あらすじ友達に誘われて海水浴に出かけたユリと兵悟(ひょうご)は、浜辺で母親を待つ少女・絵里子(えりこ)と仲良くなった。一度は絵里子と別れたが、一人で浜辺に出た兵悟が、遠くで絵里子のボートが浮かんでいるのを見つける。慌てて助けようと絵里子のもとに行った兵悟だが、ホッとしたのも束の間、二人は強い潮流に沖へと流されてしまう!小さな女の子を抱え、日の傾いてゆく海で、兵悟は漂流の事実を突き付けられる!!
ある秋晴れの日の朝。歩道橋の上からぼんやりとやや遠くに見える海をながめていました。そうしたら、あれ?こんな風景どこかで見たことがある…っと強烈なデジャヴュが。しばらく考えていたところ、何のことはない、それはついつい朝まで読んでしまった『トッキュー!!』の背景でした。ただ、それは目で覚えていたのではないんです。「空気感」とでもいうのでしょうか。作者の久保ミツロウは、この空気感を捕まえることに長けた人だと思うのです。例えば冬の早朝の校庭。あるいは蒸し暑い日の川にかかる橋のたもと。そこに在るただ寒かったり涼しかったりするだけではない、独特の空気感。『トッキュー!!』は海難救命士のストーリーですから、洋上での凄まじい爆炎や、漂流時の不安げな海などさまざまなシチュエーションがでてきます。それがいちいち感覚に残っている。「前作の『3.3.7ビョーシ!!』で気になっていたのはこれなんだな」「やはり女性の漫画家はその辺の感覚が優れているのだな」とか、考えているうちに眼が覚めた徹夜明けの朝でした。