薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―

少女漫画はこうして作られる!超貴重なアシスタント目線のエッセイ

薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記― 笹生那実
まるまる
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日本の少女漫画文化の礎を築いた名だたる作家たちのアシスタントをつとめ、数々の「シュラバ」を経験した著者から見た、知られざる少女漫画制作の裏側。 その裏側には、薔薇が舞いアハハ..ウフフ...と笑顔が輝く少女漫画(例えが薄っぺらくて申し訳ない)イメージとは正反対の、寝食を限界まで犠牲にする作家とアシスタントたちの姿がありました。 ただ本書で描かれるのは、そのシュラバが如何に地獄だったかとかそういう話ではなく、いまやレジェンドと呼ばれる作家たちの名作誕生秘話や、それぞれの人柄がよくわかるエピソードなどです。 大変なこともたくさんあるけど、何よりみんな漫画が好きで描くのが楽しくてしょうがないというのが伝わってきます。 衝撃的だったのは、萩尾望都先生自ら作詞、作曲、歌、ナレーションをこなしたアルバム「エトランゼ」に収録された「アシスト・ネコ」の歌詞。シュラバの混沌をそのまま歌詞にした内容(のよう)です。聞いてみたい…。 あとは美内すずえ先生に、著者が新人の頃に犯した失敗を7年越しにお詫びしたときに放たれた言葉。これには本っっっ当に痺れました…!!! どんな言葉だったかはぜひ本編で確かめてください。

月と金のシャングリラ

君はチベットを知っているか?

月と金のシャングリラ 蔵西
名無し

 私がチベットについて知っていることと言えば、「そういえば、マニ車ってチベットだったよな」ぐらいの浅い知識でした。そんな私でもあら不思議このマンガを読むとチベットの世界に潜り込むことができるのです。その要因は、何と言っても作者様の裏打ちされた知識と圧倒的書き込み&美麗な線画! 蔵西先生は、大のチベット好きで前作『流転のテルマ』もチベット文化漫画。何度も現地に赴きご自身の目で耳で体験したことが作品に活かされているのです(取材旅行の様子はエッセイ漫画にもなっています)。そして、圧倒的書き込みで表現される広大なチベットの大地、生活風景など紙の上でもまるで眼前に広がっているような存在感があります。 余談ですが、書き込み&美麗、異文化圏漫画と言えば『乙嫁語り』が思い付く方も多いのではないでしょうか。『乙嫁語り』が好きなそんな貴方は、きっとこの作品にもハマれるはず……!  この作品の魅力的な部分として、僧院に暮らす少年たちの交流を挙げておかねばなりません。特に主人公であるダワ、ダワのことを気にかけ友人として接してくれるドルジェこの2人の関係性は外せません。父親に置き去りにされ身も心も1人だったダワは、親身に寄り添ってくれたドルジェに対して心を許し支えてもらっていきます。所謂、ブロマンス(男性同士の極めて近しい性的な関わりのない親密さの一種)がダワの片想いという 形で描かれていきます。ブロマンスの関係性には「男同士の熱い友情」が近いと言われており、性的描写のあるBL作品に比べると男性でもかなり読みやすいのではないでしょうか。  また、登場人物みんな顔がいいです。イケメンという意味ではもちろんそうなのですが、注目すべきはキャラクターたちの表情です。この作品キャラクターたちは、一部を除きまだまだ幼く抱いた感情がそのまま顔に表れ、それを通し感情、想いが私たちの胸にダイレクトに届くのです。この表情まで含めてみな顔がいいのです。  歴史に詳しい方は、お気づきかも知れませんが物語はこの後「チベット侵攻」というチベット激動の時代へと進んでいきます。暗い洞穴の様な時代の中で、少年たちがどういった選択、人生を歩んでいくのか。また、ダワの父は幼き子を置いていかなければいけなかったのか、そしてダワの秘めた想いはどうなるのか気になるポイントはいくつもあります。惜しくも8月発売の2巻で完結が既に告知されておりますが、逆に言えばまだまだ追いつくのは簡単です。是非みなさんもこの美しく儚い物語の結末を一緒に見届けませんか?