赤灯えれじい
時間に接近する漫画たち
赤灯えれじい きらたかし
影絵が趣味
影絵が趣味
いまや漫画には、豊富なジャンルをして、ものすごい数のタイトルが存在しますけども、"時間"というものに接近していった漫画というのはあまり多くないような気がしています。 映画のジャンルのひとつに「ロードムービー」というのがありますけど、まあ、たとえば、主な登場人物が三人いて、オンボロな車でハイウェイを旅している、と。90分なり120分の上映時間のなかで、いくつかのなだらかな展開があり、映画が幕を閉じるときには、三人の関係性が当初とは変わっていた。というときに、その映画は過ぎてゆく時間というものに接近していると思うのです。 ところが、漫画においては、映画においては王道のひとつとさえ言えるロードムービー的なジャンルがふしぎと存在していないんです。むしろ、漫画は永遠に小学三年生を繰り返す『ちびまる子ちゃん』のように時間から遠ざかってゆくのを得意としているらしい。漫画で"時間"を描こうとした『刻刻』が時間を止めるというところに行き着いたのも示唆的だと思います。 そんな状況のなか、時間に接近していった数少ない漫画のひとつに、きらたかしの『赤灯えれじい』があると思います。いきなり原付バイクで富士山に行ってしまったり、まあ、たしかにロードムービー的ではあるんですけど、登場人物をバイクで旅させたからといって時間に接近したことにはなりません。そういう意味では、漫画においても、旅はつきものだと思いますが、どういうわけか漫画における旅は西遊記的な冒険になりがちです。コマは旅(冒険)における数々の展開を披露して、そこに時間を捻出してゆきます。往々にして漫画における時間というのは、このように流れてゆくものではなく、コマによって捻出されるものなんです。だからコマは時間を捻出することはできても、時間を過去に置いてくることはあまり知りません。コマは時間を副次的につくることはできても、時間そのものと出会うことは知らないんです。 そこらへん、きらたかしは普通の漫画家とは感覚がズレているのか、あるいは意識的にそうしているのか、その都度、その都度、時間を過去に置いてくるような描き方をしてしまう。これは大変なことです。彼の漫画は、漫画としては構造があまりにも異形なんです。 そのほか、時間に接近していると思われる漫画を挙げるなら、『ヨコハマ買い出し紀行』、『敷居の住人』、『げんしけん』あたりがそうでしょうか。このほかにも、こういった漫画があれば、ぜひとも教えてください。
パンティトラップ
笑いと切なさと/Paper-Thin Bond of Boys
パンティトラップ 吹屋フロ
Orad
Orad
大笑いした!飯島が高山に全然関心がなくて面白い。二人の奇妙な関係性が終わる場面、卒業式の話がとても切なかだ。 —- A blonde high school boy is staring at me with a nasty look --- while wearing panties on his head and a bra around his neck. It's impossible to forget the day I found this intense cover on a website called "Tonarino Young Jump", which is owned by a publisher of Weekly Shonen & Young Jump (Shueisha). It looks like a Boys' Love manga, but was serialized under the famous seinen label. Even though the story is ridiculous, it's strangely appealing so I sometimes get the urge to read this manga. I've already read it again and again. Why does this manga absorb me so much? I guess the reason is that their relationship is awfully temporary and fragile. The relationship between Takayama and Iijima is less than friends or even classmates - it only involves Iijima taking photos of blonde-haired Takayama in fancy ladies' underwear. What's curious is the fact that Iijima never cares for Takayama despite this weird habit. No matter how many times Iijima takes creepy and perverted pictures of him, Takayama is neither a source of benefit nor a waste of time for him. The two boys become very close over the year, but their relationship may easily disappear on graduation day. I was shaken up, yet found it impossible not to fall in love with the protagonists' strange yet irresistible paper-thin connection.
どくヤン!
