あらすじ

般若とは女の嫉妬や怒りや怨嗟、復讐を現わす面だという――。夫に浮気ばかりされている早苗は一見無関心を装いながらも、実は嫉妬で気が狂いそうになり、その心はほとんど般若と化していた。夜毎に夫の首を絞めているのは自分だと思い込む早苗だが、夫の棚橋は家にある般若の人形が動いているのだと、雨月に助けを求める。
鬼談(1)

憧れの怪奇作家・石田豪成の秘書として住み込みで働き始めた杏子。しかし、その家にはなにやら不気味な気配がする…。眠りに就いた杏子の首元に伸びてくる白い両手。それは血で描かれた襖絵の中から現れ出ていた……!ヒトガタを使って人々の心の深遠をとらえる人形作家・北村雨月が、死者たちの悲しみを救い出す――。

鬼談(2)

ある所に一本の大きな松が生えている。その古木でひとりの美しい女流歌人が、自らの体に残る醜い傷を苦に首を吊り命を絶った。雨月は以前彼女から人形制作を頼まれた縁もあり、豪成らとともに供養に向かう。しかしそこで死者の「気」を読み取った雨月は、彼女の悲しみと許されざる真実を発見する……!!

鬼談(3)

陶芸家の笹間はその色男ぶりで放蕩の限りを尽くし、事故で顔に傷が残った妻・藍子は夫に見放されたと思い命を落としてしまった。笹間宅を訪れた雨月は、家政婦の澄江から夜ごとに焼きもので作られた藍子の首が動き、夫を取り戻そうとしているのだと聞かされる。その夜も他の女と愛し合う夫のもとに藍子の首が忍び寄り……!?

鬼談(4)

憎い相手に送り、相手を呪い殺させるという式人形。杏子は友人からお祓いをしてほしいと頼まれ、その人形を預かることに。するとその夜、呪いの方向にズレが生じ誤って杏子が人形の怨念を受けてしまう…。憎しみの根源を突き止めようと、友人を問いただす杏子。そこには複雑に絡み合う女の執念があった――!!そしてまたひとり呪いによる犠牲者が生まれ……。

鬼談(5)

降り積もる雪に閉ざされた小さな家。そこには、なぜか雨月の素性を知るらしいひとりの未亡人が暮らしていた。彼女に招かれるままそこへ足を踏み入れた雨月は、女が自分に対してただならぬ憎悪と殺意を抱いているのを感じ取る……。そして家の中には死んだはずの夫が血だらけになって徘徊していて――。

鬼談(6)

雨月ら3人は蒼い火の玉が出ると噂されている沼を訪れ、ひとりの女と出会う。彼女は風の音にも震え上がるほど、執拗に何かに怯えて暮していた。子どもができず、人形を心の支えにしていたというその女と、沼で見た火の玉が何か関係しているのではと感じた雨月は、しばらく彼女のもとに滞在することを決意するが……。

鬼談(7) 死人蝶

千里は新しい家に越してきてから、壁に飾られた絵から紅い蝶が飛び出し自分を睨んでいる幻影に悩まされる。蝶に導かれ、彼女のもとを訪れた雨月は、問題の絵の「気」を写し取り人形を制作することに。翌日、出来上がった人形を見るとなんとそれは千里の元恋人と瓜二つで…!雨月には絵だけでなく、家全体が苦しみのたうっているように見えるのだが……。

鬼談(8) 死人蝶

杏子は法庵先生のお手伝いさんからいわくつきの幽霊画を預かる。その画のモデルとなったのは、愛する男の手でその命を奪われた旧家の令嬢だという。強い怨みと哀しみを持った彼女は御霊(ごりょう)となって画から抜け出し、杏子と雨月に襲いかかる――!!しかし杏子は彼女の深く傷ついた心を癒してやりたいと雨月に訴える……。

鬼談(9) 般若の爪

般若とは女の嫉妬や怒りや怨嗟、復讐を現わす面だという――。夫に浮気ばかりされている早苗は一見無関心を装いながらも、実は嫉妬で気が狂いそうになり、その心はほとんど般若と化していた。夜毎に夫の首を絞めているのは自分だと思い込む早苗だが、夫の棚橋は家にある般若の人形が動いているのだと、雨月に助けを求める。

鬼談(10) 般若の爪

雨月と豪成は人形制作を依頼されていた女性を訊ねるが、彼女は2ヶ月前に亡くなったと知らされる。そして残された娘の莉奈は家の庭に咲くさざんかの生垣に女の幽霊が出ると言って怯えていた。それは決まって恋人の和也が来ると姿を現わすのだという。幽霊の正体は生前、和也との交際に反対していた母だと莉奈は言うが、雨月はそれとは違う「気」を感じていた……。

鬼談(11) 凶人形

大学教授の大森は一体の人形をとても大切にしていたが、ある時はずみでバラバラに壊れてしまい、その処分を人形師・高山早雲に依頼する。人形から非常に強い「気」を感じ取った雨月は早雲にかわりその人形をひきうけることにした。破損が激しく、人形の想いを読み取りきれない雨月は事情を聞きに大森のもとを訪れる。そして人形の帯の中から桔梗の花のペンダントを発見し……。

鬼談(12) 凶人形

「ダシテ……」助けを求める女の霊は血だらけで、薔薇の花びらとともに現れる――!!雨月は学生時代の友人・大野に人形の制作を依頼される。大野の周りに漂う薔薇の香りの「気」が何かを訴えているように感じ、依頼を引き受けることにした雨月はさっそく大野の家に向かう。しかしそこで雨月が感じた「気」は意外な方向から発せられていた……。

鬼談(13) 骸乙女

杏子は高校の先輩である志緒と久しぶりに再会。志緒の家を訪れるとそこには、すすり泣きを漏らし、怨念とともに呪いの釘を打ち付ける亡霊が住み付いていた…!封印を解かれた亡霊は呪い釘を突き立てようと志緒に襲い掛かる!!憎しみに囚われた亡霊は生者に代わって家の主となり、底知れぬ恐怖でその座を主張し続ける――!

鬼談(14) 骸乙女

麻美は仕事で訪れた由緒ある屋敷の中で血を流す子どもの霊を見てしまい、以来まるで夢遊病者のように何度も屋敷に引き寄せられる。その死霊はついには屋敷を飛び出し、常に麻美に付きまとうようになり……。雨月は、3年前屋敷の近くで起こった幼児連続誘拐事件が関係していると推測するが…。