大人だけど心の内に閉じ込めてしまう気持ちは、とても分かる。
小学校のスクールカウンセラーの五加木さん。 子供達のSOSに気付くのは、彼らから発信してくれない限り子供をしっかりと見ていないと難しいだろう。 何でも親に話すことはなくなってくるだろう難しい年頃の子の心を開くのもかなり難関だろうなぁ。 五加木さんに、心の内を話せた子がボロボロと涙を流すシーンは、私自身も泣いてしまう。 そして彼らの親は子の変化に気付かないものなんだなぁと感じた。 しかし、五加木さんに心開いた後の子供達の笑顔は素敵だったなぁ。
少子高齢化により子供の数は年々減っているにも関わらず、不登校の児童数は年々増加しており昨年には過去最多の24万人になったといいます。
原因は様々で一口にはまとめることはできず複合的な要因があるとは思いますが、少なくとも子供たちに掛かるストレスが大きくなっていることは確かであり、それは解決していかねばならない社会課題でしょう。その方策のひとつとして、スクールカウンセラーが存在します。私の子供の頃にはいませんでしたが、今は9割ほどの学校に配置されているようです。
本作は、そんなスクールカウンセラーの仕事模様を子供の苦悩にフォーカスしながら描いた作品です。重めですが、現代社会においては普遍的なその重みをしっかり捉え受け止めて前へと進もうとする良いお話です。
スクールカウンセラーである五加木先生は、週に1回小学校で児童たちの相談役を務めています。1巻では、大畑くんと石動さんのふたりのエピソードが描かれます。ふたりの抱える悩みは、自分一人で処理するには大きく、そうした時に五加木先生がいるかいないか差は甚大だなと感じます。ただ、スクールカウンセラーが学校にいられる時限やキャパシティにより救えないケースの示唆もされており、現実的にも難しい課題です。
カウンセラーにとっては基本ではあるでしょうけど、五加木先生が偉いのは児童の話すことに対して一切の否定をしないこと。石動さんのある言動などは、担任教師のようにヒステリックな反応をしてしまいがちですがそうはしない。大人は経験を踏まえた考え方で、子供の思考を未熟と断じて否定したくなってしまったり実際に遮ったり押し付けたりしまいがちですが、そういったことは一切せずに子供の放つメッセージを掬い取ろうとする姿勢が素晴らしいです。
また、石動さんのエピソードでは、石動さんが好きなアーティストを教えるとそのアーティストをがっつりと聴き込んで語らう様子もありしましたが、そういうことで子供の信頼感は少しずつ得られるんですよね。私も、心の悩みを持った難しい年頃の女の子と荒野行動や少女マンガを糸口に話したことを思い出しました。
子供は、しっかり文章で話せるようになってはいても、実はまだ思っていることを上手く言語化はできなくて想いをきちんと伝えられない、むしろ下手に伝えて誤解させ悪化してしまうこともままあります。そうした部分を加味して、大人は言葉尻に反応したり、論理の飛躍に困惑したりせず寄り添わねばならないなと思います。
私も小中高の間、誰にも話せない家庭の悩みを抱えて生きていたので、もしこんな良いスクールカウンセラーの先生がいたらもう少し楽に生きられていたかもしれません。この作品を読んだ悩みを抱える子供が、誰かに相談して少しでも楽になるという選択肢が生まれたら良いなと思います。
個人的には、子供に対する教師もあまりにもストレスフルで人道にもとる働き方を強要されがちな面があるので、教師のためのカウンセラーも学校にいて欲しいくらいです。