青年マンガの感想・レビュー15414件<<554555556557558>>激アツ西部劇!!!RED 村枝賢一ANAGUMAウィシャ族(インディアン)の末裔レッドが自分の部族を滅ぼした米軍「ブルー小隊」に復讐を仕掛ける物語。 西南戦争から逃げ延びた相棒の日本人イエロー、娼婦のアンジー、元ブルー小隊のゴールド、巡回牧師のグレイなど社会のはみ出し者たちがレッドとともに命を燃やす…。 全キャラシブすぎてマジで泣けてきます。 人種問題というモチーフは重厚ですが村枝賢一作品らしく読み味は爽快です。 レッドの必殺武器、巨大リボルバー「ヘイトソング」は必見!!一気読みにオススメの大河アクションリュウマのガゴウ 宮下裕樹ANAGUMA世界を救った英雄「リュウマ」の名前にまつわる因縁を描いた群像モノ。 リュウマという名前だけで繋がって戦っていくキャラがみんなカッコいいんですよね…。 読んだら必ず自分の推しリュウマが見つかる。 読後の充実感が10巻分を遥かに超えている作品です。読後感はブルージャイアントと同じくハッピーとおしゃれな気分TOKYO CHECK IN[東京チェックイン] 石塚真一む東京のとあるホテルの話なのですが、自分日本人なのに「いいな〜日本、東京いいな〜」という気分になります。収録されている読み切りも素敵でした。ブルージャイアント読んでもこちらを読んでも幸せな気分と少しお洒落な体験をした気分になるので作者自体もこういう雰囲気を持った人なんだろうなと想像します。本当些細なこと嫌なことを払拭してくれてとても素敵な物語に昇華してくれるその手腕たるや脱帽。。。 どうでもいいような小さい事柄を拾う方が難しいと思うのですが天才なんでしょうね…スピリッツらしからぬ作品天使派リョウ 狩撫麻礼 中村真理子starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男途中までは主人公「リョウ」とバブル末期の世界観がメインになる「カヨ」が登場するあたりから狩撫っぽさが一気に出てくる。「カヨ」と「トキエ」の会うエピソードと狩撫っぽい台詞回しだし。 大山くんのボクサー編や浮浪者の調査など色々あってまとまりがない感じもする。 最後の方のトレンディドラマを見て救われるって話は妙に好き 壮大な自衛隊×異世界が楽しめるゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 竿尾悟 柳内たくみstarstarstarstarstar吉川きっちょむ(芸人)面白かった。 最近、なろう系というか、現実世界とファンタジー世界を扱ったような作品が流行っているので、いろいろ読み漁っているが、その中でも特に読み応えがあった。 突如として日本・銀座に異世界への門が開き、モンスターを引き連れた大軍勢が攻めてきて甚大な被害を被ったものの自衛隊が返り討ちにし、逆に門から異世界側に乗り込み調査を始める。 主人公は、現地の人と交流を深めて困ってたら助けたり支援したり自衛隊として為すべきことをしていくと少しずつ現地に味方が増えていき頼られるようになっていく。 いろいろと巻き起こる問題を政治や国交などの観点も踏まえて自衛隊的に解決していくのが面白い。 ファンタジー世界に対しても、あくまで日本が国としてどう対処するのかという部分も描かれている。 門の向こう側には未知の資源が溢れる大地が広がっているわけで、アメリカ、ロシア、中国など各国が喉から手が出るほどほしいゆえに起こる問題もさまざま。 ファンタジー世界で起きる内線への軍事介入、銀座で攫われていた捕虜の奪還、自衛隊と火を吹く竜との戦いなど見どころ満載だ。 いざ戦うとなったら中世の世界観であるファンタジー世界の武力に対して、現代兵器満載の自衛隊の大火力は絶大なダメージを与えるので、一網打尽すぎて笑いが止まらない。 火力もそうだが、なにより戦いは情報だというのも分かる。 どこまで考証がされているのか分からないし、リアルなのかも分からないけど、はー、なるほどなー、自衛隊がファンタジー世界へ行くとこうなるかーと感心するばかりだった。 もちろん政治家たちも動いているし、ラブコメもあり、魔法もあるしエルフも亜人たちもいる。 盛りだくさんすぎてたまらない。 