爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇

モーニングからリトルプレスまで

爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇
nyae
nyae
1年以上前

森泉さんといえば「爪楊枝で漫画を描く人」ですが、一番最初に掲載されている「最後のフェリー」は初めてボールペンで描いた作品だそうです。 あとがきに「そろそろペンで自分の線を描けそうな気がしたから」とありました。 普段爪楊枝で描いていることに対しては「自分でもよくわからない」と言っているのがなんか笑えました。 通常のマンガ誌に掲載されている読切等は読んだことがあったのですが、文芸誌やアーティスト個人に寄稿したものがあるのは初めて知りました(ランバーロールは読んでいます)。活動範囲が広いというのがわかる短編集です。大林宣彦監督って義理のお父さんなんですね。監督との二人のエピソードを描いた話が好きでした。 タイトルの「爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇」という普通ならどれかひとつの短編タイトルを付けたりするものですが、こういうかたちにしたというのになにか意味がある気がしてなりません。 またこれだけは強く言いたい。紙版を買って読むべし。 作品によって用紙が変えてあり(なのでさわり心地も違う)、ただお金がかかっているなという高級な感じはなく、リトルプレスのような自由さがあります。 ▼こんな感じ

つつがない生活

つつがないなあ

つつがない生活
野愛
野愛
1年以上前

これはたしかにつつがない。 必要以上の温かさも幸せも困難もなく、ただつつがない生活がここにはあります。 いや、ちょっとの不安や不穏さはあるんだけども、それを補うだけのちょっとの愛や優しさがある。 溢れんばかりではなくて、たまにぽたっと降ってくるくらい。 日々の暮らしってこういうのでいい。こういうのがいい。 自分もこういう生活をできている気もするし、できていない気もするし、客観的に見ないとわからないけど今日も生きているのでまあいいかなと思ってます。 この作品は何もない日々の暮らしへの礼賛ではなく、ただただそこにあるものを映し出しているようで、そのつつがなさが素晴らしいなあと思いました。 感想を一言で言うと「ああ、つつがないなあ…」って感じです。

羊のうた

個人的に冬目景先生といえば今もこの作品

羊のうた
かしこ
かしこ
1年以上前

昔アニメをきっかけにハマって漫画も読んでいたのですが10数年越しに再読しました。当時はもっと見てはいけないもの見ている禁忌感があったはずなのですが自分も大人になったということでしょうか。とはいえ遺伝的な奇病とか黒髪和服の美女っていう世界観はやっぱりいいな〜と思ったので確実に影響を受けたことを実感しました。 まるで吸血鬼のように他人の血を欲してしまう精神的な奇病を発症する一族に生まれた姉と弟が主人公。大抵は女性のみが発症するとされ幼いうちに症状が出た姉とは違い、普通の人間として育つことを望まれた弟は秘密を知らないうちに父の友人の元で育つことになった。しかし高校生になった弟は発作に襲われ発症してしまい、生き別れた姉と同じ宿命を共有して生きることを選択する…。 弟の発作を治める為に姉が自分の血を飲ませていくうちに一線を超えるような愛情をお互いに持ち始めますが、そうなっちゃうのも仕方ないような因縁が色々あるんです。横溝正史みたいなおどろおどろしい話が好きな人は結末も含めてオススメ出来ます。

ブラック・ジャック ガール

JCブラック・ジャックのほのぼの漫画!

ブラック・ジャック ガール
一日一手塚
1年以上前

ブラック・ジャックがカワイイ女子中学生になっちゃった!テヅコミシリーズ初めて読みましたが面白かったです。 登場人物はお医者を目指すクロミ、死神を名乗る中二病高校生キリ、破天荒男子ピノオの3人。大胆すぎる改変だ…。本家のシリアスさはどこへやら、キャラがキャッキャするようすが最大の魅力かと。 本作のテーマは家族です。 クロミ、キリ、ピノオ。彼らは三者三様に家族をめぐる寂しさや孤独感を抱えています。賑やかな画面とは裏腹にどこか寂しげな雰囲気が流れているのが、ただのカワイイパロディに終わらない味わいに繋がっていると思います。 ブラック・ジャックは医療を通じて人を救ってきました。一方クロミたちにはそんな力はありません。それでもみな、それぞれのやり方で誰かを助けようとしているのです。 「なぜブラック・ジャックを女子中学生に?」という問いにはあとがきで七野ワビせん先生が応えているのですが、個人的にはこちらもじんときました。こういうifはいいですね。

弘兼憲史短編集

弘兼憲史短編集5 私の赤ちゃん

弘兼憲史短編集
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男
1年以上前

SF短編集だった。 表題の「私の赤ちゃん」と「指定席」が面白かった。 「私の赤ちゃん」のオチが面白いんだがこれ日常の仕事でもありそうなミスだったし、「指定席」は冴えないサラリーマンのドッペルゲンガー現象により生活が一変するが、生活が一変する方法の再現性を考えたりして面白い。 一番好きなのは弘兼憲史の「自分はSFは好きなんだと、描きながら気が付きました。UFOは大好きですが、存在は全く信じていません。」のコメント

