遊女の世話や雑用をしながら、遊女という生き方を学んでいく“禿(かむろ)”と呼ばれる少女たち。彼女たちが自分の姐さん方を“オイラん姐さん”と呼んだことから、“花魁”という言葉が生まれたとか――。吉原・新嬉楼(しんきろう)の禿・なみじの“オイラん姐さん”は、地獄太夫と呼ばれる橋立花魁。琴の演奏を間違えるなみじをキセルで叩いたり、客にロウソク責めをしたりと、性格のキツさ、エゲツなさからその通り名がついていた。そんな姐さんから「花魁になってどうするんだい?」と聞かれたなみじは、「素敵な人に身請けされて……」と答えるが、「フン、青臭い夢だね。捨てちまいな、そんな夢」と言われてしまう。“自分の夢をつぶされた”と落ち込むなみじだが……。吉原に生きることを運命とされた禿・なみじが見た遊女たちの世界とは?お江戸吉原遊女ロマン!!
橋立花魁と意地の張り合いを繰り広げ、手痛い敗北を喫した紀伊国屋文左衛門が、仲直りを申し出て再び新嬉楼へ。女将さんとおマキさんに説得された地獄太夫・橋立花魁は仕方なく座敷に上がるが、あの文左衛門が簡単に改心するわけがない、と疑いの目を向ける。しかし何事もなく、それどころか文左衛門は去り際にお詫びとして百人一首柄の着物を橋立花魁に渡す。着物に針でも仕込まれているのでは?と考えた橋立花魁は念入りに調べてもらうが、そのような細工はなかった。安心して、その着物を着て廊内を練り歩く橋立花魁だが、廓の姐さんからは笑い声が起こって……。はたして文左衛門が仕組んだ仕返しとは?橋立花魁付きの禿・なみじが明かす遊女達の日常。
お高くとまりながらも陰のある花魁が主人公で、彼女を中心に情念渦巻く吉原の人間模様を描く…。そんな内容だと想像していましたが、本作はその先入観とはかなり違う、ずっと小気味の良い作品で、たっぷり堪能させて頂きました。主人公は地獄太夫と呼ばれる橋立花魁。どんな鬼のような花魁かと思うでしょうが、これはその技からついた異名。施虐の芸使い、そう、今でいうSMの女王様なんです(2巻の表紙でろうそく持ってます)。よく言えば客がどうして欲しいかを読み取る才能に長けている、悪く言えば変態専門の橋立花魁は人気も上々。で、この橋立が馴染み客と息の合った攻防?や、成り上がり者と意地の張り合い、はたまたとある武士と真剣勝負を繰り広げる。そのさまは上等な小話や落語を見ているようで、まさに”粋”のひと言。また著者はこの時代の吉原をずいぶん調べたようで、「えっ、これで避妊してたの」なんて薀蓄ネタも拾えます。3巻以降は単行本が存在せず、雑誌からの電子化で少々アラのある造りにはなってますが、野暮なことはいわずに楽しんでもらいたいですね。