すごくよく考えられているので、いつかどこかで起こるんじゃないかという気さえしてきてしまう。 現時点での最新刊14巻まで読んで、まだまだ問題は山積みのようなのでしばらくは楽しめそうだ。無記名的な、無国籍的な、大陸横断的なオールド・ボーイ 嶺岸信明 土屋ガロン影絵が趣味狩撫麻礼の名義でもっとも世に知られる土屋ガロンが原作をつとめているのが『オールド・ボーイ』。韓国の名監督パク・チャヌクにより映画化され、カンヌ国際映画祭では審査員特別グランプリ、さらには映画大国アメリカはハリウッドでもリメイクされ、その際、それら会社間での権利関係で色々と揉め事が発生したようである。 そんな作品のほうが勝手にひとり歩きしている状況は原作者冥利には違いないが、この原作者、狩撫麻礼という名義でもっとも知られている男はじつに変な男である。まず、狩撫麻礼という名はカリブ=マーレー、つまりレゲエ音楽家のボブ・マーリーと彼の生活の拠点であったカリブ海とを掛け合わせたものらしいが、土地や名前などの固定的なイメージをペンネームに使用していながら、当の本人、狩撫麻礼という名義でもっとも知られているこの男は、土地や名前などの固定化したイメージから浮遊して逃げさるかのように極めて無記名的な存在である。いくつものペンネームを使い分けるさまは言うまでもなく、そもそもマンガ原作者であるために絵柄は作画担当に委ねられ、ひとつのイメージに定まることはない。さらにはいっさいメディアに顔を現さないために誰も彼の姿形を知らず、狩撫麻礼は彼のマンガに出てくる登場人物たちのように部屋には冷蔵庫とサンドバッグだけがポツンと置いてある、冷蔵庫の中身はすべてビールで埋め尽くされている、なんていうような妙に信憑性のある伝説だけが勝手にひとり歩きしているのである。そう、作品だけではなく、彼の存在自体も"物語"となり勝手にひとり歩きしているのである。 そもそも物語とは何か。物語とは話し語ることであり、物語の起源とは伝承にほかならない。当然のことだが、物語の伝承には著作権などなければ固有性も何らそなわっておらず、しかし当の物語のほうは極めて匿名的に、希薄にも、希薄であるが故に霧や空気のように所かまわず浸透して、あらゆる隙間を縫って各方面へひろく拡大伝播していく性質をもっている。著作者という概念など人類のながい歴史において近代になってようやく発生したものにすぎない。では、物語の本質とは何か。著作者という概念が発生した近代以降は、それは著作者その本人に帰依するものと一般には言われているようだが、人類のながい歴史からみた物語の場合はそうはいかない。その物語の発話者を遡って探していこうにも、その先には深淵があるばかりである。あるいは都市伝説によくあるように、その物語伝承の起源を仔細に追っていった結果がじつに身も蓋もないことであることも往々にしてあるだろう。すなわち物語の本質とは、その発生の起源ではない。物語の本質とは、むしろ、著作者を置き去りにして、極めて匿名的に、希薄にも、希薄であるが故に霧や空気のように所かまわず浸透して、あらゆる隙間を縫って各方面へひろく拡大伝播していく性質のほうにあるのではないか。それはまさしく物語が勝手にひとり歩きするということである。 そして、まさしく『オールド・ボーイ』はそんな物語の本質を貫くかのように、狩撫麻礼の名を置き去りにして、マンガというジャンルを越えて日本から韓国へ漂流し、ヨーロッパへ渡り、とうとうアメリカ大陸にまで辿り着く。しかも、ひとつひとつ国を跨ぐごとに、その物語の中身は少しずつ改変されているのである。狩撫麻礼とは物語の本質を身に纏い、世界各地をさながら無記名の幽霊のように彷徨い歩く男の仮の名前ではないか。そして、そんな男が、わけもわからずに何十年も監禁されて、そのわけを探すために街を彷徨い歩く、さながら記憶喪失のような男の後ろ姿と妙にかぶさるのである。 ところで、幽霊で思い出したのがロシア文学の代表格ゴーゴリが書いた『外套』という小説である。極寒の地、ロシアで、アカーキイ・アカーキエウィッチというひとりの男が新調したての外套を追い剥ぎに奪われて死んでしまうという小説だが、アカーキイの死後、各地でアカーキイの幽霊が現れて外套を奪っていくという噂が流れはじめる。