彼の歌はセイレーン、私を惑わして荒れた海へ引きずり込む魔物…。私、小島小鳥。歌手を目指して上京したけど鳴かず飛ばずでもう一年。先の見えない状況ですが、なんと今日は私の誕生日。友達がカラオケBOXで誕生日会をしてくれるそうなので行ってみると…何このVIPルーム! 私を励まそうと奮発してくれたの? 気を良くして自分が落ちたオーディションの課題曲だったナンバーを歌っていたら、突然目の前に有名音楽プロデューサーの藤堂仁が!! しかもこれは営業プレゼンだと言う。訳が分からないけど、もしやデビューのチャンス!? でも世の中そんなに甘くなかった。営業は営業でもそっちの営業。もうそれしか私に残された道は無いの…!?
「あなたのこと好きです」えっちの勢いで思わずしちゃった告白。藤堂仁は困った顔をしていた…。もう既にフラれていたような物だけど余計に失恋の上塗りを~!! 仕方無い…フラれる位いつものこと。私にはまだ歌手になるって夢がある!! でも現実は更に追い討ちをかけて来た。現場責任者の難波さんから自主退学勧告を受けてしまったのだ! そんな…話が違う!! でも難波さんの言うことはもっともで…私は明らかに力不足だ。だからって諦めたらそこで試合終了だ! 自力でレコード会社とアーティスト契約決められれば文句ない筈! 何が何でも藤堂仁の曲にふさわしい歌手になってやる!! だって心が手に入らないんなら…せめて曲が欲しいんだもの……。
セイレーンが人を愛したらどうなるか。あんな騒動が起こるなんて思わなかった。藤堂仁と両思いになった私。なんと、今度設立されるオリジナルレーベルからデビューできる事に! もちろん藤堂仁のお陰なのだけど、現場責任者の難波さんは大反対。そんな中で、音楽協会主催のパーティで新人歌手としてお披露目される運びに。でも着慣れないドレスや高いヒールで緊張して、場違いさに身が縮む。案の定テンパって大失態! 藤堂は藤堂で段取りや根回しに忙しく私を気遣ってくれない。全部私の為にしてくれているって解ってる。だけど…少しは心配してくれたっていいじゃない! 自分のみっともなさにその場から逃げ出した私に、更なる悪意が迫っていた…。