あらすじ

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。一成の元に現れた「もう一人の獣医師」…村で畜産を営む庄野は手塩にかけて可愛がっていた牛のフジコをめぐって厳しい判断を迫られていた。病気が進み、完治の見込みがないという。獣医師の進藤は庄野にフジコの処分を進めるが、生れたて時から特に手をかけてきたフジコを殺すに忍びない庄野は一成に延命治療を依頼するが…。その他、自らをきつねと名乗り、一成の元に「入院させて欲しい」と現れた不思議なおばあさん「うらみ葛の葉」、戦って傷ついたコウモリとフクロウ、そしてそれを治療する一成の姿をコウモリの視点で描く「おれたちの世界」、一成が東京にいた頃に会った親子と子犬の物語をふきのとうに寄せて贈る「フキみその味」、など。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第3巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『犬好きの人は犬に、猫好きの人は猫に、性格が似ているものだという話を、聞いたことがあります。そこで猫好きの自分のことを考えてみると…寒がりで、眠るのが好きで、気むずかしくて…悪いところだけ、よく似ているようです。』
風の宿 1

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。 田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第1巻。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『山国に住んで、庭の生き物たちや、山の様子などを毎日見ていると、時々、TVのドキュメンタリー番組で紹介される自然の驚異を見た以上の、驚きに出会うことが時々あります。そんなエピソードや、山で暮らす人々の気持ちを、少しでも描けたらと思っています。』

風の宿 2

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。ある日往診の帰りに何気なくバーで一杯引っ掛けようとした一成はそこで偶然、同級生の岩藤と地元商店会の面々に会う。岩藤に誘われ、商店会の将来などを熱く語り合いながらはしごする一成。やがて会はお開きになり一人歩いて家に向かう一成だったが、最後に飲んだ一杯が効いたのか突然腰が抜け、道端の地蔵のところで眠り込んでしまう。その頃、鹿間家では皆が一成の帰りが遅いことを心配していたが、玄関の物音に気づいた娘の諷子が玄関に出てみるとそこには酔いつぶれた一成があった。まるで地蔵が一成を送り届けてくれたような話に疑問を抱く一成だったが、一成は、かつてその地蔵で悲しい事件が有った事を知る…。その他、近くのゴルフ場で過って打ったボールをカラスに当ててしまった女性に母親の面影をみて、優しさを求める諷子の「心を洗いに」、霜が降りる頃になるとなぜか機嫌が悪くなる袈裟二郎とそわそわする家内の昌枝。不思議に思った諷子はある日偶然見かけた昌枝の後をついて行き、以外な事実を知る「冷たいだろうに」などを収録。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第2巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『仕事場にやってくる野良猫を、もう何十匹も見てきました。元気な猫とのつきあいは、なかなか楽しいものです。けれど、人に飼われていたらしい猫が、やせて、食べ物をねだりにくるのを見るのはつらいものです。そんな猫がいなくなるよう、願っています。』

風の宿 3

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。一成の元に現れた「もう一人の獣医師」…村で畜産を営む庄野は手塩にかけて可愛がっていた牛のフジコをめぐって厳しい判断を迫られていた。病気が進み、完治の見込みがないという。獣医師の進藤は庄野にフジコの処分を進めるが、生れたて時から特に手をかけてきたフジコを殺すに忍びない庄野は一成に延命治療を依頼するが…。その他、自らをきつねと名乗り、一成の元に「入院させて欲しい」と現れた不思議なおばあさん「うらみ葛の葉」、戦って傷ついたコウモリとフクロウ、そしてそれを治療する一成の姿をコウモリの視点で描く「おれたちの世界」、一成が東京にいた頃に会った親子と子犬の物語をふきのとうに寄せて贈る「フキみその味」、など。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第3巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『犬好きの人は犬に、猫好きの人は猫に、性格が似ているものだという話を、聞いたことがあります。そこで猫好きの自分のことを考えてみると…寒がりで、眠るのが好きで、気むずかしくて…悪いところだけ、よく似ているようです。』

