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大塚英志
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大塚英志の作品の感想・レビュー
4件
むかしむかし新宿に・・・
アンラッキーヤングメン 大塚英志 藤原カムイ
影絵が趣味
ビレッジバンガードというジャズ喫茶がありました。時代は学生運動の隆盛極まる1960年代の終盤。ここに学生運動にはどうも熱心にはなれない青年が集います。小説家を目指す中上健次、映画監督を夢見る北野武、そして連続射殺魔の永山則夫。さらに学生運動の側から永田洋子が合流。 社会の爪弾き者同士、ふしぎと意気投合する北野と永山。いつも言い訳ばかりでなかなか映画を撮ろうとしない北野が永山に出演依頼をかけ、脚本に着手し始めます。そして紆余屈折ありながら出来上がった脚本は、三億円を乗せた現金輸送車を襲う内容でした。 さあ、どこまでが真実で、どこからがフィクションなのか。 三億円事件は1975年に時効成立。 永田洋子については山本直樹の『レッド』を参照されるべし。 中上健次は1990年に獄中小説家としての永山則夫を擁護。 永山則夫は1997年8月に死刑執行。 北野武は1997年9月に自身が警察官に扮して銀行強盗をする映画『HANA-BI』でヴェネチア国際映画祭のグランプリを獲得。
民俗学とか都市伝説が好きな人にはたまらない
とでんか 大塚英志 樹生ナト
マウナケア
秋の夜長はやっぱりサスペンス、と思い立って探したらひっかかったのがこの作品。とでんか=とでん課=都伝課=都市伝説課って伝わりにくいタイトルだな、表紙も狙い過ぎ、と第一印象は良くなかったですが、ページをめくったら意外やこれがツボを突かれまくりでした。民俗学を専攻していたことがきっかけで都職員として働くことになった月極(つきぎわ)。しかしその職場は都市伝説問題を処理する課だった…という内容。冒頭から普通に出てくるのは口裂け女に人面犬、ダルマ男など伝説の怪人たち。そして起きる事件も怪人赤マント、リトルグリーンマン、神隠しといった新旧の都市伝説をモチーフにしたもの。さらに小ネタで噂の広がり方の実験や、都市伝説風の病気、謎の映像などを解説してくれる。その手の話が好きな人にはたまらないでしょ? しかも一見コメディタッチな構成ながら、裏サイトや戸籍売買などの情報を絡めてあるので、妙に納得できる話になっているのがニクい。毎日欠かさず東京スポーツを愛読している私にとって、ホント楽しく読める作品です。そのうちゴム人間も出るかな?
都市伝説問題処理係「とでんか」のスピンオフ作品
とでんか 少年探偵団 大塚英志 樹生ナト
マウナケア
都市伝説問題処理係を舞台にした「とでんか」から飛び出したスピンオフ作で、こちらは少年・田村くんが主人公。口裂け女や人面犬など都市伝説なんてそもそも子供っぽい話が多いので、むしろこちらのほうがなじむかな、なんて思いましたがなかなかにハードな内容です。ストーリーがカードゲーム仕立てなのはイマドキの子供が主人公だからしょうがないとして、登場する都市伝説の中心は宇宙人関係。ミステリーサークルから始まりキャトルミューティレーションにアブダクトなどのフレーズが次々飛び出します。ロズウェルはともかく、フー・ファイター、フラットウッズ・モンスターにウンモ星人ってどれだけの人がついていけるかは疑問ですけどね。E.T.やMIBなど宇宙人映画ネタもちょこちょこ入っていてオチもあの名作なので、映画ファンも楽しめるのではないでしょうか。まあ、私は鈴木さんが登場していることで満足なんですが。NHKで『バリバラ』なんて番組もある時代ですから大丈夫ですよ、OVAくらいにはできる…かな?
黒鷺死体宅配便
黒鷺死体宅配便 大塚英志 山崎峰水
マウナケア
うわあ、これは読む人をえらんじゃうなあ。タイトル通り、全編に死体がゴロゴロ。バラバラ死体やミイラはまだいいとしても、ウジ付き腐乱死体や臓器を抜かれたツギハギ死体、生首ご一行様に耳人間(?)…。スレスレですね…。しかしながらこれがちゃんと漫画として成立しているのは、登場人物がそんな死体を特別なものだと思ってないから。生きている人や単なる物質と変わらない接し方をしているのです。また、設定も寺の跡継ぎではない仏教大学の学生が特技を生かして起業する、とい今ふうで、湿っぽいところがない。さらにその特技もハッキングやチャネリング、エンバーミングにダウジングと横文字でなんともクール。主人公・唐津だけは日本古来の降霊術・イタコなんですけどね。そんな彼が死者の声を聞き、望む場所へ死体を運ぶことで、さまざまな人間ドラマが生まれるという寸法。唐津に憑く謎の霊など先への伏線あり、ニヤリとするサプライズあり、シャレの効いたオチもありと乗せ方もうまい。なので先入観なしに読んでほしいなあ。
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