紫電改343

菅野直ら「第343海軍航空隊」を描くパイロット物語

紫電改343
名無し
1年以上前

11号に掲載された読切『五十六の密命』をゼロ話とする新連載。第1話は昭和19年、250kg爆弾を積んでの体当たり戦法実行を前に、作戦撃墜王・菅野直が厚木基地へゼロ戦を受け取りに向かい源田実と出会うところから始まる。 75回目の終戦の日を前にして始まった新連載。須本壮一先生の所信表明から始まるところに気迫を感じました。

コワモテ高校生と地味子さん

ヒロインよりヒーローが赤面する漫画は名作

コワモテ高校生と地味子さん
天沢聖司
天沢聖司
1年以上前

結構前に電車でサラリーマンが読んでたのを見てずっと気になってた漫画がこれ。絵が綺麗ですごく可愛いくて、顔に傷がある男の子がすごく好みだったので「OL 男子高校生 傷 少女漫画」とかで検索しまくったら見つかりました。 10年前、主人公が高校生のときに出会った美少年・啓吾がゴッツイ強面になって現れてというラブコメ。 ホントに絵が魅力的で、じっくり主人公の気持ちの変化を描いてるところが良かった。何より良かったのが、啓吾は見た目こそ厳ついけど中身はそれなりに年相応でよく照れるとこ! 王道の恋愛少女漫画として完成されてて読んでて安心します😊 頭空っぽにして少女漫画読んで手っ取り早く癒やされたいときにおすすめです。 https://comic.pixiv.net/works/4708

私は利休

利休転生

私は利休
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男
1年以上前

俺の好きな「江戸前鮨職人 きららの仕事」の原作者が書いているので気になったので読んだ。 あらすじにある通り、雪吹なつめが茶人・山上宗刻の茶道教室に田中芳郎を誘ったところから始まる。開始当時は意識はないが田中芳郎は利休が転生おり、物語が進むにつれ利休の意識ではじめ、また同じ時代に転生した利休の関係者なども登場していく 今の茶道に対して利休がどう考えるかなどの話もあり楽しめた。

真夜中ごはん

優しくて穏やかな真夜中のお話

真夜中ごはん
野愛
野愛
1年以上前

変な時間にお昼食べちゃったときとか、お酒飲みたくなったときとか、大人になって自由になりすぎちゃって深夜になんか食べちゃうときってありますよね。 誰に咎められるわけでもないのに背徳感があっていいんですよね。真夜中ごはん。 まさにこの漫画に出てくる料理みたいに、簡単にできるものから妙に張り切っちゃってちょっと凝ったもの作ってみたり。食事というよりごほうび感覚なのがいいんですよね。いいんですよ。 ふわっと絵本のようなタッチで描かれた夜の空気感と美味しそうな料理がおだやかで優しくて、特段変わったエピソードとかストーリーがあるわけではないけれどあたたかい気持ちになります。 昔のこと思い出したり、懐かしいごはんが食べたくなったり、真夜中のひとりごはんのお話なのに人の体温が感じられる優しい優しい飯漫画です。 夜食への罪悪感も優しく包んでくれることでしょう…。

エレクトラ!~罪深き聖女たち

いがらしゆみこ先生の新作は「天才女優の復讐劇」

エレクトラ!~罪深き聖女たち
名無し
1年以上前

「キャンディ・キャンディ」のいがらしゆみこ先生の最新作です。デビュー50周年の記念作らしいのですが、週刊誌「女性自身」で連載されていることもあり、ちょっとドロドロした大人が読んで楽しい物語になっています。 主人公は元天才子役の女優です。10年間日本を離れていましたが、突然帰国して女優業に復帰します。実は彼女には複雑な生い立ちがあり、復帰の理由は亡くなった父のカタキを取る為なのです。でもやっぱり一番の見所は主人公が女優魂を見せつけるところですね。復帰宣言を親友の授賞式で堂々して主役を奪っちゃうとか、そんなのしょっちゅうなんです。お家騒動や人間関係のドロドロした部分もあるけど、それだけじゃなくて全体的に優雅さも感じます。さすがベテラン作家さんだなと思いました。

フラワー・オブ・ライフ

笑ったり泣いたりするだけが青春じゃないんだ

フラワー・オブ・ライフ
かしこ
かしこ
1年以上前

10数年前の多感な時期に読んでものすごく印象的だった作品。途中までは学園生活の楽しさ満載なので、当時キャラと同じく学生だった自分は夢中で読んでたんですけど、結末がとてもシリアスでショックを受けました。それまでが楽しすぎるんです!私にとってよしながふみ先生のイメージは「フィクションだけど容赦なく現実を突き付けてくる」ですが、この作品がきっかけだと思います。だからこそ信頼できるし面白いんですけどね! 主人公の花園春太郎は白血病の治療の為に一年一ヶ月遅れで高校生になりますが、自己紹介で病気のこともカミングアウトするし、すぐにクラスメイトとも馴染みます。注目すべきなのは漫研メンバーです。その一人である武田さんの作品「ルイジアナにひな菊咲いて」がきっかけで展開していくエピソードが最高に面白いです。最初はひっそりと趣味で描いていましたがクラス中で人気になり、文化祭で演劇をするまでに発展します。漫画の中の漫画をここまでネタにしてくれるなんて感動ですよね。気になった方は読んでみて下さい。そういえば初めて油淋鶏の存在を知ったのはこれがきっかけでした。

ダークマスター オトナの漫画 完全版

コテコテの刹那の連打!!連打!!

