青年マンガの感想・レビュー15415件<<556557558559560>>女の子が釣りを始める話なんだけどdon’t like this 鶴谷香央理かしこメタモルフォーゼの縁側の作者が描いたマンガ。2巻と一緒に書店に並んでたのに、何となくスルーしてしまっていた私はバカだった。めっちゃ面白いです。ひとことで言えば女の子が釣りをするマンガなんだけど、決してそれだけじゃない。この子がどんな家に住んで、仕事をして、人と出会って、という人の営みをないがしろにせず描いてるのがいい。そこのリアリティーがこの作者さんは群を抜いてすごい。メタモルフォーゼの縁側を読んでる方はこちらも必読だと思います。タイトルが「don’t like」だけど、主人公は嫌いなものを拒否するのではなく、いつの間にか受け入れて自分の世界にできている。どうにかしようとしちゃダメなとこは釣りの感覚と似てる気がする。ほぼやったことないけど。お習字ではない「書道」の世界とめはねっ! 鈴里高校書道部 河合克敏たか主人公の設定が、「ガチャピンみたいな顔した大人しいカナダ育ちの帰国子女」ってそれだけでもう面白い。絵に描いたような文系少年と、柔道全国レベルの体育会系少女が出会う王道のボーイ・ミーツ・ガールが、書道というテーマがあることでいっそう面白みが増している。舞台が鎌倉なのも洒落てる。 「書道って読めないし、昔の詩を書いてるし難しそう…」と尻込みしてしまうが、海外育ちで全く書道の知識がない縁(ゆかり)が主人公のおかげで、初歩からすんなりと楽しみながら学ぶことができるのがいい! お習字の先にある書道という世界を垣間見たいなら読むべし!寡黙で粋な奥さん粋奥 日本橋ヨヲコ 木内亨starstarstarstarstarひさぴよ『G戦場ヘヴンズドア』連載終了後に月刊IKKIにて掲載された短編で、スーパーヒーローのような奥さんが活躍する話。 寡黙に淡々と家事・掃除をこなし、日常で巻き起こるトラブルを颯爽と片付けていく様にシビれます。作中ではほとんど何も語らない奥さんですが、その行動やしぐさだけで、夫や周囲の人への深い愛情がとてもよく伝わり、G戦場や少女ファイトのような力強いメッセージとはまた別のやさしさに満ちた作品になっています。後半には「日本橋メソッド」なる創作過程を丁寧に解説したコーナーが載っていて、漫画志望者にとって参考になると同時に、日本橋ヨヲコ先生の創作技法を知りたい方も必見の内容です。物語の自由自在さ!!!!!書道教室 筒井秀行かしこまるでアニメーションのようにスイスイと物事が展開する! キャラクター達のユニークさとネタの引き出しの多さ! スナック感覚で読めるのに何これ食べたことない! やめられない!とまらない! つい!!!!!が多くなる! いい短編に出会えると本当に嬉しい #読切応援裸の肖像 加納梨衣starstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)加納梨衣先生の短編集が出たら絶対に買う!と誓ったスペリオールの読切。 美大受験で一浪し、予備校に通っている純情少年が初めての裸婦デッサンに動揺を隠しきれず全く描けなくてムキになっていたところに、さっきのヌードモデルが話しかけてきて・・。 あんなに爽やかで胸キュン必至の『スローモーションをもう一度』が描けて、こんなにじっとりとしたエロティックな作品も描けるなんて! 多くの言葉を必要としない、心情を表情や目で語る描き方がとても上手いし面白いし、美しい。 間を表現する表情のアップにハッとさせられる。 セリフは関係や感情を示すわざとらしい言葉は極めて少なくごく自然なやりとりがされているところが映画的で素晴らしい。 50分くらいで映像化してくれたりしないだろうか。 面白くない映画の特徴として、やたらと状況や感情を言葉で説明してしまうものがあって、そうされてしまうと観る側としてはその人にそれ以上の何かがあるようにも思えず、もはやそのキャラクターに自分を重ね合わせてその奥の感情を読み取る気が萎え、全体的に薄っぺらく感じて興醒めしてしまう。 それに比べてこの作品は表情の一つ一つで読者をがっちり掴んで離さない。 彼女の目がすごい。 目は口ほどに物を言うとはいうが、この目が感情を語り、心動かされ、その心情の奥を掘り下げたくなってしまう。 主人公の前にはまだまだ可能性が満ち溢れていて、経験したことがないこともたくさんある。 