笑顔で常に心を保つことはとても大変なこと。
身長が小学校の時から病気で伸びす、大人になった華さん。社会に出て、人目や心無い言葉がある中で、前向きで自分自身も華さんを見習うところが沢山ある。 自分からも社会からも逃げ出さずに、真っ直ぐな瞳でどの感情も受け止めて前に進もうとしている。 そして必ず苦しい時も助けてくれる誰かがいる。 見た目以上に大事なものって、沢山ある気がする。 悩みって、こんな湧く様に出てくるのかと思っていた最中だったので、この作品の中に出てくる言葉達に励まされました。
吉乃華(よしの はな)25歳。食品会社勤務。病気の影響で、小学生の頃に身体の成長が止まってしまった華は、その時と同じ身長のまま大人になった。年齢と外見が乖離していることで「見た目がもたらす生きづらさ」に直面してゆき――。恋も仕事も趣味も……「見た目」に縛られる社会で戦う、生きづらさの物語。
「生きづらさ」。
一言で表すのであれば、本作のテーマはそこです。
多くの人が感じずに済んでいる痛みを受けながら生きている人に、凛々しく優しくエールを送る作品です。
バンチが送る女性向け新レーベル「バンチコミックスコラル」の先陣を切って送り出されたこの『133cmの景色』は、読切時からクオリティの高さで話題沸騰でした。そして、すぐさま連載化し本日単行本も発売となりました。女性向けレーベルとなってはいますが、連載は『月刊コミックバンチ』で行われており、内容的にも男女問わず広くお薦めしたい内容です。
133cmの身長のまま、小学生から成長が止まってしまい25歳になった主人公・華。
そして、華の後輩であり、ある事情を抱える岩見。
食品会社に勤める彼女たちを中心とする、群像劇です。
華は、低身長であることで過去から現在に至るまで数々の心無い言葉のナイフを刺突されて生きています。困ったことに、ナイフを突き立てる側の人間は自分の放つ言の葉が凶器となって人を傷つけていることに極めて無自覚です。しかし、そんな経験を積んできた華ですら、ときに人を傷つけかねない言葉を無意識に発してしまう。そんな人の世のリアルを的確に描いています。
それでも、
″人の価値観とか苦労とかって
目に見えないから汲み取るのは難しいよね
だから損とか得とかって一面的に見て判断してると
いつか他人も自分も傷つけちゃうんだと思う
私はどうせなら自分や他人の「無い物」探しを
するんじゃなくてそれぞれの良い面に
目を向けていきたいな″
という華。毎日の仕事が戦場であるという彼女。同じように傷つけられる人に手を差し伸べる彼女。主人公としてあまりに気高く、推せます。
岩見との絶妙な関係性が進展していく様子はもちろんのこと、周りの登場人物ひとりひとりにも味があり、それぞれの生きづらさを抱えているところも堪りません。そうした人たちが集まってできている社会というものの複雑さ・難しさを感じながらも、読んだ後には一欠片の優しさを得られる作品です。
非常に現代的・令和的な物語で、今年の新作で推したい作品ベスト10には確実に入る、大注目作品です。
バンチ編集部へのインタビューでも本作を取り上げておりますので、ぜひこちらも。