ボクシングマンガの名作は数多ありますし、その中で敢えてこの作品を挙げるのは恐らく島本先生のファンだけだろうとも、思います。 ただ、この作品は本当に数少ない、島本作品の中における「ギャグ」のない漫画であり、貴重な作品としてファンの脳裏に深く刻まれている作品です。 この時期の島本先生の作風は、デビュー当時の少年漫画のテイストから変わっており、今見ると懐かしい、劇画調の絵柄でした。そしてその絵柄が、この作品の「熱さ」と非常にマッチしていたなあと今更ながらに思います(丁度自分が島本作品を読み始めた時期でもあり、懐かしさもあります)。 島本先生の作品には、数多の傑作が数多ありますが、笑いを排した作品は本当に少ないです(それは先生本人の照れであったりファンへのサービスなど要因は幾つか挙げられると思います)。 同時期の傑作、「バトル・フィールド」と併せ、是非読んでみて欲しい作品です。
ギャグ漫画家・島本和彦先生の初期代表作品です。実写映画化もされました。高校野球をモチーフにしたスポ根モノ。しかしその実態はギャグ漫画です。他に類を見ないスポ根ギャグ漫画と言ってよいと思います。とにかく無駄に熱いです。画も劇画風で、もう暑苦しいと言っても過言ではありません。その暑苦しさそのものをギャグにしている感じです。サラっと読めてアハハと笑ってすぐに忘れ、また楽しく読み返せる作品です。悩んでいる時、疲れている時など、リラックスしたい時に最適な作品だと思います。
ゲッサンで先月、今月号とホノオがうる星やつらの劇場版一作目「オンリー・ユー」を観てわーわー言ってる回なので本当に面白い。 この間NHKでやってたるーみっくアニメの特番にも島本先生が出てたけど、これについてホノオと同じくらいのテンションでアツく語っててタイムリーだなと思いました(偶然かどうかはわかりませんが)。 あまりにも語るので周りの人になだめられてたくらいです。 ただ、自分は島本先生の気持ちはものすごくわかるし、同じ漫画家、さらには同じ雑誌の連載作家としてしか語れないところがたくさんあると思います。 なので、次は島本先生だけに語ってもらう特番を組むといいと思います。 以上です。
なんとか、格好がつくくらいならテニスはできます。しかし体力の続く限りガンガン打ち込むだけなので、相手に「テニスをしてない」と言われる始末…。で、そんなときに思い出すのがこの作品。一応テニス漫画ですが、作者自ら「あの漫画はテニスなどいやっていない」といっている、そのまんまの内容です。生き別れた父と再会するため、勝ち続ける事を宿命づけられた主人公・狭間武偉。彼はルールも知らずにテニスを始め、インターハイ、そして4大大会で頂点を目指す。なんて書くのもばかばかしいほどで、実際にやっていることといえば、ダブルスを一人で戦ったり、ストリート・テニスなるもので日銭を稼いだり、あげく必殺技は相手の体を狙う技…。テニス漫画として読んではいけません。でも、テニスに格闘(熱血では無い)要素を取り入れて、笑いも涙も盛り込むなんて、凄いことだと思いません? 後の『逆境ナイン』や『無謀キャプテン』などより、テニスというスポーツを突き抜けているこちらのほうが全然いい。最近、作者のこの手の作品はないようなので、ライバル・赤十字の息子編とか描いてくれると、また燃えるんだけどなあ。
卓球がやたらと強い水嶋社長は、たぶん仕事と同じくらい(もしくはそれ以上)卓球に人生を捧げている。 単純にスポーツとしての勝利のためというよりは、卓球を通して人生の厳しさやビジネスマンシップを説いている…という感じ…だと思います。 「卓球判断」という聞いたことのない言葉が出てきてなんかよかった。 銀行から担保なしで3億借りるために卓球勝負するあたりは白熱しましたがよく考えると「そんなはずあるか」ですね。 それにしても、社長という仕事もなかなかつらいものですね。
さすが原作・雁屋哲。これでもか、といわんばかりに魅力的なエピソードを詰め込んでいいて、その引き出しの多さに脱帽します。終末兵器をめぐる超忍組織・恐車と神魔の壮絶な闘い。そこには敵味方にわかれてしまった者の悲哀があり、鉄の掟に従わなければならない不条理が。ほか、政府の陰謀という政治的な匂いも漂わせつつ、必殺技のグレードアップというエンタメ性も強調し、四天王や巡回処刑人といった言葉のセンスの良さも持ち合わせる。作画が島本和彦じゃなかったら、相当ハードな作品に仕上がっていたかもしれません。ですが、逆にいえば普遍的なテーマなので、シリアス系の作画だとベタな忍者アクションになっていたかも。だからこそ熱血ギャグ仕立てのこの作品は、異彩を放っているんでしょう。当時の島本は新人。片や雁屋は「男組」で名を挙げた一流原作者。その原作をここまで自分流に解釈してしまうとはなんたる度胸か。しかも一時『炎の転校生』と連載時期が重なっていたなんて。その心と体の強さを知ってしまうと、やはり島本和彦にもスゴイと言わざるおえません。
