あらすじ

河海(かわみ)東中2年・町屋翠(まちや・みどり)。全国大会という最高の舞台で傷を負った彼女は、今までのように「歌をうたう人になりたい」という自分の想いと無邪気に向き合うことができなくなっていた。苦しみながら、かつて「歌」に出会わせてくれた人の言葉の中に希望を見つけようともがく町屋。しかしそれは、合唱部にとって辛すぎる別れへとつながっていく――。
少年ノート 1巻

少年は、音の中で世界と語る――。『隠(なばり)の王』鎌谷悠希の新作は、合唱群像!天使の歌声“ボーイソプラノ”を持つ少年・蒼井由多香(あおい・ゆたか)。音に対して繊細で感受性豊かな彼は、中学校入学と同時に合唱部に入部。ゆたかの声に触発されて、部員たちはコンクールの金賞を目指す――。「学校」という舞台で少年少女が紡ぎだす、失われゆく日々のハーモニー。

少年ノート 2巻

若きベツヤクの悩み。「音は時に人を惑わす――」鎌谷悠希が描く合唱群像!!河海(かわみ)東中学合唱部部長・別役秋年(べつやく・あきとし)。オトナに反発して自分の可能性を探し続ける彼は、いつしか殻にこもっていき、市の合唱祭への参加を前に部はちぐはぐになってしまう。そして迎えた合唱祭当日。少年は、自分の中の孤独と向かい合う――。

少年ノート(3)

ゆたかの前に現れたウラジーミル・ポポフ。彼もゆたかと同じく、ボーイソプラノをもつ少年だった。「きみの歌にはアイデンティティもくそもない」――彼はゆたかを否定し、その声に呑まれたゆたかは歌うことができなくなってしまう。一方、河海東(かわみひがし)中合唱部も、自分たちの『着地点』を見出せずにいた。何を目指して歌うのか、少年たちが葛藤とすれ違いを繰り返す中、NHK合唱コンクールの地区予選が迫る!

少年ノート(4)

歌うことでしか「少年」は救われない。ウラジーミルとゆたか、二人のソプラノが今、重なる。――歌が歌えなくなったゆたかのために何かがしたい……。自分の気持ちを外に出せず、伊勢(いせ)まり子は悩む。合唱部副部長・町屋翠(まちや・みどり)は彼女を家に招き、他人に想いを伝えることの大切さを語る。町屋に背中を押されたまり子の勇気が、合唱部員と街の人たちの心を動かしてゆき、真夏の星空の下、暖かな歌声がゆたかを包み込む――。

少年ノート(5)

ロシアで「奇跡の歌声」と称されるボーイソプラノ、ウラジーミル・ポポフ。世界を魅了し続ける彼は、自分の身に訪れた異変を受け入れられずにいた。マネージャーを務める叔父・アナトリーもまた、苦しむ天才を前に何もできない無力感に苛まれる。かつてボーイソプラノだったゆたかの兄・蒼井穣(あおい・みのる)がやってきた河海(かわみ)の街で、ブロックコンクール本番を前に、ゆたかとウラジーミルの心が再び交錯する――。

少年ノート(6)

失われていく天使の歌声、少年は最後のボーイソプラノを歌う。――河海東(かわみひがし)中合唱部の一員として、ブロックコンクールを突破した由多香(ゆたか)。かつての声を失いつつある「天使の歌声」ウラジーミル。そして、歌うことをやめた由多香の兄・穣(みのる)。ボーイソプラノと、かつてそうだった者が集った河海の街は、彼らと同じくその姿を変えられようとしていた。運命に抗うことを決めた天才の、最後の輝きを胸に、河海東中は自分たちの集大成・全国大会へと向かう――。

少年ノート(7)

河海(かわみ)東中2年・町屋翠(まちや・みどり)。全国大会という最高の舞台で傷を負った彼女は、今までのように「歌をうたう人になりたい」という自分の想いと無邪気に向き合うことができなくなっていた。苦しみながら、かつて「歌」に出会わせてくれた人の言葉の中に希望を見つけようともがく町屋。しかしそれは、合唱部にとって辛すぎる別れへとつながっていく――。

少年ノート(8)

天使の歌声を持つ少年・蒼井由多香(あおい・ゆたか)。河海(かわみ)の街で、歌う喜びを知り、かけがえのない出会いを経た彼は、自分の声と、誰よりも自分の歌を聴いていてほしかった人との別れを迎えた。そんなゆたかの前に、かつてボーイソプラノを持っていたウラジーミルが再び現れ、沈んでいた街と人は、ひとつになって最後のハーモニーを紡ぎはじめる。そして、失われゆく日々の中で、少年は自分の歩む道を見つけ出す――。