異世界もう帰りたい

ヌルッと始まる異世界生活 #1巻応援

異世界もう帰りたい ドリヤス工場
nyae
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福満しげゆき、山本さほあたりを好んで読む人におすすめしたい。少しは報われたいなぁ、とかままならないなぁ、とか思いながらも毎日なんとか生きてる人は、この主人公、俺(私)じゃね?って思ったりするかも。 今はもう、異世界に転生しても「ああ、例のね」といった感じで誰も驚かない世の中になっていますね。 主人公の下山口くんもそんなかんじでヌルッと異世界生活を始めます。 彼がなぜ転生したのかは読めばわかりますが、この漫画の面白いところは「日本も異世界も変わんないな」というシーンが非常に多いところ。 元の世界への帰り方を聞いたら誰もわからなくていろんな場所をたらい回しにされたり、上司?の飲みの誘いが毎日憂鬱だったり、団体と相席になりそうになってビクビクしたり、カウンター席どこに座るかの見極めに失敗したり(すぐ帰ると思って隣に座った客が思ったより長居する)…など、どっかで見たような光景が異世界にもゴロゴロしてました。 その中でも「わかるめっちゃある…」と思ったのが映画館の指定席選び。(漫画の中では映画ではないが) まあまあの混み具合のなか、どこの席を選択するかは最終的な映画の満足度にかなり影響するのでとても大事。しかし、結局運に左右されるのは日本も異世界も同じなんですよね。 正直、主人公が帰れるかどうかはどうでも良くて、異世界に転生したからといって何かが劇的に変わるわけじゃないパターンのやつも面白いということです。 むしろ自分はこっちの方が好き。

わたしは真悟

壮絶なまでの、愛と真実の物語

わたしは真悟 楳図かずお
影絵が趣味
影絵が趣味

奇跡は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない 各巻の冒頭に冠せられる一句です。 このことを産まれてくることのメタファーと捉えるかどうかは、ひとまず端に避けておきたいと思います。 それはともかくとして、皆さんにも憶えがあるでしょうか。子どもの頃に、どうやったら子どもができるんだろう、と悩んだことが。 小学三年生の夏休みでした。私は急性の髄膜炎に罹り、救急車に運ばれました。運ばれた先の入院病棟で、私はAちゃんと知り合ったのでした。 私たちはすぐお互いを好き同士になりました。 それぞれの学校で、日記の宿題がでていたのですが、外へ出られない入院患者の私たちには書くネタがほとんどありません。そこで、ふたりで協力をして、空想の日記をしたためることにしたのです。 この悪巧みは、部屋の消灯時間がきてから秘密裏に行われました。灯りが落とされると、どちらかがカーテンに閉ざされたベッドのなかに忍び込みます。そして布団をあたままで被ってライトのひかりを漏らさないようにしながら日記を綴りました。 ある日の夜、空想の日記を書く延長で筆談をしていたときでした。どうしたら子どもができるのか、という話になったのです。当時の私にとって、その謎はあまりにも大きなものでした。それはAちゃんにとっても同様だったようです。私たちは日頃の空想癖にさらに拍車をかけて、どうしたら子どもができるのかについて筆談しつづけました。しかも、その謎はあまりに大きなものでありながら、あらゆるところで人知れず行われている、もっとも身近で、もっとも不可思議なことなのでした。 Aちゃんはまだ憶えているでしょうか、あの日の夜のことを。私は『わたしは真悟』を読み返して、また、ふと思い出しました。きっと、この本を読み返すたびに思い出すのだと思います。

Azalea

バトルも頭脳戦も最高にカッコいい女刑事の活躍劇 #1巻応援

Azalea 鳳乃一真 新島光
sogor25
sogor25

誰もが認める凄腕の刑事でありながら、その能力の高さゆえに独断での行動も辞さないという暴れ馬・氷堂楓。近未来のような、洋画の中のような世界で活躍する彼女と、彼女が事件の解決に乗り出すことになる"犯罪者だけを狙った連続殺人事件"の首謀者「幽霊卿」との対決を描くサスペンス・アクション。 彼女の向こう見ずに事件解決へと突っ走っていく性格や身体能力の高さから来る派手なアクションシーンに目が行きがちですが、個人的には彼女の最大の魅力の根源は事件の本質を見抜くその洞察力にあると思っています。その洞察力は事件の推理を行う際だけでなく連続殺人鬼と対峙した際にも遺憾なく発揮され、彼女の行動力や事件解決能力を裏打ちしています。 また、キャラクターとしては一匹狼のような雰囲気が強い主人公ですが、彼女の周囲を取り巻く登場人物との関係性も魅力的に描かれます。彼女の思考の根本までは理解していないにも拘わらず、阿吽の呼吸で彼女をサポートする同僚のビリー。長年連れ添った友人のような間柄の検死官のキーナ。おそらく過去の何らかの事件で司法取引を行って彼女に協力するハッカーのジル。そして、出会ってすぐ惹かれあって結婚した最愛の夫・アーサー。どこをとってもそれぞれがバディのような深い関係値を示していながら、実際に事件解決に向かうときには単独行動。この外連味溢れる感じが、好きな人にはたまらなく刺さる作品だと思います。 さて、物語のほうは1巻の終盤で一気に加速していきますが、ストーリーが進むにつれてその展開がこの作品の大いなる導入に過ぎないことに気付かされます。ここからどう事件が連なって楓と連続殺人の黒幕とが引き寄せられるのか、かなり長丁場になりそうな予感があるので、是非作者が満足できるどころまで描けるよう応援していきたいところです。 1巻まで読了

はるかなレシーブ

二人の絆が、ボールを繋ぐよ!

はるかなレシーブ 如意自在
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

とかくマスコミやカメラ小僧の下衆な視線に晒されがちな、ビーチバレーという競技。本当はこんなにも魅せるスポーツなのかと、本作を読むと驚かされる。 沖縄の青い空、白い砂浜。 そこを躍動する若い身体! 柔らかい砂地のおかげで、ハードに転がれる特性を活かして、とにかく女子高生達のプレイが伸びやかで、大胆だ。 様々なアングルで、プレイの迫力と勢いを描き、試合をグイグイと読ませる。線が細い事を除けば、マガジン等で連載でもおかしくない、勢いのある表現だ。 一方で、例えば試合用の水着を買うのに、機能性も重要だけど可愛さも大事だよね、という感覚はスポ根的感覚を和らげてくれる。 一度は挫折したかなたの復帰を、元気に後押しするはるかと、それに応えるかなた。二人の息の合ったプレイと、醸成される信頼関係に胸が熱くなる。見ているこちらが照れ臭い二人のやり取りは、明るく真っ直ぐなロマンシス。 (ロマンシス=女子の強固な友情、恋愛に見える程の親しい関係。日本人による造語) 戦略的な部分もかなり緻密で、ビーチバレーの面白さに溢れているこの作品。見開きがド迫力なので、大きめのタブレットで見ると最高!