ひとりぼっちで恋をしてみた

共感できすぎて染みる

ひとりぼっちで恋をしてみた 田川とまた
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

切なさと寒さで胸がギュッとなる。気づくと眉間にシワが寄っていた。油断すると涙が出ちゃいそうだったから。 消極的な意味ではなく、言葉を伝えたい意図と間違えて伝えてしまう意味でコミュニケーションが苦手な主人公の女の子、を描く会話がとても上手なので作者さんはコミュニケーションが上手な方なのかもしれない。 いらぬ気の遣い方や会話のずれ方、人の話を聞く時は肩に力が入ってしまうのがすごくよく分かる。 天然でドジな本人こそが一番ちゃんとしたいと思っている。 理解してもらえないとき、すごく孤独を感じる。 孤独を感じたときはすごく寒い。 冬の北海道で、誰にも理解されず、ひとりぼっちで過ごすのはどれだけ堪えるんだろう。 淡々と進むようで、背景までしっかり描かれているので映画やドキュメンタリーのような密着感があってグッと来る。 ドキュメンタリーの撮り方には二種類あるとどこかで聞いたことがあって、結論を持った上でそれに沿って撮っていくやり方、なんか分からないけど面白そうだからとりあえずカメラを向けてみるやり方。 この漫画は後者のように感じる。 予測のできない彼女の行く末を、たとえ悲しいことになったとしても見守っていたくなる。 きっとドジばっかしてしまう彼女も人一倍考えてはいる。 だが、母子家庭だったこともあって誰にも、特に母に迷惑をかけないように小さく生きていたことで疑問を持っても外に出せずやがて疑うことをしなくなっていったんじゃないかと思った。 僕は帰国子女なんだけど、日本に帰ってきてからは常識が違って分からない事だらけで、疑問しか出てこないから途中から疑問を持つのをやめた結果、驚きや感動が減ってしまった経験がある。 何が起きても、へー、そういうもんなんだ、と。 疑問を放棄すると理解から遠ざかっていく。 疑問を持つって本当に大事なことで、人類の進化は全てがそこに詰まっているんじゃないかと思ってる。 もし女子高生の彼女もどこかで疑問を持つことをやめてしまったんだとしたら、それは思考を放棄したり、成長を止めてしまうことに繋がりかねない。 他人に気を遣いすぎて、疑問を持っても解消できなくて、一生懸命やっても上手くいかない。 これは分かりやすい大きな不幸ではないが、これだけが全てである人からすれば、どうしたらいいか分からなくて辛いに違いない。 好きになった相手にもうまく気持ちを伝えられない。素直になれない。うまく言葉が出ない。不器用だから天然だから出た言葉も伝えたい意味と違うように伝わってしまう。自己肯定感が低いから自分を低く見積もる。 どうせ自分なんかが・・。と。 恩恵を受けても感謝より先に申し訳ない気持ちになってしまうのだ。 解決法はきっと見返りを必要としない大きな愛に包まれることだ。 彼女はまだ若い。どんどん変われる。 どうか、救われてほしい。 2巻で、自分自身の天然さドジさ馬鹿さに呆れて付き合っていく覚悟していて最高でした。 どうしようもできない部分も含めて自分なんだ。 覚悟して人生を踏みしめていくんだ。 鼻がツンとする。 頑張って生きるんだ。

潮風アンタレス

父の死、そしてタコ

潮風アンタレス 沼原望
名無し

何かのタイミングでこの表紙が目に入り、気になったので読んでみた。同人誌っぽい、と思ってたら本当に同人誌として描いたものらしい。 あとがきで作者がこの漫画を生み出すのに相当苦悩したことが記されている。勝手な想像だけど、自身の経験を元にしてるのかなと思った。 ストーリーとしては、何をするにも点数で評価してくるような厳しい父親に育てられた少年が、ある日、父が亡くなってもなんの感情も生まれてこなかったところから始まり、家のベランダに唐突に落ちてきた「タコ」と行動を共にすることで自身が抱えるトラウマや、父親に対しての思いと少しずつ向き合うというもの。 読み手としてはとにかく父親の愛情のない(しかし躾や成績に関してはものすごくこだわる)接し方には疑問しかなかった。ああいう親に育てられたらなんでも点数評価で考える人間が出来上がってしまう。不器用な人だったといえばそれで済む場合もあるみたいだけど、そういうのはあまり好きじゃない。 だけど、主人公が父親と最後に交わした言葉を考えると、彼の心に「後悔」の文字が浮かぶことは想像できるので、そのままにしておいたら駄目なやつだったんだな、と理解できます。 今は商業漫画家として活躍してるようなので、他の作品も読んでみたいですね。

