高機動無職ニーテンベルグ
働きたくない思いを戦う力に変えて
高機動無職ニーテンベルグ 青木ハヤト
ANAGUMA
ANAGUMA
「働かずに食べるメシはうまいかっ!!N.E.E.T.ッ!!」「美味しいですよ!!」 ロボット作品の開闢以来、戦闘中のコックピットで発されたセリフの中でも相当上位の切れ味を誇るのではないでしょうか。せめて少し迷ってほしい。 開幕のこのセリフが象徴するように、本作は働くことと働かないことをめぐり、命懸けで戦うパイロットたちの姿が描かれます。 主人公の不動遊(無職)はひょんなことからデスマーチ軍に抗う存在、無職同盟(リガ・ジョブレス)に加入し、黒い人型兵器(ワークマン)・ニーテンベルグに搭乗。彼の「働きたくない」思いとともに、世界の命運をかけた社畜と無職の戦いが幕を開けるのでした。全部マジです。 ロボットもののテンプレートに乗せて一貫して働く者と働かざる者の対比が描かれるのが最高に笑えるポイントです。 レジスタンスに加入してもぐだぐだしている遊に比べて、ライバルのワーカ・ホリック大佐が社会人としてまともに見えるのも読んでいてじわじわくるところ。本当に倒すべき敵なのか彼らは…? イカれた設定が繰り広げられる中でメカの作画やバトル描写はすごくカッコイイのが更に面白い。ちゃんと機体のパワーアップとかもあってロボットものの楽しさも味わえますし、物語自体は王道の熱さを備えているのがすごいです。 ガンダムのパロネタ(※超秀逸)だけではない「自由を求めて戦う」という重厚なテーゼが奥底に織り込まれているのが本作の魅力なんでしょうね。実際には労働から逃げているわけですが。 働きたくね〜と思った時に読むと元気が出るのでおすすめです!
女子攻兵
松本次郎を語るには外せない奇作(快作)
女子攻兵 松本次郎 新潮社編
さいろく
さいろく
新東京都市では女子高生の形をした巨大ロボ、女子攻兵(以下JK)での戦争が繰り広げられている。 パイロットは軍人(おっさん)であることがほとんどだが、長い間このロボに搭乗していると精神まで女子高生になっていってしまい、精神汚染ランクが8になると電波を受信していもしないはずの友人や家族とケータイで連絡を取るようになってしまう(もちろんJK搭乗時にそれと話したりしてるわけなので巨大なケータイを使っているわけでもある) 近未来のようでケータイがガラケー型でJKのスカートの短さなどからも90年代後半のJKのイメージを松本次郎的にマッシュアップした戦争モノだが、巨大ロボ×JKというだけでもよくやったと言って差し支えない本作は、連載当時のバンチでも異彩を放つ作品だった。 精神汚染の原因はイカれてしまった汚染ランクの高いモンスター(元JK)との密な状況や接触であり、多くは物理攻撃によるJK自体への汚染が原因でコックピットにいる軍人(JK乗り)を巻き込んで汚染していくものである。 殺伐とした世界なくせにネオン街ではセーラー服を着たキャバや風俗が繁盛しているという割と救いようのない世界観だが、どこかドロヘドロのようなパンクさとMADMAXのような退廃・荒廃感を感じる。 あ、コッペリオンとも少し空気や設定も似ているとこがある。アイアムアヒーローもそうだ。つまりは世紀末感があるということだが、ここまで書いておいて松本次郎の作品でそれが感じられないのは「いちげき」ぐらいかもしれないw
ゴブリン公爵
手塚治虫が描く巨大ロボアクション!
ゴブリン公爵 手塚治虫
一日一手塚
古代中国の遺跡から発掘された巨像。この像こそが超能力によって操れる巨大ロボ「燈台鬼」です。巨大ロボものも描いてたんだ…という素朴な驚きから読んでみました。 燈台鬼を手に入れようとする邪悪な少年、珍鬼の目線で物語が始まる構成が新鮮で、展開が予想できないドキドキ感が序盤にはあります。 主人公、貫一が登場してからはゴブリン公爵と名を変えた珍鬼と燈台鬼を奪い合うのがメインテーマ。タイトル、『燈台鬼』じゃなくて敵の名前なんだっていうのもなんだか面白いですね。 燈台鬼に念を飛ばし動力源となるのはヒロインの愛愛ですが、肩に乗って指示を出し実際に「操縦」するのは貫一です。この辺りの役割が分かれているのもロボものの妙味を抑えてあって楽しい。 破壊の化身として作られた燈台鬼が正義の心に目覚めたり、敵に機体を乗っ取られたり、ライバルヒロインが登場したりと今に連なるロボットアニメのスタンダードが大体描かれているのが圧巻で、総理が燈台鬼の対応に手をこまねく様子なんかほぼ『シン・ゴジラ』ですよ。展開もギミックも全く古臭くないです。(もしかしたらロボアニメが変わってなさすぎるのかもしれないけど…) 後半の見所は何と言ってもゴブリンが開発した対燈台鬼用の人工ロボイドとの戦いです。海洋油田プラントでバトルが繰り広げられるのと、ライバル機らしく黒色なのがポイント高い。 クライマックスが少々駆け足かつビターなのは好みが分かれそうですが、これでもかと言わんばかりのロボットものの魅力がたっぷり詰まっています。 ロボアニメ好きな人に感想聞いてみたい作品です!
