漫画家マンガでもあるし
手塚治虫文化賞ノミネートをきっかけに読みました。ドーナツ屋のアルバイトをしながらタウン誌やInstagramに漫画を描いているツユクサナツコが主人公です。日常に漫画のネタがあってご飯の後や寝る前にそれを作品として落とし込むまでのナツコの一日が一話になっています。年齢的には32歳でまだ若いのですが母親を亡くしたばかりだったりコロナ禍の話でもあるので、漫画家マンガでありながらテーマは死生観です。読んでみないと分からない深みがありました。もしかしたら東京ヒゴロの塩澤さんがInstagramで見つけた漫画家に原稿を依頼するとしたらこんな人かもしれません。
ネタバレ有りの感想ですので未読の方は回れ右でお願いします!
振り返ってみると、そのまんまの意味のタイトルだったり、自分のお墓を買うか迷うシーンもあったり、フラグがない訳ではなかったんですが、てっきりお父さんが先に亡くなると思ってたので、まさか主人公のナツコが早逝するとは思いませんでした…。該当のシーンはかなりの喪失感があって、そこから最後までは動揺が収まらないまま読みました。
もうすぐ大手出版社での連載が決まっていた矢先の出来事だったのがやるせないですね。ナツコの姉は残された作品を形にしようと動きますが、結局はお金の問題で小さな冊子を手作りして知り合いに配ることになります。日常の何気ないことを汲み取った作品は、ようやく彼女の身近な人達の目に触れることになりますが、きっと一生は覚えていないと思う。来年には忘れてるかもしれない。それでもお父さんが作品の中に登場するお婆さんになったナツコを見て救われた気持ちになっていたから、ナツコ本人も作品も報われたと思う。
ナツコの人生が不幸だとは感じないのは、彼女らしく自由に好きなように日々を生きていたんだと描かれた作品を通じて伝わるから。人生で大事なことは結果じゃないんですね。