山松ゆうきち、五十六才、職業・漫画家。仕事が減り大好きなギャンブルにも思うように行けなくなった彼は、ある日、インドには漫画がないと聞いて一念発起! 「無いものは売れるに決まっている。インドへ行って漫画本を出すぞおー」と単身インドへ!! 目標はインドで漫画本を作って大儲けすること…だが、言葉が全く分からず、空港からホテルに行くまでも一苦労。ホテルのボーイとやりあい、物乞いの少女に心悩ませ、オートリクシャの運転手に翻弄され…インドで漫画を出して大儲けするプロジェクトははたして成功するのか!? そもそも実現できるのか!? 作者が体当たりで挑んだ波乱万丈・唯一無二のインド体験エッセイ漫画!
広大な草原が広がるインド―― まだ人間が原始的な集落で生活を送っている頃、その草原の主は、ライオンやトラなどの肉食動物ではなく、巨大なゾウたちだった。そのなかでも、山のように大きくて強い一匹の黒い巨ゾウを人間たちは「ヴァラナシ」と呼んで恐れていた。草原の秩序を重んじ、すべての動物たちの命の源である草原を焼く火事の元になる「火」を嫌い、また自分たちがその日食べる以上に動物を殺し果実などを穫る人間たちを「強欲な愚か者」と考えるヴァラナシは、山の民「ストロー(黄色い人)」の集落をたびたび襲っていた。石の武器しかもたないストローたちの攻撃はヴァラナシには通用せず、集落を蹂躙され、家や冬用の食糧を失うことに…。さらに海の民「ドラッタ(黒い人)」たちが草原に進出してくると、コブラの毒を塗った鉄製の武器を使うドラッタに太刀打ちできずストローたちは滅ぼされていく。草原を支配したいドラッタは「草原の暴君」として君臨するヴァラナシを排除すべく周到な罠を仕掛けて…。太古のインドの大地を舞台に人間とゾウたちの戦いが描かれる!
代表作「くそばばの詩」ロスト・エピソード、「2年D組上杉治」幻の最終話も収録! 初期代表作+未収録作で唯一無二の天才劇画の真価を問う! ひよこ書房(大西祥平)が作品セレクト&3万字インタビューを担当。
江戸末期の鳥取藩・因幡郡円柱寺村。間引きされかけた男の子忌吉は、とろい上に盗み食いをして脚を折られた。役立たずと馬鹿にされるが、将棋を覚えて1文を賭けて勝負し、飢え死にを免れていた。願光和尚に負け、教えを請う。父が死んで一家離散した忌吉は、寺に引き取られて碁も覚えた。鬼封じの天元打ちを教えた願光は、城に呼ばれての争棋で体力をすり減らし、忌吉に九登寺に行けと言い残して死ぬ。「奇手鬼封じ」数奇な運命に弄ばれた天才棋士の物語。
貧乏な工員に見た目も燃費もド派手なイタ車「デ・トマソ」を売り付けた中古車のセールスマンだったが…?『モデルチェンジ』。田舎の温泉宿に派手なゲイバーのママさん御一行13人がやって来て…?『おかまの宴』。セールスマンから殺し屋、パチプロまで(?)、日本の色んな「玄人」達の仕事ぶりを「だらしな~く」描いた、山松ゆうきちのゆるゆる職業人オムニバスギャグコメディ。
パチンコ・競輪・麻雀・女……そのどれもに異常なまでの探求心と執念深さを見せる甚一。自らを「知的中産階級」と位置づける彼は、しんどい思いをして働いた給料をギャンブルにぶち込む者を「低額所得者共」と切り捨て、あくまで生産的な事だけを行い勝負に勝つのをモットーとしている。今日も甚一はパチンコ店に繰り出し、入念な下調べの元導き出した「当たりの台」で勝負を仕掛けるのだったが……? 愛すべきギャンブラー・甚一とその弟分・安らが織りなす青春グラフィティ!
