「バイスタンダー」という言葉は、事故や突然倒れた人の「そばに居合わせた人」という意味だったと思いますが、この読切にぴったりなタイトルだと思います。
主人公の美柑ちゃんは中学生ぐらいの一人っ子だと思いますが、一見なんの不満も辛さもなさそうにみえる美柑ちゃんの感じているであろう、窮屈さや居場所のなさというのは、自分も当時抱えていたなぁとしみじみ思います。
学校でも家族でもない、自分だけしか知らない男の子、と猫のニャータ。
しかもその子は家庭に問題を抱えていそう。
自分よりもか弱い存在に寄り添い保護することが、実は自分自身を救っている。
セラピーみたいな感じで、他人を助けることで自分の心が軽くなっていたんだろうな…というのが手に取るようにわかる。
別に感謝されたくてやったわけじゃないけど、自分があの子のお陰で救われていたから。ニャータは死んじゃうし、男の子は急に居なくなっちゃってしかも幸せそうにしている姿をみたら、辛いのは結局自分だけで、また居場所がなくなっちゃって……。
複雑な感情に包まれて気分が落ちちゃうの共感しか無い。
こんな複雑な感情を読切で描けるなんてすごすぎる…心に残るメチャクチャいい読切でした。
現代のリアルを抉り出す入魂の新作読切!!!(月刊!スピリッツ2023年11月号)