じっさいに幽霊をみたというひとが遠い街から現れたが、その幽霊の風貌はアカーキイの姿形とはまったく違っていたという。 カリブ=マーレ―から拝借したという狩撫麻礼の名をみるたびに、私にはそれがカリブ海の南国のイメージとはどうしても繋がってこない。むしろ、なぜだか、狩撫麻礼ときくと大陸を横断してはしる極寒のシベリア鉄道を思い浮かべるのである。 画力とフェチとシチュエーションの暴力インフィニティ8 ふくしま正保mampukuショタおね漫画なので、おねショタ原理主義の方はお気を付けください。mampukuはおねショタではなくショタおね派なので表紙からたちのぼるショタおねオーラを感じ取りジャケ買いしましたが期待通りのショタおねでした。 蜂の社会をモチーフとした擬人化萌えエロ漫画ですね。カッコ良くてセクシーな武人系お姉さんが好きな人におすすめです。 あとこういうフェチ系描く人の、高い画力をこれでもかと誇示してくるスタイル好きです。絵だけでお金とれるので話は二の次w 優等生から飛んでいく瞬間a fly boy 48円にわか不良ってものに憧れてしまう時期はある。けどそれっぽいことをしても、なんだか授業のことが頭から離れない。この主人公の思考はそういうリアル感が描かれていて、共感できた。 彼のレイアップを打った時の飛翔は、そうしたこれまでの自分からも飛んでいった瞬間だったのだろう。物語のラストでは、ハーレーを知らない主人公は扉絵で、それに跨っている。それがはっきりした就職などの現実的未来には繋がっていないだろう。けど、彼にとってこの1ページはかけがえのないものとなるに違いない。そんな青春を瑞々しく感じ取れた。良作清流のように爽やかな2人見上げると君は 小堀真たか1巻を読み終えるのが早すぎて呆気にとられた。 なにより「小さい男の子と背の高い女の子」という使い古されたテーマで、これほど夢中になれるとは嬉しい驚きだった。 もっと、もっと2人を見せてくれ…!!! どうしてこんなにもこの作品にハマってしまったのか? それはたぶん、渋木くんと高峯さんが「自分の魅力に無自覚」だから。 渋木くんはかわいいけれど、かわいさを利用してない。 高峯さんはかっこいいけど、誰かのためにかっこよく振る舞っているわけではない。 この2人が自然体でいるところが、読んでいて清々しい理由なんだと思う。 ※なお見開きの高峯さんがイケメン過ぎるので、電車の中とかで読むときは表情筋の崩壊に注意してくださいちゃんこを前に人はひれ伏すしかない銀 シロガネ 水上あきらにわか力士の熱い戦い、それを支えているのは思えばなにより食事。腹が減っては戦は出来ぬという言葉が表すとおり。腹が減っては相撲はできない。主人公はちゃんこを使い、力士の胃と心を掴んで投げ飛ばす。アホっぽいけど、勢いがあって面白かった。 万人のためのコミュニケーション指南書ラブホの上野さん 博士 上野mampuku当初こそモテたい男女への辛口指南書という体でスタートしていますが、後半になってくるとより話は広がっていき、最終的にはもうこれ万人のためになるコミュニケーションの教科書です。「○ーチェ先生」や「マンガでわかる心療〇〇」のように似た感じのズバッと言う系漫画によくある寒さやイタさを感じません。普通に面白い。上野さん、キャラに嫌味がないので自然と耳が傾きます。 「上野さんのアドバイスのお陰でうまくいきました!」ってところまで書かないのが下品でなくて良いですねw男子の体と日常生活に女子の体と銀河系規模の問題が乱入してくる漫画鉄腕バーディーEVOLUTION ゆうきまさみ名無し※ネタバレを含むクチコミです。上野さんかわいすぎませんか!!?!?上野さんは不器用 tugeneko名無しまず上野さんが先輩っていうのが当然最高だし 脇を固めるキャラをまんべんなく揃えたりSF考証が毎回きちんと考えられているところに作者の几帳面なこだわりを感じます。いいぞ!!! 小山ゆう先生の傑作雄飛 小山ゆうしんワクワク、ドキドキ。父娘の心温まるほがらか読み切り #読切応援ゼンマイ 日𠮷ゆい子名無し日𠮷ゆい子さんの読み切りはほのぼのしてて癒される。 娘から婚約相手を紹介したいと言われたお父さんの話で、お嫁に行っちゃうのが嬉しい反面ちょっぴり寂しいっていう繊細なニュアンスがすごく伝わってきた。 