そんなとき突然鼻先にぶら下げられた魅力的な彼女、突き動かされた性欲に思考がぶん回され本来の目的を見失ってしまうのも分かる。 彼女の好意と興味は確かにあったであろうが、それが相手の人生を狂わせてしまうものであれば、と決断するほどには本気だったのかもしれない。 いや、だからこそ逆に遊びなのか? どちらにせよ、優しさゆえの決断だったと分かるし、もっとしっかりしていれば違う形もあったんじゃないかという後悔も出てきそうだ。 その決断に報いるには前を向いて頑張ることだ。 スマホやLINEらしきものが出てくるので現代と分かるが、それ以外は特に時代性を感じさせず、いつの時代のどこの地方に当てはめてもある程度読めそう、というのが僕は大好きだ。 路面電車とか、髪のなびき方、乱れ方などディテールの良さと画面の白さの抜き加減のバランスもたまらない。 あー、絵とか全然描かないけど、知り合いがやっているヌードデッサンにたまらなく行きたくなってしまった。あらすじのせいで損している気がする京都札の辻下宿 どおくまんプロ どおくまんstarstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男あらすじはいかにも「どおくまん」っぽい表現になっているがこれは第一話のあらすじで2話以降は下宿の人間模様や辻本と鈴木の友情などいい話がばかりだった。 最初の方は辻本が主役で後半は鈴木の漫画を書くことメインになっていく。 インタビューとかを読んでから読むとちょっと自伝っぽい サッカーを通す熱い青春物語アオアシ 小林有吾 上野直彦みかん坊や主人公あおいが、その才能を活かして、日本一のユースに入る話。 あおいは才能を開花させるが、多くの壁が立ちはだかる! 最高のサッカー漫画です。 これは映像化が全く期待できないテロール教授の怪しい授業 カルロ・ゼン 石田点sogor25カルト対策の啓蒙的な話って往々にして「見ている世界を信じるな」という話に終始しがちで、この作品もベースは同じなんだけど、自身の考え方をどう持つべきかという観点が強めに語られるので新鮮さがあるし、その語り口に教授のキャラは合いすぎてる。 こうして客観的に創作物として見ると面白く読めるけど、カルトの勧誘とかを実際に体験してるかどうかで内容の理解度は大きく違いそうな気がする。実世界での経験値がないとそれこそこの作品を盲信してしまいそうな引力がある。 しかしお話もなかなかにヤバいんだけど、いろいろと実名をバンバン出してるのは大丈夫なの? 1巻まで読了。ちょっとだけ大人のときめき水の色 銀の月 吉田基已かしこ大学生活6年目の美大生とちっちゃくて可愛い少女のような女子高生が年の差恋愛をする関係を軸に、友人達の恋愛模様も描かれる。親友と元カノが付き合ったりするので相関図にしてみると結構フクザツかも。でもどれもいい話。 回を重ねるごとに絵が上手くなってく進化も楽しい。身体の関係もあるので高校生だけど割と大人の話なのに、ふと少女マンガの目になったりしてそれがまたドキッとする。デビュー初期だからできる表現幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい 黒谷知也hysysk表題作に顕著な、選んだモチーフを処理しきれてない感じと、でも描きたかったんだろうなという感じが初々しい。この人が持っている良さを保ったまま作り続けてもらいつつ、より多くの人に読まれるにはどうすればいいか、勝手ながら担当編集の気持ちになって考えてしまった。そういう意味で「書店員 波山個間子」が連載作品になるのはすごく納得いく。 【ジャケ買い成功】究極のガールズバトル漫画爆誕【画力フェチ必買】ヒロインズゲーム 緒里たばさmampuku「赤ずきん」「白雪姫」といった童話のヒロインたち13人が一堂に会し殺し合いをする話。ちなみに主人公の名前はアリス。武道館を埋める人気アイドルが一転挫折し傷ついた先でこの異世界に迷い込み、そこからは不思議の国も真っ青な怒涛の展開の連続。この先どうなるかストーリーの予測がまるでつきません。 絵に関してはほとんど満点と言ってよさそうな素晴らしい出来。アリスも可愛いし背景も素敵だしバトルも迫力あり。なのより濃いのに見やすい。バトルのあるファンタジーとしては文句なしトップクラスのクオリティなので、たとえジャケ買いしたとしても損はしません。