今日から未来

心理誘導テクとエモい恋心 #1巻応援

今日から未来 吉富昭仁
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

幼馴染女子から告白された女子が、恋心と共に告げられるのは「私を貴方の好きにして」という言葉だった。 思いもよらない同性の、幼馴染との恋愛という選択肢に戸惑う主人公。それに対して幼馴染は、「こんなことしてもいいんだよ」という具体的提示をして、主人公に想像させ、恋愛の実現可能性に誘導していく。 自分と恋愛することのメリットと、しないことの損失を選ばせようとする、見事な誘導テクニックで幼馴染は「自分との恋愛」を主人公の心に植え付ける。 しかしそれは、単なるテクニックではない。長年の恋心、いつも共にいながらずっと秘めてきた想いや欲望が、選択肢の中に重く込められつつ、時に我慢できないという風に行動に出る。どこまで計算で、どこまで衝動なのか……分かる様で分からない。 幼馴染の明るさと、内に秘めた重い恋情のギャップが……エモいとしか言いようがない!主人公には是非応えてやってくれよ、と言いたくなるが、まだ受け止め切れていない彼女に、幼馴染は1巻の最後でさらに仕掛ける。次は……当て馬!?(それあかん奴や、一歩間違えれば壊れる劇薬やでぇ〜)

聖骸の魔女

キレーな魔女のおねーさんに翻弄されたいひと向けファンタジー

聖骸の魔女 田中ほさな
ANAGUMA
ANAGUMA

主人公のニコラは「浄会」に奉仕する修道士(童貞)。ひょんなことから人類の仇敵である魔女と次々契りを結んでいき(重婚)、悪しき魔女を魔女の力によって打ち倒す旅に出ます。 ちなみに彼女たちはニコラの体液を摂取することで真の力を開放する変身、「女神変成(アドベント)」ができるのです。最高ですね?どんな体液かは読んで確かめてほしい。 魔女の力を使うアクションのカッコよさはもちろん、魔女たちとニコラの愛の行方も物語の重要な焦点です。 ニコラと契りを結ぶ魔女3人は高飛車お嬢のエゼル、男勝りのウプスラ、根暗気味のミュリッタとみな個性的。禁欲生活を送るニコラは常に振り回されていますが魔女という割にはみなピュアなところがあってギャップがかわいいです。 中世ヨーロッパの世界観も作り込まれていて読み応えがあります。歴史上の慣習や社会情勢の描写はリアリティ抜群。 個人的にツボだったのが用語解説のコーナーで、本格的な解説かと思いきやネタに全振りしたものもあって笑っちゃいます。イチオシは「魔女ガチャ」の項目。業が深いね。 アクション、ロマンス、世界観。三拍子揃ったファンタジーが楽しめますよ!

九段坂下クロニクル

日本沈没チームによるオムニバス短編

九段坂下クロニクル 一色登希彦 元町夏央 大瑛ユキオ 朱戸アオ
ひさぴよ
ひさぴよ

2011年をきっかけに取り壊された神保町にかつて存在した九段下ビル。築80年の歴史ある建築物を舞台に、4人の作家が、それぞれの時代の人間ドラマを描いていく作品です。ビルの場所は神保町ということもあり、漫画家とも少なからず縁のあったビルだったことが伺えます。 執筆している4名の作家さんですが、一色登希彦さんがスピリッツで「日本沈没」を連載していた時のスタッフが、元町夏央さん(元夫婦)、大瑛ユキオさん、朱戸アオさん、という繋がりがあります。(私は勝手に日本沈没チームと呼んでますが) 収録作 『スクリュードライブ らせんですすむ』一色登希彦 『ごはんの匂い、帰り道』元町夏央 『此処へ』朱戸アオ 『ガール・ミーツ・ボーイズ』大瑛ユキオ いずれの作品もそれぞれの作家さんの持ち味が感じられる短編です。なんだかんだ一色節が好きなんですけど、やはり今オススメするとすれば朱戸アオ先生でしょうか。朱戸アオさん目当てで、この本を手に取る人も少なくないと思いますが、インハンドやFinal Phaseより以前の作品も読みたい、という方は読んで損はありません。この本の中で最も大きなドラマを描いてましたし、ひときわ記憶に残る作品でした。

クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-

魔獣と女勇者の育児ファンタジー ※くっ殺もあるよ! #1巻応援

クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者- 岩原裕二
ANAGUMA
ANAGUMA

魔獣の王と赤子と屍の勇者というサブタイトルどおり、魔獣王クレバテスが気まぐれに拾った人間の赤ん坊ルナを育てるために敵対する勇者アリシアを蘇生させ、一緒に旅をする、という物語。本当の子連れ狼だ。相容れない者同士が徒党を組むのはやっぱり面白いですね! 岩原作品らしくダークでタフな雰囲気と、メイン3人(?)のキャラクターの絶妙な力関係が魅力です。人間社会の常識のないクレバテスに振り回されてアリシアさんが毎回ひどい目に遭うのが泣けます。苦労人だ…。 1巻だとまだまだ3人が協力して…みたいなシーンは少なくて全体的にサバサバしてますが、みんなが仲良くなっていったらきっとウルウルきちゃうんだろうな…。 世界観も重厚で、今後は他の民族や国家間のイザコザも絡んできそうです。魔獣も他に3匹居るらしいですし。本格ファンタジーを期待したいです。 本の形態の話をすると、LINEマンガでは縦読みフルカラーなのもビックリしました。カラー版は電子書籍だけみたいですが、絵の具で塗られている岩原先生の彩色箇所がよく分かるのも面白いです。 一方で紙版はキラキラの箔押しカバーが超キレイなので、これは両方買うのが正解ですね!