こいくちルームシェア

ガチオタに布教される同居生活、からの… #1巻応援

こいくちルームシェア ハルミチヒロ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

海外赴任する親についていくのが嫌で、実家を他人に貸して大家業をすることにした19歳の今野ゆめ。同居人のお姉さん達はいずれも重度の「ガチオタ」だった! 大家業に悪戦苦闘しつつ、お姉さん達に触発される無気力なゆめに、何か変化は訪れるか?発見の日々、始まる! ▼▼▼▼▼ 「マンバ」に集まる皆さんは、漫画オタクだったり、他にも何らかの濃い趣味をお持ちかと思う。 そういう人であれば、自分の趣味を誰かと共有したい……つまりは「布教」したいと思う一方で、あまり趣味を他人に押し付けて、相手に引かれるのが怖い、という引き裂かれた思いに悩んだ経験がおありではないだろうか? 主人公・ゆめとルームシェアする社会人の2人の女性は、それぞれ何らかのジャンルの「ガチオタ」である。そして、大家のゆめに対して最初は、その事を告げてはいなかった。 しかし、少しずつそれぞれの「推し」がバレていくと、オタクの彼女達はオタク語りが止まらなくなり、その勢いで布教活動を始めてしまう。強く推したいけど、反応が怖くて腰が引ける2人の布教の様子は、きっと多くの人が共感するだろう。 私はとても共感した! 主人公・ゆめは無気力で面倒臭がり。好きなものもなく漫然と生きてきたが、2人との同居で、まずアクティブな2人に惹かれ、関心を持つ。 今まで面倒臭いと切り捨ててきた、目の前の人への関心・共感。それを取り戻すために、興味を持とうという気になったゆめは、努力するうちに、ガチオタ2人が思いもよらなかった方向へ、足を踏み出す。 意外だけれどもしっくりくる、ゆめの「発見」に、読んでいて思わず「そうきたか!」と膝を打ってしまった。 自分で見つけたものほど、強く思い入れてしまうもの。巻末、ゆめが「自分で」見つける瞬間を見てしまうと、もう次巻の展開が楽しみで仕方ない!

ほしとんで

セリフや表情でピンボールしている俳句漫画

ほしとんで 本田
名無し

絶妙に面白かった。 「ガイコツ書店員 本田さん」を読んだときから 絵もセリフも面白いなあ、とは思っていた。 「ガイコツ~」では主人公がガイコツキャラだったからか、 基本的な表情は一定で、なのに感情の機微がすごく 伝わってくるのが印象的だったが、 今回は普通の顔のキャラなので、当たり前だが 表情が物凄く豊か。 なので感情というか心境がさらに伝わってくる。 全体的な絵も独特だし、セリフはあいかわらず秀逸。 「だれがそんなうまいこと言えと」 と思ってしまう面白セリフが連発で出てくる。 上手い会話のやり取りを「会話のキャッチボール」とか 言ったりする。 この漫画も会話を主にストーリーが進んでいくような漫画だし、 上手い会話をしているな、とは思ったが けしてキャッチボールはしていないなと思った。 言葉をキャッチボールのように互いに相手の胸元に正確に投げ、 聞くほうは脇をしめてガッチリとキャッチして、とかしていない。 各キャラが皆でピンボールをしている感じだ。 かつてゲームセンターに必ずあった、 パチンコのように鉄球を弾いて派手な音や光を楽しむゲーム。 言葉をピンボールのように結構な固くて重い弾と化して 色んな角度から緩急をつけて互いにあらぬ方向に 弾き飛ばしあいながらストーリーが進んでいく。 その様からはまさにピンボールゲームを眺めているような 楽しさを感じてしまった。 扱っているテーマは、地味の代表のような 「俳句」なんですけれどね。 で、そんなピンボールみたいな感じの、 読んでいて頭がグワングワンしてしまうような 振幅の激しいセリフのやり取りに翻ろうされるのだけれども 読み終えると俳句について「ああなるほど」と なんだか理解出来たような気になってしまう。 ほんとに妙な、凄く面白い漫画だ。

ストロベリーシェイク

ヘタレ×天然の百合感情はすれ違う?