二軍投手のコーヘイ。やっと先発に抜擢されたとき、知らせてきたコーチに風呂場で突き飛ばされ、ガラスに突っ込んで肩の筋を切ってしまった。また頑張って、今度は打者で一軍に昇格が決まったとき、またコーチにどやされた弾みにクルマに轢かれ、手を潰してしまう。それでも脚を活かして代走として試合に出るが、手が無いためにベースに届かず、アウト!誰も悪気はないのに、切なすぎます…。「蒼ざめたコーチを見るな」他に「ビフテキの味」「一軍のマウンド」「ああ!甲子園の土」「お相撲エリート!」を収録。
年取って客の付かなくなった染ちゃん。競馬で当てて経営者になるのが夢だが、いつも負けてばかり。自殺しようとするが、いつも相手の男だけが死んでしまった。最後に男と互いに1億の保険金を掛けてガス心中する。やはり自分だけ生き延びたが、ホッと一服、タバコに火を着けたのが運の尽き…。「心中屋染ちゃん」切なくもおかしい愛憎劇。他に「OH!マイ・パパ屋」「知識人のヒミツ」「オカマンタインの青春」「真説港のエルザ」「愛のセールスマン」「山松ゆうきちの愛と夢」を収録。
町に突然「神」がやってきた。その自称・神はボロボロの衣服をまとい、駅前で大声を張り上げて演説をするのだった。「民よ聞け! この世に人間のいる限り争いは絶えない。世界に平和が訪れる日など永遠に来るわけがない! いや、ただ一つ平和への道がある。それは核を増やすことだ。世界中の国が核を保有すれば戦争は起こらん、双方が怖くて手が出せないのである」とこの調子で鬱陶しいことこの上ない。この自称・神は演説を終え、飯屋に入ると……? (「淫者の声」より) 山松ゆうきちの傑作短篇集!
異常に強い男・荒井順造。母親に貧乏させたくないと銀行強盗に入り、13人も殺して死刑判決を受けた。が、刑務所でも牢名主たちをひねり殺し、大量に押し寄せる刑務官たちも一蹴してしまう。神父の説教に一度は心を入れ替えるが、やっぱり死刑にされそうになって逆ギレ、神父も殺して大暴れした。すったもんだの末、あまりの強さを持てあました刑務所側は、荒井の刑期が終わったことにして釈放する。荒井は無事に母の元に帰った。正義だから強いのではない、勝ったから正しいのだ──「異常に強い男」。他に「トランプ麻雀」「超人間とC体験」「秘密兵器は背番号42」「競輪必勝法」を収録。
ボクは綺麗にお化粧しています。政治が悪いので人を殺してみました。でも警察はボクが殺ったと認めてくれません。お父様は好きです、でもボクは子供なので自由が欲しいです。強盗の叔父さんと心中してみました。やっぱりボクだけ生き残ってしまいました。ボクは白血病です、あとがないのに…。表題作「ああ!!あとがない」他に「知床峠の決闘(原作・間俊作)」「まるだし馬鹿・悲愁編 テンコちゃんの日記」「異色戦記5 見すてられた兵」「異色戦記6 敗走」「ある銀輪青春譜・登録番号59」「ゆうきち人生劇場 がんばれ共産党」の全8話を収録。
花澤高等学校の番長(自称)上杉治には二つの顔がある。子分を従え喧嘩に明け暮れる学校での顔、そしてもう一つは、自宅での妹想いの優しいお兄ちゃんという顔だ。治は今度の中間テストで一番になり、常に学年一位のマドンナ・白木寒子と肩を並べ、あわよくばお付き合いする流れになっちゃったりして……などとムフフな妄想を膨らませながら勉強に励む。そんなある日、寒子の部屋のベランダに、群青色のパンティが干してあるのを見つけた治は我慢しきれず盗んでしまい……!? 山松ゆうきちが描く昭和の学園コメディ!
