びんちょうタン

大切に描かれ、大切に育てられた作品

びんちょうタン 江草天仁
なかやま
なかやま

自分はアニメからこの作品に入ったのですが、4コマと言うジャンルの枠を超えている素晴らしい作品で、主人公のびんちょうタンの生活を美しく描いていると思っています。 内容は主人公のびんちょうタンの貧しくも清らかに慎ましい生活を中心に描かれたもので、彼女の友人の話や学校へ行きたいなど、本人の世界が徐々に広がっているところが見ていて、心があたたかくなります。 特に、おばあちゃんの話は10年以上たっても、自分の心に刺さっています。 1巻前半の雰囲気とは後半から大きく変わっていくので、試し読み出来る部分と話の軸がちょっと変わります。(ちょっと注意ですが、読んでほしい) wikipediaをみると、即興で考えたキャラクターがひっそりと雑誌の片隅で始まり、徐々に人気が出てアニメ化とのことでした。 自分がこの作品を大きく評価しているのは、その即興で生まれたキャラクター達に命を吹き込んで且つ育て上げた作者の 江草天仁 さんの存在です。 例えば、 びんちょうタンが頭につけている「炭」ですが、コレは単純に備長炭のキャラクタだからつけている、というよりも村には「炭をつける」という風習があり、伝統を重んじる家庭の子供は炭を付けている と言う感じです。 そして、全4巻の作品ですが これ・・・同人誌版で『学校編』が存在します。 連載が終わった 2008年から同人活動として連載を続けて、2013年にまとめた本が発表されています。 これは、きっと作者さんがびんちょうタンを学校に行かせてあげたい、という優しい思いがあったのだと考えます。 大切に描かれ、大切に育てられた作品です、是非

バトルグラウンドワーカーズ

第一話からぶっ飛ばしてて面白いSFアクション

バトルグラウンドワーカーズ 竹良実
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

第一話からぶっ飛ばしてて面白かった。 『辺獄のシュヴェスタ』 『不朽のフェーネチカ』 の竹良実、最新作! 天涯孤独・30歳男性に届いたのは世界を守る公務員の採用通知。 それは、25年前から世界各地に襲来し始めた未知の生命体「亞害体」を水面下で撃退する組織だった。 行ってみるとそこには、不良、オタク、コミュ障等、社会不適合者がずらり。 人型のロボット兵器「RIZE」と神経接続によって遠隔操作し、誰かの役に立つべく、地道に頑張る主人公だったが・・。 わりとガッツリSF感あって楽しい。 いまのところ主人公がとてもいい人に見えるし、地味に頑張っているので応援したくなるのだが、どこかにでっかい落とし穴がありそうでめちゃくちゃ怖い。 希望を胸に抱き、ここで幸せを掴もうと最初は頑張ってるが、そんなんじゃないとどこかで絶望してしまうはず・・こわい・・報われてほしい・・でも絶望もしてほしい・・。 痛みはダイレクトに伝わってくるが、「通信機」を破壊されるまで死なない身体をどう使うのか、第一話の見所だ。 そして後出しで告げられる大事なルール。 やはり闇は彼にしっかりと寄り添っていた。 亡くなった両親の直接の描写は無く、言葉で語られるのみなのも実は意味があるんじゃないかと勘繰ってしまう。 幸せな人生にしなきゃと自分のためのように見えてあくまで人の願いのために頑張ってきて、素直でいい人すぎる主人公がどうなるのか見ものだ。

ライチ☆光クラブ

理解できたのかどうか自信は無い

ライチ☆光クラブ 古屋兎丸
名無し

エログロとか耽美的世界とかには興味を感じなかった。 触れることを強要されるようなジャンルでもないし、 幸いにして触れる機会も無かったし、 なので喰わず嫌いかもしれないとも思いながら ほとんど関わらずに過ごして来た。 例えば、自分は松田優作が好きだったが、 アクション物や文学作品的なものは見たけれど、 「陽炎座」は「まあ・・無理に見ないでもいいか」 と思って、未だに見ていない。 鈴木清順作品だからとか、耽美的だとか聞くと 自分の好みではないだろう、 自分には理解できないだろう、と思って。 で「ライチ☆光クラブ」 何回か「あれは凄いよ」という評価を聞いた。 「グロイけれど凄いよ」「耽美的だけど凄いよ」 との評価だけれど。 なので「喰わず嫌いなだけだったら損だしな」 という動機が半分で買った。 買っては見たものの、数ページ読んだあたりで 「まあ・・無理に読まないでも」 と思って本を閉じるのを繰り返していた。 結局、購入から2年以上たって、いつまでも読まないのもと 一気に読んでみた。 読んでいる最中は、正直、買ったこと読んだことを 少し後悔した。 多分、死ぬまでにもう一度読むかというと、 読まない可能性が高い。 ただし、最終回前後のシーンだけは、 「これはオレの全く知らない世界だな」と、 こういった凄さ、こういった美もあるのか、と、 ああこれが耽美的ってやつなのかな、と、 感じるものはあった。 まあ「ライチ☆光クラブ」ほとグロくない作品であれば、 耽美的といわれる作品も、また見てみようかな、とも思った。