バトルグラウンドワーカーズ
第一話からぶっ飛ばしてて面白いSFアクション
バトルグラウンドワーカーズ 竹良実
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
第一話からぶっ飛ばしてて面白かった。 『辺獄のシュヴェスタ』 『不朽のフェーネチカ』 の竹良実、最新作! 天涯孤独・30歳男性に届いたのは世界を守る公務員の採用通知。 それは、25年前から世界各地に襲来し始めた未知の生命体「亞害体」を水面下で撃退する組織だった。 行ってみるとそこには、不良、オタク、コミュ障等、社会不適合者がずらり。 人型のロボット兵器「RIZE」と神経接続によって遠隔操作し、誰かの役に立つべく、地道に頑張る主人公だったが・・。 わりとガッツリSF感あって楽しい。 いまのところ主人公がとてもいい人に見えるし、地味に頑張っているので応援したくなるのだが、どこかにでっかい落とし穴がありそうでめちゃくちゃ怖い。 希望を胸に抱き、ここで幸せを掴もうと最初は頑張ってるが、そんなんじゃないとどこかで絶望してしまうはず・・こわい・・報われてほしい・・でも絶望もしてほしい・・。 痛みはダイレクトに伝わってくるが、「通信機」を破壊されるまで死なない身体をどう使うのか、第一話の見所だ。 そして後出しで告げられる大事なルール。 やはり闇は彼にしっかりと寄り添っていた。 亡くなった両親の直接の描写は無く、言葉で語られるのみなのも実は意味があるんじゃないかと勘繰ってしまう。 幸せな人生にしなきゃと自分のためのように見えてあくまで人の願いのために頑張ってきて、素直でいい人すぎる主人公がどうなるのか見ものだ。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
キャスバル=シャアのミッシングリンク
機動戦士ガンダム THE ORIGIN 安彦良和 矢立肇 富野由悠季 大河原邦男
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
宇宙世紀0080年1月1日、連邦とジオン公国の間に終戦協定が結ばれた……とのことで、1月1日は(ガノタ的には…)一年戦争終戦記念日です。ここでは最新の戦史としての『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の見所をご紹介します。 まず、前のさいろくさんのレビューの通り、現代にこの物語を、丁寧な解釈で蘇らせて下さった事が有難いですよね! ジオンにも真っ当な大人(ドズル・ザビやランバ・ラル)がいる一方、 連邦にだって阿呆な士官もいる。『THE ORIGIN』では、敵味方関係なく、様々な大人達が紡いでいる大小の物語を、余す所無く丁寧に纏め上げています。 アムロ・レイとホワイトベース隊中心史観だったアニメの1stガンダム。『THE ORIGIN』はそこに沢山の、別視点からの物語を加えることで、ジオン建国から一年戦争終結までの歴史の全体像を、偏り無く記述した戦史として、新たな発見が沢山ある作品となっているのです。 (偉そうな割に功績がよく分からなかった、マ・クベやレビルの活躍なども面白いですね) そこを踏まえて、敢えて一点。この物語が、ガンダム史の重要人物でありながら、謎の多い「シャア・アズナブル」の欠けていた部分を、沢山のページを割いて埋めている点を、紹介しておきたいのです。 ジオン建国の祖、ジオン・ズム・ダイクンの息子、キャスバル・レム・ダイクン。彼は名を変え、ジオン軍のパイロット・赤い彗星のシャアとして出世し、公国を私物化するザビ家に接近します。 それにしても、彼はどうやってジオンの亡き後、ザビ家の監視から逃れたのか。そしてシャア・アズナブルの名の由来とは……。 更にはガルマ・ザビとの友情の日々から、シャアが仮面を被る迄、卓越したMS使いの理由からララァ・スンとの出会い等々、様々な秘密が破綻なく描かれ、その後の彼の行動原理がしっくりくるようになっています。 キャスバル(シャア)は、人として真っ当な理想を持ちながらも、それを先鋭化させ、人に本心を露わさず孤立し、そして力がありながら、誰も幸せにしませんでした。 その後のZや逆襲のシャアにまで通じる、彼の哀しみの源泉……命懸けの日々の中で理想とプライドを保ちつつ、歪んでいく過程が、この作品ではじめて描かれているのです。 是非若いキャスバル(シャア)の真っ直ぐな冒険と、そこに潜む哀しみを、ご一読いただきたい!
