「東坡(とうば)って東坡肉(トンポーロー)のトンポーじゃん」と気になって読んでみた。宋の政治家・蘇東坡と聞いても全くピンとこなかったけど、書家の蘇軾のことだった。
東坡は革新的な新法党の王安石と対立する旧法党の人物で、新法党により自作の詩に難癖つけられて左遷されてしまうのだけど全くめげない。美味いものを食うことが生きがいで、地位の高い者からは卑しいと忌避される食材で上手い料理を考案し、貧しい民に活気をもたらしていく。
宋の時代は儒者たちにより肉に等級が定められ、豚は最下位に位置する卑しい食い物とされ、高貴な人々が食べるなどありえなかったという事実に驚いた。
豚をとろ火で煮込んだ東坡肉。
麦と小豆を炊いた二紅飯。
叩いた大根を煮て米と加えた粥。
どれも身近な食材で手軽に作れるうえ美味しそうでいい。
作中には東坡の詩や、歴史上の人物がたくさん出てきて読み応えがある。
一番マジかよと笑ったのが延州での西夏との戦い。
水場に毒を投げ込まれ万事休すの延州軍を、年老いた芸妓の婆が救うんだけどその方法がすごい。西夏の王妃・梁太后は芸妓あがりということを利用し、彼女が閨で得意とした手管を大声で叫んで西夏軍の兵士に聞かせる(笑)
そして「これを聞いたお前たちを梁太后は生かしておくかな?」と脅す…とんでもねぇ婆だ。
これは沈括の「夢渓筆談」という随筆に書かれているエピソードなんだとか。すごい。
作画について、絵がギャグ漫画みたいにマヌケというか…ゆるいとこがあって、硬い内容とのミスマッチを起こしてる箇所がいくつかあって、そこは読んでて萎えてしまったのでちょっと残念。
とはいえ中国史や漢詩、食について勉強になる1冊でした。
時は11世紀、舞台は中国・北宋。宋代最高の詩人にして四大書家のひとりと謳われた蘇東坡(そとうば)は実は革命的な料理家でもあった。今もなお人々に愛される東坡肉(トンポーロー)をはじめ、あまりの美味さで政局さえも動かしたという彼の料理の数々を、軽妙洒脱に物語る! 新視点の歴史グルメ・ロマン! 特別エッセーも収録!!
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