少女Aの悲劇

究極の無関心が生む、殺意を帯びるレベルのボケツッコミ

少女Aの悲劇 あさの 中村力斗
名無し

林秀雄は成績で学年一位になり続けながらも 人生の最優先事項は勉学だと確信している。 貴重な時間は全て、受験での勝利、人生での勝利のために 費やすべきだと。 青春だとか部活だとか思い出だとかに興味はない。 恋愛にも興味はないので女子高生にも興味はない。 なのでクラスメイトの浅川結真など覚えていない。 それどころか、 結真が実は地球に調査にやって来た異星人で、 突然に空中に浮遊して現れ、お漏らしをしても なんの興味も持たない。 なので結真が秘密を守るために秀雄を監視する、 つまり一つ屋根の下に住む、と言い出しても 拒まない。 秀雄の勉強の邪魔さえしないのなら構わないから。 かくして、 高校生なのに思考回路が異星人のようなクールな秀雄と、 異星人なのにメンタルが女子高生の結真とが 互いに精神的ダメージを与えあうような (秀雄はこの性格なのでダメージは、ほぼ結真に  カウンターとなってかえることになるが) 共同生活をすることになる。 高校生男女が一つ屋根の下で暮らすとなれば ドキドキラブラブな展開だったり 秘密を守ろうとトラブルが続出したり とかの展開になりそうなもの。 そういった設定で 「翔んだカップル」とか「うる星やつら」 などの名作もあるし。 しかし秀雄は結真に1mmたりとも心を動かさない。 結真は秀雄からしたら自分とは無関係な 「少女A」という存在でしかない。 好き嫌いとは無縁の「無関心」しか秀雄には無い。 そんな秀雄なのでリアクションが大抵は 通常とはズレている。 いや、状況を正確に判断し冷静に反応した結果なのだが、 普通の人はとらない態度をとりコメントを発するので、 結果的に結真に対する死刑宣告相当なレベルの 強烈なボケになっている。 そしてそのボケに翻ろうされ恐怖すら感じる結真の 心の叫びは、結果的に鋭いツッコミになっている。 普通ならラブラブでスイーツな展開になりそうな設定の話だし、 さらに宇宙人という特殊なSF的存在でありながら、 第三者的な「少女A」程度にしか扱われないという 結真の不幸を 「人の不幸は蜜の味」、というか 「宇宙人の不幸は蜜の味」なスイーツ感覚で 味あわせてくれる漫画。