病をテーマに下ネタから社会批評まで幅広い視点で人間の本質を鋭く表現。不条理ななかにも人間への愛ある作品集。
パチプロの山本岩五郎。白人でナイスバディのベティに、パチンコの手ほどきをしたのが縁で同棲することになった。不細工でチンコも小さいのに、なぜ?…と、みんなもビックリ。ところが元恋人(?)のマイケルにバッタリ会って、ベティが連れて行かれてしまった。きっと戻ってくると、岩五郎はマイケルに対抗するために身体を鍛えて…。他に「パチンコ王正村」「清老頭の角」「絶体絶命」を収録。
時は幕末。毛利の長門守貞広は、攘夷の風吹き荒れる中、これからは西洋のこと知らねばならぬと決心。井上聞多、野村矢吉、山尾要蔵、遠藤謹介の4人をイギリスに向かわせる。伊藤俊輔(後の伊藤博文)を加えて、毛利の江戸留守居番・村田蔵六に5千両を貰った5人は、ガールの手引きで英国貨物船キロセッキ号に潜り込み横浜から出港した。「英国密航」声も節も悪い(?)浪曲師、瓢右衛門の苦闘半生を描いたトゥルー・ストーリィ。本編は第2話からです。以下「もらわれさん」「べたづけ」「夜逃げ」「浮浪児当瓢」「旅芸人」「ハワイへ行く」「満州行」「浪曲死すとも瓢右衛門死なず」を収録。
大野上村にある晩田の池には、家よりも大きい魚がいるという伝説がある。おときばあは目が悪く、村はずれの小さな小屋にネコと住んでいた。ボクは3年生の時、おときばあの手紙を読んでやり、返事を書いた。5年生の時におときばあが死んだ。晩田の主に池に引っ張り込まれたんじゃないかと…。中学になって牧田と一緒に晩田の池の主を釣ろうとして、何度も失敗。最後には錨とロープを使って釣った。化け物みたいな魚だった。ボクはおときばあが釣れたと、叫んでいた。「オババが釣れた」他に「四コマ笑劇場」「戦なき敗北」「不思議の国の怪力男」「私ビョーキの味方です」「ローンウルフ」「死にたくなるまで待って」を収録。
労務者の千代の介に、立ちションで彼のデカチンコを見せられたひとみが一目惚れした。ギャンブルも強くて財産持ちだが、オン歳六十二歳!求愛された千代の介も、ひとみの血圧が高くて心臓が悪いと言う言葉を信じて結婚。SEXに励んで早死にさせようと頑張るが…。「桃色ギャンブル音頭」他に「尺八クイーン誕生」「乗っ取り勝負」「ギャンブルちゃんこ鍋」「ギャンブル村おこし」「けちけちギャンブラー」「臨終トトカルチョ」「桃色ギャンブル合戦」「原色ギャンブル図鑑」(神ヨオ許シ下サイ)(出目式ノミ屋つぶし)(天下ゴメンのサラリーマン)(日本から来たチャンピオン)を収録。
大阪・堺に坂田三吉と言う、大変速い自転車乗りがいた。大酒飲みで仕事もせずに自転車大会に出て優勝するのが生きがい。しかし大阪城一周の自転車大会で、ゴール寸前に関根に抜かれた。極貧の生活を強いられた家族の訴えで、一度は自転車を棄てるが、競輪が始まって関根がトップ選手になったことを知る。東西対抗戦にスカウトされた坂田は、仕事に使っている実用車で出場するが三位に終わった。果たして日本選手権では?競輪を通して見る、哀しくも可笑しい人生模様。
敵の親分を千人の手下と共に殺した、笹川一義。刑務所暮らしを嫌って切腹しようとしたが、痛くて血が出たので中止。死刑判決を受けてまたまためげる。脱獄も出来ず、太って死刑を免れた話を聞いて、思いっきり喰いまくってデブになるが──「中年死刑囚」。他に「ぞうりばきのランナー」「一本書きの久仁ちゃん」「整形」「たんぴん白書3・ばちあたり麻雀」「少年Z」を収録。