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
アムロとシャアだけじゃない!「ガンダム」を知ろう
機動戦士ガンダム THE ORIGIN 安彦良和 矢立肇 富野由悠季 大河原邦男
さいろく
さいろく
安彦良和先生のガンダム。 これこそがORIGIN。本当にありがたい。 アニメの機動戦士ガンダムをちゃんと見れてなかった世代としてはガンダムがゲームやカードダスで一世を風靡しているにも関わらず本当のシナリオを全て理解出来ていなかった事が心残りというか悔しいというかだったんですが、このORIGINはアニメ版以上に安彦良和で(そりゃそうなんだけど)思っていたガンダムが本当に今描かれているんだと。 ものすごく古い時代のマンガだったらちょっと手を出しづらいとこあるじゃないですか、正直。 でもこれは最近になって描かれてるんですよ。ようやくガンダムを知る事ができる!と嬉しくなって読み始めたら見事に期待を上回る作品だった。 小さい頃、小学生低学年の頃はアニメも疎らに見てカードダスとかガン消しとかしか持ってなくて知識も乏しくて。。。そんな頃、悪役だったザビ家は馬鹿な悪いやつなんだと思ってたんですよ、ガルマのせいかもしれないけどさ。でもORIGIN読んだらドズルのファンになるよ、絶対。 ガンダムという日本が誇る壮大なスルメコンテンツを今になってこんなに丁寧な作品として出してくれた安彦先生とKADOKAWAに感謝したい。
交響詩篇エウレカセブン
君はエウレカセブンのプレイリストを作っただろうか?
交響詩篇エウレカセブン 片岡人生 BONES
せのおです( ˘ω˘ )
せのおです( ˘ω˘ )
君はエウレカセブンのプレイリストを作っただろうか? スーパーカー、ジョイディビジョン、ニューオーダー、oasis、ビョーク、ハービーハンコック、Beastie Boys、コーネリアス、坂本龍一…などなど、 この名々を見るだけで人生がいかに豊かになったか分かるだろう、 君はエウレカセブンを観て何を始めたか?何に憧れたか? 思いっきりボードを蹴ってみたい、メットなしでスクーター走らせて「この最悪な街」から逃げ出してみたい、音楽に体をあずけて思いっきり踊ってみたい、みんなでサッカーをしてみたい、 一つずつ叶えた日々は、今でもかけがえのない日々である 君はエウレカセブンを観て誰に出会ったか? 吉田健一というアニメーターを初めて強く意識した。彼の描く人物の表情に涙した。彼の関わった作品を夢中で観た。それだけで多くの出会いになった。 君はエウレカセブンを観て何を学んだか? 「ねだるな、勝ちとれ、さすれば与えられん」! そして「ア〜イキャ〜ンフラ〜〜イ!」と叫べば好きな子の元までひとっ飛びで行けちゃうかも?! エウレカセブンを学べばサブカルチャーを一周できちゃうくらいには、様々な要素が散りばめられています。これほど青くさい10代の為になるアニメ・漫画はないでしょう… そんなエウレカセブンにトリコジカケニナったわたしの人生は、まだまだ「つづく」!!