男とは馬鹿な生き物。 馬鹿な生き物だからこそ生き様が浪漫を生む。 だが、わざと馬鹿にならなきゃ男ではない、 というものではない。 ところがもともと馬鹿だから(ギャグ漫画だし) 「自分の墓穴は自分で掘るのが男だ」 という馬鹿な考えを男の生き様と信じて、 自ら墓穴を掘りまくる馬鹿がいた。 掘田戊傑(ほった ぼけつ)。 彼は強豪高校との対決から逃げた柔道部の身代わりとして 柔道ドシロウトなのに僅か数日後に迫った柔道対決に無謀にも臨む。 普通の漫画ならばここから主人公の埋もれた才能が開花するとか、 地獄の特訓の成果や謎の老師の助言で必殺技を会得するとか、 愛と勇気がなにもかもを超えて奇跡を起こすとか、 突然の天変地異が起こって全てが灰燼と化すとか、 そんな結末になるものなんだけれど・・ 「男とは」「男たるものは」を追及した主人公を待っている結末。 その結末には涙するしかない。 スポーツ漫画では、従来のセオリーを揺るがす新技や理論が 一つや二つは登場するもの。 思わずナルホドと思い、試してみたくなるような。 なかには本物の真理論もあれば、ただ漫画を面白くするためだけの こじつけだったり、誤解やウソッパチだったり、 「作者、実はこのスポーツを舐めてるだろ」というものだったり 色々とある。 それがスポーツ・ギャグ漫画ともなれば、 少々のトンデモ理論が登場しても普通は驚かないが、 よりによって柔道を指導する先生に向かって 「受身では勝てない!」と反論するのだ。馬鹿だから。 墓穴を掘る男だから。 けれどこの言葉、一周まわって考えると 「そうかもしれない」と思ってしまうのが困ったもの。 いや、明らかに大間違いなんですけれどね。 まあ一発投げられて死ぬほど痛い目にあえば 普通は前言撤回する程度の屁理屈。 けれど「自ら墓穴を掘る男」堀田戊傑は 撤回せずに投げられまくりドンドンと 墓穴を深く掘り続けて行く。 通常のスポーツ漫画ではありえない方向へ、 通常のスポーツ・ギャグ漫画ですらもありえない方向へ、 そして結末へと・・ ある意味で比類する漫画が見当たらないほど面白いのだけれど 柔道の創始者・嘉納治五郎先生が読んだら血の涙を流すだろうお話。 全二巻で第一巻・第二巻がそれぞれ第一部・第二部になっています。 上述の内容は第一部のみについてです。 第二部はもはや解説不能なレベルに突入してしまうので 感想は控えさせていただきす(笑)。
自伝や実録漫画といわれると、はなから眉に唾をつけて読みます。どうせ嘘や誇張がいっぱい混ざってるんでしょ、だまされないぞ、という感じで。しかしこれが島本和彦の手によるものだと…。明らかに自分をモデルにした実録風漫画なのに「どこがホントのことなんだ?」と思ってしまう。逆説の美学を感じてしまいます。この「吼えペン」シリーズでは嘘キャラの立たせ方も秀逸で、もじった名前を付けて「え、あの人ってこんな人なの?」と思わせる、という仕掛けで押しまくってくる。例えば富士鷹ジュビロなんて、明らかにあの有名漫画家がモデル。で、フツーならそんな人のわけがないのに、まるで風貌どおりの極悪ピエロなんだといわんばかりの描写。うまいやり方もあったものです。で、3巻の最後にはその富士鷹と主人公の炎尾燃の合作漫画も収録されていて、これが真面目なんだかパロディーなんだか…。いやいや漫画家稼業がこんなハズはないぞ、なんて最後には思えなくなってしまいますよ、ホント。
漫画家漫画にはずれなし、とはよくいったもの。「まんが道」然り、「バクマン。」然り。確かに傑作といわれる作品は多いです。でも、私が本当に読みたかったのは、昔過ぎず最近でもないこの作品の時代の話。80年代ノスタルジーですね。PCやビデオデッキがいまほど一般的じゃなく携帯電話もない、そんな時代が背景なら共感できないわけがない!ってなもんです。そして主人公は著者の若きころがモデルであり、フィクションと断りながら著名人も実名でポンポン飛び出すのですからそりゃあ興味をひかれますよ。当時の売れっ子になりつつあったあだち充に高橋留美子、ライバルの庵野秀明とガイナックス&ボンズの面々、矢野健太郎に岡崎つぐお、そしてこれはコアミックスの社長さん? 本気出していないモードの主人公の毒舌的な漫画批評やその文化に対する風刺と相まって楽しいことこの上ない。年代的に漫画やアニメ・SF関係でネタになりそうな出来事は目白押しなので、それをどんなに面白おかしく料理してくれるのか、まだまだ楽しみです。
ホノオ君の心理、行動にリアリティーがありすぎて忘れがちになるけど、在学中にデビューして連載してるんだから間違いなく天才だと思う。いちいちなんてことのない日常の思考が面白いから、そりゃ面白い漫画が書けるよな。
ボクシングマンガの名作は数多ありますし、その中で敢えてこの作品を挙げるのは恐らく島本先生のファンだけだろうとも、思います。 ただ、この作品は本当に数少ない、島本作品の中における「ギャグ」のない漫画であり、貴重な作品としてファンの脳裏に深く刻まれている作品です。 この時期の島本先生の作風は、デビュー当時の少年漫画のテイストから変わっており、今見ると懐かしい、劇画調の絵柄でした。そしてその絵柄が、この作品の「熱さ」と非常にマッチしていたなあと今更ながらに思います(丁度自分が島本作品を読み始めた時期でもあり、懐かしさもあります)。 島本先生の作品には、数多の傑作が数多ありますが、笑いを排した作品は本当に少ないです(それは先生本人の照れであったりファンへのサービスなど要因は幾つか挙げられると思います)。 同時期の傑作、「バトル・フィールド」と併せ、是非読んでみて欲しい作品です。