン・マエダ戦や海堂戦などの決着をつけてくれたのも 嬉しかった。 そしてまた、最強の男、最強の格闘技、それを決める試合を 描きながら、けしてその最強格闘技が ただの殺人テクニックだとか、逆に活人拳だとか、 安直には纏めたりしていないところも良かったと思う。
さよなら私のクラマー
女子サッカーの過去と未来と今を考える #完結応援
さよなら私のクラマー 新川直司
ANAGUMA
ANAGUMA
東京オリンピックが開幕しました。このクチコミを書いている時点で女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」は予選リーグ1分1敗、今夜実施のチリ戦の結果如何でリーグ突破・敗退が決まるという状況です。 『さよなら私のクラマー』の話をする前に少しなでしこジャパンの話をしたいと思います。 2011年にワールドカップを制して以降、翌年のロンドン五輪では銀メダル、2014年はアジアカップ優勝、2015年のワールドカップも準優勝(決勝は大敗でしたが…)と結果を残してきたなでしこ。 ところが2016年リオ五輪の出場権を失うと、2019年ワールドカップではベスト16で敗退(3大会ぶり)と大舞台での近年の成績は10年前を思うと物足りないと言わざるを得ません。男子サッカーの好調とは対照に直近の試合内容についてもかなり批判を浴びています。 『さよなら私のクラマー』は「私達が負けてしまったら 日本女子サッカーが終わってしまう」という能見選手のことばから始まります。 女子サッカーは男子サッカーに比べてまだまだマイナースポーツで、代表の強さがダイレクトに注目度に繋がり、ひいては競技そのものの継続に直結するということが『クラマー』では取り上げられていました。 勝たなければいけない。勝ち続けられる選手にならなければいけない。日本の女子サッカーの未来を背負える選手にならなければいけない。 これが『クラマー』で提示されたひとつのシビアな、そして乗り越えるべきテーマでした。 現実のなでしこジャパンは、10年前の輝きが過去になりつつある状況で今日の予選リーグ最終戦を迎えているわけです。 もしここで敗退となれば、なでしこジャパン、そして今後の女子サッカーを左右するひとつの分水嶺になるのでないか。能見選手のことばが強く心に残っている自分としては、そんな緊張感さえ覚えています。 『クラマー』はまさに女子サッカーのブームの激流の只中にあった作品だと思います。過去の栄光と決して明るくない未来を現実的に見据えながら、本作は爽やかに幕切れをします。いつもどおりの試合の中で。 どれだけ過去に囚われようと、どれだけ未来を憂いても結局は一試合一試合をやっていくしかなくて、それがそのまま女子サッカーの未来になる…というメッセージ。 オリンピックで苦境に立つなでしこを見て、本作を思い、さまざまなことを考えていました。どんな結果であれ女子サッカーの未来が輝いていることを願うばかりです。 長々と書いてしまいましたが今心から何が言いたいかと言うと「勝ってくれなでしこ!!!」ということです。本当頼む!!!
鉄界の戦士
多脚フェチは読むべし!!墨佳遼の描く生物メカSF!
鉄界の戦士 墨佳遼
名無し
墨佳遼先生といえば生き物というところがあるので、今回はどんな動物が登場するのかな〜と何気なく読んだら、昆虫がモチーフのメカメカしいSFで驚きました…!! 自分はメカバレ&多脚フェチを抱えているので、読んでみてもうドンピシャでした!(正確にいえば本作は「多腕」がテーマです) https://twitter.com/magapoke/status/1213838192794730496 神により全ての生き物に1対の鉄の腕が与えられたとされている世界。「2対の鉄の腕」を持つ少年・アシダカとゲジは「多腕」として宗教的に迫害され、鉄くずの森と呼ばれる場所で機械生物を狩り、そのパーツを利用し生きている…というお話。 テーマはすごく面白かったものの、自分の漫画読みとしてのレベルが足りないのか、画面が見づらくてアクションを理解するのが少し難しかったです…。 ストーリー以外だと、本作は日・英・仏・中、4か国語で世界同時配信なのだとか!最近だと週刊少年ジャンプは日英、シャドーハウスは日韓サイマル配信で、今後もこういう作品が増えていくのかなと思います。 腕が6本(合計3対)ある主人公たちは、昆虫の暗喩のように思えますが実際どうなのでしょうか。今後の展開が気になります…! http://www.gmaga.co/comics/24/ https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156731973287
BECK
音楽によってすべてを変えられた人に捧ぐ
BECK ハロルド作石
六文銭
六文銭
青春時代に読みかけで、そういえば最後どうなったのかな?とふと思い出し、一気に読んでしまった。 吹き出しも少なく、文字通りスラスラと一気に読めてしまった作品でした。 そして、完全に自分の中で、名作の一つになりました。 そもそも自分自身、音楽に大分助けられたところがあり、 下手な物好きで楽器も手にした口なので、 出てくる登場人物も、ストーリーにも、 グイグイ引き込まれて、共感しっぱなしでした。 漫画だから音なんか鳴ってないのに、 作中内のライブ会場にいるわけでもないのに、 登場人物たち同様、なぜか楽曲に「やられてしまう」感覚は、 まるで、音楽によって人生を変えられた人たち共通の価値観を表現しているようで、これが本作の魅力だと思います。 ストーリーは、冴えない主人公・コユキが、バンド仲間と出会い、音楽によって自身を、オーディエンスを、そして世界を変えていくという展開。 王道も王道。 奇をてらわないからこそ、作者の持ち味が試されると思うのですが、本作は全く裏切りません。 物語の扉絵が名盤のジャケットを模したものになっていたり、有名アーティストがモデルになったような登場人物たちだったりと、 作者自身も音楽に造詣が深いと感じ取れ、そこから描かれる物語が音楽好きも共感できる内容になっております。 誰のマネでもない  唯一無二だからこそ響く音楽の世界を真摯に時に面白おかしく表現しております。 音楽に魅せられたキャラクターたちも非常に魅力的で、 特に、年食って読み直したら川久保さん(ベックのプロデューサー)の存在はシビれました。 こういう裏方キャラ、めっちゃ好き。 語り尽くせないのですが、特に好きなエピソードが ・なぜエディが親友ではなく、コユキに楽曲を聞かせたのかの理由 ・アヴァロン・フェスティバルでのレオン・サイクスの粋な演出 (彼もまた音楽によって救われた人間だったことを感じ取れて震えました) ・バンドの醍醐味でもある参加したフェスが  グレイトフルサウンド  →そのルーツであるアヴァロン・フェスティバル  →そして、またグレイトフルサウンドに戻ってくる流れ  そして、その間に起こるメンバー間の関係性の変化 ですね。 何度でも読みたくなります。 こんなご時世でライブなどままなりませんが、そういう意味でも音楽によるアツイ熱気を、魂を、本作で感じてみてはいかがでしょうか? 最後に音楽は改めて偉大だと感じました。 BECKを読みながら、昔好きだった曲を思わず聞き直して、つくづくそう思います。