戦国ごはんの丸根さん

お弁当は兵糧丸!? お家で戦国時代料理を楽しもう! #1巻応援

戦国ごはんの丸根さん 市橋イズナ
ぺそ
ぺそ

辛い前職を辞めて時間に余裕の出来た戦国時代好きOL丸根さんが、お家で戦国ご飯を作ったり仲間と武者行列に参加したり、充実した戦国ライフを楽しむお話です。 https://twitter.com/nosukenoiz/status/1346059589020598273?s=20 兵糧丸って子供の頃憧れましたよねー!それがまさかお家で作れるとは。 丸根さんが作る料理はどれも簡単に手に入る食材ばかりで、自分でも作れそうでワクワクしました。 特にいり酒…!日本酒に梅干しと鰹節を入れて煮るとか…そんなの絶対美味しい…! これ1冊で ・焼き味噌 ・兵糧丸 ・香の物 ・鯨汁 ・ニラ雑炊 ・こねつけ ・ほうとう ・金平糖 8つの戦国料理が楽しめるので、お家で変わったメニューが食べたいときは参考にしようと思います! また丸根さんが戦国にハマった理由が戦国鍋TVだと仄めかされていて思わず笑ってしまいました。確かにあの番組は面白かった…! 武者行列って日本各地で行われているのを知ってはいましたが、こんな感じで参加するのかと参考になりました。 丸根さんが料理やイベントを心から楽しんでる姿や、戦国仲間たちと盛り上がってる様子にほっこりしました。 トクサツガガガもそうですが、何かに夢中になっている人たちを描く作品って、それを読んでいるこっちまで楽しい気持ちになるので好きです。 単行本の発売を機にこの作品を知ったのですが、1巻で終わってしまったのが本当に残念です…。 元・武将隊だったという北大路の過去、めちゃくちゃいい感じに近づいた北大路と丸根さんの関係などなど、気になるところがたくさんあるので何らかの形で続きが読めたら嬉しいです!

サブスク彼女

愛されたいからこそ、愛されることを諦めた“病みかわいい”メンヘラたちの物語。

サブスク彼女 山本中学
コニシ
コニシ

「繋がる個体」・「戯けてルネサンス」の山本中学先生の最新作。 ・あらすじ ちょっとメンヘラ気質の主人公のトモは、いつも男のエモい恋(感傷的な恋)に利用されてばかり。 自分の恋愛感情を男たちに搾取されることにうんざりしたトモは半ば自棄っぱちで月額定額制の彼女=サブスク彼女になることを決意。 もう恋愛なんかに振り回されないと決意したトモだったが、ずっと前からトモのことが好きだった高校時代の友人であるコースケと再会して・・・? ・推しポイントなど! 不器用で繊細な人間を描くことに定評がある山本先生の次なるテーマはなんと「メンヘラ」。 「男の人がエモいと感じる恋がキライ。」というキャッチコピーから始まる本作は、今流行りのこじらせ系の男女の悩みや葛藤をありありと生々しく、それでいてコミカルに描いている。 サブスクライブという今では当たり前となったサービスを恋愛に活かすアイディア、とにかくわかりみが深いキャラたちの心理描写が素晴らしい。 そしてなんといっても山本中学先生の描く女の子たちは相変わらず愛おしく、それでいてリアルに描かれているのがたまらない。 マンバさん主催のイベント「2020年オンラインマンガプレゼン大会」にて本作を紹介しているので、もっと具体的な内容が知りたい方はぜひそちらの動画をご覧になっていただけると幸いです。 https://www.youtube.com/watch?v=ZYK7RSvhwAQ&t=2763s&ab_channel=%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%90

ワケあり男女のシークレットデイズ

話が進むたび"ワケあり"が増えていく社会人ラブコメ #1巻応援

ワケあり男女のシークレットデイズ むしろ
sogor25
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主人公の瀬島あかりは2.5次元俳優のオタクですが、そのことを会社では隠しながら働いていました。 しかも「彼氏と電話する」という口実で昼休みにランチの誘いを断って会社を抜け出し、近くの公園で推しの俳優の配信番組を見るという始末。 そんな彼女はある日、いつもの公園で配信に夢中になるあまり、お昼ご飯をカラスに食べられてしまいます。金欠で新しくお昼を買う事もできず困っているところ、見知らぬ男性に助けられます その際に会社を抜け出して推しの配信を見ていることを彼に話してしまうのですが、その日の午後にあかりは、さっき助けてくれた男性、風間律が今日から異動により自分の同僚になると人物だったいうこを知ります。 こんな感じで秘密を共有することになったあかりと律なのですが、そのまま社会人ラブコメのような展開に入っていくのかと思いきや、さらに驚きの展開が繰り返されていき、かなりコメディ寄りの作品であることがわかってきます。 加えて、あかりがオタクであること以外にも会社の同僚に秘密にしないといけないことが出てきて、さらに作品のドタバタ感が増していきます。 もちろん2人の関係性の進展もちゃんと描かれており、楽しめるポイントのたくさんある作品です。 1巻まで読了

晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない

ポップに見えて実はジェンダーに深く切り込む作品 #1巻応援

晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない 八寿子
sogor25
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ひょんなことから出会った同級生・晃と仲良くなるものの、晃の性別が男性なのか女性なのかわからず、それに翻弄される一真の様子を描いた作品 一読するとラブコメっぽい作品なんですが、解像度を少し上げて読むと、その第一印象とは違った側面が見えてきます。 仲良くなるにつれて一真が晃に直接性別を聞きづらくなってくる、という展開までは想像に難くないのですが、一真が晃の性別を探る中で露わになってくるのが、一真の内面に存在した“ジェンダーロール”の意識。 つまり、男性ならこういう行動をするはず、女性ならこういう行動をするはずという潜在的な意識を元に一真が晃の性別を見極めようとしている様が描かれます。 その結果、“ジェンダーロール”に囚われない振る舞いをしている晃、そして友人たちもそれを自然に受け入れている様子と、実は“男らしさ”という固定観念に縛られて生きていた一真の様子が対比となって浮かび上がってきます。 軽妙なタッチで描かれていますが、その見た目に反してジェンダーについて深いところに切り込んでいる作品です。 もちろん一真と晃の関係性の変化を追っていくだけで楽しく読める作品ですが、晃の性別がどちらかという2択だけではない、様々な可能性が散りばめられているので、そういう要素を汲み取っていくとより楽しめる作品だと思います。 1巻まで読了