ダークマスター オトナの漫画 完全版
ひさぴよ
ひさぴよ
1年以上前

狩撫麻礼&泉晴紀のタッグによる25編、560ページ超に及ぶ分厚い短編集です。 (連載時の名義はダークマター、泉レッドドラゴン) 狩撫麻礼さんの没後に刊行された完全版になります。 中身としてはオチがなくて意味がよく分からない話もありましたが、泉晴紀先生のギャグっぽい作画がハマってる所もあり、楽しめた話とそうでない話が半々くらい。 ーーーー 特に好きな短編 「ダークマスター」 表題作。味は良いが、店主の性格に難があって繁盛しない店を他人に任せることになり、店主の代わりになんでもやらせてしまう話。何を表現しているかは言わずもがなです。オチはないけど面白いっ。 「ミッションあるいは伝道」 高齢化した個人商店とニートをマッチングさせて、寂れた商店街を復活させようとする男の話。発想は凄い良いけどたぶんうまくいかないと思わせてくれる所が良い。 「眠らぬ男」 オチの秀逸さでは「オッパイ説」か、この話が一番好きですね。ネタバレできない面白さ。 ーーーー 話のバリエーションは多いので、昔からの狩撫麻礼ファンに限らず、「世にも奇妙な物語」のような不可思議な話、刹那的なショートストーリーが好きな方なら楽しめる短編集だと思います。

オハナホロホロ

ゆうたがホッコリした気持ちにさせてくれました

オハナホロホロ
Pom
Pom
1年以上前

複雑な心境で読み終わりました。 みちるの子、ゆうたを取り巻く環境が、何とも言えない複雑です。 その複雑さは、話が進むにつれて感じたものですが。(特に最終巻で) いや、だけどこう言う形もありかって思った。 根底に深い愛情があると思うから。 色んな糸が複雑に絡み合ってるけど、ゆうたの存在が話の雰囲気をホンワカさせているように感じました。

ガールズ美術

わからない分、純度が高いと言えるのかも

ガールズ美術
hysysk
hysysk
1年以上前

アンドロイドとか宇宙人が絡むギャグ漫画なので、ブルーピリオドやかくかくしかじか的な話を期待してはいけない。美大受験や美術業界を経験してないとどこが笑うポイントなのかもよくわからないと思う(だからお蔵入りだったんだろうけど)。 でもその分こんな一面もあるのだな、というのがわかるので、彼女の作家性を知るにはいいかも知れない。 自伝的エッセイの番外編と、近藤聡乃も含めた座談会がとても興味深かった。影響を受けたカルチャーは同世代感ある。

おとなのほうかご

おとなのほうかごは意外と短い

おとなのほうかご
野愛
野愛
1年以上前

タイトルにおとなってついてるし、絵もかわいいし、コメディと言っても穏やかで緩やかなものを想像してました。 淡々とテンポよくボケ倒してきますね。テンポよくというかかなりハイスピードです。 1話1話がかなり短くて、それぞれ関係ない話のようでいて登場人物が繋がっているのが良いですね。 みんなクセ強めでぶっ飛んでいて、なおかつ1話が短いので人間らしさがあまり見えてきません。だからこそ気になってどんどん読んじゃうってのはあるかも。 謎の酒クズ美女・天野さんめちゃくちゃタイプです。一緒にたくさんお酒を飲みたい。

本場ぢょしこうマニュアル

80年代女子校の日常

本場ぢょしこうマニュアル
無用ノスケ子
無用ノスケ子
1年以上前

「その女、ジルバ」で手塚治虫文化賞を受賞した有間しのぶ先生のデビュー作。デビュー雑誌はヤングマガジンだったんですね。しかも、2巻で「作者は女子高校を卒業して大学生になりましたが」とありますので、もしかしてデビュー当時は現役女子高校生だったのでしょうか!?驚きです。1982年から8年間に及ぶ長期連載だったそうですが、青年誌で女子校日常マンガなんて、当時のヤンマガ読者さんに受け入れられていたのか気になります。絵について少し触れますけど、大変失礼ながら絵はほとんどノートに描いたような絵でした…。(漫画原稿用紙でもない?)トーンも使われてないようで、落書きにしか見えないコマもありました(←ホント失礼!)でも、絵がどうこうより、漫画に描かれている人達が面白いんです。淡々と学校や周りの出来事を描いてるように見えて、実に多種多様な生徒たちが漫画に登場します。よくある思春期の一コマであっても、一人ひとりの内面に踏み込んで描かれています。だからギャグ漫画なのにどこか嘘っぽくなくて、その人の本音を感じるのです。このような人間への観察力・洞察力こそが、有間しのぶ先生の凄いところなのだなあと思いました。

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