このお父さんが大阪弁でつるっぱげで可愛いんだよなぁ。1冊丸ごと豚肉についての漫画ぶぅ ラズウェル細木んzんz主人公は売れない役者の猪部勝太。「ブタ野郎!!」って罵倒するセリフが上手く言えなくていつも監督に怒られているんだが、ある日訪れた店に飾ってあった豚の絵が描かれた皿をもらったことがきっかけ?で今までは食に興味がなかったのに豚肉を食べまくる生活が始まるっていういろんな豚料理を食べる漫画。 役者業とか家族の話もあるんだけど、豚の生姜焼きの厚さはどのくらいが好きか?とかという話がほとんどで、カツカレーはどう食べるべきか?とか豚まんに何かける?みたいな豚を食べるだけじゃなくて食べ方とかも含めて丸々一冊豚肉についての漫画になっている。豚が食べたくなって豚にちょっと詳しくなれる漫画。 吉田戦車の育児マンガまんが親 吉田戦車starstarstarstarstar_borderかしこ奥様の伊藤理佐さんも他誌で育児マンガを連載されているので、そちらも併せて父と母の両視点を読めるのが面白かった。ネタはなるべく被らないようにしていたらしいけど。岡田准一はイケメン過ぎた海賊とよばれた男 須本壮一 百田尚樹mampuku「日本国紀」が賛否を呼んでいる百田尚樹氏のベストセラー。「日本国紀」は未読なので言及は避けますが、議論の経緯や論点はこの記事がわかりやすかったです。 https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20181222-00108643/ 「永遠の0」では太平洋戦争を、そしてこの「海賊と呼ばれた男」は戦後の復興を描いています(どちらも同じ作家さんがコミカライズを担当しています。)どちらも単純に読み物として面白いです。 主人公・鐡造のモデルは出光興産の創業者・出光佐三氏。戦争で焼けた会社を立て直し、石油をめぐり英米と渡り合いながらイランとのシーレーンを切り開いた痛快な半生の物語です。鐡造は愛国的で厳格で、同時に封建的で古臭い人物として描かれています。昨今の働き方改革の世代とはまるで違う生き物のようです。どちらが優れているとかではなく、時代がそうさせたというか、結果的に豊かな日本を築いたのは彼ら戦前生まれの人々でした。 「日本国紀」といい、学校教育や大メディアをなぞるだけでは知ることのない不可視の歴史にスポットを当てるのが好きなようですね。「これが真実か……!」と鵜呑みにさえしなければ「永遠の0」もこれも面白い本だと思います。気づいたら読み終えていた水の剣 火の刀 あおきてつお 麻木遼 桜小路むつみ霧兵衛良かった点 ・主人公の刀鍛冶としての成長部分と歴史上の人物との絡みが良かった ・刀と刀鍛冶に詳しくなれる 総評 ・あおきてつおの漫画はどれを読んでもそこそこ面白い この漫画を読むと中華料理への信頼度が増すオールド・ボーイ 嶺岸信明 土屋ガロンstarstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男韓国/アメリカでも映画化されたオールド・ボーイの元になった漫画 「嶺岸信明」「土屋ガロン」こと「狩撫麻礼」のサスペンスで主人公 五島慎一 はある日突然誘拐され10年間監禁された。解放された五島が自分が監禁された理由を解き明かすために奔走する。 前半の謎を解き明かす部分の方が好きかな ラスト周辺で監禁された理由が明らかになるが衝撃的な内容だ 「マジでそれかよ」って思うけど、物事は受け取り側がどう思うかだよな 余りにも美しいオマージュ失踪日記 吾妻ひでお影絵が趣味吾妻ひでおの『うつうつひでお日記』のなかに、福満しげゆきの『僕の小規模な失敗』(『僕の小規模な生活』の前日譚)について言及している頁があったように思われる。うるおぼえだが、いわく、さいごのコマの表情がとてもよかった云々と書かれていたような気がする。たしかにその表情はとても小さなコマながら私の印象にも強く残っていて、すぐに思い浮かべることができた。また、ほかの頁には『うち妻』の妻が吾妻ひでおタッチに模写されていたりする。要するに、年の差はあれど、どうやら吾妻は福満のファンらしいのである。 そして『失踪日記2 アル中病棟』をさいごまで読んだときに、この表情のことを思い出さずにはいられなかった。