エイルン・ラストコード
メカも人も上手い神絵師が漫画を描いたらやはり凄かった
エイルン・ラストコード 貞松龍壱 東龍乃助 みことあけみ 汐山このむ
mampuku
mampuku
 「このラノ」でも高い評価を受けたライトノベル原作のサイエンス・ファンタジー作品です。なんと原作のイラストレーター本人が漫画を手掛けています。イラストを描く能力と漫画を描く能力はまったくの別物とはよく云われます。それだけ聞くと「イラストレーターが漫画なんて描けるの?」と思われるかもしれませんが、この「エイルン・ラストコード」では神絵師にしか描けない神作画が実現しています。  精緻な絵で紡がれるギガンティックなメカアクションももちろん大きな魅力ではありますが、私が推したい一番のポイントは「女性キャラの美しさ」です。線や塗りがシンプルなスッキリとした絵柄にもかかわらず滲み出る色気が凄い。 ■神絵師ならではの正確無比のデッサン ■アニメーター顔負けの表情豊かさと演技力 ■白黒の漫画に描かれる美少女にしては珍しくメイクがキマっていていい匂いがしそう ■顔が可愛かろうが極限状態では白目剥くわ鼻水垂らすわ鼻血垂らすわ、平時とのギャップがえげつない と、他ではなかなか見られないみことあけみ先生の魅力を挙げればキリがない。。同じく人気イラストレーターであるヤスダスズヒト先生やokama先生による漫画にも、近い魅力を感じます。
機動警察パトレイバー
きみにいかれてメタメタ めちゃメカ狂い
機動警察パトレイバー ゆうきまさみ
ぱにゃにゃんだー
ゆうきまさみが描くパトレイバー は本当によく出来た作品だと思います。週刊連載なのでそれなりの話数にはなるのですが、1話その1のように話が区切られているので、全体としては20数話構成。ストーリーも細かいところへ枝分かれはしますが、基本的には謎のレイバーグリフォンとの戦いに終始しているので、話にブレがありません。一つの話を長く続けてここまで深めていけたのはパトレイバー シリーズの中でも、飛び抜けている点ではないかなと思います。 また、これは作家性の領域、あるいは漫画家という職業の強みかもしれませんが、キャラクターの魅力がずいぶん引き出されてます。特に主人公の野明のかわいさは全パトレイバーの中でピカイチ。そればかりか、あの太田さんまでも時折深みのようなものを見せるのですから、たいしたものです。 個人的に残念だった点をあげるのなら、野明がレイバーのことをイングラムと機体名で呼んでることですかね。アーリーデイズから入った人間としてはアルフォンスと呼んで欲しかった。完全に私の趣味ですが。 パトレイバーはゆうきまさみもTwitterなどで公言しているように、マルチメディア展開を念頭に置いた企画のようで、アニメが先、漫画が先ということはないらしいようです。あるのはどれが好きかでしょう。話として通ずるものも多く、例えばアーリーデイズと漫画には、海に現れた謎の巨大生命体を扱った話がありますが、前者ではハイドロジェンデストロイヤーで撃退しようとする本多猪四郎版ゴジラのパロディとして、後者として人間ドラマを織り交ぜたシリアスなストーリーとして仕上げていたりします。マルチメディア展開が故に楽しめる要素として、それぞれが楽しいですので、漫画共々パトレイバーは読まれ見られ続けて欲しいです。
プラネット・ウィズ
アニメ版も見たくなる漫画
プラネット・ウィズ 水上悟志
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
水上悟志自身が描いた、オリジナルアニメ企画『プラネット・ウィズ』用の1000p以上に及ぶネームを連載漫画向けに描き直した水上悟志最新作。 アニメは全く見ていない上での感想です。 主人公の少年・宗矢は、街を巨大なドラゴンに襲われる夢からハッと目覚め、メイド服の女の子と先生と呼ばれる人間サイズの猫と暮らしている事故で記憶を失った普通の少年。普通か?と思いきや、謎の飛行物体とロボと超能力のバトルに巻き込まれていくことになる。 立ち上がりからワクワクさせてくれる王道感! さすがは水上悟志先生! 意味ありげな夢から始まり、記憶喪失の主人公、普通の日常を送り、さっそく訪れる非日常、世界中に出現する不気味な謎の飛行物体、立ち向かう謎の勢力、おもむろに動き始める訳知りげな同居人たち。 この時点で面白くなりそう感。 謎の飛行物体の造形がまあ不気味でこういうの大好物です。 人間の科学が無効化されるのもいいですよねー。 第1巻なのでまだまだ序盤といった感じですが意外にも展開はサクサク早く、主人公を含め登場人物たちの立ち位置が少しずつ掴めてきて戸惑いつつも受け入れていく感じいいですよね。 個人的には、転校してきたばっかりの学校でいろいろ心配してくれる委員長がオカルト研究会だったという意外性が好きでした。 意外性で言えばいろんなところにありますが、あんまり触れるのも野暮なんでしょうか。 メインのあらすじ以外のディテール部分がしっかりしているのもいいですよね、主人公がずっと肉を食べたいと言ってるのに全然食べれないとか。 この前、ぼーっとクレヨンしんちゃんの映画を流し見していたんですが、空港だったり街中だったり、背景とか車の動きとかやたらディテールがしっかりしていて、映画的、映像的魅力に溢れていて流し見してらんなくなってきちゃったんです。 ディテールの持つ力ってそこですよね。 こだわりが細部に出て作品に奥行き、説得力をもたらして目を離せなくなる。 アニメも見てみようかなー。 水上悟志先生が他の作品でもよく描かれているようなそれぞれに正義があってそれぞれの正義に従って行動しているといったような要素もあって、たとえ今後の展開で真実が分かったとて、受け入れられるのか否か、それでも自分の正義を執行するのか。 楽しみです。