ストロベリーシェイク 林家志弦
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

人気アイドル・橘樹里亜(16)は同じ事務所の新人・浅川蘭(16)に一目惚れ。悶々と妄想するだけで何も出来ない樹里亜と、樹里亜への想いが徐々に募っていくのに全く気づかない蘭の、仲良しなのにすれ違うヘンテコ恋物語……この物語に、終わりは来るのか? ♡♡♡♡♡ 蘭に恋した樹里亜は日々、蘭の妄想に勤しみ、息を荒くして悶える変態。しかし蘭はそんな樹里亜の下心に全く気付かず、仕事上ではカッコいい先輩に憧れ、尊敬の眼差しを向ける、見事な天然。真っ直ぐに樹里亜を想う蘭に、ヘタレの樹里亜は気持ちを伝える事すらままならない。 基本噛み合わない、突っ込みどころ満載の二人のやりとり。そこに百合百戦錬磨のヘアメイク×アイドルのカップルや、メンバーがみんなレズビアンのバンドZLAYが絡んで百合濃度を高めるものの、奔放な彼女らは突っ込みどころを増やすばかり。百合ボケのカオス状態……。 そのボケを全て拾うのは、樹里亜のマネージャー・冴木。鬼の様に厳しく樹里亜に突っ込んでいくが、樹里亜は止まらないし、蘭は自覚なく育っていくし、突っ込む対象は増えていくし……。 舌打ちし、毒付き、体を張りやがて疲れ、諦めていく冴木……何気にこの人が、一番面白い。 想い合っているのに噛み合わない樹里亜と蘭のやり取りに、「お付き合い前夜」の甘いドキドキを思い出しながら、行く先にある感動的なドラマに期待して読んでいただきたい!絶対泣くから! そしていちいち名言が多い百合ビジュアルバンドZLAY×樹里亜&蘭のコラボレーションは熱い!ライブの空気感まで想像しながら読みたい。

校舎のうらには天使が埋められている

こわくてサスペンスでちょっとだけ百合

校舎のうらには天使が埋められている 小山鹿梨子
mampuku
mampuku

 第1話から恐ろしいいじめの嵐が吹き荒れ、読み進めるほど(しかもかなりのハイペースで)絶望が深まっていく。この物語に希望はないのかと思われた矢先、2巻でついに真の主人公が現れる。これまでの悪意がどろりと渦巻くホラーから、光本菜々芽という聡明で高潔な少女がクラスの悪意を束ねる"白い悪魔"蜂矢あいと対峙する構図へと変貌をとげるのだ。 (これを読み返して気づいたのですが「校舎の天では悪魔が嗤っている」の作者・蜂矢あいというのは「校舎うら」の彼女の名だったんですね)  ときに大人すら欺き利用し、勇気ある告発者をさらなる悪意で踏みつぶす。いや~~蜂矢あい、悪役として完成度高すぎて小学生とは思えない!wいっそ格好いいとすら思えてしまう。相対する光本菜々芽もイケメンすぎる!そんじょそこらのヒーローよりかっこいい…  間違いなく思うのは、「この先どうなってしまうんや!??」と頁をめくるスピードを速めるにはキャラクターを好きになるのが一番いいということ。とりわけこの「校舎うら」は、冷静に俯瞰しながら作品の粗削りなぶぶんを見とがめつつ読むよりも、思いっきり感情移入して没入しながら読んだほうが絶対に面白い。