どん底で、先行きは何もままならない、そんな状況下で街を彷徨い歩きながら、けっしてすべてには落胆しきっていないような、あの何ともいえない表情。同じ自伝的マンガ作家の先輩と後輩であり、またマンガ家として同志でもあるふたりを繋げたひとつの表情、こんなに美しいオマージュがほかにあるだろうか……と感嘆に震え、目頭が熱くなったのだった。歪な面白さ失踪日記 吾妻ひでお影絵が趣味江口寿史という漫画家がいまして、彼は世間的にはマンガを放棄したひととして有名(マンガをやめてイラストレーターに転身した)なようなのですが、じっさいのところ、彼は自身が漫画家であることに、いまだ深い誇りと拘りとを持ち合わせてやまないようなのです。そして、ここにもひとり、吾妻ひでおという一度はマンガを放棄して戻ってきたひとがおります。 手塚治虫文化賞、日本漫画家協会賞、文化庁メディア芸術祭、星雲賞など、権威ある賞を総ナメにした吾妻ひでおの『失踪日記』ですが、ここに辿り着くまでには"失踪"の一言では片付けられない前途多難なエピソードがあるのです。タイトルそのまんま、自らの失踪からのホームレス、アル中などの体験を描いた『失踪日記』の内容ついては、たくさんの賞のお墨付きがあるので面白くないわけがない、ということで割愛させて頂き、このたびは、吾妻ひでおはどうして失踪しなければならなかったのか、というところについて触れていきたいと思います。 失踪日記の冒頭にもある通り、原稿を途中で投げ出して行方を眩ました後、失踪してしまった吾妻ひでおですが、同じように原稿を放棄した江口寿史とは似て非なるところがあります。それは一言でいうと、やりきったかやりきってないか、の違いだと思います。江口寿史は良い作品にしようと拘るあまり完成に間に合わず、どうせできないなら止めてしまえ、という立場をとりました。いってしまえば只の不真面目です。対して、吾妻ひでおは大真面目。失踪後の今でこそ、アウトローの代表格のようになっていますが、失踪前のキャリアはむしろ真逆で連載を掛け持ちしまくり月に100頁以上を描き上げる仕事ぶりでした。こういう書き方をすると、あまりの仕事量に音を上げて失踪したと思われそうですが、それもまた少し違います。さきほど、江口寿史に不真面目のレッテルを貼りましたが、彼にしても元々は漫画に対する真面目すぎる気持ちが仇となって、どうせ完成させられないならやらない、という不真面目に振り切る経緯があったわけですが、吾妻ひでおの場合は真面目に真面目を貫いた、つまり、締切や作風等の出版社や編集者の意向には従いつつも自らの誇りと拘りを発揮し続けたのです。対して、江口寿史のばあいは自らの誇りと拘りを守るために放棄したといえるかもしれません、そこにはもちろん週刊少年ジャンプというメジャー誌の王道で連載していた江口と、マイナー誌やエロ本等の辺境で活躍していた吾妻との土壌的な違いがあるのですが。 では、具体的には何に拘ったのか? 従来のギャグに(小説家の筒井康隆らから影響で)SFやナンセンスの要素を盛り込んだスタイルで人気を博した吾妻ひでお。当時その試みは新鮮で、大友克洋、いしかわじゅんと合わせてSFマンガのニューウェーブ御三家と呼ばれたりしていました。しかし、新しいものが古くなるのは自明の理、吾妻ひでおはブームが頂点に向かう最中、新たな試みをはじめます。彼はブームに乗っかって同じネタを繰り返すことはしなかったのです。彼が見据えたのはナンセンスのさらにその上、「表現の解体」というテーマでした。そもそも「ナンセンス」とは約束事や理論性をあえて無視することで生まれるユーモアの総称で、そこから吾妻ひでおが得意とするスラップスティック(ドタバタ)や不条理な笑いが引き出されてきたわけですが、彼はそれだけでは飽きたらず、自らが考え出したギャグの体系や方法論、さらには先人たちが創り上げてきた漫画表現そのものを壊していったのです。つまり、先人たち、そして自らが積み重ねてきた漫画表現という名の「建物」を文字通りひとつずつ解体していったのです。 実に様々な方法で「解体」を試みた吾妻ですが、その代表的な例に「ナハハ」というキャラクターの存在があります。