青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰

家庭の事情が呪縛する恋愛 #1巻応援

青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰 五郎丸えみ
兎来栄寿
兎来栄寿

「自分だけ幸せになってはいけない」 という呪いを抱いて生きてきた人には、共感を抱かれる作品かもしれません。 容姿も性格も良く人気者である男子高校生・和泉の抱える闇は、とある家庭の事情。彼が中学校のころから一緒の立花への特別な想いが移動教室中の肝だめしというイベントで開花します。 そんな立花は、普段は口ごもりがちでありながら演劇の才能を持つ少女。彼女も彼女で、和泉に対しては特別な感情を抱いています。 お互いに特別な想いがありながらも、すんなりと付き合うことはできない事情を抱えたふたりを巡る物語です。恋物語は障害がある方が燃えるとはいえ、少々重いです。が、これはこれでこうした作風が好きな方も少なからずいることでしょう。 年頃の子たちが普通にしていることを、自分だけできず我慢を強いられる。そのストレスやそれによって生まれる歪みは非常に大きなものです。しかし、さまざまな理由によって現実にそうなってしまっている人は多くいます。その圧力が解き放たれる先が、内か外か。自分か他人が傷を負うことは避け難いです。 プロタゴニストは「主人公」の意。主人公になりたくてもなれない。そんな人生を、青春を過ごす少年少女たちが胸を焦がします。 立花の奥底にあるものも含めて、行末が気になります。

貸人屋

アンドロイドをレンタルして何をしたいですか? #1巻応援

貸人屋 宮尾岳
兎来栄寿
兎来栄寿

ソフトバンクの孫さんが「ChatGPTを使ってない人は人生を悔い改めた方がいい」と発言して物議を醸していますが、AI分野が非常に盛り上がっている昨今。 『並木橋通りアオバ自転車店』の宮尾岳さんが描く、AIを駆使したアンドロイドをテーマにしたオムニバス作品です。 近未来の日本を舞台に、「貸人サービス」というアンドロイドを好きな容姿や人格に設定して一定期間レンタルできるサービスに関わる人々を描いていきます。 第1話の1コマ目が ″だから父さん! 免許返納してくれよ! もう80歳なんだぞ!″ というセリフから始まる辺りは現代的ですね。 家族の代わりとして利用する人もいれば、彼氏が欲しい女性や二次元の推しキャラに似せる少年など、目的やニーズは多種多様。 ヒューマンドラマの名手が描くAIと人間の交流ということで、素朴な温かさが感じられる話が多いです。派手な面白さや非常に斬新な発想や設定があるわけではないですが、それがいい。 個人的には、現在AIと人力を合わせて生み出すサービスに関わっており日々人間にできてAIにできないことやそれをどうシステムに落とし込めるかなどを考えているのですが、そのひとつの例となるお話もあってこのタイミングで読めたことに意義を感じました。ガンプラ的なものを大好きすぎる男性の話なども好きです。 「アンドロイドがいる未来に最も柔軟に付き合えるのは、アトム以来何十年もアンドロイドを見つめてきた日本人ではないでしょうか」 という宮尾さんのあとがきにも首肯します。これくらい精巧なアンドロイドが現実世界で活躍するのはいつくらいになるでしょうね。