KILLER APE

戦争と死のリアル

KILLER APE 河部真道
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

第一話読んだ。 前作「バンデット」の勢いとかキャラの強さ、圧みたいなものの描き方が好きなので、この新連載も楽しみ。 2199年。 AIや機械に頼り戦争にも人間を必要としなくなっていたが、「大断絶」が起き、文明は若干の退行を見せ、再び人の生身が必要になっているという時代。 主人公は「配信者」で有名になることを夢見ているが、復興が目の前に横たわった世間の状態では白い目で見られている。 社会が裕福で許容できる時代じゃないと立場が低そうだ。 そんな彼が兵士になるため、圧倒的にリアルな仮想現実の中で、肌で過去の戦争を体験することになるのだが、その様子がなかなか痺れる。 偶然だろうが、たった一発の銃弾が向かった先に人がいればあっさりと命は摘み取られるのが戦争のリアルだ。 戦争、死の現実感を目の前でまざまざと感じ、ちゃらんぽらんな生き方をしてきた主人公はどうなってしまうのか。 過去の戦場と未来の戦場を横断する感じになっていくのか。 「12モンキーズ」という映画で、未来では囚人が過去の戦争に参加したり、重大な事件を阻止するために過去に送られるというシーンがあって、それをふと思い出した。 映画「マトリックス」然り、圧倒的な現実感を持った仮想現実は現実とほぼ変わりない。 最近でも、VRと自覚したうえで斬首を受けた人が、体調に異変を生じてしまったという話がある。 リアルすぎて痛みを感じられるほどの仮想現実の戦場での死は、精神が死を感じ取って現実の死に直結してしまうのではないかと勝手に変な心配をしてしまった。 大作になりそうな予感がビンビンするので、ぜひ最後まで描き切ってほしい。

宇宙家族カールビンソン SC完全版

演じる家族の笑いと儚さが染みます

宇宙家族カールビンソン SC完全版 あさりよしとお
なかやま
なかやま

あさりよしとお 氏の代表作品 氏の作品を読んだことのない方に、どの作品をオススメするかと考えたら この 宇宙家族カールビンソン を挙げると思います。 80年代から00年代まで続いた作品で、初期の絵柄は THE 80年代っぽいですが、 あさり氏が80年代の絵柄を作ってきた一人だと私は考えています。 基本的には一話完結のストーリー あらすじにあるように、 宇宙船同士の事故を起してしまった宇宙の旅芸人たち 事故相手の宇宙船で生き残った赤ん坊をコロナと名付け、迎えが来ても自分の星での生活に困らないように、残った資料からその星の「家族を演じ」ます。 コロナの星は「地球っポイ星」なので、どことなくズレた日本っぽいやり取りがクスりときます。 かなり濃ゆいメンバーが出てきますが、やはり「おとうさん」が自分は好きで 彼の「過去の話」は今でも強烈に覚えています。 一話一話、ギャクテイストではありますが、全体を通して少し儚さがあります。 壊れてしまいそうな部分をみんなが必死に支えている感じが、とっても染みます。 全11巻との表記がありますが、明確に終わっているわけでは無い作品です

遥かなる甲子園

号泣保証

遥かなる甲子園 山本おさむ 戸部良也
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し

自分は、漫画や映画のようなフィクションに触れてウルウルすること、実際に「涙を流す」ことの多いセンチメタルな人間なのだが、その多くは、あくまで個人的な心情にフィットして、だ。つまり、自分自身の経験や環境と類似するシチュエーションにいるキャラクターに、感情移入をして泣くのである。 だが『遙かなる甲子園』は、あくまで物語内のキャラクター、自分とはまったく異なった存在に作品を読むと同一化させられ、オンオンと号泣させられる。 自分でもおかしいんじゃないかと思うくらい、涙でページが見えなくなってしまう。 感動作という表現がこれほど相応しい漫画はない。 山本おさむはキャリアの長い人で、初期の青春物から近年の『そばもん』『赤狩り』まで、篤実な作風とはこのことか、という誠に得がたい才能だが、なんと言っても本作『遙かなる甲子園』『わが指のオーケストラ』『どんぐりの家』という、聴覚障害や重複障害の人々を描いた「人権三部作」とも呼び得る圧倒的作品群が素晴らしい。 漫画読んで泣きたい人は、ぜひ。 不思議と読後に心がすっきりします。 余談だが、山本には、漫画作品ではないが『マンガの創り方』という隠れた名著があり、これを読むと、その真率に創作に向かう姿勢の一端を知ることができる。簡単に言えば、彼の作品には常に読者への強い心配りがあるのだ。だからこそ、自分と関係のない存在にも、あれほど感情移入させることができるのだろう。(この本、古書でも高額で、あまり薦めにくいのだが)