この時期(奇想天外社から『不条理日記』等を発表)の吾妻漫画に頻繁に登場する「ナハハ」という名のキャラクターは喜怒哀楽の表情を持っていません。もっというと大人なのか子供なのか、男なのか女なのかも判別できない、つまり登場人物としての情報を全く持っていないのです。「ナハハ」の他にも、無口、無表情、無感情を徹底したキャラクターが当時の吾妻漫画にはいくつも登場します。表現豊かな漫画が描けるようになった時代に、あえて、その逆を突き進み「空虚」を描こうとしたのかもしれません。 そして、あらゆる漫画表現を解体し壊しきった先に吾妻が見たのは正に「空虚」そのものでした。当然のことながら、何もかも壊してしまった後には何も残りません。吾妻の周囲には先人たちや自らがかつて創った漫画表現の残骸が散らばっているだけで、目の前には只々広がる真っ白な闇、空虚があるだけだったでしょう。これを目の当たりにした吾妻は遂に何も描けなくなり、逃げ出し、酒に溺れることになります。ここらへんまでが『失踪日記』には描かれなかった前日譚になるかと思います。 表舞台から姿を消してから十数年……、心と体の健康を取り戻しつつあった吾妻は、かつて自らが壊した漫画表現のスクラップを広い集めて再構築をしはじめます。それが『失踪日記』であり、あるいは、そう、『失踪日記2~アル中病棟~』で吾妻が作っていた、ガラクタのネジや何か、どうでもいい金属片でできた、あのオブジェ作品のように。『失踪日記』の魅力は、正にあのオブジェと同じようなものなのでは、という気がします。つまりそれは、不完全の美学であり歪な面白さなのではと。思えば、ナンセンスにしても解体にしても、吾妻ひでおはいつだって歪さを追い求めて漫画を描いていたような気がします。これこそが吾妻の自己表現の形であり、誇りと拘りの種だったのではないでしょうか? 少女レトロは可愛いとの相性がいいという確信レイチェル創々 高橋拡那mampuku 昭和テイストの萌えエロコメ。絵柄や構図などはビームコミックスなどでよく見る(若干食傷気味の)人工的なレトロタッチなんですが、この作者が凡百のレトロ風漫画より全然見れるな、というか良いなと思えるのは、少女漫画ばりのキラキラ感があるからでしょうか。その点は入江亜季にも似てますが、あちらはキャラまでが少女漫画的であるのに対し、こちらはどちらかというと少年漫画的です。昔の少年漫画的なセクシーなお姉さんが、昔の少女漫画ばりのキラキラ絵柄で描かれるとなるほどこうなるのか、と(もちろん、どちらも萌えの文法で今っぽくブラッシュアップされているのは言うまでもないですが。) まず、頭の悪さ全開のスピード感がシリアスな笑いを誘う冒頭5ページでなんとなくこの作品の楽しみ方がわかります。掴みの強烈さは柴田ヨクサル「東島丹三郎は仮面ライダーになりたい」に近いです。ただしあれと比べると「レイチェル」の方が計算してやっている印象を受けます。色々と展開が雑で無茶苦茶なんですけど、そこが笑えるというか。 また、各話のサブタイトルが「ダイタンな○○」「○○に御用心」など昭和全開なところも芸が細かいというか、コンセプトがわかりやすくていいですね。私は「思ってたのと違う(ので残念)」という考え方が嫌いなんですが、目次と冒頭5ページでしっかり作品紹介ができていてとてもスマートだと感じました。ラストのページが雑誌掲載時と微妙に違うんだよなエッヂ 狩撫麻礼 田村信starstarstarstarstarマンガトリツカレ男多分もっと続く予定だったが掲載誌のコミックギガが休刊になる都合で後半があんなに急展開になったのだと思う。 内容の雰囲気は「狩撫麻礼」だが「田村信」の作画の感じでコメディよりになっている。 掲載時の最終ページには未完とあったが電子書籍版はその文言はなくなっていた<<554555556557558>>
ウィシャ族(インディアン)の末裔レッドが自分の部族を滅ぼした米軍「ブルー小隊」に復讐を仕掛ける物語。 西南戦争から逃げ延びた相棒の日本人イエロー、娼婦のアンジー、元ブルー小隊のゴールド、巡回牧師のグレイなど社会のはみ出し者たちがレッドとともに命を燃やす…。 全キャラシブすぎてマジで泣けてきます。 人種問題というモチーフは重厚ですが村枝賢一作品らしく読み味は爽快です。 レッドの必殺武器、巨大リボルバー「ヘイトソング」は必見!!