風の宿 4

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。 ある日、諷子の夢の中に子猫が現れた。しきりに鳴くぼんやりとした影。諷子は手を差しのべるのだが子猫の影は砂の様に崩れ落ちてしまう。そんな夢を繰り返し見た諷子はやがてその影はかつて諷子が名前をつけたがすぐに死んでしまったあの子猫ではないかと思う様になった。そんなある夜、目を醒ました諷子はその鳴き声が夢の中ではなく自分の部屋の床下から聞こえてくる事に気付いた。朝になって床下にもぐった諷子が見たもの、それはあの子猫に瓜二つな、しかも同じ病を患った子猫。諷子はその子猫を死んでしまった子猫の生まれ変わりだと信じて世話をしようとするが…。その他、一成が往診の帰りに出会った寒々とした風景を描き続ける少女。ひたすらに一人で絵を描き続ける少女の胸に去来する思いは…「冬色の川」、ある日、桜の咲く小学校跡で四人の年配の男たちに出会った一成。年に一度そこで集まるというその男たちには時代に翻弄され、幼い日にその場所に残してきた切ない想いがあった…「夜桜」、生まれた時からいつも少女と一緒にいた猫。少女のその猫に対する思いと最期の時を描いた「サブのいた日々」、など。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第4巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『野良猫を数匹世話しはじめてから、うちにごはんがあるというウワサが、猫の間に広まったのか、いろんな猫が姿を見せるようになりました。それを見るとあらためて、猫の毛色の種類の多さに驚かされます。今度、写真付きの猫のリストを作ろうかと思っています。』

風の宿 5

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかまかずなり)は院長を殴打する事件を起こしてしまい、勤務先の病院を追われ、更には妻も家を出てしまう。一成は妻の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に、両親を亡くした彼を育ててくれた信州の伯父夫婦の家を訪ね、そこで動物診療所をはじめることになるが…。ある日、諷子が通う小学校のクラスメイトや担任の小夜先生と一緒に山へ虫取りに行く事になった一成。ところが一行は雨に降られてしまい、同級生の持つ、今は使われていないペンションで雨宿りをする事になった。はしゃいでペンションの中を走り回るクラスメイト達。そんな彼らと一緒に走り回っていた諷子の前に一人の不思議な少女が現れた。何も言わず1匹の蝶を諷子に渡す少女。諷子にその蝶を見せられた一成の脳裏に、やがてその山で起きた一つの事件の記憶がよみがえり…!? その他、山中の渓流で見つかったクマの死骸。その胃から人の指が見つかった事から月科村は大騒ぎに天「レンズの下」。一成も叔父夫婦も出掛けてしまい一人で留守番する事になった諷子。そんな諷子の元に連れてこられた1匹の犬と諷子の物語「留守番」、ある雨の日、一成の元に女性から送られてきた詩集。中に記された恋の詩に諷子は落ち着かず…「雨蛙」、等。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第5巻。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『いつも何気なく見ている動物や植物の図鑑。ふと、思いついて、今までに見た記憶のある動植物に、〇印をつけてみて、自分が知っている生き物が、いかに少ないか、よ~くわかりました。みなさんも、いっぺんためしてみては?』

風の宿 6

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こしてしまい、勤務先の病院を追われ、更には妻も家を出てしまう。一成は妻の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に、両親を亡くした彼を育ててくれた信州の伯父夫婦の家を訪ね、そこで動物診療所をはじめることになるが…。ある日、一成の元へひとりの少女が訪れた。彼女が一成に治療してほしいと見せたもの、それはなんと掛軸に書かれた山女魚だった。亡くなった祖父が描いたというその山女魚は今まで毎朝掛軸の中を泳いでいたのに猫に爪を立てられて泳がなくなってしまったというのだ。そう必死に訴える少女に押された一成は掛軸を預かることにし、最初は少女をばかにしていた諷子も彼女の境遇を知ってから一転、一成にこの掛軸の山女魚を治すよう懇願する。本格的な調査に乗り出した一成がやがて見つけたものは…!? その他、祭りの夜に諷子が出会った女性。その女性が諷子の中に見ていた物は…「祭りの夜」、いやいや家にいる鳥の世話をしていた女の子、だがやがて彼女はそこにあった絆に気付き涙する「記念写真」、飼い猫が亡くなったとの電話を受けた一成、だがそれは既にこの世にいないはずの猫だった…愛猫と最後まで添い遂げようとする老婆の想いを描く「過去の中の猫」、等。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第6巻。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『動物を描くのは、本当にむずかしいものです。表情だけで、その時の動物の心を表さなければならないからです。──だから、今まで、満足のいく動物の絵が描けたことって、本当に一度か二度なのです。それが三度に…四度に…なるよう頑張っているのですが…。』

