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華散るが如く(1)
江戸・吉原。「おっ、見ねぇ、花魁道中だ」道行く人々が足を止める。“蛇”が言う。「お鶴、いいかよく見ておけ。これが吉原百万両の大傾城、蒼桐花魁だ」それが私と、生涯を賭して戦う事になる蒼桐花魁との初めての出会いだった。私は没落した武士の娘だった。父は農業を始めたが上手く行かず、もう質種も尽きて明日の食い扶持にも困っていた。まだ幼い弟妹の為に私にできる事は、自らの意志で人買いに買われる事だった。人買い“蛇”に、私は生娘のまま、男を悦ばす手管を教え込まれていく。「見ただろうあの蒼桐の見事な花魁道中。お前は今日からあれを目指せ。吉原一と謳われる蒼桐を超えてみせろ、お鶴」私が、あの人を超える花魁に…!?
華散るが如く(2)
蒼桐を超える花魁…。そう言われても、私には花魁がどういう物かもわからない。それから蛇さんは、私のために豪華な着物をしつらえだした。着々と、私を花魁に仕立てる準備が整っていく。でも私は花魁になんかなりたくない。男に媚を売ってお金を稼ぐなんて…! 「甘ったれるな!」「借金まみれの女が花魁にならないなら残された道はもっと辛い」そして私は花魁になれない女郎達の哀しい現実を知る。
華散るが如く(3)
豪華な細工の施された大名駕籠に乗り、私のお披露目が始まった。「さぁさぁ、江戸一の美女、雛菊花魁のお披露目だよ!」「吉原に行っても会えないよ! 雛菊の呼び出しはよろずや松庵まで!」私はすぐに評判になり、向こう三月の予約が埋まった。でも私は嬉しくない。いつ…誰に破瓜されるのか、その日がただ、近づいているに過ぎない。私は…見ず知らずの男よりも…蛇さんが…
華散るが如く(4)
「お会いしとうござりんした、蛇様」「俺もだ、蒼桐」これは…どういう事なの……? 私が蛇さんの事を想いながら他の男の相手をし稼いだお金で、蛇さんは蒼桐花魁に貢いでいたというの? 私は何の為に……! 何故、蒼桐を超える花魁になれと言ったの? 私は…私は…!
華散るが如く(5)
私の初めては私が買った。そして私は名実ともに花魁になった。今はもう、どんな客とでも枕を交わす。これが私の仕事だ。江戸の町では私と蒼桐花魁の事が噂になっていた。曰く、どちらが花魁として上かと…。そんな噂話がまさかこんなに大きな事になるなんて、その時の私は思ってみもしなかった。
華散るが如く(6)
鎮魂祭当日、私は無理矢理浄閑寺に連れてこられた。「蛇様!」そこには白拍子姿の蒼桐花魁が。「お初にお目にかかりんす。わちきが吉原は三浦屋の蒼桐でありんす」遠目から見たことはあったけど、こうして対面するのは初めて…。堂々として綺麗な人…。こんな人に私が勝てるわけがない……!
華散るが如く(7)
いつものように身支度を整える。浄閑寺の一件で噂が噂を呼んで新規の予約が後を絶たない。これからだ…これからもっと私は稼ぐようになる。そんな時、急にふらついて倒れてしまった。「熱があるな、ちょっと体を見せてみろ」蛇さんに、有無を言わせず着物を開かれる。そこには…赤い発疹。「唐瘡(梅毒)だ…」
華散るが如く(8)
一ヶ月ぶりの仕事だ。蛇さんは、まだ無理をして客を取らなくとも良いと言ってくれるけど、休んでいた分を早く稼がねばならない…。これ以上、蛇さんに迷惑をかけたくなくて私は一人で松庵に向かった。「あんたが雛菊だな?」山道で、がらの悪い三人の男に阻まれた。「噂通り、いい女じゃねぇか」「殺す前に味見したってばちは当たんねぇだろ」殺す…? 私を……!?
華散るが如く(9)
蒼桐さんの涙ひとつで蛇さんはこんなにも心乱されるのか。蒼桐さんの代わりに蛇さんに抱かれながら、私は悲しかった。蛇さんは蒼桐さんを抱く時こんなにも激しい。私の時とは違う…。やはり私では蛇さんを振り向かせられない…! そんな折、私に身請け話が持ち掛けられた。身請けされれば今より幸せになれるかもしれない。けれど……。
華散るが如く(10)
「ふむ、ふた月といったところじゃろう」やはり…そうでありんしたか。吉原内にある診療所の先生に口止め料を払い、わちきは帰路に着きんした。腹の子の父親はどの客でありんしょう…。この子がもし蛇様の子なら……。いけない、わちきと蛇様は血を分けた兄妹なのだから。けれど…産みたい…!