実におもしろいビブリオマンガ #1巻応援
どくヤン! カミムラ晋作 左近洋一郎
ひさぴよ
ひさぴよ
毘武輪凰(ビブリオ)高校…。そこは行き場のないヤンキーたちが集まる底辺不良校!と見せかけて、本を読みさえすれば入学でき授業料もタダの本好きにはたまらない学校。本を愛すヤンキー達のギャップを楽しむコメディ作品です。 特に本が好きな人におすすめな漫画ですが、とにかく一度試し読みして雰囲気の合う合わないを確認しておくのが良いです。ヤンキー文化が苦手な人もいると思うので。 どれだけ本を愛しているかで、ヤンキー同士の格が決まる世界観になっていて、強いヤツほど純文学を溺愛してたり、SF小説を極めていたり何かしらのジャンルへのこだわりがあって面白い。 格の低いヤンキーは、弱そうなやつにブッカツ(本のカツアゲ)をするなど、本好きを冒涜する行為をしがち(笑) 基本はヤンキー文化とビブリオネタをかけ合わせたあるあるネタが多いですが、読んでいて果たしてインテリジェンスが上がってるのか下がってるのか、よくわからなくなります。 一話ごとのオチで本編のストーリーに合わせた本を1冊、さりげなく紹介してくれるので、何だか得した気分になれますね。
WORST
伝説の鈴蘭高校を継ぐ者達
WORST 髙橋ヒロシ 高橋ヒロシ
さいろく
さいろく
クローズと打って変わって、というのは主人公だけかもしれないけど、しっかり時代も(ファッションとか)ちょっとだけ進んでいます。 主人公はむしろ田舎から出てきた月島花(ハナ)という野生児で、人間だけどドラゴンボールの悟空みたいな性格してるやつ。 争うのはいいけどその後は認めあって仲良くなる、そんな自然界での生存術を伝説のカラスの学校に持ち込んだらどうなるんだい、という感じですね。 クローズは映画化されてたりしてスポット浴びてる気がするんですが、多分実際にみんなに読まれていて今の若い子たちに人気があるのはダントツでこっちだと思われます。 スピンオフでの花木九里虎ストーリーなんかも人気みたいですし(絵も高橋組の皆さんはいい意味で似てて崩さすぎず良いと思いますし鈴木大先生もちゃんと独立?できてると思います多分)コンテンツとして一つの大きなカテゴリを作ったなーという感じ。 WORSTにおいてはクローズで作られた地盤をそのまま崩さず、ライバル校や武装戦線、その他地方との関わりやなんかもまたいい感じに世代交代が出来ていて、胸アツな物語が繰り広げられています。 なんだろう、安心して読めるっていうのが一つ強みなのかもしれないな。QPとかトムとジェリー外伝みたいなのはハラハラするけど。 もちろん予定調和ばかりなわけでは全然ないし、何度読んでもいいシーンがいっぱいあります。 クローズ知ったのがちょっと遅かったんでWORSTは単行本で新刊追う感じに読めてたんですよね、だからリアルタイムでちゃんと読めてたのはこっちなのかも。 絵がうまくなってるから、という理由でこっちの方がクローズより好き、かな。
そうしそうあい
コメディとシリアスのバランスとセンスが抜群
そうしそうあい りべるむ
sogor25
sogor25
優等生女子とヤンキー男子恋愛というシンプルなテーマでありながら、ラブコメあり、シリアス展開あり、と振れ幅大きく展開する作品。私は作者のりべるむさんのコメディ面、シリアス面両方の感性が凄く自分好みで、毎巻楽しく読ませて頂いています。 個人的にこの作品の魅力は「登場人物に100%は共感できない、けど共感できる」所かなと思っています。 めぐみは一点の曇りもない優等生だし、そうしはめぐみに対してはデレるけど基本はヤンキーだし、というか登場人物はかなりヤンキーというかガラの悪いタイプが多いし。(そういう意味では一番"自己投影"しやすいのは橘かもしれない。真面目さとチャラさのバランス的に) でも、登場人物の全てに共感できないからこそ、共感出来る部分があると思いっきり入り込むことができる。日常回で共感性を下げてコメディ寄りにすることで、特に"恋愛"という殆どの人間に共通に内在するテーマで読者の共感をがっちり掴む、そういう多層的な構造を生み出している作品だと感じています。 結果、ラブコメとしても良い、高校生のシリアスめなドラマとしても面白い、絶妙なバランスが保たれている作品として成立しているのではないかと思います。 7巻まで読了