ごくごく平凡な高校生、鳴瀬ウタには、人には言えない秘密があった。それは、実の兄のお嫁さんである薫瑠に恋をしていること。決して実らない恋だけど、日々の営みが嬉しくて、その一方で兄との新婚生活を見ていると胸が張り裂けそうで…。彼女は心を押し殺す。そっと心に秘めた恋心が、目を覚まさないように――。
初恋が終わった。――それでも、私の心は前を向くことを許してはくれない。留めていた恋心を開放したウタ。しかしその結果、ウタの初恋はあっけなく終わってしまった。行き場のない気持ちを抱えたまま、それでもウタは恋した義姉と同じ家で過ごし、日々の営みは変わらず続いていく。そんな折、ウタは友人のクロエを慕う少女・みや美と出会い、突然の恋愛相談をされて…
――このくすぶった気持ちの名前を、私は知っている。怜一と璃沙子を見て動揺し、歩道橋から落ちてしまった薫瑠。幸い怪我は足の骨を折っただけで済んだものの、この一件から、薫瑠は怜一に対して猜疑心を抱いてしまう。病院のベンチで泣く薫瑠。どうして泣いているのかわからないウタは、そんな薫瑠を見て、傷つく彼女の姿をみる辛さを痛感する…
ついに薫瑠に対して自分の気持ちを打ち明けたウタ。しかし、勇気を振り絞って伝えた言葉ははぐらかされ、進展することも、諦めることも叶わぬまま、ウタはまだ自分の気持ちに終止符を打てないでいた。そんな中、ウタと怜一の母が日本へ帰国、彼女はウタを実家に連れ戻すと言い…
――壊してしまったのは、私なんだから。ウタの気持ちに気づいていながらも、その気持ちをどう扱ってあげたら良いのか分からずに、はぐらかしたままにしていた薫瑠。しかし、友人からのアドバイスもあり、改めて正面からウタの感情と向き合うことを決意する。それは、ウタと薫瑠の引き返せない対峙を意味していた…
ウタの気持ちを受け止め、その上で「その気持ちには応えられないし受け取れない」と言った薫瑠。ウタはその言葉に涙し、覚悟を決めて家を出ていくのだった。そしてウタがいなくなり、怜一と二人になった薫瑠は、改めて妻としての自分の立ち位置と向き合うことに…
突然ウタのスマホに入ったSOS。どうしても気になったウタは薫瑠のもとへと駆け出し、彼女が感じている息苦しさを知る。一方、隠していた想いの一端を吐き出せた薫瑠は、改めて、自身の問題と向き合う決心をし…
本書は『たとえとどかぬ糸だとしても7 初回限定版』の付録小冊子を電子版として再編集したものです。
実の兄の奥さんに恋をしてしまった女子高生のお話。 特に主人公のウタは自分の気持ち以上に、相手が女性、しかも実の兄の奥さんであることや、自分がまだ自立できていない高校生だということなど、自身と周りの状況についての理解が深くて、深すぎるからこその年齢不相応に大人びた振る舞いをしている。 百合作品だと相手が同性という理由から恋愛に対してストレートに行動できない場面も多いけど、この作品の場合はより多層的な縛りがあることによりウタの感情の揺れ動きに深みが生じる。 最新4巻は前巻最後の薫瑠のモノローグから薫瑠が意を決してウタと向き合おうとするまでの数日間。 その間にウタと薫瑠それぞれの心境に変化を与える出来事を詰め込んでくる。なぜこの世界にはこんな辛い恋をしている人間しかいないのか。 少し近い設定だけど今のところ恋愛要素を打ち出してない「兄の嫁と暮らしています。」辺りと対比させて読むと面白いかもしれない。
実の兄の奥さんに恋をしてしまった女子高生のお話。 特に主人公のウタは自分の気持ち以上に、相手が女性、しかも実の兄の奥さんであることや、自分がまだ自立できていない高校生だということなど、自身と周りの状況についての理解が深くて、深すぎるからこその年齢不相応に大人びた振る舞いをしている。 百合作品だと相手が同性という理由から恋愛に対してストレートに行動できない場面も多いけど、この作品の場合はより多層的な縛りがあることによりウタの感情の揺れ動きに深みが生じる。 最新4巻は前巻最後の薫瑠のモノローグから薫瑠が意を決してウタと向き合おうとするまでの数日間。 その間にウタと薫瑠それぞれの心境に変化を与える出来事を詰め込んでくる。なぜこの世界にはこんな辛い恋をしている人間しかいないのか。 少し近い設定だけど今のところ恋愛要素を打ち出してない「兄の嫁と暮らしています。」辺りと対比させて読むと面白いかもしれない。