風の宿 7

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こしてしまい、勤務先の病院を追われ、更には妻も家を出てしまう。一成は妻の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に、両親を亡くした彼を育ててくれた信州の伯父夫婦の家を訪ね、そこで動物診療所をはじめることになるが…。諷子の同級生、さとみが飼っている猫のユラには霊感があるという。さとみの寝室には時々お化けが出てとても怖い思いをするのだが、その時は決まってユラが助けに来てくれるというのだ。クラスメイトたちに、さとみの話を確かめるように言われた諷子は彼女の家に泊まり、その時の様子を一成に話した。すると一成は諷子の話の中にユラの異変を感じ取るのであった。ユラの身に何が? そして一人で夜を過ごす怖さとユラを失うかもしれない怖さ、2つの恐さの板挟みの中でさとみの出した結論は? その他、母を失った子狐が里に下り、そこで新たな母親と出会うがその母親は…「母ちゃん」、幼少の頃、犬に襲われたのがきっかけで犬嫌いになった少年。時が経ち、既に老犬となったその犬に仕返しをしようとするのだったが…「犬ぎらい」、祖父の袈裟次郎と一緒に山に入った諷子はそこで冬に備えて身を寄せ会う動物たちに出会う…「冬を越すために」等。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第7巻。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『猫は敏感で、予知に近い能力を持っているとも言われています。そこで、家の猫たちが何か変わった行動をとるたびに、メモをしたりしているのですが、未だかつて何か起きたためしがありません。飼い主に似て、家の猫はみんなただのボケ猫です。』

風の宿 8

東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こしてしまい勤務先の病院を追われ、更には妻も家を出てしまう。一成は妻の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に、両親を亡くした彼を育ててくれた信州の伯父夫婦の家を訪ね、そで動物診療所をはじめることになるが…。うそ・・・つくよ・・・ある日の授業中、クラスメイトが教科書の動物はうそをつかないから好きだ、という文章を読んでいた時に諷子がポツリと、そうつぶやいた。授業の後、諷子の言葉を不思議に思って話しかけた担任の小絵(さえ)に彼女は動物だってうそをつく! と強く訴えかける。小絵はその諷子の様子にただならない何かを感じ取っていた。そしてその日の帰り道、小絵は見慣れない女性と話をする諷子を見かける。動物だってうそをつく…諷子がその言葉に込めた真意は? そして諷子が会っていた相手とは? その他、冬のある日、傷の癒えた小鳥を山に放すため一成と一緒に山の中を歩いていた諷子は、川沿いの氷の中にまるで夏のような風景があるのを見つける。それはクラスメイトの亘(とおる)が作ったものだった。ある日、亘と一緒に再びその場所に行った諷子はそこに予期しない物を見つけ…「氷の中の夏」。諷子が下校途中に出会ったバードウォッチングの男性。山を案内した諷子に男性はお礼として双眼鏡と撮影したフィルムを渡して別れるが、諷子の話を聞いた一成はそこにただならない雰囲気を感じとる…「みんないっしょに」。ある日、一成の元に泥だらけのボトルが送られてくる。それは東京にいた頃、一人の男が可愛がっていたペットの亡骸と共に土に埋めたものだった…「ウイスキーを飲める時」。ある雪の日、戻ってきた母親に連れ出された諷子は母親の車を飛び出し、山の中に逃げ込む。同時に往診帰りの一成も山中で事故を起こしていた。日が落ち、雪が降り続く中、伯父の袈裟次郎たちはなすすべをしらず・・・「心」など。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作最終巻。 小山田いく先生の当時の単行本コメント『ゆっくりと、七十二回の話を描いてきました。何だか「風の宿」は、ゆっくり、ゆっくり、描いてきた気がしています。そういう気持ちでいなければ、描けない物語でした。そんな気分が、読者のみなさんにも伝われば…と、願っています。』