コーヒーショップの経営の実態が分かるまんがでわかる 絶対成功! ホリエモン式飲食店経営 ~『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』外伝~ 堀江貴文 三戸政和 NICOMICHIHIRO名無し近所にありそうな、中途半端なコーヒーショップの実態がよく分かった。 これはフィクションだから、突然有能なコンサル先生が現れて、1つずつ着実に課題をクリアしてくれるけど、だいたいのお店はそんなインスタントには進まない。 特にマスター自身が頑固親父系だったりすると、迷走したあげくあっさり廃業してそう。少年少女の過ごすディストピア日常を描いた、傑作SF漫画地球の放課後 吉富昭仁にわか謎の現象ファントムによって人類のほとんどが消えてしまった世界で、少年一人と少女三人が過ごす日常を描いたSF漫画。 めっちゃ面白い。誰もいないことをいいことに楽しく日々を過ごす四人だがが、裏には不安や恐怖がある。一方で、何気ない描写の中には幾重にも張られた伏線が……。これだけ広げた大風呂敷を見事に畳む力は、さすが吉富先生!の一言。石黒正数の世界とかが好きだと合うかもしれない。最高なのでぜひ読んでみてほしい 寂しい日の夜に読む漫画夜とコンクリート 町田洋にわかなんというか町田洋という作家が描く空間は、人の心象風景から紡がれた物語を描く作家という印象がある。ちょっと変わった世界なのに、そこに抵抗感を一切覚えない。むしろそういうものもあるんだと、するりと頭に入ってくる。建物が聞こえる男も、夏休みの街にいた男も、島と話していた少年もどこかにいる気がする。そう考えたとき、なんだか気持ちが落ち着く。平坦な日常のリアリティーがすごいかよちゃんの荷物 新装版 雁須磨子かしこアラサー女子マンガとして変化球かも。主人公かよちゃんにとっては山あり谷ありなんだろうけど、無職になって激太りしてもダイエットに成功したり、町の雑貨屋に正社員としての再就職も決まるし、ちょっといいなと思ってたマイペースな若社長や、オカルトマニアの美容師とは、全員まとめて手作り餃子パーティー仲間に落ち着いたり、結局は丸く収まってるところに共感する。登場人物のキャラがみんな地味に濃いのも好きなポイントです。「ジゼル・アラン」の笠井スイ先生の短編集マリア様のいない町 -Story of Carocheila- 笠井スイmampukuもう1冊の「名もなき羊たちの町」と併せて、2005年前後に発表された作品群が収録されています。ひとつひとつ独立した短編でありながらいずれも同じ架空の町"カロチーラ"を舞台としています。 ジゼル・アランとは全く異なり、ポエミーで余白が多くアンニュイな感じ。一昔前感があります(笑)絵も今と比べるとだいぶ粗削り。 収録作品に1本だけ例外的に2013年にハルタに掲載された「瞼に咲く花」という短編が収録されています。ひと目見て「ジゼル・アランの人だ!!」と分かる精緻で濃密な絵!ストーリーも飛びぬけて洗練されています。というか泣けます。 水上悟志の「放浪世界」と同様、この短編1話のためだけでも買う価値があります。 「ジゼル・アラン」のクチコミでも書きましたが、著者近影やあとがきが無く、逆に装丁デザインは非常に凝っていて、作品の余韻に心地よく浸れる単行本すばらしいです。「ジゼル・アラン」もぜひ完結が見たい。そして余韻に浸りたい…… 親バカ親父とファザコン娘のツンデレ物語(ただしデレは内面でのみ)井地さんちは素直になれない ぽんとごたんだ名無し※ネタバレを含むクチコミです。正真正銘の「悪女」隣の悪女 玉木ヴァネッサ千尋にわかこの話は本当に「悪女」なところが面白い。それもキャラクター的な「悪」じゃなくて、人間的に悍ましい邪悪。エゴによって人を蹴落とし、処分し、自分のものにする。あまりにも上手く行き過ぎてるとこが少しリアリティに欠けるが、なかなか良い。どうも本誌での連載は終わり、アプリ「ヤンジャン」に移籍される様子。まぁたしかにWeb向きといえばそうだなぁ。小規模デザイン会社のリアル鴨の水かき 空木哲生hysysk「山を渡る」が面白かったので読んでみたら、大好物のデザイン業界の話だった。デザインの大変さと難しさ、でもそこが楽しい!という部分がすごく活き活きと描かれてる。この作者は好きなことに打ち込む人の話がめちゃくちゃ上手いと思う。 正解があるようでない感じ、癖のあるクライアント、クライアントの会社の人間関係や政治、気合いの入ったプレゼン、自分が作ったものを思いがけず目にするなど、あの苦労と快感を味わった人なら確実に「これ、あるわ〜」となるはず。 