村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない

これは好きな『なろう』コミカライズ…!!

村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない 森田和彦 昼熊 海鼠
たか
たか

マンバの『みんなが気になっている新連載を教えて!』トピで知った作品。 https://manba.co.jp/topics/12035/comments/98959 とにかく絵が上手い!最近は「ラノベっぽい」デフォルメされたキャラデザで背景スカスカの作品が多いですが、この作品は珍しくキャラの等身が高く背景までしっかり描き込まれていて嬉しい驚きでした。解像度が高い…! ウェブ連載とは思えない、雑誌に載ってておかしくないレベルの画力だと思ったら、作画はヤンマガでネメシスコールを連載していた森田和彦先生で納得。 そしてストーリーはかなり王道。 大学卒業後10年ニートをしてる主人公の元に、ある日突然PCゲームが送られてくる。現代の技術では実現不可能なレベルでよくできたそのゲームの世界に、主人公は「神」として1日1回干渉するというあらすじ。 最初は、いかにも典型的なネット小説っぽい話だなぁ…と斜に構えていたのですが、予想外に主人公の心の動きが丁寧に描かれていて惹き込まれました。 家族とギクシャクしたまま同居し、自分を卑下しつつも小さなことから一歩踏み出していく姿は、リアル寄りの絵と相まって説得力があります。 なんと現在単行本1巻分+1話がウェブで無料で読めてしまうので、普段こういう系を読まない人もぜひ…! 【連載ページ】 https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000132/ 【原作】 https://ncode.syosetu.com/n1119fh/

人間失格

漫画だからこそ描けた絶望

人間失格 古屋兎丸 太宰治
野愛
野愛

太宰治『人間失格』を漫画化した作品。 原作をそのままなぞっているのではなく、現代的かつメタ視点で描かれている。 古屋兎丸先生自身がインターネット上で大庭葉蔵の日記「人間失格」を発見し、読み進めていくというストーリー。 読者は古屋兎丸の目を借りて、葉蔵の人生を追いかけていくことになる。 父を憎みながらも実家の金で裕福に暮らし、仕送りが打ち切られれば女の家に転がり込む姿に、最低だ罪人だと責めたててしまいたくなる。 煙草屋の娘に恋をして、1日に何度も煙草を買い、素直になれず揶揄う姿はなんとも可愛らしい。 他者の目を挟むことで、葉蔵という人間の可愛らしさや狡さ、いやらしさがより鮮明に浮かび上がる。女を誑かす様子なんかは、原作よりも真に迫るものがあるような。 小説『人間失格』も葉蔵の日記を読む他者の視点で描かれている。漫画『人間失格』も同じだが、古屋兎丸視点で古屋兎丸の絵で描かれているので、メタ要素がより色濃く感じられる。 葉蔵を見つめる読者である古屋兎丸を見つめる読者である自分自身。古屋兎丸の目が自分自身の目となり物語に飲まれていく。 嫌悪、軽蔑、共感、友愛…葉蔵に対して様々な感情を抱きながら、共に絶望の果てに追い込まれる自分自身をまざまざと見せつけられる。 小説『人間失格』からは「ただ、一さいは過ぎて行きます。」という一文が示す通り、すべてが過ぎ去ったあとの凪のような絶望を感じた。 対して、漫画『人間失格』からは今まさに激流に飲み込まれて苦悩しているような生々しい絶望を感じた。 それぞれの絶望の味を是非読み比べてみてほしい。 古屋兎丸先生の人間失格が素晴らしかったので 津軽×魚乃目三太先生とか、斜陽×えすとえむ先生とか 相性の良さそうな太宰×漫画家を妄想するのが楽しい…駆込み訴えをどうにか現代設定(どうやって)にしてゴリゴリのBLにしたりとかめっちゃ見たい