でかい会社じゃなくて、個人が立ち上げた小規模なデザイン事務所が舞台なとこも良くて、近所づきあいとか、ランチの様子とか、普通の生活にデザインが入ってくるところが好き。リアルな部分とマンガ的な演出が絶妙で、もっと続いて欲しかった。 作者の行動力がすごい世界歩いてるとドープな人にカラまれる 五箇野人名無しの旅人「#世界#映え殺し#ツアーズ」の人の実録漫画。 https://gekkansunday.net/series/dope ちょっと引っかかったのは、「カラまれる」っていうタイトル。 (自分から目立ちたくて海外の日本料理屋の制服みたいな服着てるくせに...) 1話の「絵本で見た悪い鬼の酒盛り」、「世界のセレブが歩き方下手になる」という表現力には笑った。回想する主人公の語りがエモいナナシ ~ナくしたナにかのさがシかた~ 片山愁 藤野晴海たかネットで読める1話だけ読んだけど、カラーの色遣いがきれい! そして最後のページが、枠線から木の葉が飛び出している立体的な画面になっているのが好き 今のところ3話(2019年1月号)まで出てるけど、主人公2人の関係、見えない幽霊、タイトルの「ナナシ」が一体何なのか続きが気になる http://www.shonengahosha.co.jp/tachiyomi/ScrollView_pt0005bad8f41ce99b/オシャレなSFロボ・サピエンス前史 島田虎之介名無し絵のテイストは手塚治虫で、コマ割りは現代。 キャラクターのやわらかな曲線と、大きな文字の描かれた建物のシュッとした直線。 画面が白と黒、直線と曲線で構成されている統一感が美しい。 ストーリーはとてもSFらしく、主人公の語りが雰囲気を出してる。 1話のコバヤシ(ロボット)との会話の「ヘイ、Siri」感が好き http://morning.moae.jp/lineup/1044 https://comic-days.com/episode/10834108156677473461 この新連載はいいぞ!メイコの遊び場 岡田索雲starstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)舞台は1973年の大阪、常に眼帯をしていて普通の遊びすら知らない不思議な目を持つ少女の話。 特別な力を持つ少女メイコは、夜は謎のおじいさんに連れられ裏稼業をしているが、昼は一人公園でぼーっとしている。 そこへ、近所の子どもたちが声をかけ一緒に遊んだりする。 昼に覚えたアナログな遊びで、夜に人を壊す。 その中に、一人、つげ義春の「ねじ式」の主人公そっくりの子がいて、名前がヨシハルだった小ネタに笑った。 が、果たしてそれが小ネタなのか。 ねじ式は、眼医者ばかりの道を通るときに不気味な「目」の看板がたくさんあり、悪夢のような歪さと支離滅裂な言動、突飛な展開が続く。 このメイコの精神世界こそがまさに「ねじ式」のようであった。 そしてあの目である。 「ねじ式」が描かれたのが1968年だから舞台設定とも近い。 何かアイデアのモチーフになっているのかもしれない。 これからどんどんいろんなアナログな子供の遊びと、その遊びで壊すことを考えるとワクワクする。 楽しみだ~!本格サスペンスとは未知次元 菅原そうたhysysk実写から起こされたような絵とCGで作ったような建築物やクリーチャーが独特の質感。いろんなSFっぽい要素を詰め込んでいて、とにかく勢いがある。『みんなのトニオちゃん』収録の「アルバイト(BUTTON)」通称「5億年ボタン」みたいな振り切りが欲しかった。<<556557558559560>>
メタモルフォーゼの縁側の作者が描いたマンガ。2巻と一緒に書店に並んでたのに、何となくスルーしてしまっていた私はバカだった。めっちゃ面白いです。ひとことで言えば女の子が釣りをするマンガなんだけど、決してそれだけじゃない。この子がどんな家に住んで、仕事をして、人と出会って、という人の営みをないがしろにせず描いてるのがいい。そこのリアリティーがこの作者さんは群を抜いてすごい。メタモルフォーゼの縁側を読んでる方はこちらも必読だと思います。タイトルが「don’t like」だけど、主人公は嫌いなものを拒否するのではなく、いつの間にか受け入れて自分の世界にできている。どうにかしようとしちゃダメなとこは釣りの感覚と似てる気がする。ほぼやったことないけど。